【 engawa young academy 】 メンターインタビュー 日本たばこ産業篇

#インタビュー

2019年11月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eya参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、日本たばこ産業の比嘉将大さん、廣瀬理子さんにお話を伺いました。
※第一回インタビュー(みずほFG)はこちら

 

 

右奥) 日本たばこ産業 人事部  比嘉 将大さん
右手前) 日本たばこ産業 人事部課長代理  廣瀬 理子さん
左)インタビュアー) 電通 京都BAC engawa young academy 事務局  湊 康明

 

―eya初日を終えての率直な感想をお聞かせ下さい。

比嘉さん:まだまだ分からないことだらけなんですけど、参加者の皆さんが''前提を疑えるようになる''ともっと楽しいだろうなと思います。疑うというか問い直すというか…。せっかくだから与えられたものを消費するだけではなく、「こうなったら面白いよね」と(批判するよりも)無邪気に問いを出せるともっと面白いし、それが出来る人たちだと思いました。
 

―午前中のチームクリエイト※の様子を見てどのように感じられましたか?
※eya期間中のグループメンバーを、学生自身に決めてもらうプログラム

比嘉さん:自分が何かをやると言うのは、いろんな側面があります。選ぶということは選ばないということだし。自分がどんな怖いことをしているのだろうという意識が大事だと思いました。選ぶ選ばれるってプリミティブな快・不快に繋がるんです。選ばれると嬉しいし、選ばれないとモヤモヤしますよね。そこに惑わされないことが大事だと思います。それは僕たち採用の仕事もそうだと思います。人を判断するのって、人間の技じゃないなと思うんです。それでもそれが必要とされているし、そもそも人を迎え入れるのはリソースが有限な以上どこかで線を引かなければいけない。そして線を引く時に「ここに本当に線を引いていいのか」というのは慣れちゃいけないなと思うので、みんなには慣れて欲しくないですね。

 

 

eya初日、学生と語る比嘉さん

 

―それに慣れるのは本当に怖いですね。。。
では、午後の話になりますが、メンタードラフト※はどう感じましたか?

※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム。

比嘉さん:すごくいいんじゃないですか。大人になると試されなくなってしまうので。基本的にYounger is betterなんです。会社に絞っても、僕たちが自分達よりも年下の人たちより長く会社を担うことは出来ないので、Younger is betterだなと思うんです。それなのに、人事はおおっぴらには基本的に試されないんですよ。給料もらっているのに。そういう意味ではすごくいいと思います。

 

ー大人も試される、というeyaの狙いに共感頂けてうれしいです。では、ここから御社のことについて伺っていきたいと思います。日本たばこ産業(以下、JT)について、よく知らないという学生に向けて、このような企業です、というご紹介をお願いします。

比嘉さん:JTのやることは二つしかないのではないでしょうか。''美味いたばこを作ること''と''それに集中すること''です。これ以外やっていなかったし、これからもそれ以外やる気はない。''美味いたばこ''とは何かというのは、社員が本気で考えていくことです。
シガレットと答えるのは、確かにマジョリティーですが、廣瀬さんだったらdocdog※を美味いたばこだと言うんです。「“たばこ”というものがすごく好き」という事への共感がないと、JTで働くことは多分厳しいと思いますね。

docdog: 獣医師監修、犬の靴と靴下の専門店
https://www.docdog.jp/

 

―docdogを''美味いたばこ''と言えるのは、どういうブリッジ、捉え方なんでしょうか? 

比嘉さん:僕の解釈だと、喫煙している時間の流れ方と犬の散歩の時間の流れ方や感覚ってすごく似ているよねという事だと思います。

 

 

廣瀬さん:docdogは関連会社に出向していた際に関わっていたサービスです。比嘉のいう「美味いたばこ」という表現は特徴的ですが、私なりの言葉にブリッジすると「私たちが創業時から扱っているたばこの持つ効果・効能から再解釈していくプロセス」だと感じています。たばこには八徳※という8つのクラスターに分割される心理的効果があるとの研究報告があります。

私は八徳には時代の流れに合わせて強調される効果があり、濃淡があるという仮説をもっていました。例えば、自分の生活の中に句読点を求めた時代(経済成長期)、リフレッシュする時間を持ちたいと思い八徳の中でも「集中促進効果」を求める人が増える。例えば、社会にオンラインプラットフォームが増えていくとリアルな場・仲間という接点が弱まることから''場のコントロール''という効果を求める人が薄れてくる、みたいな。私は入社後、たばことは一見関係のない事業を立ち上げましたが、たばこの持つ効能(喫煙所でのコミュニュケーション=場のコントロール)と犬の散歩がリンクすると思いました。もちろんペット市場に対する強い想いがあったことが前提ですが、JTとも関わりを持つ身として、それは「美味いたばこ」の表現であったとも思います。

※喫煙八徳:集中促進効果・自己回帰効果・感情充足効果・開放増進効果・演出効果・場のコントロール効果・関係構築効果。

 

―なるほど。そういうことなんですね。
続いてですが、御社のインターンや採用活動をする上で、求めている人財像など、重視されているポイントはありますか?

