【 engawa young academy 】 メンターインタビュー パナソニック篇

#インタビュー

2019年11月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第5回目は、パナソニックの黒田さん、若竹さんにお話を伺いました。
※第一回インタビュー(みずほFG)はこちら
 第二回インタビュー(日本たばこ産業)はこちら
 第三回インタビュー(積水ハウス)はこちら
 第四回インタビュー(島津製作所)はこちら

 

右奥) パナソニック リクルート&キャリアクリエイトセンター戦略企画課  黒田 健太朗さん
右手前) パナソニック 同センター タレントエクスペリエンス課  若竹 淳平さん
左)インタビュアー) 電通 京都BAC engawa young academy 事務局  
湊 康明

 

 ―まず、御社についてお伺いします。学生の皆さんに、パナソニックの意外と知られていないけど知ってもらいたいことはありますか?

若竹さん:やはり、事業領域の広さです。半年前、僕はパナソニックにキャリア入社しました。正直、入社前は家電だけの会社だと思っていました。しかし、家電だけにとどまらない住空間、街づくり、モビリティなど多様な事業領域がある事が入社の決め手の1つでした。まずは、その多様な事業領域が秘める可能性の大きさを学生さんに知ってもらいたいですね。また、多様化するこれからの“くらし”を創る新しい共創型プラットフォーム事業についても知ってもらいたいです。これまで培ってきた“くらし”のタッチポイントであるハードウェアを繋ぎ、そこにソフトウェアの力を掛け合わせることで一人ひとりにとってのよりよい''くらし''を実現していく。主な開発事例として、より自分らしい生活、より人間らしい社会を実現するくらしの統合プラットフォーム「HomeX」があります。この事業には、Googleの研究開発部門の立ち上げなどをしてきた松岡陽子さんが2019年10月から参画してくださっています。これまで積み重ねてきた技術力や人的リソースなどを最大限に活かしながら、変えるべきところは変え、パナソニックという枠を越えて「“くらし”をよりよくしたい」という同じ想いを持っている方々と共にこれからの“くらし”を創ろうとしています。

 

黒田さん:パナソニックはモノづくりを通じて、「今日のあたりまえ」を創ってきた会社だと思っています。パナソニックにはそれを表すようなエピソードが沢山あります。特に、家電が女性の社会進出を後押ししてきた話がすごく好きです。今から50年前って女性が社会で働くなんてありえないっていう時代で、家電が普及してしまったら女性は家事という労働から解放されて怠け者になるとか言われていたんです。今から考えると信じられないですよね。創業者 松下幸之助は製品を販売するための広告や宣伝は意義深いものであると考えてもいました。だから、新聞広告でも家電自体の機能を伝えるのではなく、家電によって女性が家事から解放されるという、その当時での「これからのいい未来」を訴えた企業広告を出しました。

ちょっと大げさかもしれないですが、そんな「いい今日」を創りたいという想いの積み重ねが、今日の女性が働くことを当たり前に選択できる世の中の後押しになったのかなと思っています。そんな「いい今日」を創りたいという想いを100年積み重ねていくなかで、パナソニックは家電だけでなく、家・学校・飛行機・工場含めくらし全般へお役立ちの領域を広げてきました。これが多角化企業である当社の歴史です。創業者の想いは、ブランドスローガン「A Better Life, A Better World」という言葉になって今日まで引き継がれています。そして、さらに次の100年で当社がどんな「あたりまえ」を作るのか、一緒にカタチ創っていきたいと思ってくれる方に関心を持ってもらえたらな、と思います。

 

若竹さん:そうですね、黒田君が言うように「A Better Life, A Better World」は「いい商品作って売ります」ではなく、今でいうデザイン思考のように「目の前の一人ひとりに寄り添って価値提供をしていく」ということを表していると思います。その価値提供手段がパナソニックには多くあり、それだけ挑戦のチャンスと可能性が多くある。そんな部分が伝わるといいなと思いますね。

 

―御社は、「採用から変革を起こす」とおっしゃっていますが、どのような想いからでしょうか?

若竹さん:採用部門の所長 萬田も様々な場面で発信していますが、働き方がこれだけ多様化している一方で、就職のやり方がこの60年間ほぼ変化していない。日本の大学生が置かれている「キャリア選択をする上でのアンフェアな環境」に対する危機感からです。企業と学生さんがもっとオープンで対等な関係の上で、本質的にキャリアや仕事の理解を深める機会を増やしていきたいと考えています。パナソニックがその着火剤や起点になれればいいなと思います。ただ、パナソニックだけで実現することは難しいです。だからこそ、他社、大学、学生さんと共に「新しい文化」を採用の観点でも共創していきたいと思っています。

 

黒田さん:また創業者の話になりますが、創業者 松下幸之助は、社員から「松下(現:パナソニック)は何を作る会社ですか」と聞かれた際に、「松下電器は人をつくるところでございます。併せて電機製品をつくっております。」と答えたという有名な話があります。これは、パナソニックに深く根付いた考え方だと思います。採用に話を戻すと、優秀な人を見つけて採用するって、ゼロサムゲームの奪い合いじゃないですか。人づくりを100年やってきた当社のノウハウがあれば、この違和感のあるゲームをよりよく変えられるのではないかと思っています。

