広告づくりの手法をモノづくりに。クラウドファンディングCAMPFIREコラボ「香時計プロジェクト」

#プログラム/セミナー

今回は、京都BACの実験的な取り組み“香時計プロジェクト”をご紹介いたします。

 

DENTSU JAM!× X-tech Management × CAMPFIREのモデルケースとして実施したプロジェクトで商品企画、プロダクトデザイン、プロトタイプ制作、クラウドファンディングの設計・実施、そして展示までを一気通貫でプロデュースした、京都BAC初のトライアルとなります。
※ウルトラファクトリーと電通のコラボレーション事例はこちらの記事をご参照ください。

 

香時計は、すべてがデジタル化され、わかりやすく簡便化されている現代人のライフスタイルにゆとりをもたらす、“自分の時間をデザインする時計”として企画されました。
時間に振り回されるのではなく、じっくり自分と向き合う、特別な1時間を味わうためのプロダクトです。

 

一日の時間や気持ちにあわせてデザイン・香り違いの4種類のバリエーションを用意

 
時間を表現するために“灰が落ちる”というモーションにこだわった

 

プロデュースを担当した“Product Design Unitひとすじ”はアートディレクター中尾香那クリエーティブテクノロジスト三上美里の2人からなるユニットです。

 “Product Design Unitひとすじ”のお二人。アートディレクター中尾香那(左)とクリエーティブテクノロジスト三上美里(右)

 

彼女たちのもともとの素質としてのデザインセンスに加え、広告制作を通じて培った社会を切り取る目、それを手に取り触れるモノとして落とし込むという実験的なプロセスを経て、見た目に美しく、存在として新しい“香時計”というコンセプトが誕生しました。

 

 お香としての実現性と美しさを兼ね備えるデザインにたどり着くまで、多数のデザイン案にて検討を重ねました

 


繊細な作業でプロトタイピングの方針を決めていく作業。実際に手を動かす中からの気付きも生まれます。

 

クラウドファンディングの目的は資金調達・達成ではなく支援者数。支援者の数を募ることで実現に向けた支援の輪を広げていきたいと考えています。
締め切りは1月末。引き続きご支援受付中です。
https://camp-fire.jp/projects/view/210144

 

なおプロトタイプ現物は、βooster studio by CAMPFIRE(渋谷パルコ1F)にて展示中。(〜1/31)
今後の商品化に向け、香時計の製造販売にご協力いただけるパートナー企業さまも、募集中です。

 

 

“Product Design Unitひとすじ“のお二人に話を聞きました

【アートディレクター 中尾香那さん】
 


―そもそもなぜ”香時計”をつくることにしたのでしょうか?

中尾:何を作るか考える起点として、ただ単純にかわいいものや美しいものというだけでなく、電通が取り組む実験的なモノづくりという意味を考えて、世の中にメッセージを伝えられるものが良かった。その中で、京都という土地の特色である“クラフトマンシップ”や“伝統”を取り入れたいという思いで議論を重ね、香時計に行きつきました。

 

―他にどういうアイデアがでましたか?

お香のほかには仏具の”おりん”や日本人形をアップデートするというアイデアなどがありました。今回のプロジェクトが、ウルトラファクトリーとのラピッドプロトタイピングのモデルケース作りを目的としていたため、プロトタイプの必要性が高いプロダクトかどうか、自分たちの生活課題とのマッチングという観点で煮詰め、現状のアイデアに落ちつきました。

 

―中尾さん的な、こだわりのポイントを教えてください

前述のとおり、コンセプトに重きを置き、説明が必要なプロダクトになることはわかっていたので、初見のインパクトとして「え?なにこれ?お香?」という一言を引き出すデザインというものを意識しました。

広告でいうところの「フック」に当たるポイントです。広告の手法を生かしたという点でもあります。

「吊るす」というデザインも「時間が流れる」ことを落ちていく灰で表現したかったからです。構造的・デザイン的に難しくはありますが、こだわっているポイントです。

実際に製品化していくためには、これから製造方法などを精査して、改めて検証が必要になるのですが、応援くださったみなさまの期待に答えるためにも、できる限り、いい形で世に出せるよう、頑張っていきたいと思っています。

 

―電通がモノづくりをする意味とはなんだと考えますか?

