プロトタイピング前提のハードウェアワークショップ、 ウルトラワークショップに参加してきましたレポ

#プログラム/セミナー

8月19日、日本有数のプロトタイピングファクトリー「ウルトラファクトリー」を擁する京都造形芸術大学にて、(株)電通と(株)クロステックマネジメント(URL:http://xtech-m.co.jp/)共催でワークショップが行われました。JAMJAM!ライターの奥田もスタッフの一員として参加してきました。今回はその模様をお届けします!


実績多数!ウルトラファクトリーのすごさ

わたし個人の経験として、“ワークショップ(以下、WS)”と呼ばれるものを幾度となく実施してきましたが、このWSの特徴のひとつは出口設計を“ハードウェアのプロトタイピング“に定めたという点でした。それを可能にするのが前述の「ウルトラファクトリー」です。現代美術作家であり京都造形芸術大学の教授でもあるヤノベケンジさんがディレクターを務め、劇団四季やビートたけしさんとのコラボレーションなど実績多数。金属、木材、樹脂加工等の設備に加え、デジタル造形機材など、これからのものづくりに不可欠な機材が充実したファクトリーです。DMM.makeの仕掛人でもあるABBALabの小笠原治氏も監修し、日本でトップクラスに充実したファクトリーになっています。
(詳しくはhttps://www.kyoto-art.ac.jp/art/special/ultra/

今回のWSでも、参加者全員でウルトラファクトリーを見学し、多種多様な機材とそれぞれで何ができるかなどの説明があったり、ヤノベケンジさんから直々にファクトリーの説明を受けたり、アイデアの刺激を大いに受けてスタートしました。

ウルトラワークショップはなにが“ウルトラ”なのか

今回のWSのもう一つの特徴として、参加メンバーの多様性がありました。課題を振り出す大企業の担当者と芸術大学の学生や教員、ウルトラファクトリーに精通したテックスタッフ、トレンド視点から刺激を与える雑誌社やテレビ局、新聞社からメンバーが参加し、広告代理店の電通からもメンバーが入った混成チームで、まる一日頭を突き合わせてアイデアを出していくという方法で進めたWS。大企業側が持つそれぞれの課題の振り出しに始まり、アイデアを出すところから絵に落とすところまで、学生の自由なアイデア発想、芸術大学だからできるビジュアライズ、広告代理店のファシリテーション、具現化に向けた芸大教員のプロの手腕など、参加したそれぞれが役割を果たし、たった1日でここまで?というレベルのアウトプットに落とせたことが、参加側としても大満足のWSでした。

WSの最後は各チームの企業担当者からアウトプットのプレゼンテーションセッション。スペシャルアドバイザーとしてヤノベケンジさんと投資家で京都造形芸術大学クロステックデザインコース教授の小笠原治さんという超豪華な布陣で切れ味の鋭い評価をいただき、最後はそのコメントをもってブラッシュアップというプロセスをもって一日は終了。最後の最後まで各チーム、熱のこもったディスカッションでさらにビジネスアイデアが磨かれました。

ウルトラワークショップの本領はここからです。通常、WSはその場でアイデアを出して終わってしまうことが多いですが、今回のWSは出たアイデアをウルトラファクトリーでプロトタイピングし、実際の製品に近いものを触れるモックアップとして制作し、今後のビジネス化に向けた推進力として使っていきます。今回参加された大企業それぞれの課題レベルにより進め方も変わるのですが、みなさんの手に届くものになるよう勧めていきますので、乞うご期待です。

参加者のミニインタビュー

大学事務局長の吉田さん、スペシャルコメンテーターの小笠原治さん、参加企業のみなさんにミニインタビューをさせていただきました!