比嘉さん:明確な定義は特にないです。むしろ定義できないからこそ出会える人がいると思っています。ただ「こういう人はきついよね」っていう人は、誤魔化すとか誠実じゃない人です。例えば工場でたばこを大量生産しているので、工程のなかでたばこが何本か落ちたりする事もあるんです。それをポケットに入れて喫煙所で吸うのも出来るわけですよ。でもこれは脱税になります。紙巻きたばこは出来た瞬間に税金がかかっているので。なので、誠実さは必要ですよね。あとは''自分のやっていることはどういうことなのか''それこそ、選び選ばれる行為の意味をちゃんと考えられるかですね。気づかぬうちに搾取をしたり、ひどいことをしていないかです。

 

廣瀬さん:人事部長は、今、比嘉が話したような事を“高潔性”と一言で表現しています。このように最小限で定義した人物像に、各人の趣意が加わると思います。私が今大事にしているのは“逞しさ”です。うちの会社は厳しい経営状況です。どう考えたって、急に嫌煙風潮が緩和され「たばこ最高!」みたいになることはないでしょう。そのときJT社員として継続と継起を試みるには、闘志が必要になります。自分でやると決めたことをやり切るには、パッションを持っている人じゃないと打破できません。だから私が仲間になってほしいと思うのは、何よりも闘志のある逞しい人です。
そしてたばこを吸わなくてもいいのでたばこが好きな人を求めます。自社商品に嫌悪感があれば本人にとっても辛い仕事になるだろうし。たばこを好きな人たちが現実直視をしながら試行錯誤を繰り返す、その姿が必要です。

 

比嘉さん:僕は狂気ですね。正常に狂うって結構大事だと思うんです。単純に狂うとか最近で言えばジョーカーになるのはめっちゃ簡単なんですよ。狂人になるのはそんな程度の高い話ではなくて、ハチャメチャやるのは誰でも出来るので正しく狂うを換言すれば理性的に狂うですね。自分なりの仁義を持ちながらギリギリのラインを突っ走るというのは、超高難易度だと思います。Don’t be evilですね。グーグルは最近変えてしまったけど、まさに邪悪をしないというDon’t be devil。ある程度狂気がないとダメで、ただそれは程度が低いと主語は自分になってしまうんですよね。

 

―たばこという製品を扱っていることを、強く意識されているんですね。

廣瀬さん:まさにそのポイントが大事だと思っています。戦後、たばこを吸う人が増え“嫌煙権”を生んだ背景を作っています。ひるがえって現在、“喫煙者の権利”はどこにいってしまったのかと言いたくなるほど嫌煙風潮です。JTは、マジョリティーとマイノリティの相反する立場を経験しているからこそ、自分以外の何かに向き合う時の“真摯さ”の重要性を痛感しています。その経験が有るからこそ、“言葉だけでなく本当の多様性を育める会社”という器を持ち合わせている(その可能性がある)と信じています。

 

比嘉さん:僕がすごく好きな漫画の“パンプキンシザーズ”のセリフで、「紅茶もミルクティーも等しく尊い。しかし、その世界においてストレートティーを味わうことはもうできない。」というのがあります。紅茶って美味しいし、ミルクを入れても美味しい。でもミルクティーはストレートティーに戻らないじゃないですか。だから「その世界でしか出来なかったことは本当にないか」を検討しながら慎重にミルクを入れていくというのが大事なんです。それでもミルクティーも美味しい。だから僕は“世界の切り替え”は一方通行だと思っているんです。アンビバレントと向き合えるのはそういうことなんだなと思います。それを一つ一つ閉じる・閉じられるということをちゃんと考えるには“誠実性”や“想像力”が大事ですよね。これはテクノロジーにも転用可能だと思いますね。もう僕たちはツイッターや2ちゃんねるのない世界には戻れないですよね。

 

―正直、このインタビューでそこまで深い話が聞けるとは思ってもいませんでした。。。
もっと深く聞きたいところですが、インタビューを続けたいと思います。インターンとか採用における課題はありますか?

比嘉さん:課題じゃない所がないんですけど(笑)。短期的には魅力的なアジェンダやコンテンツを並べて、ジョブ型採用をすることが合理的だと世の中では言われています。ただし長い目で見たときには、深い相互理解が必要だと思っています。一緒に続けたいかどうか、とかってなると、やはりお互いの物語を共有しなければいけないんです。分かりやすく言えば、廣瀬さんの中に僕がいて僕の中に廣瀬さんがいる状態って結構幸せなわけですよね。「廣瀬さんだったらこう考えるよな」というのを自分の中に育てられるかですね。それは対会社でもある種一緒だと思うんです。
“自分の中にJTがあるしJTの中に自分がいる”という状態にするのは結構時間がかかるし、手法を丁寧にしなければ、一歩間違えると洗脳になってしまう。だからそこの線引きは難しいですね。

 

 

―そもそも今、御社にとって厳しい時代の中にいるということを分かってもらった上で来てもらうというステップを大事にされている。
だからこそ、そこが課題だと思われているんですね。

廣瀬さん:はい。就職をすると、単純に商品を売るという以上にひとりひとりが社や商品・サービスについて考える機会がきっと多くなります。これは入社後に実感した話ですが、小学校の教科書には「喫煙したら体にこんなに悪い」という内容が書いてあります。そうすると子供を持つ社員は、「パパの仕事なに?」「ママの仕事なに?」と言われるとグッと考えるんですよ。自分が就職した後に、“自分の会社の意義“とか“なぜ自分がここで働いているのか“を、うちの会社の社員ほど考える機会が多い他社はないと思います。そうすると表層的な答えでは生き続けられないし、一人一人が何かしら哲学・実践術のようなものを持たないと働くことが辛くなると思います。そういう意味で、社員になる前に、”JT”と”わたし”、“社会”の繋がりについて自主的に想像力を働かせる思考機会・体験を用意することが、就職のミスマッチを減ずるうえで重要な観点であると考えています。

 

比嘉さん:そこの解釈の仕方が大切だと思っています。主語をJTにしすぎると、よくある「経営戦略を考えてみましょう」みたいになってしまう。だったらJTっぽいことを考えてもらおうということで、違うテーマにずらしてみたりしています。例えば、“物語における脇役ってなんなんだろう”とかですね。実はそれがJTっぽいんです。迂回しながらですが、山登りのように頂上に近づいてくる感じです。ただ一方で、それは僕たちの勝手な妄想でもあります。平たく言えば、参加した人がどう感じるのかはなかなかPDCAが回らないんですよね。その時に仮説でしか動けない中で、やり過ぎると洗脳になるし、やらなさ過ぎるとコンテンツになるという泳ぎですよね。そして、その泳ぎは誰かのためになっているのか。参加してくれた人に何かお土産を渡せたのかですよね。

 

―学生が御社に持つイメージの今と、これからどうなってほしいとかはありますか?