クライアントワークとしての電通の役割は、モノができあがってからという流れになります。もう少し前の段階からコミュニケーションを意識することで、メッセージとデザインが首尾一貫したプロダクトづくりができると思っています。このチームでは今後、モノづくりのプロセスのリデザインを目指していきたいと思っています。

 

―では最後に、“Product Design Unitひとすじ“として今後の進め方は?

前述のようなモノづくりプロセスのリデザインに加え、広告作りの経験を活かした、直感的に心を動かすような、エモーショナルなモノづくりを目指しています。
私たちのモノづくりの考え方に共感くださり、ご一緒させていただけるパートナー企業様を募集中です!

 

【クリエーティブテクノロジスト 三上美里さん】

 

―そもそも香時計にしたのはなぜですか?

マーケットインでゴールを決めると既存プロダクトと差別化できないと考え、作り手である私たちのアイデンティティを反映し、すなおに欲しいと思えるものをブレストしました。論理的なものが好きな私と、伝統工芸が好きな中尾さんの両極の意見が合致したところが香時計でした。

 

―自分たちが欲しいと思えるもの、とありましたが、消費者目線で香時計でなにを解決できると思いましたか?

消費者代表としてブレストを行なっていたので、効率化のためのデジタルツールに囲まれている自分たちが一番、時間に追われて余白がなくなっていることに気付き、それを解決できるものだと思いました。
長い間、人の生活に寄り添って淘汰されなかったお香をいまの生活に取り込むことで、人の本質を大切にできる=余白のなさを解決できると思いました。

 

―作る中でこだわったポイントや、苦労したポイントはどこですか?

一貫して“電通としてのモノづくり“の意味を突き詰めました。その意味を大事にしながら、今後の”Product Design Unitひとすじ”の展開を見据えたうえでのコンセプトやデザインに乗せていくというところはこだわりでもあり、苦労したポイントでもあります。
また、私個人的に、古くからあるものが無条件に今も必要とは限らないと思っています。ただ、長い時間使われ続け、残り続けてきたと理由つまり価値があると思います。一方、便利になる世の中で、進化が急速すぎてひずみが生まれてきている現代に対して、長く残り続けてきたものがもつ理由や価値にヒントをもらうことができれば、骨太なコンセプトに昇華できるはずなので、そこからブレないことは常に意識しました。

 

ー今後、“Product Design Unitひとすじ”としてどう進めたいですか?
人の心を動かす広告のノウハウを持ってものづくりをするからには、カテゴリー全体をワンランク上げられるような象徴的なプロダクトを作っていきたいと思っています。そういう象徴的なものを作りたいと思ったときにご相談いただけるようなチームになりたいです。


 

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#プログラム/セミナー

電通、ハワイと連携して“Island Innovation Program“やるってよ!