京都造形芸術大学 事務局長 吉田大作さん

今回の取り組みを実施してみて、企業が複数社集まって、同じ環境の下で自分たちの課題を解決したり、自分たちの新しい価値を生み出そうとしたりする環境自体に意味があると思いました。企業があまり直接関わることのない芸術大学という場所で、チームの中に学生たちも入って議論を展開していくというところに産学連携の可能性を感じました。

吉田さんは芸術大学の学生のアイデアを社会実装するというところに可能性や必要性を感じておられるとおっしゃっていました。今回の取り組みはかなりその理想に近い取り組みだったと感じますが、そのあたりはどうでしょう。

非常にそう思いました。重要なのは、多視点の意見を企業側が受け止められるかどうかというところ。学生のアイデアは、行き詰ったときの打開策のヒントになる可能性としても考えられます。そういうアイデアを受け止めるということは開発プロセスとして大事だと思う。

本日、夏休みにもかかわらず学生さんたちが多く参加してくれましたが、彼らのモチベーションはどのようなものなのでしょうか。

企業と一緒にアイデアを考えるというのは、大学としても機会を多く持たせているつもりではありますが、長期にわたることが多いのが実情です。今回は短期間でそれが体感できるプログラムとして学生にも魅力に映ったのではないかと思います。

京都造形芸術大学 教授、(株)ABBALab 代表取締役社長 小笠原治さん

今回の取り組みは、初めての開催ということもあり、今後はより良くできるポイントがいくつか見えたと思いました。ただ、芸術大学の学生、広告代理店である電通メンバー、そして実際にビジネスにしていく企業の担当者という組み合わせはいままでなかったと思います。今後もぜひ続けていきたい取り組みです。

今後のプロセスの改善点は、どのようなところだと思われましたか?

発想の幅を広げるうえで、自分の所属企業を意識しない環境づくりが大切だと思います。主となる企業に対して広告代理店と学生が入るということも珍しいが、欲を言えば、主となる企業もミックスするという過程を踏んでみるともっと面白い意見が出そうです。

実験的に、主となる企業がまったくおらず、第三者メンバーだけで好き勝手アイデアを出す、みたいなプロセスをWS設計に組み込むのもおもしろいかもしれませんね。ところで、最終プレゼンのクオリティはいかがでしたか。

自分が別で進めているプロジェクトに似ているアイデアもあったので、1日にしてはクオリティが高かったと思います。ただ、発表内容に迷いを感じた部分もありました。可能であれば次回は2日間のWSにして、WSの終わりの段階で担当者が「会社に持って帰ってやろうぜ」という意気込みと自信を持てるようにしたい。1日目でアイデアを出し尽くして、2日目に実際に持ち帰ってビジネスにするにはどうすればいいかという議論までいけると、さらに意味のあるWSになると思います。企業内の上申プロセスも含めて議論して、例えば、他社からの提案という形にしたり、大学との共同研究という進め方にしたりなど、出たアイデアやその企業の課題感によって一番進めやすい形を模索していくところまでやっていけるとよいと感じました。

(株)ダスキン 丸山貴秀さん

社内で新商品開発の議論をしても、先に技術的にできるかどうかで判断してしまったり、会社がどう評価するかが気になったりして、アイデアの伸びがないことが多いです。今日1日WSに参加してみて、社外の方や学生と話していると、こうあるべき、こうあってほしいという生活者視点のアイデアがたくさん出すことができました。モノづくりの原点に立ち返らせてもらえて、いい刺激になりました。特に学生は世代が違うので、キャラクターものがあったらついつい買っちゃうよね、というぼくらにはない感覚のコメントが聞けて良かったです。結局うちの会社は40代以上の顧客が割合的に大きく、今後長い目で見て市場を形成していく若年層や単身世代という世代にはリーチしきれていないので、彼らがどういうものを求めているのかを開発に反映していくという重要性を再確認できました。

実際にビジネスとして社内に通していく立場として、今後の進め方としてどういう体制が動きやすいと思いますか?

自社で完結せず、他企業と組むことでこういうものが作れるんだよ、という前例を作りたいと思っています。他企業とタッグを組んで一緒に開発するという体制は社内で通しやすいと思います。

(株)スマレジ 川上知己さん

スマレジという会社はソフトウェア会社ですので、ハードが作りたいと思ったときに、どこに相談したらいいかわかりませんでした。今回のWSテーマはハードのプロダクト開発でまさに渡りに船。特に今回のWSチームにファクトリーのスタッフさんやプロダクトデザインを専門に学んでいる学生さんなどが参加してくれたので、慣れないハードウェア作りの迷いに対してプロのアドバイスがもらえて、とても有意義でした。たった1日で、ビジュアルアウトプットまでたどり着けたというのはすごく良かった。