学年や学校という枠組みを超え、キャリアや仕事について社会人と一緒に学べる機会によって、めちゃくちゃ学生さんが成長する様子も何度もみてきました。だから、社会全体でこういった成長できる機会を提供することができれば、日本全体で競争力の源泉である「様々な場面で活躍できる人」がどんどん増えていくのではないでしょうか。そういう社会の「今日のあたりまえ」をつくる起点になりたいというのがパナソニックの想いです。

 

パナソニックが提唱するミッションドリブン 〜人生100年時代の新・キャリア戦略〜
https://www.fastgrow.jp/articles/panasonic-manda-kouno

 

 

―それが異業種合同のインターンであるeyaに参加された企業としての意義なんですね。
では、ここからeyaについてお伺いしたいと思います。初日・2日目を終えてのご感想をお願いします。

黒田さん:まず、学生の皆さんそれぞれが何かしらの領域で飛びぬけていて、自分の二十代って何していたんだろうと思うばかりです(笑)。10年前だったら、今回集まってくれている36名の学生さんみたいに、学生のうちに起業したり、学生団体を作ったり、リーダーとして参画していたり…と色々な事をやっている人たちを同じ地域で集めることすら出来なったんじゃないかなと。ここに集まっている36人は社会や仕事、キャリアについて知るだけでなく、その先のことを考え、さらにその先にある自分が実現したい社会に向けてすでに行動を起こせている学生さんばかりが集まっています。そういった経験から出てくるアイデアや議論の質はハイレベルで聴いているだけでこちらが学ぶことばかりです。

 

若竹さん:異質性が高くていいですよね。かなり特殊な経験をしていたり、デザインが得意だったり、全員が別々の領域で飛びぬけているところに魅力を感じます。そして、それらが上手くチームとしてまとまった時に、さらに素敵な化学反応が起るのではないかと思うとワクワクします。

 

―初日、2日目と少しずつ個性がみえてきて面白いですよね。
では、初日の午前中、チームクリエイト※する学生達の様子を見てどう感じましたか?
※eya期間中のグループメンバーを、学生自身に決めてもらうプログラム

若竹さん:No.1よりOnly1という考え方が当たり前の時代を生きてきた彼らにとって、リアルなコミュニケーションの中ではっきりと否定される経験はそこまで無かったんじゃないかなと思います。プログラムの中で「チームになろう」と声を掛けても、断られるシーンもありましたよね。恐る恐る出した手を弾かれたそのあとに、どのようなコミュニケーションを取るかというところに個性がかなりでていました。正直、社会人になるとお客さんにはっきりと否定されたりすることも実際はありますよね。そういった経験に近いことを学生の時に経験できたことはきっと彼らのこれからの糧になると思います。

 

黒田さん:このコンテンツで大切なポイントは「自分で選んだメンバー」で作ったチームということ。少なくとも“5ヶ月間走りきる上で自分が納得して組んだチームにする為の禊”という文脈ではとても良かったなと思います。結局、自分が選んで作ったチームだからこそ、それが上手くいかないのも自分の責任という自覚をもって行動してほしいです。またその上で、それぞれのメンバーがリーダーシップを発揮してくれると、さらに成長したみなさんに会える気がしてワクワクしています。

学生にとって、eyaでの学びはワークショップに4、5回参加することだけではないです。「5 days」ではなく「5 months」の活動としてどう過ごすかが重要だと考えています。だから、engawaに来る日以外の時に、学生だけでどのようにチームをエンゲージしあい、メンバーの意見をすり合わせていけばチームがうまく機能するのかを意識してトライしてほしいなと思っています。5 monthsの学びを最大化するためにも、自分たちが自分たちの意志で作ったチームである事を意識しつつ、それぞれのメンバーがリーダーシップを発揮するようにサポートしていきたいと思います。

 

eya初日、学生と語る黒田さん

 

―学生がメンターを選ぶメンタードラフト※について、どう感じましたか?
※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム

黒田さん:「百聞百見は一験に如かず」ですね。これも、創業者 松下幸之助の言葉なんですが、どれだけ聞いてみても、どれだけ見てみても、一回の経験にはかなわないということです。このプログラムでは、メンターである社会人が社名を隠して自分のアピールプレゼンをします。その後、各テーブルを渡り歩いて学生からヒアリングを受ける。これって、普段学生の皆さんが体験される面接と全く同じことですよね。正直、誰からも選ばれなかったらどうしようとか思って、めちゃくちゃ不安でした…。でも、学生の皆さんが目を見て暖かく話を聞いてくれて、それだけで救われた気分でした。次、学生さんと面談する機会があれば、この気持ちを絶対に忘れずに対応したいと思いました。相手の立場を理解するって実際に経験してみないと本当に理解しているとは言えないなって痛感しました。

 

若竹さん:企業名がバレないようにプレゼンをしなきゃいけないので、「当社は〇〇です」ではなく「私はこう思う」といった表現が求められていたのも印象的でした。そんな風に話す機会はなかなかないので、すごくいいなと思いました。あとは、黒田くんのプレゼンで「僕のやりたい事を言うと会社が分かってしまうので言えません!」が印象的でした。自分のwillと会社のwillが重なっているのが素晴らしいと思ったので、そこを伝えられる機会があるのはいいと思いました。

 

―学生から受けた印象的な質問はありますか?

