【 engawa young academy 】 メンターインタビュー 島津製作所篇
#インタビュー
※第一回インタビュー(みずほFG)はこちら
第二回インタビュー(日本たばこ産業)はこちら
第三回インタビュー(積水ハウス)はこちら
左) 島津製作所 人事部 人材開発室 採用グループ グループ長 今井 大輔さん
右)インタビュアー) 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 湊 康明
―eya初日を終えての率直な感想は?
正直言うと、普段使ってない頭を使ったなぁと思います。学生自体の意識が高く、自分の時代を含め、これまでに出会った学生とは種類が違うように感じました。今回“自分で行動を起こして何かを変えてやろう”という意識を持っている学生がすごく多い印象でした。
―チームクリエイト※での様子を見て、どのようなことを感じましたか?
※eya期間中のグループメンバーを、学生自身に決めてもらうプログラム
やり方は面白いと感じました。 “ありたい姿”をきちんと描いているのが学生たちに見られたので、「同じチームに」と言われたからOKするのではなく、拒否するシーンもありましたね。
―午後のメンタードラフト※の感想を教えてください。
※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム
あれは心臓に悪いですよね。(笑)学生が何をみているのかは、すごく気になるところはあります。誰がつくことによって自分がどう成長するかを、学生は気にしているのは分かりました。
―学生からの印象的だった質問は何でしたか?
「私がメンターにつくことによって、どう伸ばしてくれますか?どうマネジメントしてくれますか」ですね。私は少年野球の監督の経験があったので、その経験をもとに適材適所で伸ばすところは伸ばし、足りないところも含めてチームの総合力を上げていけるような取り組みをしたいとお返事しました。
eya初日、学生と語る安信さん
―こういった試みに関しては率直にどう思いますか?
すごくワクワクしています。まだ結果も出ていないですが、一日参加した上では、この取り組みに参加して良かったなと思っています。自分としても頭の整理というか、学生が何を考えているのかを感じることが出来ましたので。
―では、ここからは御社の今についてお伺いしたいと思います。
島津製作所について、学生が持つ既存のイメージとは違う、知られていない強みなどを教えてください。
学生のイメージとして、島津製作所というと堅くて歴史のある企業・動きも鈍いイメージを持たれているかもしれません。実際はというと、積極的に新規事業に取り組んでいる会社です。創業以来140年以上、伝統をずっと守り続けているのかというと、守り続けているのは“科学技術で社会に貢献したい”というその気持ちです。製品や事業内容は、時代に合わせて結構変わっているんです。おそらく5年後10年後は今ない製品が主力になっているのではないかなと思います。つまり、失敗を恐れず新しいことに挑戦し、失敗も繰り返しながらビジネスをやっているのが島津製作所の特徴かなと思います。
―具体的に、島津製作所を象徴する事例や製品はどういったものでしょうか?
当社は元々、分析装置の開発と医療機器の開発は、それぞれ独立した事業部で行っています。が、そこを上手く融合して医療分野で分析装置を使う動きを強めています。例えば分析装置で血液を分析することで、色々な病気が分かります。例えば、アルツハイマーも血液を分析することで分かるようになってきたんです。大腸癌であれば、GCMSという分析装置で分析すると分かるんです。知っていただきたいのは、分析装置を作っているメーカー・医療機器を作っているメーカーはそれぞれありますが、両方を作っている会社は島津製作所だけです。その強みは活かしていきたいと思い、注力しています。
島津製作所が描くアドバンスト・ヘルスケア:
https://www.shimadzu.co.jp/advanced-healthcare/common/base/pdf/advanced_healthcare.pdf
―新しくはじめた取り組みなどありますでしょうか?
特に、オープンイノベーションは是非知っていただきたいと思っています。HPにもありますが、社内のリソースをうまく使いながら、ベンチャーを立ち上げようという取り組みです。社内には、いろいろな技術が眠っているので、それを上手く呼び起こして目覚めさせ、スタートアップをいくつか作っていってビジネスにつなげていこうということです。小さい組織だからこそ出来る取り組みがあるはずだということで立ち上げたものです。
挑戦し続けるDNAを引き継ぐ島津流のオープンイノベーション:
https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/41/08.html
―そういった事業や新たな取り組みの中で、採用の指針や人材像どのようなものでしょうか?
“ものづくりへの興味”は、文系理系関係なく必要だと思います。どんなものづくりでもいいので、何か手を動かしてものづくりをした経験は重要かなと思っています。私がエンジニアをやった後、3年前に今のポジションに着任して、“ゼロからのものづくり”の発想力を鍛えるイノベーター人材を採用する手法を考えたいと言って新たに作ったインターンシップが、「発明体験インターンシップ」です。当社の知財部にも協力していただいて、イノベーション人材の定義から、その人たちがどういった思考を持っているのかを分析し、設計しました。具体的には“世の中の身近なものを再開発しましょう”というのが肝になっています。題材は、傘・鍋・ティッシュなどをこちらが提供して、それを他のものに変えましょう。その発想力から新しいものを生み出していくのをプレゼンしていく流れです。いい例でいくと、ティッシュであれば、最新のニュースをそこに印字し、最新の情報を新聞のように出していきましょうだとか。
―面白いアイデアですね!イノベーション人材の定義は、どのような要件なのですか?