プロダクトデザイン学科の学生が作ったビジュアルアウトプットがすごく良かったように、私も思いました。

京都造形芸術大学の学生のクオリティの高さに驚きました。デザインというのは、経験だけでは測れない、若い方のちょっとしたセンスが大切なところに、学生のアウトプット力が組み合わさってよかった。ぜひ実商品にしていきたいと思います。

吉忠マネキン(株) 青山実さん

今回参加して良かったと思うポイントははっきりしていて、自社内だけでやってるとわからないことに対し、社外のアイデアが入ることで良い刺激がもらえたということです。多様なメンバーと交流すること自体が身になったと実感しています。他社の方は違う考え方、違う軸をお持ちなので、我々になかった方向性が生まれました。とても勉強になりました。最終プレゼンテーションを終えて、アドバイザーからのフィードバック後の最終ブラッシュアップの時間でのチーム内の議論でまた大きくアイデアが変容するという経験もできました。ウルトラファクトリーで一度、小さくプロトタイプを作ってみたいと思っています。せっかくなので木工と鉄鋼のハイブリッドでかっこよくしたいですね。ハイソなイメージで作りたいと思います。京都なので、場所は鴨川沿いで実証実験もやりたいね、とチームで話していました。

RELATED

#プログラム/セミナー

祈りのかたち“京料理がきた道、器がきた道“ レポート

engawa KYOTOではindigenous innovationと称した、日本着想を源泉とした“ひと・もの・こと”のイノベーションを世界に向けて発信していく試みとして多様なプログラムを不定期開催しています。   一夜限りのアカデミックディナー 令和元年秋、皇位継承の年に新天皇が五穀豊穣を感謝し祈る大嘗祭が執り行われた。時を同じくして事業共創スペースengawa KYOTOでは“京料理がきた道、器がきた道”と称したアカデミックディナーが開催されました。今日わたしたちが食べている料理そして、それをいただくための器、その歴史を通してこれからの私たちの食文化が進むべき道について想いを馳せた一夜限りの晩餐です。   この夜のアカデミックディナーでは、京料理の原型とされる精進料理の名店、嵯峨野にある「さが一久」による精進料理が提供され、参加者は輪島塗の塗師、赤木明登 氏による縄文土器にまで遡っての器のかたちの原点についての解説を聞きつつ、一皿一皿運ばれてくる精進料理を嗜み、盃を酌み交わしていきました。     今回お料理を担当してくださった「さが一久」は、室町時代に一休禅師から直に精進料理の奥義を教えられ、その型を一子相伝で500年に渡り守り続けている名店です。   京都の中心街、烏丸通りに面した全面ガラス張りのengawa KYOTO2階に準備された会場、開放的なモダンな空間にオープンなアイランドキッチン、テーブルの上には輪島塗の本膳が華やかに並べられ、京料理と器をめぐるセミナーが始まりました。   本来であれば座敷にお膳が並べられるところ、今回はテーブル席での会食となったため、ひとりひとりお膳から器を取り上げて料理を食す体験を擬似的に体験してもらおう、という赤木さんの発案で、銘々のお料理一皿づつを輪島塗の御膳にのせて運び、各人が御膳から器を下ろして食べるといったスタイルでの配膳となりました。     神とともに食す、ということ 説によると古来、「食べる」という行為は、自然のエネルギーを身体に取り込む行為として捉えられており、それは自然への畏怖でもあり、不老不死への願いであり、人間の力がおよばぬ大いなる神への祈りであったと言われています。   食事は神饌として神に捧げられ、神様がお召し上がりになられた後、人間はそのお下がりを「いただく」。我々が何気なく日々使っている「いただきます」の語源はそこに遡るとされています。その年の収穫に感謝するとともに、神の御霊を身に体して生命を養うとされる大嘗祭に新嘗祭といった宮中祭祀からも、日本人にとって「食べる」ことは自然の恵みである食べ物を通じ神とつながる行為であったことがうかがえます。   神にささげた神饌を司祭者・参加者がいただく「神人共食」。神人共食を通して、神と人との親密さが生まれ,人は神を敬い守護を受け報謝する。この習わしは人間同士の「共食」の習慣へと発展し、ともに飲食を行うことで人間同士の絆をつよめ,共同体としての心理的安全性を育み社会の発展を促してきました。   輪島塗・塗師 赤木明登さん   この共食は、器の発展にも繋がっていきました。今回使われた輪島塗のお膳、宗和本膳はまさに、ハレやケの宴、共食に使われるものです。ただ現代の生活ではこのようなお膳を用いた共食の機会も減り、本場輪島でも使われる機会が減少していると言われています。赤木さんの工房では、お弟子さんの年季明けを祝う慶事にこのようなお膳が登場しますが、今では輪島でも伝統的な本膳を使う年季明け式を行うのは赤木工房だけとか。