黒田さん:「あなたはメンターとして、どうチームへ貢献してくれるか?」という質問をほとんどのチームからもらいました。これに違和感があって、与えられたものをどのように吸収するか、という教育に慣れすぎているのかなと思いました。だから、「僕のメンタリングチームには“オトナを使い倒す”ことを課します」と回答しておきました。

僕の周囲で活躍している同世代の共通点は、上司や周囲のメンバーを巻き込むスキルがずば抜けて高いということです。これはただ巻き込むというより、自分が実現したい未来のための仲間を増やす力がずば抜けていると表現したほうがいいかもしえません。だから、学生のみなさんには今のうちから「周囲を巻き込む=大人を使い倒す」を体得するために、僕たちメンターを使い倒す視点でコミュニケ―ションをしてほしいと伝えました。

 

―2日目のディベートプログラムについてはいかがでしたか?

 

2日目 ディベートプログラムの様子

 

黒田さん:ディベートのやり方とか、論理構築のための調査結果はもちろん、モノゴトの捉え方という観点でも面白い学びがあったんではないかなと思います。

例えば、ディベート大会では勝負が始まる直前で、A/Bどちらの立場で主張するかを決めます。その後、それぞれ選ばれた立場が正しいと主張し、相手を打ち負かそうと議論します。A/B逆の立場で戦ったとしても同じくらい白熱した戦いになるはずです。つまりこれって、「モノゴトはたった一つの真理があるわけでなく、二面性でどちらも正しいというロジックを並べられる」ということだということだと思います。
ディベート大会を通じて、そんなところまで気づけると今後の会議などでの意見の捉え方も変わってくるのではないでしょうか。そういった気づきに繋がるサポートをしたいなと思います。

 

若竹さん:興味深かったのは決勝戦ですね。突発的な問いに対して、ロジック対エモーションで互いにひるむことのない3分間の引き込まれるディベートでした。

 

 

―では、eyaを通じたご自身の成長としてどのようなことを期待されていますか?

黒田さん: 先ほどeyaに参加する学生さんが多種多様な経験を積み、それぞれの経験に基づいた強みをもっていると言いましたが、おそらく社会全体でみてもそういった学生さんが増えていると思います。そして、そんな学生さんが社会人となり、ゆくゆくはチームのメンバーとして僕と一緒に仕事をすることもあると思います。だから、そんな遠くない未来の予行練習として、eyaでは様々なチームエンゲージメントの試行錯誤をさせていただいています。どうしたら、そういった経験をしてきた学生さんの成長機会を最大化させ、チームや仕事にエンゲージしてもらえるか」を意識しながらコミュニケーションをとっています。将来、いいチームを作っていきたいですからね。一人の大人同士として、素直に僕のコミュニケーションの取り方についてフィードバックをもらえる所が、とても貴重な経験になっています。eyaは社会的意義もあるし、社会人として私が一番成長させてもらえるという点でも貴重な機会だと思っています。

 

―異業種が集まる取り組みの中で、刺激として期待されることはありますか?

黒田さん:業種が異なれば考え方とか大事にする価値観が変わると思うんです。そういう意味で様々な業界から参画するということは、多面的に色んな価値観に触れる機会提供に持ってこいだと思います。''いい''は絶対軸で定義できないですよね。採用のミッションって、いい人を採用するとかエンゲージするとかもそうですが、他に重要なのは「なぜこの業界・会社・職を選んだのか」について学生自身が納得して説明できる状態を作ることだと思います。その機会作りの手助けのためにも、異業種と一緒に取り組み相対的に見える状態の中から、選択した理由を学生が見つけてくれれば、それは採用の仕事の本質には近いんじゃないかなと思います。

 

―プログラムを通じて学生さんたちと接して、彼らに期待していることはなんですか?

黒田さん:先ほどもお伝えしましたが、大人を使い倒すことですね。そのスキルを身につけて、社会に出た時に活躍しまくれる人になってくれたらいいなと思います。地頭力だけではなく、どうやって大きなリソース(人・物・金・情報)を動かすのかという意味でも、どんどん大人を使い倒せるような人に育って欲しいです。
「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」という言葉のイメージに近いのかもしれません。

 

若竹さん:「これに本当にワクワクしているのか」が大切だと思っています。ワークがタスクになってしまうより、せっかくやるなら楽しくやる方がいいと思うんです。「あと1ヶ月もある」ではなく、「あと1ヶ月しかない」みたいな方が楽しいと思いますよね。

 

―最後にeyaの学生に向けてメッセージをお願いします。

黒田さん:メンターとしての担当は1つの班になりますが、それ以前に僕は、eyaのメンターとして参加しています。「大人を使い倒す」と言った以上、「他班の人も私を使い倒す」ということを考えていただければと思います。

 

 

 

