【 engawa young academy 】 メンターインタビュー 電通篇
#インタビュー
※第一回インタビュー(みずほFG)はこちら
第二回インタビュー(日本たばこ産業)はこちら
第三回インタビュー(積水ハウス)はこちら
第四回インタビュー(島津製作所)はこちら
第五回インタビュー(パナソニック)はこちら
右) 株式会社 電通 ビジネスデザインスクエア 事業創造2グループ 小島雄一郎さん
左)インタビュアー) 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 湊 康明
―eya初日を終えての感想は?
電通のインターンに来る子たちとは違うなという印象ですね。アイデアにワクワクするとかっていう子が多いんですけど、どちらかというとビジネス・仕組みとか少しコンサルよりの思考が多い印象ですね。
―初日のプログラムについてですが、チームクリエイト※の時の学生の様子見ていてどのように感じましたか?
※eya期間中のグループメンバーを、学生自身に決めてもらうプログラム
チームとして何が必要なのかを考えた時に、同じような人じゃなくて違う人を組み合わせなくてはいけないことも分かった上で、戦略的にやっているなという印象でしたね。実際の仕事もそうやって進むと思うんですよね。自分が選ぶ側であれ、選ばれる側であれ、経験を一回やってみておくことは大事だなと思いました。
―メンタードラフト※の感想はいかがですか?
※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム
まぁドキドキしますよね。(笑)とにかく印象に残らないと終わりなので、どうやって印象を残すかを考えてやっていたので、実際に票が入ったんでよかったですね。
eya初日、メンタードラフトでプレゼンする小島さん
―学生からの質問で印象的だったものはありましたか?
「小島さんは僕をどう成長させてくれますか?」という質問ですね。僕はそれに対して「自分で考えてください」って答えました。僕も対等な立場でいたかったので、教えるみたいなのは嫌だなと思ったんです。どちらかというと「電通ってこういう考え方の人がいるんだ」とか「こういう人をチームに置いたらどうなるか」を考えて欲しかったので。
―ありがとうございます。では、ここから企業について伺っていきたいと思います。電通ってこんな会社だと、学生さんの知らない部分を含めて教えてください。
基本的には広告を作っている会社だという印象を持たれていると思います。多くの人は広告制作やプロモーションの仕事をしているので基本的にはその通りです。広告の源泉はアイデアなんです。最近はそのアイデアを違うことに使うこともある。例えば新商品開発や新規事業開発・採用コンサルティングに使うこともあるという考え方の会社ですね。アイデアと実現力の会社だと思ってもらえれば良いかなと思います。
―では、今後電通が目指しているところは?
広告会社(Advertising Company)からビジネスを生み出せる会社(Business Producing Company)へと言っています。何のために広告をやっているのかと言うと、クライアントのビジネスをどうプロデュースし、エンパワーメントしていくかという話なんですね。そうすると、For client(受注型)からWith client(パートナー型)というキーワードが出てくるんです。「広告やります」って決まってから電通に話がくるのではなくて、そもそもこの商品は広告をするべきなのかという所から一緒に考えるパートナー型の付き合いに変わって来ていますね。
―そういった変化の中で、新たな取り組みとしての事例はありますか?
今うちの会社は投資だとかクライアントと一緒に会社を作るみたいなことが多いんですよね。この間もキリンさんと「INHOP(インホップ)」という会社を作ったんですね。それは、ホップというものをビール以外のものに使おうという会社です。新しい商品開発とかっていう部分です。あと複数の企業の協力を得ながら、一緒に車を持っている人が貸し合う“カローゼット”という会社を作って、そのビジネスモデルを作ったり、とか多くなってきましたね。
キリンホールディングスと電通が合弁会社「INHOP(インホップ)株式会社」を設立
https://www.kirin.co.jp/company/news/2019/1031_01.html
電通、初のCtoCサービス 愛車の一時交換アプリ「CAROSET」を本日よりサービス開始
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/1210-009977.html
― そういった広告以外の領域で“電通が入る意義”や“活かせる強み”は何だと思いますか?
何かを開発する時に、大体はこれだけ市場があって今シェアはこうなっていて・・・みたいなことだと思うんですよね。でも電通の人って、分かりやすく言うと「CMどんな感じになるかな」とかあくまでも生活者側からどんどん発想していくので、これは面白くなりそうだなという勘も鋭いし、何かをアウトプットするときのスピードが早いんですね。そこは一番バリューだと思います。
―では今、電通が求めている人材像とはどんなものでしょうか?
アイデアと実現力の会社なので、その両方がないとダメだと思います。やはり源泉としては好奇心とかがアイデアを出すときに大事だと思います。あとはチーム作業をするので、リスペクトをお互いにできることって大事かなと思いますね。リーダーという役割をやっているとか、偉いといった上下関係を作らないのは大事だと思います。ただそれを上下関係だと捉えてしまう人がいると、良いチームにはならないかなと思います。
―実際の採用活動やインターンという取り組みの中で、重視している方針はありますか?
さっきのメンターの話もそうですけど、教える側・教わる側という関係を学生ともあまり作りたくないんです。例えば僕がこれまでやったインターンで言えば、学生がやりたいことを持ってきて、それはどう世に出せば伝わりやすいのかという制作のお手伝いをしますよということです。最終的にはクラウドファンディングにあげる所までを我々がトータルでサポートします、というインターンをやったのは、まさにその形かなと思っています。クライアントの役回りを学生にやってもらって、そこには確実に意志があって、それをどう言語化・画像化しコンセプトを立てていけばいいのかを支援する。大きなビッグアイデアを如何にゼロイチで出すかよりも、やりたいことがある時にどういう風に削ぎ落としていき、シャープにしていくかという実現力を体感してもらうインターンですね。だから、お題をこちらから出していないし、これは良いとかゴールドだとかいったことはやっていない。というのは、他の会社さんのインターンとは違う形かなと思いますね。
―そういった活動を通じて、感じられる課題はどんなものでしょう?