廣瀬さん:皆さん、どのようなイメージをお持ちですか?堅くて安定している、時代遅れというイメージを持っているのではないかと思います。
 

比嘉さん:(人事部採用チームとしては)そのイメージを変えようとは思っていないです。変わるとしたら皆さんからそうじゃない見方を持ってもらえた時しか無理ですね。でも変わるための仕込みは沢山します。例えば、インターンのテーマも経営戦略ではなく“遊びをつくりましょう“にしたりだとか。「なんでJTがこんなことをやっているんだろう」と興味を持ってくれた人が掘れるようにしておくことがすごく大事なんです。
 

廣瀬さん: “いつかいい出会いをしましょうね”という感じです。日々その準備をしています。

 

―ありがとうございます。
では、ここからeyaについて聞いていきたいと思います。今回、参加された意義やメリットをどうお考えですか?

比嘉さん:土地によって物の見方や体の動かし方・感情の持ち方が変わるじゃないですか。それを特に京都という土地で営む方々と、何か共に時間を過ごせたらいいなと思っていました。そもそも京都で日々を一生懸命に生きている人はどんな人なんだろうということに興味を持ちました。僕は特に東京の大学に行っていたので分からなくて。

 

―メンターとしてご参加する中で、期待されていることはありますか?

比嘉さん:人に何か教えられるほど出来た人間ではないです。変な意味ではなく、僕はまだまだ修行すべきことが沢山あると思っているので、一緒に修行したいなとか、皆さんから学ばせていただきたいなと思っています。Younger is betterなので。

 

廣瀬さん:時間軸が長いプロジェクトになるので、対話量が多くなります。“寄り添いあって向かい合ってお互いのことを知り合う”という意味ではいい環境だなと思います。それこそengawaに腰掛けてお茶飲んで「美味しいね」からはじまる関係みたいな。

 

―今回はいろいろな企業の方と人を育てる取り組みになりますが、それに対して刺激とか期待する効果はありますか?

廣瀬さん:私は、比嘉がJTの仲間になり、会社の可能性が広がったと感じています。それと同じように、内外関係なく“この会社と知り合えたから可能性が広がりそう”っていうのはあると思います。それぞれ異なる色合いを持った組織が一つの方向性(こと)に向き合っている状態で出会うからこそ、互いをよく知れるだろうし、学生さんとだけではなく、他社さんとも何か面白いことが出来たらいいなと思います。

 

―では、メンターとしてeyaの学生に向けて、一言お願いします。

廣瀬さん:窮屈にならないで欲しいなと思っています。人から「あの会社の方がいいよね」と色々言われたり、周囲の目を気にすることもあると思いますが、シンプルに自分の目で見て感じたものをインプットとし、自分らしい表現ができる人であってほしいなと思います。それは学生さんたちだけでなくて、私もそう在りたいです。おたがい、自分が誇りを感じられる選択をしていきましょう!

 

比嘉さん:それで言うと“どこからでもどこまででもいける”という72歳のお爺さんから教えてもらった言葉を贈りたいと思います。

 

 