1月31日、“電通、ハワイのコワーキングスペース事業者Jelly Works LLCと提携しengawa KYOTOのサービス・事業拡大”というタイトルのリリースが出ました!   ↑画像クリックでリリースのURLに飛びます   大人気の旅行先ハワイと京都でのコワーキングスペースの連携から始まる新しい取り組みということで、リリースの反響もかなりいただいております。このプログラムの象徴的なイベントとして5月下旬に京都とハワイを繋ぐ”Island Innovation Demo Day”も計画されています。 電通とハワイ?すこし意外とも思える組み合わせでのこの取り組みですが、取り組みの意図や背景、Demo Dayイベントについて総合プロデューサーである京都BACの田中 浩章さんに話を聞いてみました。     IIP統合プロデューサー田中浩章さん   ―そもそもなぜハワイなんですか? ハワイという場所は特別なんです。歴史的に日本人が多く移り住んでいて、いまでもたくさんのラストネームが日本人名のハワイ人が多く住んでいます。だからこそ、日本の独特と言われる企業文化に理解があり、日本のビジネスを受け入れる土壌が整っています。それでいて国としてはアメリカだから、日本のスタートアップから見ると、日本のマーケットを飛び出して北米市場を目指すとっかかりとしてチャレンジしやすい場所だと思います。 そしてハワイのスタートアップも、ルーツから日本市場を目指す企業が多く、ニーズがマッチしたというのが取り組みのきっかけでした。 ―では、“Island Innovation Program“について教えてください。 日本とハワイの共通項としての「島」というところを捉えて、あえてプログラムに“Island”とつけています。 デジタル化によって世界の画一化が進む中、固有の文化と異文化が共存、融合し、個性ある文化を育んできたお互いの「島」という環境に着目しています。歴史のつながりも深い日本とハワイがお互いの未来を構想する、双方の発展を目的とするプロジェクトとして「Island Innovation Project」を推進していきたいと思っています。     IIPの中心となる日米メンバー 左から順に、Jelly Works LLC, PartnerのLeo Rogerさん、電通 京都BAC 田中浩章さん、Jelly Works LLC, CEOのRechung Fujihiraさん、MajiConnection LLC, CEOの岩崎貴帆さん、Purple Mai’a Foundation, DirectorのAlec J.Y. Wagnerさん、電通 京都BAC 石原知一さん ―その中のキックオフ的なイベント“Island Innovation Demo Day”とはなんですか? このプロジェクト全体の象徴的なイベントにしたいと思っています。 具体的にはホノルル市にあるコワーキングスペース”Sand Box”と京都BACが運営主体となっている“engawa KYOTO”をオンラインでつなぎ、社会課題解決を目的にしたハワイのスタートアップが、日本の企業や資本家に向けてピッチをし、その逆に日本のスタートアップが、ハワイの企業、政府機関、投資家といったオーディエンスに向けピッチ行う相互のピッチ大会を予定しています。   Island Innovation Demo Dayイベント概要   ―どんな人に見に来てほしいですか? 日本から北米/世界、ハワイから日本/アジアと行きかう視点があるのでどなたが見てもそれぞれ学びは多いと思います。 具体的には、北米やグローバルへのビジネス展開を検討しているスタートアップ関係者や企業の新規事業担当者、ハワイの土地を北米・世界へ出て行くためのテストベットとしての価値に興味を持たれる方、ハワイローカルの有力企業、政府組織等とのコネクションを作りたい方、さらに、ハワイの島としての課題に取り組む日本市場や日本市場に興味のあるスタートアップについて関心のあるVC、CVC、企業の新規事業担当者といったところでしょうか。   ―では最後にプログラム全体の今後の展望をお聞かせください。 今回のプロジェクトを通して、電通が、日本起点のビジネスを世界に羽ばたかせるサポートができればと考えています。IIPは単にイベントを開催することが目的ではなく、そこに集った企業が世界に羽ばたくことを実質的にサポートしていくべく、プログラム開発も予定しております。 中心的な存在として、IIPのハワイ側でハワイ州がオフィシャルにかなり関わっています。日本では、企業同士の事業共創というトレンドはありますが、事業共創・ビジネスインキュベーションという点で、日本のパブリックセクターは課題解決という視点からは主体的能動的な動きが弱いと感じています。 官が主体になって、国の垣根を越えて、お互いの課題や、それに対する具体策・解決のためのアイデアを共有しあい、新たな未来を描くといった流れが作れても良いのではと考えています。 例えば、京都とハワイ、共通の困りごととして「観光客の多さ」からくる各課題があります。 京都市は“オーバーツーリズム”として捉え、一方ハワイでは“レスポンシブルツーリズム”を促進することでプラスに転換する方法を探っている。事象が同じでも、その捉え方が違うことによって見えてくる課題や解決策が異なる。新たな視野を取り入れることで、目指す未来像をもっと明確に持ち、新しい考え方を取り入れて、よりよい未来をつくるきっかけを作れるのでは、と考えています。 そうすることで、プロジェクトの目的である、互いの未来を考えあい、相互発展を目指すということを具体化していきたいと思います。   最後に、今回のプログラムのサポーターであるCentral Pacific BankのExecutive Chairmanであるポール与那嶺さんからIIPに対する思いを動画にていただきました。ぜひご覧ください!   ハワイでの取り組みやDemo Dayに興味のある方は、Island Innovation Program事務局までお問合せお待ちしております! iip@engawakyoto.com    