電通は広告やアイデアのイメージが強いのですが、アイデアを“狭い意味”でのアイデアだと捉えられてしまうことも多かったと思います。理系の子とか、戦略コンサルを希望している人は違いますとかって感じられたりだとか、そういうミスマッチを如何に解消していくかですね。「その領域にアイデアを使ったら面白いのではないか」と語りかけるようにしていますし、学生にも「電通って自分に関係ある会社なんだ」と思ってもらうようにすることが課題であり、今の戦略かなと思いますね。
―“狭義じゃない”アイデアとして挙げられる事例はありますか?
少し昔の話にはなってしまうんですけど、“アヤナミブルー”という絵の具を作った時の話は、ぱっと見ると新商品開発だけれどもやっていることは、事業のシフトをしているんです。絵の具屋さんのクライアントだったんですけど、 “アヤナミブルー”という色を出すことで、絵の具の市場からキャラクターグッズ市場に出るわけですよね。そうするとターゲティングが変わるのでマーケットが変わって、事業体が絵の具メーカーではなく色メーカー=色のプロデュースカンパニーなのであるという事業の捉え方も変えられますよね。
アヤナミブルー:https://www.turner.co.jp/ayanamiblue/
最近、スノーピークさんは「キャンプ用品会社ではなく“人間らしさを取り戻させる会社”である」とおっしゃっています。キャンプ用品メーカーからの飛び方で分かりやすいものは、オフィスの中のプロデュースですね。人間らしさを取り戻さないといけないのは意外とビジネスパーソンじゃないかとなってくる。そういった時に、キャンプにいる時にリラックスしているようなミーティングルームがあったら、みたいなこともそうですし。“その事業自体をどうシフトさせていくのか”からお付き合いしていくのが基本のスタンスとしてあります。そのアウトプットが商品開発の時もあれば社内制度の時もあるということですね。
―現在の業務にいたるまで、小島さんはどのようなキャリアを積まれてきたのでしょうか?
入社時はクライアント担当の営業配属になり、4年間営業をやっていました。営業の中でもプロモーションという領域の営業ですね。その間に、実はテレビとかマスメディアの力が下がってきて、プロモーションを会社としても力を入れないといけないとなって、プロモーションの部署ができたんです。その中でプロモーションの領域が拡張していくんですよ。イベントや店頭だったのが、CM以外全部みたいな領域に変わってきていて。10年目くらいからは、その領域がどんどん上になっていってコンサルティングを専門にやる部署に異動したのが10年目ですね。だから大きく分けて、営業時代・プロモーション時代・ビジネスデザイン=コンサルティング時代という風になっていますね。今は、コンサルティングの中でも結構大きいインナーのコンサルティングです。その中でも採用ですね。「どういう学生に入って来てもらおうか」「そのためにはどういう風にメッセージングすればいいのか」「どういう説明会のスライドを作ったら良いのか」をコンサルティングもしながら制作するという仕事が多いですね。
―事業の変化に合わせて業務内容も変化してこられたんですね。
そういった変化の中で、今回eyaに参加されたのはどのような意義があると思いますか?
電通の業態が変わっているので、それに合わせた採用をしないといけないんですね。今回リンクアンドモチベーションさんもいらっしゃいますし、電通とは全然違う他社さんがいらっしゃるので、通常の採用活動では出会えない学生と如何に出会っていくかが一つですよね。あとは関西は学生マーケットも非常に元気なエリアだったりするので、そういう学生とちゃんと接触するというのも一つですかね。
―他の企業とも出会える場として、小島さんにとって期待感はありましたか?
同じ日本企業として「こういう風に変わっていかないといけないよね」という同じ危機感を抱えているある種一体感があるのが刺激だと思います。日本的な進化だとかイノベーションも起こしていかないといけない。やっぱり「面接やります。待ってます。」ではダメだなと改めて認識しましたね。
―こういった異業種との取り組みはどう思われますか?
学生は面白いんじゃないですか?今回業界が括られていないので「あ、みずほ銀行の人はこういう考え方をするんだ」「電通の人はこういう考え方をするんだ」というのがいっぺんに分かりますし。あとはメンター当てクイズが個人的にはすごく面白くかったです。結構当たってなかったじゃないですか。(笑)だから如何に自分が持っているものがバイアスかを考えられると思います。だから学生にとっても刺激だし、僕らにとっても「今の日本の学生はどういう考え方をするんだな」という意味でも刺激を得られます。
―eyaの学生さんに期待されることや感じたことはありますか?
電通も含めて、日本企業の可能性を感じて欲しいですよね。自分が入ったらもっとドライブさせられそうとかを感じてもらえるといいのかなと思います。“捨てたもんじゃないぞ”ではないですが、まだ使ってない資産いっぱいあるし、そういうものに気づいてもらえたらいいなと思います。
―では最後に、メンターとしてeyaの学生に一言お願いします。
「お互いに有意義な時間にできるように頑張りましょう」という感じですね。お互い刺激になってまた来たいと思ってもらえるチームなり場所なりにしてもらいたいな、しないとなと思っています。