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#インタビュー

【新連載!】スタートアップに聞いてみた(株)Stroly 高橋真知Co-CEO

今回から始まりました。新連載、スタートアップに聞いてみた。実は京都BACはスタートアップ企業との取り組みも多く、面白い視点でのサービス・プロダクト展開をされている企業の紹介やいまだから聞きたいことなど、いろいろお話してみる連載にしていきます。 第一回目は在京都の地図のイノベーションを起こす(株)StrolyからCo-CEOの高橋真知さんのインタビューです。 インタビュアーは京都BACの片山俊大さんでお送りします。   コロナ禍で、インタビューはオンラインにて行いました。笑顔が素敵な高橋Co-CEO。   京都BAC片山(以下、片山):Stroly(ストローリー)は、どのようなサービスを提供しているのでしょうか?    Stroly高橋さん(以下、高橋さん):世界中には、数えきれないほどの“地図”が存在しますよね。京都の地図、パリの地図、カフェマップ、手書きマップ、江戸の古地図、イベントマップ、遊園地マップなどなど、挙げ始めたらキリがない。しかし、それらの地図の多くは、いまだにデジタル化の恩恵を受けておらず、もっともっと地図が持つ魅力を活用・拡大することができると思います。 そこでStrolyでは、どんな地図でも誰でも簡単にオンライン上に登録することができ、デジタル化&GPS連動を通じてさまざまなインタラクティブな体験を提供するというプラットフォームを提供しています。これにより、いろんな個性・切り口をもつ地図たちに、デジタル化によるさまざまなメリットをもたらすことができるようになりました。   Strolyウェブサイトより   片山:Strolyは、どのような成り立ちですか?   高橋さん:Strolyとは、Stroll(散歩する)+Story(物語)を掛け合わせた造語です。元々はATRという研究所の社内ベンチャーとして立ち上げ、2016年6月に会社として独立、2度の資金調達を経て、現在創業4年目に入りました。2017年には、日本人唯一のSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト、以下SXSW)のファイナリストに選ばれ、SXSWの公式マップも手掛けております。社員も約半分は女性で1割以上が外国人、Google出身者など、初期の段階からグローバル&ダイバーシティを意識した体制となっております。   編集長註: SXSWとは? 毎年3月にアメリカのテキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベントです。ここでファイナリストに選ばれることはとってもすごいことなんです!   片山:素敵な会社ですね。Strolyのサービス内容をもう少し詳しく教えてください。   高橋さん:Strolyのコンセプトは、“Share the way we see the world”(世界の見え方をシェアしよう)です。本来、同じ街や場所でも、100人いれば100通りの見え方がある。だからこそ、さまざまな視点で描かれた個性的な地図をもっと活用することで、社会をもっと楽しく豊かにすることができる。そのために、世界中に散らばっている地図をデジタル化してシェアする仕組みを提供しています。   Strolyのウェブサイトより。数多くの国から多数のクリエーターが地図を登録している。   地図をストローリーのプラットフォームに登録すると、簡単に位置情報を定義付けることができ、それにより、利用者はスマホ上でGPSと連動することで自分自身の位置情報がいて供されるのはもちろん、さまざまなお店や目的地の情報やクーポン等を提供することができます。つまり、登録したどんな地図であっても、デジタルならではの利便性を活用することができるようになるのです。ちなみに、イラストマップや古地図など、登録した地図の縮尺が大きく歪んでいたとしても、アルゴリズムで計算して位置情報を定義してくれます。   片山:多様性と利便性の両立ですね。   高橋さん:今では、世界50か国以上からさまざまな個性的な地図が投稿されています。たとえば、「ベトナムのサステナブルファッションに関する地図」とか「カリブ海の豊かさに関する地図」など、切り口がかなり独特・個性的な地図もあります。地図というものは、それぞれの国や人特有の文化を映し出す鏡と言えますし、それがシェアされることによるメリットや面白さは大いにあると思います。   片山:企業との連携などに関してはいかがでしょう?   高橋さん:既に多くの企業と連携をさせていていただいております。不動産デベロッパーと組んだエリアマップ、ゲーム会社とタイアップしたマップ、テレビ番組公式街歩きマップなど、さまざまな切り口の地図をプロデュースしてきました。ロックフェスティバルの公式マップでは、エリア内の屋台情報やトイレ情報などの必要情報をオンタイムで提供しました。 街を楽しみながらエンタテインメントや便利情報を提供することで、自然な流れで消費者の行動喚起、販売促進へとつなげることも可能です。   実際に登録されているタイアップ地図の一例。京都の世界観が表現されたオリジナル地図の上に、おすすめスポットがプロットされている。     電通との協業は? 片山:電通ともさまざまな連携を行っていますね?   高橋さん:ここ京都では、engawa Kyotoのイベントで登壇させていただいたり、Royal College of Art(以下、RCA)のアートシンキングのプログラムに参加させていただいたり、クロステックマネジメントとのコラボ企画を推進したりと、さまざまな連携をさせていただいています。また、電通本社を通じて、クライアント企業との連携等も進めております。   RCAを招いて行われたInnovation Masterclass in Kyotoの様子   編集長註: RCAを招いて実施したInnovation Masterclass in Kyotoの内容はこちらから! 世界が認めるフレームワークを使って未来の本質課題を開拓するワークショップレポート  前編   後編     気になる新型コロナの影響と新しい取り組みとは 片山:コロナ禍で世界は大きく変わりました。Strolyには影響ありますか?   高橋さん:もちろん影響はあります。そもそも人が家に閉じこもっていますからね(笑)。しかし、私たちは悲観していません。そもそもStrolyは、デジタルプラットフォームですから。これからは、Strolyにとって2つのチャンスがあると思います。1つ目が「ローカルの再発見」、2つ目が「バーチャル散歩・旅行」です。   片山:「ローカルの再発見」とは何でしょう?   高橋さん:今回のコロナ禍で、人々は、“自宅の半径〇〇m以内”といったような、ローカルの範囲内で生活することを強いられています。そして、地元のスーパーに行き、地元のレストランでテイクアウトし、地元の公園で息抜きをする。その際、地元に関するいろんな情報が必要になると思います。例えば、スーパーの混雑具合を知りたいだとか、テイクアウトを始めたレストランのメニューや時間を知りたいだとか、そういったさまざまな“ローカルの情報”に関するニーズなどです。そういったニーズに対応したマップを、これから多く手掛けていきたいと思います。これからますます“地元愛”が高まると思いますから。   片山:「バーチャル散歩・旅行」とは何でしょう?   高橋さん:これからは、“リアル”な散歩・旅行に加え、“バーチャル”な散歩・旅行も、普通に行われるようになると思います。バーチャル空間を訪れて散歩し、そこで買い物をし、人と出会う。さまざまなプラットフォームを通じて、そういった行動が急増しています。そういった、バーチャル散歩・旅行に対応した、オンライン上だけでも十分に楽しめ活用できる地図サービスを積極的に提供したいと思います。 残念ながら中止となってしまいましたが、先日、SXSW 2020のイベント周辺マップを企画プロデュースしました。元々は、Stroly上のマップがリアル空間と連動するよう設計されていましたが、そもそもリアルが中止になってしまったので、方針転換して、バーチャルのみで楽しめるマップを提供しました。今後は、オンライン上で音楽イベントを行ったり、物販を行ったりするなど、オンライン上ででも盛り上げていければと思います。また、そのマップ自体、アーティスト田中 紳次郎さんオリジナル制作の、アート作品なのです。“デジタル&インタラクティブな機能をもつ地図”のアート作品は、人類史上初だと思います。(笑)   アーティスト田中 紳次郎さんオリジナル制作によるバーチャルSXSW2020の地図。会場とイベントが地図上にプロットされている。   同じオースティンの地図でもNight Map(夜を楽しむ地図)、Music Map(音楽イベントの地図)などバリエーションから選べ、同じエリアでも違うクリエーター、違うスポットが紹介されている   片山:夢が広がりますね。最後に、Strolyの未来ビジョンについてお聞かせください。   高橋さん:私たちは、起業当初からずっとグローバルに照準を合わせてサービスを展開してきました。しかし、それでもなお、これまでは国内の比重が高かったと言わざるを得ません。今回のコロナ禍を受けて、リスク分散の観点も含め、完全なグローバルサービスへとシフトしていこうと考えております。 また、昨今ますます世界全体が分断され混沌としてきていますが、私たちは“Share the way we see the world”(世界の見え方をシェアしよう)というコンセプトを活かし、さまざまな文化シェアし、それを発見し楽しむことで、世界平和へ一歩でも繋がればと想っています。   片山:本日は素敵なお話しありがとうございました。   高橋さん:こちらこそありがとうございました!   編集長後記 地図という機能が求められる情報にアートを掛け合わせたデジタルイノベーションという素晴らしいアイデアを事業化されているStrolyさん。コロナ禍で人が外に出ないという“地図”には厳しい状況の中、それを逆手にとったあっぱれな新サービスに転換されました。そんなStrolyさんのさらなる快進撃に今後も大注目です!    

