【 engawa young academy 】 メンターインタビュー 積水ハウス篇
#インタビュー
※第一回インタビュー(みずほFG)はこちら
第二回インタビュー(日本たばこ産業)はこちら
右手前)積水ハウス 人事部 人材開発室 室長 安信 秀昭さん
右奥) 積水ハウス 人事部 採用・育成グループ 課長 沖村 将史さん
左)インタビュアー) 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 湊 康明
―eya初日を終えての率直な感想は?
安信さん:慣れない立ち位置で学生さんに接したので、正直疲れました(笑)。学生の皆さんの自己紹介を聞いて、色々な活動をしていらっしゃって、バラエティーに富んだ面白いメンバーが集まっているなと思いました。
沖村さん:目的意識を持って活動をされている方が多いというのが率直な印象です。
―メンタードラフト※でのプレゼンの感想を教えてください。
※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム
安信さん:会社名を伏せての自己プレゼンだったので、慣れないことをしたなぁと思います(笑)。他社様のプレゼンを見させてもらいましたが、ご自身の志やご経験を上手にアピールされていて、私自身とても勉強になりました。
―チームクリエイト※での学生たちの様子を見て、どのようなことを感じましたか?
※eya期間中のグループメンバーを、学生自身に決めてもらうプログラム
安信さん:あの短い時間の中でよく特長を抑えながら、自分たちに足りないものやどういう力が加わればチームが強くなるのかを考えて動けていたと思います。面白い手法なので、当社のインターンシップでもやったらいいのにと思いましたね。
eya初日、学生と語る安信さん
―ありがとうございます。では、ここからは御社の今についてお伺いしたいと思います。積水ハウスの中身を知らない学生へ、積水ハウスって実はこんな企業ですなど、知られていないけど伝えたい事を紹介していただけますか?
沖村さん:当社は2020年に創立60周年を迎え、累積建築戸数244万戸超の実績を誇る世界で一番住まいを提供してきた会社です。おそらく学生の皆さんも積水ハウスといえば戸建住宅のイメージが強いと思いますが、現在では請負型・ストック型・開発型・国際事業の4つのビジネスモデルで幅広く事業を展開しています。
例えば、戸建住宅や賃貸住宅事業の請負型ビジネスもホテルや病院、医療介護施設などの非住宅分野でのご用命も多く頂いています。その他にも、ライフスタイルの変化に伴うリフォーム・リノベーション事業や高品質な賃貸住宅の提供によって高入居率・高管理室数を誇る不動産フィー事業などストック型ビジネス。大都市圏を中心に展開しているマンション事業や「ザ・リッツ・カールトン京都」や「グランフロント大阪」といった大規模な都市再開発などの開発型ビジネス。そして国内で培った高品質な住まいづくりの技術・ノウハウを生かして海外へ事業を展開しています。
改めてこの60年を振り返ると、第一フェーズとなる創業からの30年間は、住まう人の生命と財産を守る強固なシェルターとして「安全・安心」な高品質住宅の供給に努めてきました。第二フェーズとなるその後の30年は、加えて「快適性」を追求。また、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)など「環境」に配慮した住宅の開発・供給にも努めてきました。
そして2020年からの第三フェーズでは、「我が家を世界一幸せな場所にする」というビジョンのもと、人生100年時代の「幸せ」を提案・提供する「幸せづくりのパートナー」を目指します。
―国際ビジネスは、どのようなビジネスをされているのでしょうか?
安信さん:日本と同じように戸建住宅を建築する事業と、ディベロッパーとしてマンションや商業施設、ホテル等の複合開発事業の両方をやっています。例えば、オーストラリアでは当社の木造住宅(シャーウッド)をベースに戸建住宅事業を展開しています。オーストラリアはもともと木造住宅が一般的なのですが、地震が少ないので、日本に比べて耐震性や安全性などがあまり重視されません。2010年に現地の大手住宅開発会社の請負建築部門を事業買収し、シャーウッドの販路拡大を試みたのですが、日本の住宅のままではオーバースペックなので、オーストラリア用に改良を重ねて、今では年間300棟超を販売できるまで成長しました。
―海外で事業買収までされているんですね。学生にはイメージされていないと思います。では第3フェーズでハードからソフトになってくるという事で、どのような取り組みがありますか?
安信さん:新しい考え方として、「プラットフォームハウス構想」※を打ち出しています。プラットフォームハウスとは「人生100年時代の幸せをアシストする家」のことで、幸せを3つに定義しています。「健康・繋がり・学び」です。この3つの“無形資産”をプラットフォームハウスの中で育むことが、幸せにつながっていくと考えています。
第一弾として、“家が健康をつくりだす”に取り組んでいます。健康を急性疾患対応・経時変化・予防の3つに区分して、まずは急性疾患対応から取り組み始めています。実は、交通事故死よりも家の中で死亡する人数の方が圧倒的に多いんですよ。交通事故でお亡くなりになられる方は年間3,000人程度ですが、急性疾患の発見遅れのほか、溺死、転倒などを含めると70,000人もの方が家の中で亡くなっています。住宅の安全・安心を追求している私たちには、この社会課題に取り組む使命があると考えています。一命を取り留めても、後遺症が残って要介護状態になれば大きな経済負担になります。これを“社会コスト”と考えると膨大な費用がかかっています。この社会コストを低減することは、住宅業界だからこそなせる課題解決だと思っています。
ただし、センサー端末などを常時装着した生活は、幸せとは程遠いのです。なので、家の中にセンサーを埋め込むことで、発作を起こした時の動きの変化や脈拍がわかるように、マサチューセッツ工科大学と高度なセンシング技術の共同研究を進めています。他にもオープンイノベーションであったり、スタートアップ企業と組んだり、他社との協業が益々増えてきていますね。
※家を幸せのプラットフォームにする「プラットフォームハウス構想」をCES2019で発表
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2019/01/08/20190109.pdf
―積水ハウスの特徴である「工業化住宅」についてお伺いします。そもそも学生は知らないと思うのですが、工業化住宅のメリットはなんですか?