#プログラム/セミナー

祈りのかたち“京料理がきた道、器がきた道“ レポート

engawa KYOTOではindigenous innovationと称した、日本着想を源泉とした“ひと・もの・こと”のイノベーションを世界に向けて発信していく試みとして多様なプログラムを不定期開催しています。   一夜限りのアカデミックディナー 令和元年秋、皇位継承の年に新天皇が五穀豊穣を感謝し祈る大嘗祭が執り行われた。時を同じくして事業共創スペースengawa KYOTOでは“京料理がきた道、器がきた道”と称したアカデミックディナーが開催されました。今日わたしたちが食べている料理そして、それをいただくための器、その歴史を通してこれからの私たちの食文化が進むべき道について想いを馳せた一夜限りの晩餐です。   この夜のアカデミックディナーでは、京料理の原型とされる精進料理の名店、嵯峨野にある「さが一久」による精進料理が提供され、参加者は輪島塗の塗師、赤木明登 氏による縄文土器にまで遡っての器のかたちの原点についての解説を聞きつつ、一皿一皿運ばれてくる精進料理を嗜み、盃を酌み交わしていきました。     今回お料理を担当してくださった「さが一久」は、室町時代に一休禅師から直に精進料理の奥義を教えられ、その型を一子相伝で500年に渡り守り続けている名店です。   京都の中心街、烏丸通りに面した全面ガラス張りのengawa KYOTO2階に準備された会場、開放的なモダンな空間にオープンなアイランドキッチン、テーブルの上には輪島塗の本膳が華やかに並べられ、京料理と器をめぐるセミナーが始まりました。   本来であれば座敷にお膳が並べられるところ、今回はテーブル席での会食となったため、ひとりひとりお膳から器を取り上げて料理を食す体験を擬似的に体験してもらおう、という赤木さんの発案で、銘々のお料理一皿づつを輪島塗の御膳にのせて運び、各人が御膳から器を下ろして食べるといったスタイルでの配膳となりました。     神とともに食す、ということ 説によると古来、「食べる」という行為は、自然のエネルギーを身体に取り込む行為として捉えられており、それは自然への畏怖でもあり、不老不死への願いであり、人間の力がおよばぬ大いなる神への祈りであったと言われています。   食事は神饌として神に捧げられ、神様がお召し上がりになられた後、人間はそのお下がりを「いただく」。我々が何気なく日々使っている「いただきます」の語源はそこに遡るとされています。その年の収穫に感謝するとともに、神の御霊を身に体して生命を養うとされる大嘗祭に新嘗祭といった宮中祭祀からも、日本人にとって「食べる」ことは自然の恵みである食べ物を通じ神とつながる行為であったことがうかがえます。   神にささげた神饌を司祭者・参加者がいただく「神人共食」。神人共食を通して、神と人との親密さが生まれ,人は神を敬い守護を受け報謝する。この習わしは人間同士の「共食」の習慣へと発展し、ともに飲食を行うことで人間同士の絆をつよめ,共同体としての心理的安全性を育み社会の発展を促してきました。   輪島塗・塗師 赤木明登さん   この共食は、器の発展にも繋がっていきました。今回使われた輪島塗のお膳、宗和本膳はまさに、ハレやケの宴、共食に使われるものです。ただ現代の生活ではこのようなお膳を用いた共食の機会も減り、本場輪島でも使われる機会が減少していると言われています。赤木さんの工房では、お弟子さんの年季明けを祝う慶事にこのようなお膳が登場しますが、今では輪島でも伝統的な本膳を使う年季明け式を行うのは赤木工房だけとか。神人共食を心身で感じとる機会が日本の隅々で消滅しつつあります。       祈りのかたち 会の中盤には赤木さん秘蔵の縄文土器や平安時代の漆器が次々と登場、その形状のもつ意味についてレクチャーが繰り広げられました。それらの器は各テーブルを回り、参加者はその器を直で触るという貴重な体験が与えられました。     今回赤木さんが解説をした器のうちの一つ、世界最古級の器である縄文土器の陶片は、縄文土器特有の縄模様が施されています。縄文土器の出現により、煮炊きという人類にとって革命的な調理方法が飛躍的に発展しました。