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2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら 第3回 積水ハウス様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第4回目は、電通の湊さん、工藤さんにお話を伺いました。   写真右)株式会社電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 湊 康明さん 写真左)株式会社電通 中部BC局 ビジネスデザイン部 工藤 永人さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。   ― 参加学生が、京都、大阪、広島、韓国に留学中の学生まで。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?湊さん、いかがでしょうか? 湊さん :私は、今年で電通のメンターとして、2年目を務めさせていただいておりますが、昨年と比較して変わった事は、コロナ禍による大きな社会変化が起こっている事が普通になってきているという事ですね。デジタルツールを使いこなすことは勿論、私のチームには、現在の居住地が、京都、大阪の人もいれば、広島の人も、韓国に留学中の人もいますよね。電通のメンターも、そもそも大阪と、名古屋ですし(笑)。それが普通で、その前提で特にこのアカデミーに参加している皆さ   んは、個人個人でいろんな活動をしている。ほんとに、誇らしいなと思いました。 眞竹 :このプログラムの1回目はengawaKYOTO(京都にある電通運営の事業共創スペース)でのリアル開催でしたので、京都を中心とした関西の学生が対象でしたが、昨年オンライン化してから、四国や九州、今年は海外まで広がりましたね。オンライン化ならではのメリットです。では、工藤さんいかがでしょうか? 工藤さん : 私はヤングアカデミーに参加するのが初めてですけど、初日からすぐに思ったのは全員、基礎能力が高く、地頭がいい。学生との懇親会などで話していて、コミュニケーション能力が高いっていうのはもちろんですけど、自分の考えを言語化、構造化して話すというのがとても上手だなと思いました。実際に課題などの評価をする中でも、課題を読み取ってそれを考える力っていうのが高いですね。 眞竹 :ありがとうございます。では、次の質問です。御社は今、学生の皆さんに、どういう企業イメージを持たれていると思いますか? 湊さん :そうですね。やっぱり、広告代理店、CMとか作っている会社、あと、オリンピックやっている会社、というイメージが強いと思います。それ自体は間違ってないですし、弊社のメインのビジネスである事は確かですが、最近はクライアント様の課題がいわゆる広告・プロモーションだけで解決できなくなっている事も増えてきている中で、弊社の社会的役割も変わってきています。 眞竹   :では、御社がどのように変わってきているのか、実際の姿を知らない学生へ、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか?   ― 社会的役割は変わっても、最高の解を提供することは変わらない。 工藤さん :社会的役割が変わってきているというお話ですが、社会ニーズが多様化したり、そもそも従来の尺度では測れなかったりと、ニーズを発見/創造することの重要度がさらに高まっています。そして、そのニーズに応える最高の解を電通は提供する立場にあることは変わらないので、常に最高の解を提供できるように私たちも解のフォーマットにとらわれないようになってきています。従来の広告やプロモーションというフォーマット以外の取り組みとしては、さまざまな事例あるのですが、例えば、 1:DENTSU DESIGN FIRM  https://dentsu-design-firm.com/   つたえることから逆算したプロダクト開発をご一緒したり、 2:THE KYOTO  https://the.kyoto/article 京都をヒントに文化・アートを学ぶプラットフォームを立ち上げたり、 3:ABC Glamp&Outdoors  https://abcgo.co.jp/ テレビ局と一緒に、グランピングで地方創生に取り組む会社をつくったりしています。 眞竹   :では、従来の広告、プロモーション領域に止まらない社会的役割の変化の中で、御社が今後目指していこうとしているところを、教えてください。 工藤さん :目指していこうとしているところは以前から変わっていない気がします。それは、社会やクライアントの課題を発見し、アイデアをもって解決することでちょっと先の未来を引き寄せること。です。ただ、世の中の変化に伴って、サービスをつくったり、事業共創を電通自体ができるように、実現力をさらに強化した電通を目指していく必要はあります。 電通のビジョン&バリュー:an invitation to the never before. https://www.dentsu.co.jp/vision/philosophy.html 眞竹   :では、お二人が現在携わっているもので、従来の広告、プロモーション領域に止まらない事例があれば、教えていただけますか? 湊さん :私と工藤が所属している電通若者研究部(ワカモン)の活動で、それぞれ学生に携わってインターンシップを運営していますので、そちらを紹介します。私の方からは47INTERNSHIP(ヨンナナインターンシップ)のお話をさせて頂きます。 ※「47 INTERNSHIP」 https://47internship.com/   ― 世界のクリエイティブアワードで受賞した47INTERNSHIP。 湊さん :2年目になる2021年も開催しました。昨年、コロナの影響もあり、インターンなどいわゆる就活系のイベントも大きな影響を受けて、就活生が困っているという状況がありました。そこで、逆にコロナだからこそ、新しい就活やその支援の形を作ることができないか、ということをNPO法人のエンカレッジと相談していたところ、これを機会に地方の就活格差に取り組めないか、というアイデアが生まれました。そこから47都道府県から集めた就活生の代表者が参加するインターンシップを開催しました。その取り組みが、様々なところから非常に評価いただきまして、例えば、世界最高峰のクリエイティブアワードのD&ADのブランディング部門にて、2021年最高賞のYellow Pencilを受賞する、ということにもつながりました。 