#インタビュー

【 engawa young academy 】学生インタビュー

2019年11月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy(以下、eya)。第1期インタビュー、最後に登場するのは、参加学生の皆さん。代表して、最終プログラムの「イノベーション・ビジネスアイデア」プレゼンテーションの優勝チームメンバー(写真の左から)永井さん、寺田さん、藤原さん、射場さん、加藤さん、山下さんにご協力頂きました。   左)インタビュアー) 電通 京都BAC engawa young academy 事務局   湊 康明   ―みなさん、eyaへの参加、またインタビューへのご協力、ありがとうございます。では早速質問ですが、エンガワヤングアカデミーを終えての率直な感想は? 射場さん:開催は月一でしたが、4ヶ月間、日常の中で常に考えてないといけないので、ずっとどこかで負荷がかかっている状態だったと思います。一方で普段の1dayインターンは会うだけですが、eyaは日常の中で考える。それがむしろリアルで、いい勉強になったと思います。日々をどう過ごすかを考えなければならないインターンシップだったので、それはすごく勉強になったと思います。   加藤さん:一番印象に残っているのは、普段関わらない人と4ヶ月という期間、深く関われたことですね。考え方が更新されました。普通にインターンをしていて他学部・他分野の学生と会いますが、4ヶ月話したりというのは、ないですよね。大企業の方々ともプログラム終わって、お話できて。それを4ヶ月通して見ると、色んな影響を人から受けているなと感じました。僕の周りは理系が多いので、言葉遣いも違うし、指摘される言葉で自分の見え方みたいなものが全然違うと気づき、ハッとさせられることがありました。   ―参加メンバーのダイバーシティーがあって、勉強になったってことだよね。では、印象に残っているプログラムを教えてください。 チームクリエイト:  eya期間中のグループメンバーを、学生自身に決めてもらうプログラム メンタードラフト:  メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名する。 ディベート(知的大運動会):  さまざまなテーマやお題に対してチーム対抗でディベート。投票で勝敗を決める。 イノベーション・アイデアプレゼン:  自グループのメンター企業のアセットを軸に、複数企業のアセットを組み合わせたアイデアをプレゼン。   寺田さん:チームクリエイトやメンタードラフトが印象に残っています。私はビジネスやインターンに遠いところで生きていたので、あまり誰かの言葉を評価したり、「この人とチームを作りたい」とか考える機会がなかったんです。(チームクリエイトの時)私は結構受け身で動いてしまったから、みんなが「この人とチームを組みたい」「こうすればチームを作れる」という発想になっているのをみて、「ここでこんな風に動けるんだ」と思っていました。   永井さん:メンタードラフトとイノベーション・アイデアプレゼンが印象に残っています。メンタードラフトは学生だけじゃなくて、社会人であるメンターの方も試されている感覚と、それに対する緊張感があったことが印象的でした。アイデアプレゼンに関しては、 “前提とか志向性の違う6人で1つのものを作ること”や“そもそもの枠組みを十年後から考える”とか“現代では出来ないぶっ飛んだアイデアがいい”とかが、普通のビジネスプランとは違うなと思いました。複数企業と関わって、いかにシナジー生み出せるのかを考えたのも、貴重な体験だったと思います。   ―ここengawa KYOTOのテーマが企業と企業を掛け合わせようというのがテーマだったから個人的に嬉しいです。他のメンバーの意見も聞きたいのですが、チームメンバーやメンターを自分で選ぶ、という仕組みはどうでしたか?   全体での自己紹介後、メンバーを選ぶチームクリエイトへ   山下さん:自分でチームを選ぶことで、得られる責任感があると思います。もし最初から決められたチームならば、ここまでやる気は出なかったと思うんです。今回のシステムだったら(相手に)指名されて(チームを)作るわけです。指名されると嬉しい訳で、自分を指名してくれた人々とチームを組むとなると、求められている自分を出さなきゃと思うと思うんです。皆、僕の思っていた人間像と全然違ったんですけど(笑)、結果何が大事かというと“自分が初めて組んだチームで距離感を図って、うまいぐらいに立ち回ってチームを運営する”ことだと思います。 メンターを自分で選ぶというのは、どこの企業か最初知らないと、本当に分からないものだというゲーム感覚のワクワク感がすごかったですね。誰を選んでも問題ない中であえてその人を指名するというのは、僕の中では小さい頃によくやっていたような大人に対するストレートな感じと似ていて、久々で楽しかったです。   藤原さん:他社のインターンシップに参加したことがいくつかあるんですが、やはり自分でチームやメンターを選ぶのはeyaでしか経験したことがないですし、仕組みとして面白いなと思いました。今後活動していくメンバーを自分で設計を立てられることにワクワクしました。   ―大人の真剣なところも見せる、というのも狙いの一つでした。では、複数の企業と関われる、という仕組みはどうでしたか? 射場さん:すごく面白かったと思います。複数の異業種企業の共通点と違う点を、同時に対比できたと思います。メーカーと広告会社が、意外と同じことをしていたり、同じ方向を見ていることが話の中で見えてきました。その次の瞬間には、メンター同士でピリッとした瞬間が見られました。   ―ピリっとした感覚とは? 射場さん:前に言ったことと違うことを次の人が言う時に、真っ向からぶつからないように言葉を選んでいる感じがすごくリアルでした。そういうのは基本的に隠すじゃないですか(笑)違う部分と似ている部分がそれぞれあって組織体ができているということを感じました。同じ場所に会社の中でも優秀な方が集まっているからこそ、社会人の方にもプレッシャーがあった気もしていて、それを感じられたのは貴重な経験だったと思います。   