このことにより、栄養の吸収が高まり、食べられる食材が増え人類の生存圏が広がっただけでなく、食が文化として昇華していく大きな土台がつくられました。「実は縄文土器に施されている縄模様は、縄ではなく蛇を模したものではないかと言われているのです」と赤木さん。不思議な生き物、蛇は古来より山の神の遣いとして崇められ、その力に授かりたいという祈りが器の意匠にも現れていたのではないかと、赤木さんはつづけます。     世界最古級の器、縄文土器の陶片   次に説明されたのは時代をずっとすすめて、平安時代の漆のお椀。普段我々が使うお椀の底についている高台、この高台も祈りの形だ、と赤木さん。諸説あるなか、天の恵みに対する感謝、神への畏敬、そして神からの下がりもの、としての食物を粗末にしてはいけないという畏怖の念から、高台の形状は進化していったのではないだろうか、と赤木さんは推理されます。この高台付きのお椀も日本人の祈りの形として脈々と現代まで受け継がれてきたのです。         一皿に写しだされる自然の美 その夜のもう一つの主役が「さが一久」当代の津田達也さんによる精進料理。今回お料理をご用意くださった「さが一久」は室町時代一休禅師より教えられた精進料理の型を、500年来一子相伝で今日まで受け継いできた精進料理の老舗です。精進料理は中国に渡り禅宗を学んで帰国した僧侶たちによって日本に持ち込められ、広められました。その中でも曹洞宗の開祖道元は、幾分食いしん坊のご性分で、仏教修行よりも食文化に強く心を惹かれたので、日本に精進料理が広まったのではと、津田さん。精進料理は修行のひとつとして僧侶自らが調理し、その技術を磨き上げていき、の調理技術の世俗への伝播が、日本料理の独特の発展を支えてきました。     この夜の献立は   向    蓮根白和え・水前寺海苔・紅葉麩   汁椀    焼き豆腐・大根煮・三つ葉・粟麩   平椀    塔地湯葉・松茸・柚子・菠薐草   煮しめ    擬製豆腐・利休麩・湯葉・松茸           栗・松葉銀杏・酢蓮根・紅葉麩・筏牛蒡   茶椀    胡麻豆腐・山葵   酢物    松茸・黄湯葉・菠薐草   八寸    湯葉真丈・岩茸・ゆべし   飯    散飯   香物    柴漬・大根漬   酒    奥能登の白菊   精進料理は動物性の素材を一切使うことなく、植物性の素材から滲み出る旨味をベースに火加減と時間をかけてじっくりと味付けを行なっていく、「時には2,3日かけてじっくりと火加減と味付けを吟味していく」こう津田さんは話します。煮しめが盛られた器には、紅葉麩、松葉銀杏が彩られまるで秋の庭がそのまま一皿に写されたようです。日本人がもつ自然界への憧れ、そして畏敬の念が器のうえに再現された世界からも感じとれます。     500年続いてきた精進料理の原型を当代として守りつづけている津田さんは、一歩でも先代の味に近づけているか、日々自身に問いながら料理をつくり続けていると言います。禅宗では食事をいただく際に“五観の偈”という偈文を唱えます。それは自分の口を通していただく多くの命によって我々は生かされていることへの思いを改めるひと時です。   「さが一久」当代 津田達也さん   むすびに 食べる、それは神とつながり自然界の命をいただく感謝の行為、不老不死を祈る気持ち。人間が自然や神ともっと近かった太古から、祈りや願いが込められ脈々と人間の手を介して進化をつづけてきた「料理と器」。その形をめぐるレクチャーを聴きながら、形とは容(かたち)、祈りや願いを込める器であることに気付かせられた夜でした。料理と器の系譜からみるとほんの一瞬の現生において、それらを食し、使う私達は、太古からの祈りや願いを伝えていく媒介にすぎないのではないか、という思いがよぎりました。自然界からの多くの命によって生かされ、脈々と続いてきた太古からの祈りや願いを運ぶ媒介として、私たちはどう生き何を次の世代に残していくのか、この問いはこれからの時代の、そしてindigenous innovationをコンセプトに掲げる事業共創スペースengawa KYOTOの大きなテーマでもあります。    