発想力があり、たくさんアイデアを出せる人ですね。質より数です。そもそものアイデアの数を出してくるのは、鍛えてもなかなか出来ないところなのかなと思っております。求める人材像も“変化を楽しみ、これまでにない価値創造の主役となれる人”と定義しています。今の世の中は変化の連続ですので、新しい発想力を持って、今までにないような価値を創造する主役になれる人が、当社が求める人材、かつ、当社で活躍できている社員像です。
―島津製作所の特徴である「多品種少量生産」について、教えてください。
企業や大学の研究者が使っていくような製品が多く、それぞれやりたいことが違うので、その人のニーズに上手く応えていこうとすると、それを使いたい人は実は日本に10人みたいなレベルなので、いわゆるニッチな市場と言われるところなので、そういったものが多いです。それをビジネスとして成り立たせる生産技術も捨てたものではないです。
―顧客ニーズをヒアリングする力も必要なのですね。
そこが本当に重要ですよね。ストラテジーを立てて物事を進めていく計画・市場の動向を見極めていくのは、文系の方が優れているケースもあるので、文理が上手く融合しながら開発を進めていく形です。当社は開発のためにいくつかフェーズがあり、営業とエンジニアで製品開発をしていくんです。ですから営業から見たときに、自分が出したアイデアが製品に盛り込まれているところが、やりがいにはなっていると思います。
―文系人材にも、大きな活躍の機会があるのですね。学生のイメージにはあまりなさそうです。
今はビジネス戦略担当で、元採用担当たった文系の部下がいるのですが、彼は様々な会社説明を聞いていて、一番わけが分からなかったのが島津だったから島津にしたと言っていたんです。製品の想像しやすいものは、参入障壁が低いので色々な人が真似してビジネスとしてやり始める可能性があるが、訳が分からない=製品の競争力が強いということで島津を選んで、結果、島津を選んで正解だったと言っていました。技術者同士の話では思い浮かばなかった、文系の“素朴な疑問”が全てを解決してしまうケースもあるわけです。あとは、その道の最先端のビジネスに触れ、最先端の研究者と対等に話ができます。食品・化学・材料・自動車・半導体等ほぼ全ての業界がお客様なので、各業界の最先端動向・5年後・10年後が見られるのが当社のやりがいです。
―今井さんは、エンジニアの時はどんなお仕事をされていたのですか?
成功事例と言っていいのかわかりませんが、私は液晶ディスプレイの検査装置を担当していました。入社してすぐで、まだ液晶テレビが世の中にない2000年ごろに携わりました。これからの世の中液晶テレビの時代が来るだろうという市場ニーズを掴んでいて、そこから液晶ディスプレイの画素が正しく駆動できているかどうかを検査する装置を開発しました。その装置は、元々島津が開発していた電子顕微鏡の技術を応用したものです。
ーじゃあ今、皆が普通にテレビを観ているのは島津さんのおかげってことですか?
あ、それ自信を持って言えますね(笑)ある一定割合で製造の欠陥が出るので、昔は全て捨てていたのを全部直して出荷できるようになったんです。普通に液晶テレビが買える値段になったのは、我々の作った検査装置のおかげだと自負しています。当時の中国や台湾のお客様にプレゼンをしたら、皆ハイテクの極みだ!と言っていましたね。
―技術者の方は世界に散らばっていらっしゃるんですか?
うちの産業機器の事業部は、そうですね。営業もバンバン海外に行きます。市場のあるところなら世界のどこでもという感じですね。
―入社されてから今までで、社風の変化はありますか?
昔からチャレンジを尊重するのは変わっていなくて、若手のアイデアは尊重されます。1年目2年目であっても、そこで出てきたアイデアが採用されるケースは非常に多いですし、誰もやったことがないこと、教科書にないことをやる上では、必ずしもマネージャーが答えを知っているわけではないんです。
―そういった企業風土の御社にとって、eyaに参加される意義や理由はどのようなものでしょう?
やはり外の風を入れないと、新しい発想は出てこないのではないと思っています。採用も口を開けて待っているだけでは、元々当社を希望して知っている人だけしか入ってこないです。だけど革新・イノベーションは島津を知らなかった、という人から起こる可能性もあると考えています。eyaは島津製作所とは違う思考を持っている人に触れる機会があるので、是非当社に興味を持っていただきたいと思っています。
―異業種による、人材育成の取り組みについてについてはどうでしょう?
やはりある周回軌道をずっと回っているところにその業界での限界があると考えていて、異業種に1つの発想転換の起爆剤があるのではないかと、昔から思っています。今回のeyaも、業種が違うことが非常に大きな魅力になっていて、全然違う考え方で仕事をしていると思うので、私も刺激を受けたいなと思っています。
―eyaの学生に感じたことや期待することはどのようなことでしょう?
総じてみなさん動ける・動いた経験があることは自信にもなっているのかなと思います。経験談で語れるところも多少あるとは思いますが、色々な人と物事をやって行く楽しさと難しさを感じてほしいですね。あとは、自分の思っている範囲を超えた発想力を周りから受けてほしいと思います。「この人は自分とは違うな」と思ったら、その人を上手く取り込むという感じで。
―最後に、メンターとしてチームやeyaの学生に伝えたいことはありますか?
メンターとしての責任はありますので、成長を感じ取ってもらいたいと思っております。私と私の会社のメンバーが他にも来ますので、具体的には、チームを動かした経験・そこからアウトプットを出した自信をつけてもらいたいなと思います。