永井さん:6チームがあって、それぞれメンターによってチームの色があったのではないかと思います。その各企業の風土や特性がチームに反映されていたのは、複数企業だからこそだったのではないかと思います。   ―皆さんに、こちらの想定より深いところを見られていたんですね。。。では、エンガワヤングアカデミー、他のインターンシップと違うと感じられましたか? 藤原さん:違いました。学生の視点で言えば、インターンシップで短くて1day・長くて1〜2週間だと思うんですが、4ヶ月ずっと同じチームで走り続けるのは他ではない経験だったと思います。アイデアプレゼンだと、他のインターンシップだと会社のプロダクトにまつわる新規ビジネス立案が多いんです。それに対し、枠にとらわれず“10年後こういう社会がくる”というのを考えて、そこから課題を掘り下げる。既得権益なしで自由に思考していくのが、他のインターンシップではできない経験だと思います。ここでは、最後の発表でもそれぞれの班の個性がとても出ていたように、多様な方向に自由に考えてアイデアを練られた点が違うと感じました。   複数企業のアセットを組み合わせたイノベーション・アイデアをプレゼン     加藤さん:藤原くんに付随してですが、大企業のアセットを組み合わせるやり方が、デザインできる幅が広かったと思います。業界全体も動かしていけるんだと考えれば、あるべき未来を本当にデザインできるのかまで考えられました。未来に至るプロセスも、抽象論や机上の空論で終わるのではなく現実味があったのは、力のある企業だったからだと思います。   ―確かに。今回の参加企業の強みはそこもいかされてますね。鋭い指摘です。では、次の質問です。プログラムの前と後、自分が変わったなと感じる点はありますか? 山下さん:最初は意識せずに“与えられたプロダクトやテーマに向かってプレゼンするために何が必要か”という目線で生きていたんです。eyaは10年後の課題というお題が与えられていたので、日常の中で出来るだけその材料を集めたくて探していました。それが癖付いたと共に、その視点の大切さに気づきました。eya終了後も日常の中に潜んでいる課題に目を向ける癖がついたと思います。あとは“自分自身が課題になりうることをしていないか”という俯瞰的な視点・アンテナを持ち得たと思います。     ―他の皆さん、アカデミーを通じて得られたもの、学んだことは? 永井さん:eyaを通して、本質は何かを考えるようになりました。例えばディベートでも、ただ相手を言い負かす表面的なものではなく、情理と論理で相手を如何に納得させるのか、や「あぁ確かに」と思ってもらうことが本質だったのだと学びました。ビジネスアイデアに関して本当の意図は、今できそうな商品ではなく、10年後で時は令和で文化の時代に、“社会に対して企業間でどうシナジーを産み、何を成せるのか”を考えるべきだったと思うんです。表面的に現れるものを思考するより“それによって何が生まれるのか”や“その本質は何か”をあらゆる事象において考えるようになったので、それは学びだったと思います。   ディベートプログラムでの議論 加藤さん:結構僕的には、意識の高い学生が集まっていて、メンターの方も年齢層は様々でしたが、ある意味ロールモデルや未来像になるような人が一堂に会し、大きな未来をデザインしようとしている環境だったので、ここが“社会を変えていくホットスポット”だと思いました。 あとは、インターンシップとか学生で出られるビジコンで今まで培ってきたのは、フレームワークの多さ・エビデンスの量などのHOW論が多かったと感じます。eyaでは、それを相対化して壊し、絶対視しなくなったことが学びでした。僕たちはビジネスライクなチームで優勝は遠いと思われていたんです。それが4ヶ月かけて思考してやっていくと、優勝できました。一般的には手法論とかに終始しがちだけど、その上で「何が本質なのか」が議論されていたということですね。   ―次回、参加される学生に対してメッセージをお願いします。 射場さん:面白そうだと思ってくれている人に対しては、ブレることができるプログラムだと伝えたいです。型にはまっている人たちが、自分の型に気づき、違う型もあるということに劣等感を感じ、自分の今の型じゃない部分にも何かあるかもしれないと、ちらっと感じられるような経験になると思います。もちろん自分の型を強く持ち、ガンガン行く人もいるべきだとは思います。ただ逆に、なんとなく自分が出来てしまっているけど、「今のままでいいのか」「もっと輝ける何かがあるかもしれない」と自問自答している人にとっては、別の型に触れることで、自分に対してストレスを感じられる丁度いい環境が出来ていると思うんです。本当にあと一歩みたいな人が一番成長できるような場所になっていると思います。   藤原さん:一番刺激が得られるのは、多くの社会人・社員と話せることだと思います。どのインターンシップより、社会人の方々が多く参加されていることは間違いないと思います。学生より社会人の方が多いかも、と感じたほどです。僕なりの意見として、人間として成熟するために一番手っ取り早いのが、自分より年上の人と話す方法だと思っています。自分より何年も多く生きているだけ、経験や修羅場を乗り越えてきているので、そういう方から得られる刺激は自分を成長させてくれます。そういう経験をしたい人や新しい刺激を受けたい人にいいと思います。   寺田さん:集まった学生が今年みたいな人々であれば、何かしら特化した人たちが集まると思うんです。自分にないものを持っている学生や明らかに接したことがない人が沢山いる環境で、自分がしてきたことや出来ることをどう活かせるかを考えることがすごく多いんです。その中で、自分として周りの影響を受けつつ、自分の居場所を探していくことをしてほしいと思います。「あの人はこれがすごく出来る」となった時に、「自分のしてきたことは何だったのか」「私がこの場所で果たせる役割は何なのか」を自問自答したことがありました。でも、何かしらここにいる意味はあると考えた時に、「あの人と同じことをする必要はないから、自分だからこそ出来ることを4ヶ月あれば得られる」と思ったんです。なので、そこを改めて考える機会にしてほしいと思います。   プログラムを終えた皆さんと、チームメンターを務めた積水ハウスの皆さん    