#プログラム/セミナー

スタートアップのシード期にフォーカスしたイベント「スタートアップジャーニー」を振り返る

今回は、engawa Kyotoで行われた電通グロースハックプロジェクトによる電通共催イベントのレポートを、電通グロースハックチームのシニアコミュニケーションプランナーの大橋誠也氏から寄稿いただきました。 ※写真は登壇者の姜氏、有馬氏、米田氏、山田氏と電通グロースハックプロジェクト一同   関東圏外でスタートアップを始めるのは困難なのか?? 電通・アドウェイズ・Amplitudeの3社主催によるスタートアップにフォーカスしたイベント「スタートアップジャーニー engawa」を開催しました。 東京にヒト・モノ・カネ・情報が集中するトレンドが続くなか、関東圏外でスタートアップを始めるのは困難なのであろうか?また、グロースができる人材はそこには育たないのか?というテーマに向き合った内容のサマリーをお届けいたします。   スタートアップジャーニーengawaは、「電通グロースハックプロジェクト」での活動を通じて様々なフェーズでスタートアップの成長を支援してきた経験のなか、スタートアップが関東発のものが多いのでは課題意識を持ったことがきっかけです。なかでもサービスをグロースさせるスキル、人材がそもそも関東圏外に少ないと感じています。 関東圏外でサービス立ち上げを行うに際し、どのような障壁が存在するのか、課題は解決できるものか?解決可能なのであれば何から着手すべきなのか?こういった疑問を明確にしていきたく今回のイベントを開催する運びとなりました。      会場は京都にある電通のイノベーションオフィス「engawa Kyoto」です。 「engawa Kyoto」は個人、企業を対象とし、そこに集う人々の“縁”をつなぎ、これからの日本の活力となる事業創造支援を行う場となることを目的とし、開設されました。世界トップクラスのアクセラレーターであるPlug and Playも、日本での2つ目の拠点“Plug and Play Kyoto”として入居し、京都という地の持つ発信力を味方につけた今までにない事業共創拠点として期待されています。 起業支援に力を入れている福岡をはじめ、関西のスタートアップと言えばここ数年での投資マネーの調達が活発になりつつあり、大阪を中心に資金調達の段階に達するスタートアップが増えています。 京都ではLINEやマネーフォワードが京都府内にオフィスを開設しており、観光地として人気の高い地の利を活かしたグローバル人材の獲得を行っているなど、立ち上げに際しての環境は整ってきている点も多くあります。   なぜ、京都でスタートアップを始めたのか? 「実際、京都では海外人材も多く、採用に関しては確実に良い環境になっていると言えます。」と、アトモフ株式会社CEOの姜(かん)氏。 同社は開催地である京都のスタートアップであり、「窓型スマートディスプレイ」を開発・提供しています。クラウドファンディングMakuakeでも製品投資状況が直近で5,000万円以上となるなど、業界でも注目度が非常に高いと言えます。   姜氏:登壇席右 では、姜氏はなぜ京都でスタートアップを始めたのでしょう。海外人材の獲得や今後の展開を視野に入れて…というわけではなく理由は実にシンプルでした。前職(任天堂)が京都の企業であったこと、また、関東圏へ出るためのお金も、スタートアップ立ち上げ資金にした方が良いと考えた結果でした。 スタートアップの経営に際し、京都であることが理由で苦労したことなど無いかとお伺いしたのですが、大きく課題だと感じるシーンは少ないとのこと。 Q: スタートアップは京都が熱い? 京都でスタートアップとして活躍されている姜氏も言うように、そこまで大きな課題に直面するかと言うとそうではないのが実際のところなのだろうか? 関東圏外としてフォーカスして見てみると、福岡、大阪や京都は実際には企業活動が活発なであり、冒頭でもあったように京都へは各社が進出しています。 関東にいると「地方」と一括りに捉えてしまいがちですが、京都は伝統を重んじるだけでなく、新たな可能性を創出してくれる地なのだとセッションを通じても感じ取れました。 では、そうした新しい可能にドライブをかける投資側としては関東圏外という点において、何か意識する必要があるのでしょうか? 今回のイベントの共催者であり、全国へ投資を繰り返す株式会社アドウェイズの山田翔氏に質問をしてみました。     A: 投資を行うに際して関東か否かで判断はしたことがない 山田氏:登壇席中方   山田氏からはアトモフ社のほか、開催地京都のスタートアップ企業へ投資を行った経験等から、投資家目線での関東圏内と圏外、という概念に対して考えをお話頂きました。   そもそもどういう視点で投資を判断しているのでしょうか?「投資を判断する際にはやはり、事業内容と見通しは基本的に見ているなかで、スタイルとして細かい点まで口出しをしないようにしている。 すべての投資家がそうとは言えないものの、投資する際には気を遣う点が多々ある。 