神人共食を心身で感じとる機会が日本の隅々で消滅しつつあります。       祈りのかたち 会の中盤には赤木さん秘蔵の縄文土器や平安時代の漆器が次々と登場、その形状のもつ意味についてレクチャーが繰り広げられました。それらの器は各テーブルを回り、参加者はその器を直で触るという貴重な体験が与えられました。     今回赤木さんが解説をした器のうちの一つ、世界最古級の器である縄文土器の陶片は、縄文土器特有の縄模様が施されています。縄文土器の出現により、煮炊きという人類にとって革命的な調理方法が飛躍的に発展しました。このことにより、栄養の吸収が高まり、食べられる食材が増え人類の生存圏が広がっただけでなく、食が文化として昇華していく大きな土台がつくられました。「実は縄文土器に施されている縄模様は、縄ではなく蛇を模したものではないかと言われているのです」と赤木さん。不思議な生き物、蛇は古来より山の神の遣いとして崇められ、その力に授かりたいという祈りが器の意匠にも現れていたのではないかと、赤木さんはつづけます。     世界最古級の器、縄文土器の陶片   次に説明されたのは時代をずっとすすめて、平安時代の漆のお椀。普段我々が使うお椀の底についている高台、この高台も祈りの形だ、と赤木さん。諸説あるなか、天の恵みに対する感謝、神への畏敬、そして神からの下がりもの、としての食物を粗末にしてはいけないという畏怖の念から、高台の形状は進化していったのではないだろうか、と赤木さんは推理されます。この高台付きのお椀も日本人の祈りの形として脈々と現代まで受け継がれてきたのです。         一皿に写しだされる自然の美 その夜のもう一つの主役が「さが一久」当代の津田達也さんによる精進料理。今回お料理をご用意くださった「さが一久」は室町時代一休禅師より教えられた精進料理の型を、500年来一子相伝で今日まで受け継いできた精進料理の老舗です。精進料理は中国に渡り禅宗を学んで帰国した僧侶たちによって日本に持ち込められ、広められました。その中でも曹洞宗の開祖道元は、幾分食いしん坊のご性分で、仏教修行よりも食文化に強く心を惹かれたので、日本に精進料理が広まったのではと、津田さん。精進料理は修行のひとつとして僧侶自らが調理し、その技術を磨き上げていき、の調理技術の世俗への伝播が、日本料理の独特の発展を支えてきました。     この夜の献立は   向    蓮根白和え・水前寺海苔・紅葉麩   汁椀    焼き豆腐・大根煮・三つ葉・粟麩   平椀    塔地湯葉・松茸・柚子・菠薐草   煮しめ    擬製豆腐・利休麩・湯葉・松茸           栗・松葉銀杏・酢蓮根・紅葉麩・筏牛蒡   茶椀    胡麻豆腐・山葵   酢物    松茸・黄湯葉・菠薐草   八寸    湯葉真丈・岩茸・ゆべし   飯    散飯   香物    柴漬・大根漬   酒    奥能登の白菊   精進料理は動物性の素材を一切使うことなく、植物性の素材から滲み出る旨味をベースに火加減と時間をかけてじっくりと味付けを行なっていく、「時には2,3日かけてじっくりと火加減と味付けを吟味していく」こう津田さんは話します。煮しめが盛られた器には、紅葉麩、松葉銀杏が彩られまるで秋の庭がそのまま一皿に写されたようです。日本人がもつ自然界への憧れ、そして畏敬の念が器のうえに再現された世界からも感じとれます。     500年続いてきた精進料理の原型を当代として守りつづけている津田さんは、一歩でも先代の味に近づけているか、日々自身に問いながら料理をつくり続けていると言います。禅宗では食事をいただく際に“五観の偈”という偈文を唱えます。それは自分の口を通していただく多くの命によって我々は生かされていることへの思いを改めるひと時です。   「さが一久」当代 津田達也さん   むすびに 食べる、それは神とつながり自然界の命をいただく感謝の行為、不老不死を祈る気持ち。人間が自然や神ともっと近かった太古から、祈りや願いが込められ脈々と人間の手を介して進化をつづけてきた「料理と器」。その形をめぐるレクチャーを聴きながら、形とは容(かたち)、祈りや願いを込める器であることに気付かせられた夜でした。料理と器の系譜からみるとほんの一瞬の現生において、それらを食し、使う私達は、太古からの祈りや願いを伝えていく媒介にすぎないのではないか、という思いがよぎりました。自然界からの多くの命によって生かされ、脈々と続いてきた太古からの祈りや願いを運ぶ媒介として、私たちはどう生き何を次の世代に残していくのか、この問いはこれからの時代の、そしてindigenous innovationをコンセプトに掲げる事業共創スペースengawa KYOTOの大きなテーマでもあります。    