眞竹   :その流れでの2年目。開催にあたって昨年との違いは何か意識されましたか? 湊さん :昨年の経験から、地方の就活格差にこのフレームが有効にワークすることがわかったので、より社会的影響度を高めていこうと考えて企画しました。例えば、これは結構驚かれるのですが、今年は学生から、2000以上のエントリーシートをいただきました。それを受けて、参加される47名以外の方にも希望者を募って、今回の47 INTERNSHIPのエントリーシートの評価基準であったり、これからの時代に求められている人材像はどのようなものか、などをDAY-0という形で協賛企業の皆様にもゲストで参加いただき、全国数百名の学生の皆さんに向けて開催しました。また、エントリーシートにおいて、47都道府県の学生の皆さんに「あなたが解決したい、あなたの身近な課題を教えてください」という質問をしたのですが、それ自体を「47都道府県課題MAP」でビジュアルにして、各地方の皆さんがどういう形で解決していきたいと思っているのかをセットでリリースしました。   「47都道府県課題MAP」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000085233.html 眞   竹 :ちなみに、どのようなことが地方で学生が感じている課題か、何か傾向は見えたりしたのですか。 湊さん :すごくクリティカルだと思ったのが、コロナになってどんどんネット社会が加速していく中で、地方高齢者のデジタルデバイドを挙げている学生が多かったことですね。そもそもネット化していくのはわかるけど、それについていけない人も結構いて、それが高齢者だったりします。特に高齢者の方がネットの恩恵を受けるべきなのに、それができていないことは、地方社会の大きな構造的な問題だなと改めて感じました。 眞竹   :ありがとうございます。では続いて、工藤さんの取り組みについてお伺いしたいと思います。   ― 「アイデア実現」のための全ての工程を、学生が実体験する。 工藤さん :今年で3年目になる「アイデア実現インターンシップ」についてご紹介します。それまでも電通若者研究部(ワカモン)で電通のインターンシップをプロデュースしていたのですが、私が初めて参加した3年前に新たなフォーマットとして始まったものです。学生とメンターの関係を、先生としてのメンターではなくて、伴走者としてのメンターという立ち位置にしました。学生が主体となって、それこそ、電通の社員が普段やっているような業務の工程を、自分の「ほうっておけないこと」の解決という学生自身のやりたいことを通して実体験をしてもらうことを目的に、アップデートしました。 眞竹   :3年目の今年は、どのような状況ですか? 工藤さん :今まさにクラウドファンディングのCAMPFIREで、11月末まで学生たちが支援を募っている段階です。今年は14人参加してくれたので、14プロジェクトが立ち上がっていますが、もうすでに期間を終えずに目標支援金額を達成しているプロジェクトもあります。  ※「電通ワカモン  アイデア実現インターンシップ」 https://camp-fire.jp/curations/dentsu-wakamon 眞竹   :ちなみに、学生の皆さんがどんなプロジェクトを考えたのか、いくつか紹介していただけますでしょうか? 工藤さん :私がメンターをやっていたプロジェクトだと、「Scaping OKAZAKI岡崎プロジェクト」です。キックボードをシェアするサービスで、キックボードで岡崎市の乙川エリアを移動して、「遊び場」化して、その良さに出会って教える、というプロジェクトです。もうCAMPFIREでの目標を達成しているプロジェクトですが、企画した学生が考えたのは、地元岡崎の乙川エリアが車で移動するには道が狭くて移動しにくいし、歩くにしてはちょっと遠い、ということでキックボードに目をつけて、移動そのものも観光にしていく、ということでした。この学生を始め、自分からいろんな人たちや行政などに働きかけを行ってもらうインターンになっています。他にも、「音のない料理教室」。これはイベント系ですけど、参加者同士が声を出さずに意思疎通を図りながら一つの料理を作り上げる、「耳の聴こえる方・聴こえない方が参加できる料理教室」です。すでにこの学生は、インターンに参加する前に一度イベントを開催していて、それをさらにアップデートしたいという思いを持って参加してくれました。 眞竹 :   3年目になり、すでに取り組んでいることがある学生も集まってきているんですね。 工藤さん :参加したメンターの中で、3年目でやっと完成形になってきたかな、という話をしています。学生を集める過程であったり、実際にプロジェクトを考え、立ち上げてもらう期間でであったり、改善できていていると感じています。 眞竹 :お二人はインターンを通じて、学生と企業の接点に携わっていらっしゃいますが、もっとこのようになればいいのに、と感じるところはありますか? 湊さん : 学生の皆さんにとって、企業で働くことにおいて何が大事にされているか、ということを肌で感じる機会があることが重要と思っています。なので、産官学が連携して、実際に働く場としての企業を考える、そういう教育機会を作れれば、就職活動の先行ステップとしてすごくいい機会になるのではないかと思っています。 工藤さん :学生に好きなことを見つけなさい、といってもなかなか難しく、一歩踏み出せない学生がまだまだ多いと思います。大学で学ぶ専門的分野以外でも、興味関心を持てる分野への学びや体験を企業側が提供できるような仕組みがあると面白いのでは、と考えています。 湊さん :就職活動の評価軸が企業側で緩やかに崩れてきている中で、学生側もそれに気づけていないと思っています。例えばeyaで美大の学生が、課題の落とし込みであったり、事業アイデアを作ったりするのがうまいと感じるシーンがあります。作品を作る過程で本質を見極める能力が鍛えられているからだと思うんです。そういう能力は今後企業側にも評価されていくと思うので、そういったことを知れば、きっと学生側の選択肢も広がります。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹広嗣 眞竹 :学生と企業の接点については、今後も改善していくべきポイントがありそうですね。では、そういった中で、電通がeyaに参加される意義やメリットを教えてください。 湊さん :企業紹介の際、広告代理店から、ビジネスをプロデュースする企業へ変化している、という事を、弊社はeyaで学生向けのメッセージとして発信しました。 