広告づくりの手法をモノづくりに。クラウドファンディングCAMPFIREコラボ「香時計プロジェクト」
#プログラム/セミナー
今回は、京都BACの実験的な取り組み“香時計プロジェクト”をご紹介いたします。
DENTSU JAM!× X-tech Management × CAMPFIREのモデルケースとして実施したプロジェクトで商品企画、プロダクトデザイン、プロトタイプ制作、クラウドファンディングの設計・実施、そして展示までを一気通貫でプロデュースした、京都BAC初のトライアルとなります。
※ウルトラファクトリーと電通のコラボレーション事例はこちらの記事をご参照ください。
香時計は、すべてがデジタル化され、わかりやすく簡便化されている現代人のライフスタイルにゆとりをもたらす、“自分の時間をデザインする時計”として企画されました。
時間に振り回されるのではなく、じっくり自分と向き合う、特別な1時間を味わうためのプロダクトです。
一日の時間や気持ちにあわせてデザイン・香り違いの4種類のバリエーションを用意
時間を表現するために“灰が落ちる”というモーションにこだわった
プロデュースを担当した“Product Design Unitひとすじ”はアートディレクター中尾香那とクリエーティブテクノロジスト三上美里の2人からなるユニットです。
“Product Design Unitひとすじ”のお二人。アートディレクター中尾香那(左)とクリエーティブテクノロジスト三上美里(右)
彼女たちのもともとの素質としてのデザインセンスに加え、広告制作を通じて培った社会を切り取る目、それを手に取り触れるモノとして落とし込むという実験的なプロセスを経て、見た目に美しく、存在として新しい“香時計”というコンセプトが誕生しました。
お香としての実現性と美しさを兼ね備えるデザインにたどり着くまで、多数のデザイン案にて検討を重ねました
繊細な作業でプロトタイピングの方針を決めていく作業。実際に手を動かす中からの気付きも生まれます。
クラウドファンディングの目的は資金調達・達成ではなく支援者数。支援者の数を募ることで実現に向けた支援の輪を広げていきたいと考えています。
締め切りは1月末。引き続きご支援受付中です。
https://camp-fire.jp/projects/view/210144
なおプロトタイプ現物は、βooster studio by CAMPFIRE(渋谷パルコ1F)にて展示中。(〜1/31)
今後の商品化に向け、香時計の製造販売にご協力いただけるパートナー企業さまも、募集中です。
“Product Design Unitひとすじ“のお二人に話を聞きました
【アートディレクター 中尾香那さん】
―そもそもなぜ”香時計”をつくることにしたのでしょうか?
中尾:何を作るか考える起点として、ただ単純にかわいいものや美しいものというだけでなく、電通が取り組む実験的なモノづくりという意味を考えて、世の中にメッセージを伝えられるものが良かった。その中で、京都という土地の特色である“クラフトマンシップ”や“伝統”を取り入れたいという思いで議論を重ね、香時計に行きつきました。
―他にどういうアイデアがでましたか?
お香のほかには仏具の”おりん”や日本人形をアップデートするというアイデアなどがありました。今回のプロジェクトが、ウルトラファクトリーとのラピッドプロトタイピングのモデルケース作りを目的としていたため、プロトタイプの必要性が高いプロダクトかどうか、自分たちの生活課題とのマッチングという観点で煮詰め、現状のアイデアに落ちつきました。
―中尾さん的な、こだわりのポイントを教えてください
前述のとおり、コンセプトに重きを置き、説明が必要なプロダクトになることはわかっていたので、初見のインパクトとして「え?なにこれ?お香?」という一言を引き出すデザインというものを意識しました。
広告でいうところの「フック」に当たるポイントです。広告の手法を生かしたという点でもあります。
「吊るす」というデザインも「時間が流れる」ことを落ちていく灰で表現したかったからです。構造的・デザイン的に難しくはありますが、こだわっているポイントです。
実際に製品化していくためには、これから製造方法などを精査して、改めて検証が必要になるのですが、応援くださったみなさまの期待に答えるためにも、できる限り、いい形で世に出せるよう、頑張っていきたいと思っています。
―電通がモノづくりをする意味とはなんだと考えますか?
クライアントワークとしての電通の役割は、モノができあがってからという流れになります。もう少し前の段階からコミュニケーションを意識することで、メッセージとデザインが首尾一貫したプロダクトづくりができると思っています。このチームでは今後、モノづくりのプロセスのリデザインを目指していきたいと思っています。
―では最後に、“Product Design Unitひとすじ“として今後の進め方は?
前述のようなモノづくりプロセスのリデザインに加え、広告作りの経験を活かした、直感的に心を動かすような、エモーショナルなモノづくりを目指しています。
私たちのモノづくりの考え方に共感くださり、ご一緒させていただけるパートナー企業様を募集中です!
【クリエーティブテクノロジスト 三上美里さん】
―そもそも香時計にしたのはなぜですか?
マーケットインでゴールを決めると既存プロダクトと差別化できないと考え、作り手である私たちのアイデンティティを反映し、すなおに欲しいと思えるものをブレストしました。論理的なものが好きな私と、伝統工芸が好きな中尾さんの両極の意見が合致したところが香時計でした。
―自分たちが欲しいと思えるもの、とありましたが、消費者目線で香時計でなにを解決できると思いましたか?
消費者代表としてブレストを行なっていたので、効率化のためのデジタルツールに囲まれている自分たちが一番、時間に追われて余白がなくなっていることに気付き、それを解決できるものだと思いました。
長い間、人の生活に寄り添って淘汰されなかったお香をいまの生活に取り込むことで、人の本質を大切にできる=余白のなさを解決できると思いました。
―作る中でこだわったポイントや、苦労したポイントはどこですか?
一貫して“電通としてのモノづくり“の意味を突き詰めました。その意味を大事にしながら、今後の”Product Design Unitひとすじ”の展開を見据えたうえでのコンセプトやデザインに乗せていくというところはこだわりでもあり、苦労したポイントでもあります。
また、私個人的に、古くからあるものが無条件に今も必要とは限らないと思っています。ただ、長い時間使われ続け、残り続けてきたと理由つまり価値があると思います。一方、便利になる世の中で、進化が急速すぎてひずみが生まれてきている現代に対して、長く残り続けてきたものがもつ理由や価値にヒントをもらうことができれば、骨太なコンセプトに昇華できるはずなので、そこからブレないことは常に意識しました。
ー今後、“Product Design Unitひとすじ”としてどう進めたいですか?
人の心を動かす広告のノウハウを持ってものづくりをするからには、カテゴリー全体をワンランク上げられるような象徴的なプロダクトを作っていきたいと思っています。そういう象徴的なものを作りたいと思ったときにご相談いただけるようなチームになりたいです。