沖村さん:工業化住宅よりもプレハブ住宅といった方が分かりやすいかもしれませんね。従来の在来工法でつくられる住宅は職人の手によって各部材を加工・建築される住宅であるのに対し、プレハブ住宅は柱や梁、外壁などの建築物の主要部材をあらかじめ工場で生産・加工を行い、建築現場で組み立て・据え付けるプロセスによって建築される住宅のことです。
安信さん:だから、職人の技能によって品質のばらつきが生じないのが、工業化住宅の大きなメリットです。特に日本では大工不足が著しいので、今後ますます現場での加工・建築が難しくなってくるわけですが、工業化住宅であれば、精度の高いものを安定して供給できます。中長期的には、他の先進国でも職人不足が予想されますので、世界的に見ても工業化住宅に大きなチャンスがあるのではないかと思います。
―なるほど。学生の皆さんに、今後ソフト領域に行こうとしていている点と、海外展開しているところで工業化住宅としてもすごくチャンスがあるということが伝わればいいですね。では、インターンなどの採用活動をする上で、学生に求めている人材像どのようなものでしょう?
沖村さん:まずは企業理念や思想に共感いただけるかどうかと思います。当社の企業理念の根本哲学「人間愛」の中に「相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする」という一文があります。
我々の仕事は、住まい提案を通じて、お客様に「幸せ」を提供する仕事です。「幸せづくりのパートナー」として、企業理念に基づきお客様に対して、社会に対して新たな価値を創造するため、失敗を恐れず自ら考え行動することのできる人と一緒に働きたいと思います。
―インターンで具体的に工夫されているところは?
沖村さん:特別工夫しているというわけではありませんが、プログラムにはグループディスカッションを多く取り入れています。一例ですが、グループで疑似家族になって理想の住まいを考えたりとか。家族構成や個々の人物像などの詳細も各自で決めてから家族会議を行い、それぞれ譲れない主張とか価値観をぶつけ合いながら、最終的に家族としての理想の住まいを考えていくフローを経験してもらいます。同じような家族構成でも出てくる内容は千差万別。多種多様な価値観に触れ、想像し、形にしていく機会を多く設けることを意識しています。
―採用活動で課題だと思っているところは?
沖村さん:従来の採用活動に加え、複数のインターンシップを実施するなど色々試みていますが、まだまだ出会えていない学生の方が多くいると感じています。住宅の仕事は単なるものの製造・販売の仕事ではなく、住まいを通じて豊かな暮らしや人生、幸せの実現のためにコンサルティングしていく仕事です。まずはもっと多くの学生の皆さん住まいづくりというコンサルティングの仕事を知ってもらうこと。また、これからもっとビジネスの幅を広げていくためにも、幅広い専門分野の学生の方々との接点を増やさないといけないと思っています。
安信さん:これからは様々な企業と協業していくことになりますので、新しいビジネスの種を作っていく人、いろいろなリソースを使いながらその芽を大きく育てていく人が必要になってきます。また、今すぐにはビジネスにならないけれども、新たな分野、新たな専門領域でじっくりと基礎研究をしてくれる人も必要です。これまで以上に、多様な人材を採用していくことが課題ですね。
―eyaに参加していただいた意図や理由はどのようなものでしょう?
安信さん:事業領域の拡大や環境変化を考えて、人材を3層で考えています。一つは、次期マネジメントクラス。彼らには変化創造力、変化対応力の涵養を目的に「積水ハウス 経営塾」を受講してもらっています。行動経済学やDX(デジタルトランスフォーメーション)・イノベーション・医学・哲学など、多様な分野の知識を得ながら新たな価値創造に取り組んでいます。二つ目は30代前半の中堅層。イノベーターやイントレプレナー(社内起業家)になり得る人材を発掘し、次世代リーダーに成長するための教育を受けてもらっています。最後に三つ目は、これまでの採用活動ではなかなか接点を持てなかった「新たなビジネスの芽を生み出すアントレプレナー志向をもった人」の採用です。eyaはちょうど三つ目のところに合致していると思いました。
―会社としてではなく、ご自身にとっての意義も考えられましたか?
安信さん:アントレプレナー志向を持った学生さんが、何を思考し、どの様な活動を行い、社会に出て何をしたいと考えているのかを純粋に知りたいと思っていました。もう一つは、異業種の方々と同じ場に立つことは、私自身の新たな学びを得られると期待していました。
―最後に、社会人の先輩として・メンターとしての意気込みを教えていただけますか。
沖村さん:私自身含め参加しているグループだけでなく36人全ての学生に、何かしらきっかけや学びがあったなと思っていただける様な関わり方をしていきたいと思います。
安信さん:せっかくの貴重な機会なので、彼ら自身が自律的に他のメンバーと学びを共有してもらいたいと思いますし、その中で私が提供できる知識や価値があれば、それらを積極的に活用してもらえるような付き合い方をしていきたいですね。あとは、うちの会社のことをもっと知ってほしいというのはありますね。彼らの一つの選択肢として面白そうな企業が一つ増えたなと思ってもらえたらうれしいですね。