それは、広告・プロモーションで培ってきた「アイデア」という弊社の強みを活かし、広告・プロモーション領域に留まらずに、クライアント様のビジネスのサポートを行っていきたいという事です。ですが、やはり、このような取り組みはそこまで認知度もなく、事業創造やリーダーシップなどに興味のある学生の皆さんに、弊社の未来の姿を是非知ってもらう機会として活かせればと考えています。 眞竹 :eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのようなことを期待されますか?  湊さん :これはメンターとして、学生の皆さんにお伝えしたい事ですが、こういった異業種合同の人材育成の取り組みって、ほんと、大人の社会見学だと思うんですよね。シンプルに、なかなか見えない企業の最先端の事例や、取り組むビジョンに触れる事は、知的好奇心が刺激されますし、楽しい事だと思います。そういった視点でみると、働く事自体がコンテンツになって、それを学生に見てもらうことで、学生の皆さんが働く事にポジティブになってもらう。これが、これからの日本を変えていく一つのカギになるんじゃないか、と思っています。     ― 「今を意味づける力」を身につけてほしい。 眞竹 :では最後に、 eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することは?工藤さんから、お願いします。 工藤さん :最初にお話ししたように、学生の皆さんの考える力がすごく高いなって思っていますが、あくまで提供された課題や自分が見つけた課題に対しての考える力が備わっている、ということだと思います。社会に出た時、その考える力の矛先をもっと広げないと、例えば、スケジューリングだったりとか、タスク管理だったり、人とのコミュニケーションそのものにも電通でいうところのアイデアが必要になります。課題を発見するとか、課題そのものを解決する為に考えるのはもちろんですけど、その矛先をもっといろんなところに向けられるようになって欲しいので、その手助けを、ちょっとの期間でもできればいいなと思っています。 湊さん : 期待することは、ぜひ、小さくまとまらないでほしいという事です。ビジネスをつくる力は勿論重要なのですが、自戒も込めて、それがスモールビジネスの方向にいっちゃう人も、たまにいるんですよね。もちろん、それ自体が悪いコトではないですし、生きていく上で大事な事でもあります。でもそれよりは、ぜひ、日本のこれからを自分が背負うんだ!!という気概を持って、世の中に対して課題感をもって、なるべく大きな理想的な世界観を描くクセをつけてほしい。また、ぜひそんな自分が掲げた世界観が実現できる場所を妥協せずに探して、キャリア設計していってほしいなと感じます。そのためにも、「今を意味付ける力」を身につけてほしいです。メンタープレゼンで1日目に話したことですが、忙しくて目の前の活動を何の為にやっているのか、を見失う時もあると思います。そんな時、立ち止まって、自分のキャリアを考えてみる。そのための材料を提供できる場になればうれしいです。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  積水ハウス篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第3回目は、積水ハウスの岡本さん、大野さんにお話を伺いました。   写真右)積水ハウス株式会社 開発事業部 岡本 勇治さん 写真左)積水ハウス株式会社 人事部 大野 隆正さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?岡本さん、いかがでしょう?  岡本さ   ん :今年の私のチームメンバーは、個性の強いメンバーが多かった昨年のチ―ムと異なり、メンターとして少しホッとしているところもあります。また違った個性のある各メンバーが主体的に動きつつ、まとまり感・一体感を持って、チームワークを意識して進めていると思います。 大野さん : 今年で3回目の参加ということもあり、穏やかに初日、2日目が過ぎたなぁという印象です。今年は特に良いメンバーが揃っていて、主体的に動いてくれるので、とても頼もしいですね。 眞竹 :今年の参加学生の皆さんも、起業や団体でのリーダーをやられている人が多いので、主体性は、きっとその現れですね。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか? 大野さん :おそらく、戸建住宅を国内で建築している会社というイメージを持っているのではないかと思います。 岡本さん :「あー、あのCMの会社ね」くらいの印象で、堅い、古い企業だと思われているのでは。実際、私が転職してくるまではそういうイメージで私自身も思っていましたので。戸建て事業以外の事業は恐らく知られていないと思います。   ―国内の戸建住宅だけじゃない、積水ハウス。 眞竹 :では、   御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業です、こんなことしているんです、という、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか? 大野さん :実は戸建住宅は、売り上げのうち13.2%しかないのです。現在では、請負型・ストック型・開発型の3つのビジネスモデルを国内だけでなく、海外でも幅広く展開をしており、年々、住宅以外のセグメント比率が大きくなっています。  積水ハウスグループにおける2020年度の売上構成比 眞竹 :2019年度が16.2%でしたので、2020年度は13.2%と下がっていますね。   大野さん :そうですね。このような国内・海外を含めたビジネスモデルの変化の中で、当社は「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョン※に掲げ、国内にとどまらず、ハード・ソフト・サービスを融合し、幸せをお客様に提案するグローバル企業を目指しています。 ※積水ハウスのグローバルビジョン及び成長戦略について https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/individual/growth/   眞   竹 :グローバルなビジョンを掲げられる中で、御社が新たに取り組んでいる、また取り組もうとしている新しい事業を教えてください。   ―住む人の「幸せ」のために、住まいの事業モデルを変えていく。 大野さん :いくつかあるのですが、例えば住まいの事業モデルを大きく変える「プラットフォームハウス構想」※というものがあります。