#インタビュー

【 engawa young academy 】 イノベーターインタビュー 後編

engawa young academy(以下、eya)では、各企業の最前線で新しいフィールドを切り拓いている皆さんに、プログラム「イノベーター見本市」に参加いただきました。新規事業のことやeyaに参加しての感想などインタビューしましたので、ご紹介します。 後編は、みずほフィナンシャルグループ、日本たばこ産業、電通の皆さんです。 (前編は、 こちら )   − みずほフィナンシャルグループ 渋谷さん −   みずほ証券 投資銀行本部 テレコム・メディア・テクノロジーセンター ディレクター 渋谷 直毅さん   ―渋谷さんが関わっている、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)での新たな事業領域や取り組みを教えてください。 今最も注力しているのは、日本全体の命題である“新しい産業・経済をどうやってつくるか”について考え、実行することです。例えば、ベンチャー企業が、特に高成長を志向する赤字のベンチャー企業が、どのように成長のための資金を調達するのか。銀行サイドからみれば、どのようにして融資するか、証券/投資銀行サイドからみれば、どのように投資家と結び付けるか、といったことです。銀行でいえば、融資は実行したら当然返ってこないといけないのですが、赤字のベンチャー企業でどのようにそれを確かなものにするのか、従来の銀行ロジックとは異なるどのようなブレイクスルーで可能にしていくのかということ。証券/投資銀行でいえば、赤字であっても、ビジネスモデル等から事業の継続性の上で問題なく、むしろ成長性をみれば投資対象としていかに魅力的であるかという点を投資家に対して訴求することや、これまで日本国内の投資家としか接触していなかったところを海外の投資家とも行う、などといったこと。そしてこれらベンチャー企業に対して多種多様な金融サービスを提供することこそが、みずほFGにおける新しい取り組みですね。特に私はインターネットテクノロジー/メディア系の企業を多く担当しているのでその文脈のど真ん中にいますが、グループ全体としても、これからの日本を担う、日本の産業や経済を作っていく企業と積極的にお取引させていただいています。従来の金融の考え方では出来なかったことを、逆転の発想なども用いて取り組んでいます。   ―企業のスタンスがそこまで変化しているんですね。本日、eyaの学生にそういった取り組みをお話して頂きましたが、印象に残ったことを教えてください。 私は経済・ビジネスを中心にお話しさせていただいたのですが、「文化的側面はどう考えているのか」という質問があったのが印象的でした。世の中が経済的側面だけではなく、文化的側面からも色濃く成り立っていると理解している成熟した学生がいるのだなと強く印象に残りました。あと、皆さん視座が高く頼もしいなと思いましたね。受け身ではなく能動的に、この機会を使ってちゃんと吸収したいと思っている方が多いと思いました。せっかく各社から人を引っ張ってきている機会なので、これからの活動の参考にしたいという思いを強く感じられましたね。こういう意欲的な若者が多いのであれば、もっとこの国は良くなるように思います。   ―では、学生に向けてのメッセージをお願いします。 こういう場で色々な人と会ってディスカッションして色々なインプットを受けて、かつアウトプットする場も提供されていますので、その経験そのものが価値になりますし、それが自分自身を高めていくことにつながると思います。社会人になっても、その連続です。これからも、受け身ではなく、能動的に社会に対してどのようにコミットメントしていくのか、是非考えていただきたいです。 みずほFGに関していえば、母体となっているのが、日本興業銀行・第一勧業銀行・富士銀行などなのですが、日本興業銀行は、日本でどう産業を起こすか・経済を強くしていくかということをミッションとして出来た銀行であり、第一勧業銀行(第一銀行)を作った渋沢栄一は、今でも日本の歴史上最も多くの企業を設立したと言われているまさにアントレプレナーの代表ですね。みずほFGは、そのアントレプレナーシップを強く持っている企業をサポートしたいと思っている金融機関であると思います。もちろん、今日の日本の産業・経済の根幹を担う企業とのお取引が主体でもあります。ポジション・役割は、働き方によって様々なものがあり、手を挙げたら、色々なことが出来る機会を得られます。もしご関心があれば検討いただければと思います。     − 日本たばこ産業 神谷さん −   日本たばこ産業 たばこ事業本部 事業企画室 採用研修チーム 次長 神谷 なつ美さん   ―神谷さんが関わっている、日本たばこ産業(以下JT)での新たな事業領域や取り組みを教えてください。 今は、採用や若手の成長支援に関わっていますが、会社のキャリアの中で新規事業で、JTが出資しているベンチャー企業で子ども向けのムック本の編集長や子供が家で楽しむ工作キットの販売をしていました。   ―子ども向けのムック本や工作キットは、どのような意図・文脈でやられたのですか? 私は今、採用業務が2回目なんですね。1回目の採用業務の時に、学生と会う中で「将来こうなってしまうよね」「その中で何ができるか」と言って、自分たちで世の中を作れる最初の一歩のはずなのに、閉塞感があるなとモヤモヤしていたんです。その後、産休中の長男と話の中で、赤やピンクが好きっだった長男が「友達がこう言うから青にしようかな」と言っているのを見て「世の中こうであるべきだ」というのは、いつの間にか決められていくのだなと思い、またモヤモヤしていたんです。 その後、産休から復帰した際に、ベンチャー企業へ出向の話が来ました。