#プログラム/セミナー

スタートアップのシード期にフォーカスしたイベント「スタートアップジャーニー」を振り返る

今回は、engawa Kyotoで行われた電通グロースハックプロジェクトによる電通共催イベントのレポートを、電通グロースハックチームのシニアコミュニケーションプランナーの大橋誠也氏から寄稿いただきました。 ※写真は登壇者の姜氏、有馬氏、米田氏、山田氏と電通グロースハックプロジェクト一同   関東圏外でスタートアップを始めるのは困難なのか?? 電通・アドウェイズ・Amplitudeの3社主催によるスタートアップにフォーカスしたイベント「スタートアップジャーニー engawa」を開催しました。 東京にヒト・モノ・カネ・情報が集中するトレンドが続くなか、関東圏外でスタートアップを始めるのは困難なのであろうか?また、グロースができる人材はそこには育たないのか?というテーマに向き合った内容のサマリーをお届けいたします。   スタートアップジャーニーengawaは、「電通グロースハックプロジェクト」での活動を通じて様々なフェーズでスタートアップの成長を支援してきた経験のなか、スタートアップが関東発のものが多いのでは課題意識を持ったことがきっかけです。なかでもサービスをグロースさせるスキル、人材がそもそも関東圏外に少ないと感じています。 関東圏外でサービス立ち上げを行うに際し、どのような障壁が存在するのか、課題は解決できるものか?解決可能なのであれば何から着手すべきなのか?こういった疑問を明確にしていきたく今回のイベントを開催する運びとなりました。      会場は京都にある電通のイノベーションオフィス「engawa Kyoto」です。 「engawa Kyoto」は個人、企業を対象とし、そこに集う人々の“縁”をつなぎ、これからの日本の活力となる事業創造支援を行う場となることを目的とし、開設されました。世界トップクラスのアクセラレーターであるPlug and Playも、日本での2つ目の拠点“Plug and Play Kyoto”として入居し、京都という地の持つ発信力を味方につけた今までにない事業共創拠点として期待されています。 起業支援に力を入れている福岡をはじめ、関西のスタートアップと言えばここ数年での投資マネーの調達が活発になりつつあり、大阪を中心に資金調達の段階に達するスタートアップが増えています。 京都ではLINEやマネーフォワードが京都府内にオフィスを開設しており、観光地として人気の高い地の利を活かしたグローバル人材の獲得を行っているなど、立ち上げに際しての環境は整ってきている点も多くあります。   なぜ、京都でスタートアップを始めたのか? 「実際、京都では海外人材も多く、採用に関しては確実に良い環境になっていると言えます。」と、アトモフ株式会社CEOの姜(かん)氏。 同社は開催地である京都のスタートアップであり、「窓型スマートディスプレイ」を開発・提供しています。クラウドファンディングMakuakeでも製品投資状況が直近で5,000万円以上となるなど、業界でも注目度が非常に高いと言えます。   姜氏:登壇席右 では、姜氏はなぜ京都でスタートアップを始めたのでしょう。海外人材の獲得や今後の展開を視野に入れて…というわけではなく理由は実にシンプルでした。前職(任天堂)が京都の企業であったこと、また、関東圏へ出るためのお金も、スタートアップ立ち上げ資金にした方が良いと考えた結果でした。 スタートアップの経営に際し、京都であることが理由で苦労したことなど無いかとお伺いしたのですが、大きく課題だと感じるシーンは少ないとのこと。 Q: スタートアップは京都が熱い? 京都でスタートアップとして活躍されている姜氏も言うように、そこまで大きな課題に直面するかと言うとそうではないのが実際のところなのだろうか? 関東圏外としてフォーカスして見てみると、福岡、大阪や京都は実際には企業活動が活発なであり、冒頭でもあったように京都へは各社が進出しています。 関東にいると「地方」と一括りに捉えてしまいがちですが、京都は伝統を重んじるだけでなく、新たな可能性を創出してくれる地なのだとセッションを通じても感じ取れました。 では、そうした新しい可能にドライブをかける投資側としては関東圏外という点において、何か意識する必要があるのでしょうか? 今回のイベントの共催者であり、全国へ投資を繰り返す株式会社アドウェイズの山田翔氏に質問をしてみました。     A: 投資を行うに際して関東か否かで判断はしたことがない 山田氏:登壇席中方   山田氏からはアトモフ社のほか、開催地京都のスタートアップ企業へ投資を行った経験等から、投資家目線での関東圏内と圏外、という概念に対して考えをお話頂きました。   そもそもどういう視点で投資を判断しているのでしょうか?「投資を判断する際にはやはり、事業内容と見通しは基本的に見ているなかで、スタイルとして細かい点まで口出しをしないようにしている。 すべての投資家がそうとは言えないものの、投資する際には気を遣う点が多々ある。 