最も人生に寄り添う存在である「家」を人生の変化に呼応させるもので、「健康・つながり・学び」のサービスから住まい手の「幸せ」をアシストする未来型の理想の家を創造するというものです。プラットフォームハウス構想の第一弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」の発売を既に開始しています。 ※「プラットフォームハウス」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/about/index.html 眞竹 :昨年お話を伺った時は構想段階でしたが、実際のサービスも始まったんですね。 大野さん :はい、「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」は業界初の間取り図と連動した視覚的に直感操作できるスマートフォンアプリで、温湿度センサーや窓センサーなどのIoTデータをパブリッククラウド上で蓄積し、外出先からエアコンなどの機器を確認・操作することができます。また、ドアなどの不正解放や家族の玄関ドア開閉操作を外出先からでも確認することができます。プラットフォームハウス構想のソフト・サービスを先行して一部商品化したものと言えます。 ※「プラットフォームハウスタッチ」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/ 眞竹 :まだサービスの一部、ですからね。この先どこまでスマートフォンと住まいがつながっていくのか、楽しみです。昨年お伺いした、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」※の取り組み状況はいかがでしょうか? 大野さん :こちらは、生活者参加型の実証実験が2020年12月より始まっています。「プラットフォームハウス構想」の「健康・つながり・学び」の中で、「健康」に取り組むものです。家の中で、実は約7万人の方が亡くなっているというデータがあります。脳卒中、心疾患、お風呂などでの事故、家の中での転倒や転落などによるものです。それらの社会コストは8兆円を超えると算出されているんです。そのうち最大1兆9000万円削減できると試算しています。「HED-Net」は、住宅内でバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症による異常を検知した場合に、遠隔で安否確認を行い、救急への出動要請、そして救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行う、世界初の仕組みになります。 ※在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Netの実証実験について https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/topics/2020/20201210.pdf 眞竹 :IoTによる住まいの進化がどんどん具体化して、住まいというハードに加え、ソフトをつくっていく企業へ変わっているんですね。住まいの概念がどこまで広がるのか、想像の範囲を超えていきそうです。   ―「地域×積水ハウス」の可能性。 眞竹 :では、今度は、住まい以外の取り組みについても聞いていきたいと思います。「Trip Base道の駅プロジェクト」※があるのですが、こちらには岡本さんが関わられているとお伺いしております。これはどのようなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか? 岡本さん :もともとは、とある企業と意見交換をしているときに出てきた、「道の駅の隣に道の駅で働く人の社宅があったら便利だよね」という着想がスタートです。そこで道の駅のことをいろいろ調べていくと、知っているようで知らなかったこといっぱいありました。例えば、道の駅が地域の情報発信拠点になっていたり、道の駅を中心に町おこししていこうとか、単なる休憩地点ではない役割を道の駅が持ち始めていた、ということを知ったんですね。加えて、道の駅で新鮮な肉とか魚、お酒とかを買ってその場で食べて、飲んで、寝られたらとても楽しいじゃないか、というところから、ホテルというアイデアを検討していきました。その中で、2018年当時、今後はインバウンドの増加も予想されるので、外資系ブランドのホテルとの協業を検討しようということで、それまで日本で一緒にホテル事業をしているマリオット・インターナショナル(以下、マリオット)に一緒にやらないか、と相談しました。マリオットとは以前から都市型ホテルはずっとやってきたんですけれど、地方部で外資系ホテルを展開する、という新たな側面からこのプロジェクトにもご賛同いただいて、やることになったんです。 ※「Trip Base道の駅プロジェクト」HP https://tripbasestyle.com/project/ 眞竹 :2020年10月より順次、ホテルをオープンされています。お客様や地域、またパートナー企業からの反応はいかがでしょうか? 岡本さん :地域の方々や道の駅の皆様からは、ホテルが開業したことで今まで以上にメディア等で地元の情報が発信されていることに大変喜んで頂いています。また、パートナー企業様については、個別に各地域で具体的な連携策をつくり始めており、実際にそれらを実行することで地域活性化に寄与出来ていると実感しています。 眞竹 :コロナ禍の中でのオープンでしたが、影響はいかがでしたか? 岡本さん :コロナ禍により、期待していたインバウンドがなくなったため、ホテル事業としては相当ダメージがありますが、当面のターゲットを国内旅行者に切り替えて「マイクロツーリズム」を推奨することで、そのダメージを緩和しようと頑張っています。また、近い将来必ずインバウンドは戻ってきますので、それまでは各地域でおもてなしの準備や魅力発掘の活動を精力的に行っています。例えば、本年10月に㈱クラダシ様と連携して、京都府京丹波町にて特産品である黒枝豆の収穫支援を行いました。これは人手不足で未収獲残となっていた黒枝豆を、学生を派遣して収穫支援することでフードロス削減を目指すという取り組みです。さらに、それだけでなく、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」でその黒枝豆を販売することで京丹波町の特産品のPRや販路拡大、地域活性化を推進しました。   「Trip Base道の駅プロジェクト」パートナー企業(2021年11月現在) 眞竹 :パートナー企業様との連携した地域のおもてなし、魅力発掘によって、今後、マイクロツーリズムとインバウンド、どちらも取り込める可能性が広がりそうですね。他にも、地域活性につながる取り組みなどありますでしょうか? 大野さん :建築デザインや地方創生事業のノウハウを生かし、国が進めるPark-PFI事業による国営公園として初となる「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点を福岡県東区にて開発し、来年オープンすることになりました。地方の国営施設を当社がブランディングすることで、訪れる人を増やし、人と人が交流することで公園全体及び周辺地域の活性化を図ります。 「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点が2022年3月に誕生。 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/library/2021/20210517.pdf 眞竹 :積水ハウスの高いデザイン力で磨かれた公園、是非訪れてみたいです。こういったプロジェクトが動いていく中で、積水ハウスが、地域創生に取り組む意義、というのはどのように感じていますでしょうか? 岡本さん :当社が掲げている“ESG経営のリーディングカンパニー”を目指すうえでも地域活性化の取り組みは有意義だと考えていますし、やりがいを感じています。また、当社の規模や知名度を活かし、さらにパートナー企業様と連携して、各社のリソースを組み合わせて行う地域創生活動は当然ながら地元の方々にお喜び頂いていますし、新しいビジネスチャンスも生まれてくるのではと期待しています。 大野さん :地方創生が叫ばれて久しい中、徐々に法整備が進んできているとは言え、未だ多くの人やモノ、サービスが都市部に集中している現状があります。地方では少子高齢化だけでなく、労働人口の流出が止まらず、慢性的な過疎化がいまも進行中です。創業以来、「住まい」や「まちづくり」にこだわってビジネスを展開してきたものとして、地方創生への思いは以前からありましたが、なかなかきっかけを掴むことが出来ずにいました。そんな中、当社が創業60年を過ぎたタイミングでコロナ禍となり、日本中が停滞している現状を少しでも打破したい、まずは地方から日本を元気にしよう、という思いから地域創生のプロジェクを始動させました。得意な「住まいづくり」や「まちづくり」のノウハウを生かし、社会課題の解決ができれば、我々にとってこれほど幸せなことはないと思っています。 眞   竹 :地域創生、社会課題解決に強い興味を持つ学生も多いですよね。では、ここから御社の求めている人材についてお話を伺えればと思います。 大野さん :海外事業の拡大やプラットフォームハウス構想の実現、その他の新規事業の立ち上げに伴い、様々な経験をしている人材を求めはじめています。デジタルヘルスケア分野を意識して医学部の学生にアプローチしたり、企業家精神があり積極的に行動できる学生、人とは違う斬新な価値観をもった学生も求めています。実際に今年は、国立大医学部卒の学生が新卒採用で内定しています。 眞竹 :積水ハウスが医学部、というのも意外なアプローチですね。そういった多様な人材を求める中でもここは外せない、という軸はありますでしょうか? 大野さん   :当社の企業理念の根本哲学「人間愛」の中に「相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする」という一文がありま   す。我々の仕事は、例えば住まい提案を通じて、お客様に「幸せ」を提供する仕事です。「幸せづくりのパートナー」として、企業理念に基づきお客様に対して、社会に対して新たな価値を創造するため、失敗を恐れず自ら考え行動することのできる人と一緒に働きたいと考えています。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣 眞竹 :では、御社のインターンや採用に関する活動について、課題と感じているところを教えてください。 大野さん   :従来の採用活動に加え、複数のインターンシップを実施するなど色々試みていますが、まだまだ出会えていない学生の方が多くいると感じています。これからは様々な企業と協業していくことになりますので、新しいビジネスの種を作っていく人、いろいろなリソースを使いながらその芽を大きく育てていく人が必要になってきます。また、今すぐにはビジネスにならないけれども、新たな分野、新たな専門領域でじっくりと基礎研究をしてくれる人も必要です。これまで以上に、多様な人材を採用していくことが課題ですね。 眞竹 :そのような課題の中で、eyaに参加されている理由、意義など教えてください。 大野さん   :当社の業領域の拡大や環境変化を考えて、これまでの採用活動ではなかなか接点を持てなかった「新たなビジネスの芽を生み出すアントレプレナー志向をもった人」と出会えるのではないかと考えたからです。実際に、期待以上に良い学生が多数おられ、そういった学生と接点を持てることは大きなメリットと考えております。また、他社の人事部の方や先進的な取り組みをされている社員の方のお話を聞けることができ、とても良い刺激になっています。 眞竹 :メンターとして参加するご自身にとっての意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか? 岡本さん :年齢を重ねると段々と感度が鈍くなってきたり、思考に偏りが出てきたりと悪い習慣が身に付いてきますので、感度の高い学生から良い刺激を得ることで普段の仕事に良い影響を与えたいと思いますので、積極的にコミュニケーションをとっていきたいと思っています。また、他社のエネルギッシュなメンターの方の良いところを、最低1つは盗めればと考えています。 大野さん :確固たる自信をもち、自ら新しい時代を切り拓くんだという気概があるような学生が、何を思考し、どの様な活動を行い、社会に出て何をしたいと考えているのかを純粋に知りたいと思っています。 眞竹 : では最後に、eyaの学生たちと接して感じたこと、そして期待することをお願いします。 大野さん :強く目的意識を持っている方が多いなと感じています。あとは、摩擦を恐れず自分の意見や価値観を互いに共有し、理解し合い多くの気づきを得てほしいと思います。 岡本さん :皆さんはポテンシャルが相当高いので、それを今回のeyaでどう発揮して、また他の人から何を学んで帰るのかを毎回意識して取り組んで頂き、最後には10月より成長したと自覚出来るようになって欲しいですね。