そこで「何でもいいから新規事業やってみないか」と言われたんです。「Amazonで本を売ろうかな」と思って内容を考えた時に、就活生や自分の子どもに対して女っぽい・男っぽいなどの訳の分からない区切りなど、大人が便宜上分けたものに縛られずにニュートラルに物を見ることを発信すれば変わると考えました。それはJTのコンセプト“人が人らしくあるため”の物の見方にも合致すると思いました。そこで“世の中はいかに面白いか”“いかに色々な物が繋がっているか”を発信する本を作ろうと思ったんです。   ―JTの思想から本へと、コンセプトが繋がってるんですね。本日も学生にそういった取り組みを通じてお話し頂いたと思うのですが、印象に残ったことを教えてください。 面白いと思ったのは「自分の人生を自分のためだけに使ってもいいのか。でもやっぱり他者貢献もしたい。」みたいな話です。実はそれって分けるべきではなくて、“自分の幸せ=隣の人の幸せ”であってほしいし、“人の幸せ=自分も嬉しい”だと思うんです。選択する必要がないことを、一つに絞らないといけないという概念で動かれている方が多いように感じました。自分を信じて自分本位でいても、それが周りを幸せにすることだと分かれば、肩の荷が降りると思います。アカデミア・企業どちらかではなく、これからの時代は両方でいいですよね。   ―では、学生に向けてメッセージをお願いします。 本日の新規事業のところでも話したのですが、“何が新しいのか”も難しいですよね。良い・悪いではなく「自分がベストエフォートを出せるか」というシンプルなことだけを考えると、もっと様々な道が開けると思います。迷った時に「飛びついていいのでしょうか」という質問がよくありますが、それは今までよりもっと面白いことを見つけたということでいいのではないかと思います。自分の奥にある気持ち、なんとなくの違和感にはきちんと立ち止まって、いけると思ったら考えすぎないようにしてほしいです。あとは、大事なことは自分で選べていることを信じて、気楽にやってもらえるといいなと思います。     − 電通 志村さん −    電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 事業共創部 ディレクター 志村 彰洋さん   ―志村さんが関わっている、電通での新たな事業領域や取り組みを教えてください。  一社単独では実現/解決できない強いテーマ、具体的には、ゲノムや宇宙、デジタルセントラルバンクなどの壮大な領域/テーマに対して、N対Nの関係性で共創を誘発し、新しいイニシアティブ(景色)を創ることを主にやっております。その文脈、またはオポチュニティとも言って良いものに、必要であれば、企業やスタートアップを様々な接続の仕方で繋いでいく、ということをしています。その他、国の事業/スマートシティーのプロデュース、先進技術/システム開発のコンサルティング、イノベーションマネジメント、知財を核とした新規事業開発や国際標準化活動などにも取り組んでいます。 どの取り組みも、中長期的な視点と短期的な収益が求められるタフなものばかりですが、その中でも一番重要な取り組みは、立場や状況を越えて、これらの取り組みを共に推進しようと思って集まって来てくれる仲間を、成功や失敗というつまらない尺度だけではなく、飽きさせないことですね。   ―本日、eyaの学生にそういった取り組みをお話をして頂きましたが、印象に残ったことを教えてください。 率直な感想としては、聞き上手な方が多くて驚きました。コトの経緯を確認する方が多く、結果よりプロセスに拘っている方が多いと感じました。また、経緯の中でも最上流である活動の根源となる「原動力」を確認したいという質問も多く、所謂事業が生起する際のテクニカルタームの質問が少なくて感心しました。 一方で、今回、合同で複数企業が取り組んでいる特徴を活かして、例えば、イノベーター同士の発言を比較して矛盾を突いたり、聞き触りの良い発言を真っ向から否定してくる意見も期待していたので(それぐらいのパワーが学生さんの中に眠っているように直感では感じました)、そのあたりは自分としても何でも言ってもらいやすい雰囲気の醸成とengawaの部屋構成の物理的突破が出来ていなかったなと、反省しています。   ―では、学生に向けてのメッセージをお願いします。 VUCAの時代に、答えがない/正解がないのは当たり前なのですが、それゆえ、イノベーターと呼ばれるような納得感の高い話を出来る人の意見に、耳を傾け過ぎる傾向があると思っています。(ただでさえ、成功体験を多く語りがちな)特定のイノベーターへの陶酔は厳禁だと思っていて、常に「自分という考え方」を持っている必要があると思います。新しいことを生み出す際に、一定の経験やコツは活かせると思うのですが、まさに新しい事業な訳ですから、与件も前提も違うその新しい考えと、その考えを検討している当事者の信念が何よりも重要です。ここにこうして私の意見として記載してあることの前提すら疑って欲しいです。 また、もう1つのメッセージとして、これから一人で社会で戦っていくことを考えている方もいるかもしれませんが、もし何かしらの企業やチームに属して社会で戦おうとするなら、目の前にいる企業の人員で使えそうな人がいるか、採用活動等で横にいる同年代の仲間で頼りになる人はいないかという、個ではなく「群のヒューマンリソースの発揮の仕方」は常に検討しておいた方が良いと思います。関係性によって物事が進んでいくのであれば、採用やビジネスでも、その関係性自体が採用されるのが一番理想であるはずです。中途採用やM&Aを考えればイメージしやすいですよね。複数企業合同の今回の取り組みが、その最初のきっかけになれば幸いです。