しかし、その中でその企業がどこを拠点にしているかは今の時代そこまで気にして見ていない。地方であろうが関東であろうがスタートアップが立ち上がることに投資を行うことは問題ではない」   山田氏は投資を行う側として、言うべきことはちゃんと伝えるようにするものの、基本的にはなるべく口を出さないことがほとんどだと言います。前に出過ぎないように気を配りながら進行を見守っており、世間で考える「投資家と投資をされた側のイメージと現実」は結構違うと強調していました。   調達した資金は商品が開発や製造が必要なこともあり、ほとんどが開発費に消えてしまうとのこと。投資元である山田氏へは企業側から説明をすることになりますが、「しっかり事業や会社状況を理解して聞いてくれて応援してくれるので非常に連携を取りやすい」「シード期から経営方針など細かく指示を出されないので精神的にも良い」と姜氏は感じており、両者の関係性が非常に良いことが感じ取れました。   エリア問わず日本が既に陥っているグロースのステップについて 京都のスタートアップ経営者、投資家としての目線からスタートアップを始めるにあたって土地は大きな影響が無いことが分かりました。 とはいえ、京都は東京と比べて企業数も少ないです。サービスグロースに関する知見を有した企業数も同様に少ないと仮定した場合、グローススキルにおいては京都に多少のビハインドは生じてしまうのではないか?この点については米国Amplitude Inc.のジャパンカントリーマネージャー米田氏がコメントしました。同社はThe New York Timesの2019年ユニコーン50社に選出されたグロース支援ツールベンダーで、米国でスタートアップ支援も行っています。   米田氏:登壇席左   「先ずそもそもですが、日本の場合、資金調達後、サービスをグロースさせる際に、いきなり広告へ予算を使う企業様が多くいる印象を持っております。」都内・地方に関係なく、日本と言う市場全体で陥ってしまっている状況である、と米田氏。 関東圏・外での比較ではなく、世界と日本の比較で話を切り出しました。   スタートアップでしっかり検証を行わないとならないのはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)。Amplitude社ではサービスに対するユーザーの反応を図る指標としてリテンションを重視しており、このリテンションを軸にPMFが成されているかを判断しています。「リテンションを基に、サービスに定着してくれているユーザーがどのような行動を取っているのか、逆に離脱してしまう行動とは何か?を計測して明確にし、サービスの開発を続けていくかピボットするか等の判断支援を行っている」   また米田氏は、「PMFを検証しきらないタイミングで調達した資金で広告出稿を行い、一時的な利用ユーザー数の増加を達成しても、ユーザーが定着せず一定以上に成長できないことがある」とPMFの重要性について事例を挙げて説明しました。   スタートアップにとっては、今のサービスの健康状態を把握するツールの導入はコスト面などより避けられがちではあるものの、サービスをユーザーがどう捉えているかを把握することは常に必要なことです。しかし当然資金にも限りがあるため、Amplitude社としてはスタートアップ限定で通常有償のプランを1年間無償で利用できるプログラムを用意し、ツール利用によるPMF検証の促進と、イベントや勉強会などでのノウハウの共有によりスタートアップを支援し始めています。   イベントや勉強会が実際に都内を中心に行われることが多いようですが、米田氏は常に米国Amplitudeでの実績や知見を日本からアクセスし取得しているとのこと。「今やZoomなどのオンライン会議で互いに顔を見ながら会話ができ、その場で即座に資料の共有や同じドキュメントを編集できる環境もある。国を跨いで出来る事が関東と関東圏外だから出来ないということは無い」、とテクノロジーの力で物理的な距離を乗り越えて、自由に働ける可能性を示しました。 地方だから成功しないはなく、誰と連携し何を見ていくかが重要 本イベントで至った結論としては、スタートアップ経営者、投資家、支援者、三者の視点で見ても関東圏外でスタートアップがグロースしていくことは今の時代大きく乗り越えられない障壁ではないということ 一方、シード期として非常に重要なタイミングでその資金を何に使うか、成功に向けて同じ志持った企業と連携していけるかは大切な時期だからこそ慎重に判断すべきであることが改めて明確になりました。特にPMFに向けたプロダクトのデータ分析は自社だけで完結できるケースもありますが、時に必要なツールでスピードや仮説検証精度を上げることも重要であると改めて考えさせられるものがありました。   イベントを通じてこれからも情報発信の機会や、直接皆様と意見を交換する場を設けていく予定ですので、是非次回はより多くの方に気軽に参加頂き、その中からスタートアップが立ち上がることを期待して引き続き活動を続けていきます。   動画:主催者たちからのメッセージ   Author Information:  

#プログラム/セミナー

世界が認めるフレームワークを使って未来の本質課題を開拓するワークショップレポート(後編)

電通京都BACは山口周氏のベストセラーの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)にて紹介され一躍有名になった、経営層向けに美大教育を行っている世界最高峰の美術系大学院Royal College of Art(以下、RCA)。その教授・講師陣を京都に招聘し、2日間にわたる世界最高峰のビジネス×美大教育ワークショップ“Innovation Masterclass in Kyoto”を実施しました。Day1の 前編 に続き、本稿では後編としてDay2の内容をお届けします。   さて、2日目は2つ目のダイヤモンドである「展開(Develop)」「提供(Deliver)」フェーズにて解決策を探索していく流れになります。↓のモデルでの赤枠部分にあたります。     まずは準備運動~オリエンテーション Day2の内容にフルスロットルで挑むために、まずは準備運動。ということで、隣に座っている人のイメージの色の紙を選んで、似顔絵を描いてみましょう。というワークから幕開けしました。絵を描いてください、というと大人はためらってしまいがちですが、Day1でクリエーティビティが開花したのか、オリジナリティあふれる絵がほんの数分でずらっと並びました。   ハードなDay1を経た次の日、朝一のワークですが一気に笑いが広がります   作品が大量に生み出されます     ダブルダイヤモンドモデルでDay2の流れを説明   第三のフェーズ「展開(Develop)」 マイヤーソン教授のオリエンテーションの後、Day1のようにチームに分かれて展開(Develop)ワークを開始します。展開(Develop)フェーズで行うことは、Day1で得た課題に対してとにかくたくさんアイデアを出していくということ。ただ、このフェーズはまだ解決に向けた具体のアイデアではなく「抽象思考」で考えなければ、細かいアイデアが多くなってしまいます。   現実的であるかどうか、ビジネスインパクトがどうか、自社の利益になるか、などの諸条件はまず頭から追い払って、抽象的で革新的であることを意識しつつ、たくさんアイデアを出していきます。   脳みそを動かすためにたくさんのレゴを積み上げてみたり、粘土をこねてみたり。ここでもいつもアウトプットを前提にしている美大ならではのやりかたも試してみました。     手渡されるとなんとなくこねてしまう粘土の魔力。少し体を動かすと脳の違う部分が働いて発想が広がります   アイデアがある程度出たところで、今回のワークショップでは“望まれ度合い”ד実現性”の2軸を取ったフォーマットに張り付けていきます。これが次の絞り込みフェーズの重要なヒントになります。     アイデアが用紙に収まりきらずホワイトボードも大活躍です   二軸フォーマット。抽象的で革新的なアイデアを出すのに苦労したチームも多く、RCAのファシリテーターから“How Radical?(どのくらい革新的?)の文字が書かれました   たくさんアイデアが出せたら、最終フェーズの提供(Deliver)へ突入です。   解決法を絞り込む、第四のフェーズ「提供(Deliver)」 展開(Develop)フェーズで大量に出したアイデアを絞り込み、ビジネスとして形にしつつ、ビジュアルプレゼンテーションに落とし込むのが提供(Deliver)フェーズの作業です。どのフェーズよりも忙しいフェーズかもしません。   絞り込みは展開(Develop)フェーズで使った2軸のフォーマットを参考にしながら、具体化させていきます。絞り込む上での理想はもちろん実現性が高く、市場から望まれている度合いも高い、2軸のフォーマットでいうと右上のものですが、具体的にアイデアを展開する上での広がりなども考慮しながらプレゼンテーションの準備を進めます。   RCAから出されたビジュアルプレゼンのお題は「電車の中づり広告」です。日本のユニークな広告ビジュアルということで、お題になりました。ワンビジュアルで伝えるために強いコンセプトを抽出して絵にするという非常にハードルの高いワークです。   大量のアイデアの中から絞り込み、1ビジュアルと1ワードの広告として伝わるよう試行錯誤   クリエーティブなプレゼンに向けて、粘土やレゴを使って表現するチームも   ついに最終プレゼン! 2日間という時間を使って考えたインクルーシブデザインの最終発表です。クリエーティブな2日間を過ごした各チーム、プレゼンテーションのやりかたも非常に多岐にわたり、面白く、いくつかのアイデアは会場から「これはぜひ欲しい!」と声が漏れるほど。   紙で立体のロボットの“プロトタイプ”を作ったチーム   お昼ご飯に出たお弁当の空箱(!)と椅子を使って新しい乗り物を表現したチーム   各チームのクリエーティビティあふれる発表に講師陣も大興奮のご様子でした。   最後に参加者全員で良いと思ったアイデアに投票し、各講師陣からも賞が贈られました。       2日間のワークショップを終えて:参加者のアンケートより 充実のプログラムをこなした2日間のプログラム全体の満足度は非常に高く、ほとんどの方にまた受けたいと言っていただくことができました。今回は、一般企業(耐久消費財、通信、サービス、トイレタリー、エネルギー)、行政職員、僧侶、工芸家、スタートアップ、学生など幅広い方々に参加いただきました。ダイバーシティ溢れる皆様からの声をご紹介します。   『デザイン思考のプロセスを短期間で体現しながら学ぶことができ、非常に満足しています。普段、仕事をする上でも課題としているテーマであったことから、今後の仕事でも活かせるワークショップでもありました。』   『異業種のグループメンバー、講師、メンターの方と交流できたのは純粋に面白かったです。 ダブルダイヤモンドモデルなど通常の業務だけをしているとなかなか学べないメソッド、問題特定⇒課題設定⇒ソリューションまで一貫した課題解決の有用性に改めて気づかせて頂いた時間でした。』 『チームでアイデアが大きく跳ねる瞬間や、イラストで可視化することによる議論の深まりなど、色々な学びを得ることができました。先生方や事務局のみなさまには、丁寧にサポートしていただきありがとうございました。またこのような機会があれば、ぜひ参加させていただければと存じます。』   ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。   著者の感想 2日間本当にハードなワークショップでした。アイデアの発散と収束、思考を抽象と具体に交互に飛ばしていく、脳みそのスポーツのような2日間でした。普段の生活で特段意識しない“思考プロセス”を、世界最高峰の美大であるRCAから系統立てて学ぶという非常に貴重な2日間でもありました。   参加者からも、現業に戻っても、壁に当たったときに学んだ発想プロセスを使ってみた、チームにシェアしてより効率的で有意義な議論ができている、との声も多くもらっています。ワークショップは2日間ですが、思考プロセス自体を学び、日々のビジネスの現場に適応していけるものであるとの確信を得ています。   今後とも京都BACはこのような取り組みを多く運営していきます。古さと新しさのインターセクションにクリエーティブが生まれると信じております。   ご興味ある方はぜひ、ご連絡ください。