しかし、その中でその企業がどこを拠点にしているかは今の時代そこまで気にして見ていない。地方であろうが関東であろうがスタートアップが立ち上がることに投資を行うことは問題ではない」   山田氏は投資を行う側として、言うべきことはちゃんと伝えるようにするものの、基本的にはなるべく口を出さないことがほとんどだと言います。前に出過ぎないように気を配りながら進行を見守っており、世間で考える「投資家と投資をされた側のイメージと現実」は結構違うと強調していました。   調達した資金は商品が開発や製造が必要なこともあり、ほとんどが開発費に消えてしまうとのこと。投資元である山田氏へは企業側から説明をすることになりますが、「しっかり事業や会社状況を理解して聞いてくれて応援してくれるので非常に連携を取りやすい」「シード期から経営方針など細かく指示を出されないので精神的にも良い」と姜氏は感じており、両者の関係性が非常に良いことが感じ取れました。   エリア問わず日本が既に陥っているグロースのステップについて 京都のスタートアップ経営者、投資家としての目線からスタートアップを始めるにあたって土地は大きな影響が無いことが分かりました。 とはいえ、京都は東京と比べて企業数も少ないです。サービスグロースに関する知見を有した企業数も同様に少ないと仮定した場合、グローススキルにおいては京都に多少のビハインドは生じてしまうのではないか?この点については米国Amplitude Inc.のジャパンカントリーマネージャー米田氏がコメントしました。同社はThe New York Timesの2019年ユニコーン50社に選出されたグロース支援ツールベンダーで、米国でスタートアップ支援も行っています。   米田氏:登壇席左   「先ずそもそもですが、日本の場合、資金調達後、サービスをグロースさせる際に、いきなり広告へ予算を使う企業様が多くいる印象を持っております。」都内・地方に関係なく、日本と言う市場全体で陥ってしまっている状況である、と米田氏。 関東圏・外での比較ではなく、世界と日本の比較で話を切り出しました。   スタートアップでしっかり検証を行わないとならないのはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)。Amplitude社ではサービスに対するユーザーの反応を図る指標としてリテンションを重視しており、このリテンションを軸にPMFが成されているかを判断しています。「リテンションを基に、サービスに定着してくれているユーザーがどのような行動を取っているのか、逆に離脱してしまう行動とは何か?を計測して明確にし、サービスの開発を続けていくかピボットするか等の判断支援を行っている」   また米田氏は、「PMFを検証しきらないタイミングで調達した資金で広告出稿を行い、一時的な利用ユーザー数の増加を達成しても、ユーザーが定着せず一定以上に成長できないことがある」とPMFの重要性について事例を挙げて説明しました。   スタートアップにとっては、今のサービスの健康状態を把握するツールの導入はコスト面などより避けられがちではあるものの、サービスをユーザーがどう捉えているかを把握することは常に必要なことです。しかし当然資金にも限りがあるため、Amplitude社としてはスタートアップ限定で通常有償のプランを1年間無償で利用できるプログラムを用意し、ツール利用によるPMF検証の促進と、イベントや勉強会などでのノウハウの共有によりスタートアップを支援し始めています。   イベントや勉強会が実際に都内を中心に行われることが多いようですが、米田氏は常に米国Amplitudeでの実績や知見を日本からアクセスし取得しているとのこと。「今やZoomなどのオンライン会議で互いに顔を見ながら会話ができ、その場で即座に資料の共有や同じドキュメントを編集できる環境もある。国を跨いで出来る事が関東と関東圏外だから出来ないということは無い」、とテクノロジーの力で物理的な距離を乗り越えて、自由に働ける可能性を示しました。 地方だから成功しないはなく、誰と連携し何を見ていくかが重要 本イベントで至った結論としては、スタートアップ経営者、投資家、支援者、三者の視点で見ても関東圏外でスタートアップがグロースしていくことは今の時代大きく乗り越えられない障壁ではないということ 一方、シード期として非常に重要なタイミングでその資金を何に使うか、成功に向けて同じ志持った企業と連携していけるかは大切な時期だからこそ慎重に判断すべきであることが改めて明確になりました。特にPMFに向けたプロダクトのデータ分析は自社だけで完結できるケースもありますが、時に必要なツールでスピードや仮説検証精度を上げることも重要であると改めて考えさせられるものがありました。   イベントを通じてこれからも情報発信の機会や、直接皆様と意見を交換する場を設けていく予定ですので、是非次回はより多くの方に気軽に参加頂き、その中からスタートアップが立ち上がることを期待して引き続き活動を続けていきます。   動画:主催者たちからのメッセージ   Author Information: