多業種合同インターンプログラム 「engawa young academy」とは?

#インタビュー

左)(株)リンクアンドモチベーション組織開発デザイン室 エグゼクティブ ディレクター 樫原 洋平
右)(株)電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター プロジェクトリーダー 前⽥ 浩希EPD

engawa KYOTO 発の学⽣向けインターンプログラム「engawa young academy」が、2019年10⽉からスタートします。この取り組みにあたり、プロジェクトの共創パートナーである(株)リンクアンドモチベーションの樫原さんと、もう⼀⼈の⽣みの親、(株)電通京都ビジネスアクセラレーションセンター(以下、電通京都BAC)プロジェクトリーダー前⽥EPD からお話を伺いました。(インタビュアー:当プログラム事務局メンバー 電通京都BAC 湊 康明)


湊:まず、⼈材のプロである樫原さんにお伺いします。現在の企業の⼈材における課題は、どういったものでしょうか?

樫原さん: 企業も実にざまざまですが、私は16年間⼀貫して⼤⼿企業の⼈材採⽤を担当してきましたので、⼤⼿企業に限定してお話をします。ちなみに、⼤⼿企業は、“⼈を充⾜する“という意味では、あまり⼤きな課題はないです。もっといえば、会社のいわゆる屋台⾻を⽀えるようなオペレーションをしっかり回せるような⼈材は、きっちり採⽤活動すれば採れているのが現状です。ただ、2018年度の決算で、⽇本で最も利益を稼いでいるトヨタ社ですら「10年後⾃分たちが存在するか分からない」という強い危機感を持っています。それくらい、⽇本の⼤⼿企業はかつでないほどの厳しい競争にさらされています。その意味で、⽣き残りをかけた「イノベーション」が経営課題になりつつあります。では、誰がその「イノベーション」を起こすのか?少なくともオペレーションを正確にまわすことが得意な⼈達に「イノベーション」を起こすのは難しいのです。なぜなら、役割が違うので。だからこそ、企業の変⾰・新規事業の⽴ち上げ等を担える「タイプの違う⼈材」を採って、活かす。このことが、重要な⼈事課題になってきています。

湊:だとすると、今後企業に⼊っていく学⽣の皆さんに求められるものが変わっていくと思うのですが、現在の学⽣についてこうなって欲しいなどの想いはありますか?

樫原さん:「イノベーション」において、0から1を創り出すことも重要です。ただ、⼤⼿企業において⼤事なことは、多様なものを組み合わせ、多様な⼈達を巻き込み、新しい事を仕掛けていくことです。たとえば、「今後社会で活躍していくためには、全部の事が分からなきゃいけない」と⾔う学生もいるのですが、これは現実的には極めて難しい。実は⽇本には、優秀な、素晴らしいエンジニアがたくさんいます。ただ、不⾜しているのは、ビジョンを⽰し、エンジニアを巻き込んで、何かを成す「リーダー」です。⻄遊記で例えるなら、「天竺に⾏く」という⽬的を⽰す「三蔵法師的な⼈材」が不⾜しているわけです。だからこそ、“会社をどう変えていくか”“何をすべきか”といったWHY やWHAT を定義して、HOW のスキルを持つ多様な⼈たちを巻き込みながら、組織・チーム・プロジェクトを創っていける様な⼈材が求められています。ただ、残念なことに、これまでの⼈⽣の中で、リーダーシップを発揮してきた、まさに「リーダー資質」のある学⽣が、社会に出る段階で、なぜか、その強み・資質を発揮しようとしないのです。むしろ、⾃分の弱みを克服するという視点でファーストキャリアを選択しがちです。本当にもったいないことであり、社会的に⼤きな損失といえます。

湊:確かに!

樫原さん:その意味で、“組織を変⾰できる経験や関⼼を持つ学⽣が、社会でその⼒をそのまま発揮していく”というストーリーが⼤切だと考えています。つまり、リーダーの素質を持つ⼈間は、社会に出てもリーダーとして⽣き、その⼒をより開花させていくことが重要です。リーダーだけど、まずは⼒をつけて、またリーダーに戻るという思考スタイルをとっている⼈が多いので、そうではないキャリアの道筋をつくっていかないといけないですよね。これまでの⼤⼿企業の多くが、基本的には学⽣を⼀律同じように育てていましたが、同じ扱いではなくそれぞれ状況やポテンシャルに合わせたキャリアを創っていかないと、会社も⽣き残っていけません。⾔い換えれば、より⼤きな⼀歩を踏みたい、若いうちから挑戦をしたいと考えているセグメントに対して、どのような機会・環境を創っていけるかが、重要です。残念ながら、そういう想いを持った学⽣は、⽇本の⼤⼿企業を見ていないことが多いのが現状です。これは、⾮常に悲しいなって思います。

湊:その中で今回、engawa young academyが⽣まれることになるわけですが、これにかける想いをお聞かせいただけますか?

樫原さん:⼤⼿企業の採⽤の⽅に良く聞かれます。「40 代で役員になれるような、エンジンの⼤きい、リーダー⼈材はどこにいるのか?」。最近、想うのは、もはや、この「探すパラダイム」の限界です。もっといえば、そのような「⼈材」への需要と、供給がアンマッチしています。それにも関わらず、⼤⼿企業は、さまざまな⼈材サービスを活⽤して、「効率的」にその「⼈材」を採ろうとしている…。北は北海道から、南は福岡まで、全国の学⽣と年間数百⼈と数年間、⾯談をし続けていますが、そのような「⼈材」が、安定的に輩出されている「機関」が、私の知りうる限り、ないのです。もちろん、偶然、ある年に、いたりはしますが。その意味で、このengawa young academy で実現したいことは、「探すパラダイム」から「育むパラダイム」への変換です。「モノづくりは⼈づくり」「教育は国家百年の計」という⾔葉にも代表されるように資源の乏しい⽇本は、⼈を育て、磨くことで、成⻑・発展してきました。変⾰の時代だからこそ、その「原点」に戻るべきだと強く想っています。その意味で、engawa young academyでは、個社の利害を超えて、ALL Japan の精神で、次代を担う⼈材を、みんなで育み、磨き、活かすという挑戦をしたいと考えています。

湊:樫原さんのそういった想いもあって、engawa young academyが⽣まれた訳ですけれども、実際にこうして形になったきっかけ、コンセプトについて、前⽥EPDからうかがえますか。

前⽥:松下幸之助の経営哲学で、“ものをつくる前にひとをつくる”とある様に、⼈を創っていかないと教育改⾰も社会変⾰も出来ません。「じゃあ、将来の⽇本を背負って⽴つような⼈間を創ろうよ」という話を樫原さんとずっとしていて。そこで、この“engawa KYOTO”⾃体のコンセプトが、中と外を繋げる曖昧な空間で、まさしく僕らの話していたコンセプトと⼀緒で、この変化の激しい・不確実な時代だからこそ、外と共に創る=共創して、お互いその摩擦で磨き上げられていかないと、⼈間はもう育っていかないと思っているので、この場を使ってよりリアルな場所で、僕らが話していたようなことを⼀つのアクティビティとして実現させようとなりました。全てはこの場所“engawa KYOTO”があったからこそ、普通に話していたことをここでアウトプットして結実させることが出来たのだと思います。単純に、電通とリンクアンドモチベーションだけであれば、リンクアンドモチベーションのセミナールームとか電通の会議室とかでやっていたと思います。そうなると、ユニークネスが無いし、きっと学⽣も惹かれるものがない。逆に⾔えば、ここ、“engawa KYOTO”のコンセプトがあるからこそ、集まる学⽣と今回ご参加いただく企業も⾯⽩い、となったのだと思います。学⽣も⼀つのステークホルダーであるということを考えた時に、その“学⽣”と“⼤⼿企業”などの⾊々なステークホルダーの⼈間が集まるからこそ、お互い摩擦で磨きあうことで、学⽣にも企業にも、企業同⼠にも、異業種他社との新しい価値みたいなものを⽣み出していけるのではないかなと。それにより、将来的にもいろんな変⾰を⽣み出せるのではないかという想いで、こういくプログラムをつくりました。

湊:このプログラムへの参画企業を募るにあたって、どのようなニーズがあると感じていましたか?

前⽥:やっぱり企業って⼤⼿企業になるだけ、それだけ歴史がある訳です。そうすると、歴史として起業した時の理念は残ってはいるけれども、今となってはやはり⾃分達のドメインをどう粛々と回していくのかが問われます。その時、次の10年20年を任せられる⼈間を本当は育てていかなければいけないのです。が、企業に⼊ってしまうと企業に準じてしまいます。ただ、それに対して危機感を持ってくださっている⽅は沢⼭いると思います。企業の中で新しい企業を起こせる=新しいドメインを創るような学⽣さんを欲しがっているし、育てたがっています。それは僕らの今回のコンセプトの⼀つでもありますし、今回の6社※も⽇本の産業・企業・事業を⽀える⼈間を欲しているのだと思います。※参加企業:株式会社島津製作所、積⽔ハウス株式会社、⽇本たばこ産業株式会社、パナソニック株式会社、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社電通の6社

樫原さん:そうですね。なので、今回のプログラムはかなり理念型だと思います。コンセプトや⽬指すもの・その世界観への共感が今回の参加企業の共通条件です。“⾯⽩そう”とか“意味ありそう”とか、そういう事が先⾏していて。みんなで⾯⽩いもの・新しいものを京都で創っていくのっていいよねっていうワクワク感みたいなものが、プログラムの参加者の皆さんの前提にあると思います。いい⼤⼈がみんなでやろうぜ!みたいな。

前⽥:参加される企業の皆さんもすごく危機感を持っていらっしゃるのだと思います。ただ、中から変えることがなかなか難しいから、変えられそうなやつがどんどん会社に⼊ってきてくれたらいいしっていう事だよね。そうでないと…ノキア(NOKIA)があれだけ携帯電話で全盛を誇っていたのに、最後はマイクロソフトに売却してしまいましたよね。同社CEOの⾔葉で「We didn't do anything wrong, but somehow we lost(我々は何も間違ったことをしていない。しかしどういうわけか、だめになってしまった)」とありますが“普通にしていたら、失敗していなくても事業がなくなっちゃう・消え失せちゃう”そんな危機感を皆さん持っていると思います。そういった思いへの共感が、参加する企業を募るにあたってのポリシーだったのですが、樫原さんがおっしゃった様に、皆さんそのコンセプトに対して⼤きく賛同してくださって、今回の6社に繋がりました。

樫原さん:電通さんと弊社の組み合わせも結構⾯⽩いですよね。初めてですよね?ずっと商品市場に向き合って世の中を追ってモノをどう展開していくか、ブランディングに関わる電通と、⼈材育成でずっと労働市場に向き合っているリンクアンドモチベーションが、⼀緒に⼿を組んで新しいことをやるっていうこと⾃体が実は事務局サイドのイノベーション。つまり、事業に向き合う電通さんと組織に向き合う弊社が⼿を組んでそういうリーダーを創ろう・役割分担をしながらやっていこうっていうこと⾃体がものすごく新しいですよね。だから、うちの会社でもワクワクしている社員が多いんですよ。事務局サイドの“何か新しいことをやりながら”という気概に共感してくれている感じはありますね。

湊:ありがとうございます。では、engawa young academyがどういうプログラムになっていくのか、お話しできる範囲でお願いできますか?

図:engawa young academy の概要
(中央)ロゴ:松から⾶び⽴つ鷹をデザイン。若い才能が、⾼い視座を持って⽻ばたいていきます。

樫原さん:⼤きな⽬的は、企業のど真ん中で活躍出来るリーダー、イノベーターをつくることです。ざっくり⾔うと、前半は「誰に何を」というのを定義していく様なリベラル・アーツと、それをどの様にしていくかというビジネス・イノベーション。コンセプトはその⼆つに分かれています。基本的には、学⽣と企業が磨きあう・相互にぶつかり合っていくプログラムなので、⼤⼈が安⼼してとかではなくて、⼤⼈も磨くし学⽣も磨く。磨きあうことを⼤事にしているプログラムです。かつ、学⽣が基本的には⾃分で考えて、主体的に⾏動していくというのが肝となるコンセプトですね。具体的に⾔うと、チームも⾃分たちで作るし、メンターも⾃分たちで選ぶ。メンターを⾃分で選ぶことってなかなかないですよね。⾃分たちが共に学ぶ5ヶ⽉間の学習環境を、基本的には⾃分で選ぶっていうコンセプトを⼤事にしています。いきなり初⽇にして⼤⼈がプレゼンしていきなり選ばれる。

前⽥:ドラフト会議での逆指名みたいに。

樫原さん:学⽣同⼠も競わせます。基本的には、ずっと磨き合って5ヶ⽉間を過ごしていく。メンターが並⾛した上で、最後はチーム間で相互フィードバックしたり。最終⽇は、今後、⾃分がどうリードしてどう⽣きていくかってことまで内省までします。だから⼈材育成で⾔われる様なコンセプトは、要所要所⼊れながらも最先端のチャレンジを沢⼭していきます。今回の6社も皆さんもよくのってくれましたよね。

湊:参加する学⽣たちに、このプログラムを通じてどう変わって欲しいですか?

樫原さん:そうですね。⼀つは、リーダーとして何をなすのかという、⽬的を⽰せる⼈になってもらいたい。その「覚悟」を持ってもらいたい。もうひとつは、⽬的のために⼤きな組織を巻き込んでいく⼒を⾼めてもらいたい。この2つが学んでもらえたらと思います。engawa young academyは続けていくこと前提なので、参加した学⽣が⾊んな会社に散っても、定期的にこの場で集まりながら、ここの場⾃体がオープンイノベーションの基礎になればと。20年後、ここの1期⽣が⽇本を変える⼤きな原動⼒になったよねって、幕末松下村塾みたいな場所に、この場所がなれたらすごくいいなと思っています。

前⽥:“engawa KYOTO”のコンセプトは、「ここは未知との境界線」。やっぱり学⽣も、未知のものに対して怖がらない学⽣。どんどんチャレンジしよう、アウトプットを何か作ってやろうという⼈間をどんどん輩出したいなと思います。その為にどうすべきかのビジョンまできっちりと持て、その為に⼤⼿企業から⾊んな影響や知識や知⾒、そして知恵を得て、どんどん⾃分なりの明確なビジョンにしていける⼈間を育てたいなと思います。

樫原さん:だから、特に後半は各現場で、まさに最前線で未知と戦っているような⽅々にも沢⼭来て頂いて、そこでの交流とかリアルなフィードバックとかを準備しています。そこで⽇本企業のプロトタイプのイメージじゃなくて、最前線で戦っていらっしゃる⽅々の想いとか⽣き様とかをこのプログラムで⽰せると、学⽣にとっても⾮常に学びが⼤きいのではないかと。そんな仕⽴てが後半にはあったりしますね。

右:インタビュアー)(株)電通 京都BAC engawa young academy 事務局 湊 康明

湊:今後も続いていく構想のengawa young academy の未来像、展望は何ですか?

前⽥:展望はやはり、⾃らビジョンを描ける⼈間が1 ⼈でも輩出されて、新しい企業の中でドメインを創るようになることです。企業内起業であるとか、36 ⼈いるので同窓も出来るから、違う企業に散らばっていたけど、その⼈間同⼠がチームとしてミートアップされて連携して新しい枠組みを作るとか。⾊んな⼈を巻き込んで、新しい成果が⽣まれるのが、このプログラムの1 番の醍醐味じゃないかと思います。

樫原さん:そう。企業の中から鍵を開ける⼈が出てくれば、いつか我々にとって最⾼最強のエコシステムになるっていう。前⽥さん、ですよね?

前⽥:うん!(笑)

樫原さん:最終的にはそれによって、あの時お世話になった⽅々に発注しようって我々に来てくれたら、ありがとうございます!みたいな!(笑)

⼀同:(笑)

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#インタビュー

【Serendipity@engawa 第二回】遠野ハンドクラフトプロジェクト/越智氏インタビュー

【Serendipity @ engawa】と題し、engawaという場で出会う多彩な人々にお話を聞くインタビューシリーズ。第二回は「遠野ハンドクラフトプロジェクト」より越智和子さんにお話を伺いました。(現在は終了しております) イベント概要 →  https://engawakyoto.com/event/event_780/  (engawa KYOTOサイトに遷移します) *Serendipity @ engawaシリーズ第一弾  吉川染匠 / 吉川博也氏インタビューはこちらから 遠野ハンドクラフトプロジェクト 越智和子さんがいざなう手仕事の世界 残暑厳しい9月、engawa KYOTOギャラリーにおいて『布のある暮らし展』が開催されました。 今回はその主催者である「遠野ハンドクラフトプロジェクト」の越智和子さんにお話しを伺いました。 【京都・丹後】【沖縄・琉球】【岩手・遠野】の作家がここ京都に集い、昔ながらの手仕事を披露する展示会となりました。 この展示会のコーディネーターである越智さんは小柄ながらパワフルで、そしてどこか凛とした強さを秘めた魅力的な方です。お話を伺うにつれ、人を惹きつけるその力の源が見えてきました。 (左)インタビューに応えていただいた越智 和子さん (右)展示会イベント チラシ     越   智和子さんご紹介 産地に息づく伝統的織物を現代のスタイルに活   かすことをライフワークに「楽居布(らいふ)」を主宰。阪神淡路大震災、コロナ禍を経て「困難な時こそ、今を気持ちよくこれからをポジティブに生きようとする人々に寄り添うものづくりが必要」と展示会やワークショップをエネルギッシュにこなす。 布のチカラ・美しさに惹かれて始まった「布の旅」は運命の地、遠野に導かれ…そして旅はまだまだ続く。産地にこだわったウェアや小物は阪急百貨店うめだ本店にて「日本の手仕事サロン・楽居布」として展開中。 海外で運命的に出会った日本の布 日本の伝統と四季折々の自然を背景に生まれた手仕事の数々… 出会いは『丹後シルク』。 その出会いは越智さんがまだテキスタイルデザイナーだった頃、JETROからアドバイザーとして派遣されたイタリア・ミラノのテキスタイルデザインの展示会だったというから驚きです。 着物のイメージしかなかった丹後シルクの美しさに感動し、今までその素晴らしさを知らなかったことに唖然としたと言います。 ジャパンブランドとして世界で評価の高い日本の布、洋に軸を置いた丹後シルクの素晴らしさを日本に知らしめたいという思いで越智さんは動き出します。 それはテキスタイルデザインの世界で量産される顔が見えない商品に疑問を感じていた頃でもありました。 その後、日本の織物・工芸のルーツがある沖縄の作家たちに出会い、ますます作家支援とその活動の場を生み出すことの重要性を感じ、越智さんの活動が本格的にスタートしました。 作家紹介① 【京都・丹後】丹後シルク「染織工房嶋津」主宰:嶋津 澄子さん 世界的なシルク産地、京都丹後で染色家として活躍。京丹後の絹織物に発色のいい美しい染色を施す。 今回は遠野をイメージした色を染めたシルクを展示。 京都丹後の染(シルク) 染織工房嶋津(峰山町)     作家紹介②   【沖縄・琉球】琉球藍手織り 宮良千加さん 琉球大学卒業後、島袋常秀に陶芸を、成底トヨに織りを師事し、うるま市に「工房・花藍舎(からんしゃ)」をひらく。キツネノマゴ科の植物から抽出された泥藍で染める琉球藍の深いブルーが魅力。 琉球 藍染   琉球藍染を生み出す”工房・花藍舎(からんしゃ)”   遠野ハンドクラフトプロジェクトの立ち上げ 運命的な出会いは続きます。 京都大学の名誉教授   である池上惇先生が創設された文化政策・まちづくり大学校の文化交流会に参加することになった越智さんは開催地である遠野を初めて訪れることになります。 自然の中で地元の材料を生かしたものづくりをする姿に懐かしさを感じ、その自然と一体化した暮らしぶりに共感します。古くなった着物を裂いた紐状の糸で織った裂織りや山に自生する蔓で編んだ籠は野趣に富み生命力に溢れ、魅力が尽きません。 越智さんの言葉を借りると「それはもう、おとぎ話の世界のようで…そう、引き寄せられるように出会ってしまったのよ」と言うことになります。 行く先々で出会いが用意されているのは越智さんが必要とされているからだと思えてきます。 この尊い手仕事を未来に生かし、ともに学び、育ち合い、伝えたいという思いで「遠野ハンドクラフトプロジェクト」が立ち上がりました。 プロジェクトは池上先生のふるさと創生の活動とリンクした形で遠野がきっかけとなりましたが、そのネットワークは近江の麻・丹後のシルク・琉球の藍染へと日本各地に広がっています。 作家紹介③ 【岩手・遠野】遠野の美しい自然のなか、「花香房」のユニット名で活躍する佐藤秀夫・智江夫妻。   古くなった布を裂き紐状にして作る裂織り、また野山から山葡萄やくるみの木を自ら採ってきて作る籠など… 自然と共に   ある遠野の生活を伝えるために百貨店への出店やワークショップを開講している。 NHKの番組「猫のしっぽ カエルの手」にも出演。 遠野の手仕事    越智和子さんが目指すもの engawaギャラリーに所狭しと並んだ作品の数々からは 奥ゆかしさの中に作り手の秘めた情熱が感じられます。 そしてその技術は日本が誇る唯一無二の宝物です。 作家がものづくりに集中するためにもその価値を世に知らしめ、発表の場を作る人が必要。 そして現代の生活様式に合わせ、手にしやすい価格にすることも重要だと語る越智さん。 手仕事の魅力を伝えること、そして地方の作り手のまちづくり活動を応援しモチベーションを高めること、その思いこそが越智さんの力の源です。 「池上名誉教授の言われる『文化資本を文化経済に生かす』を実践しているのよ。」と にこやかに笑う越智さんはとても輝いてみえました。 越智さんは「ものづくりを通して自立し、歳を重ねても社会と関わり、世代を超えた交流を持ち、学びあい、 自分らしい人生を歩むために一歩を踏み出した」と言います。 人生100年時代…リモートワークやワーケーションが進む時代、 地方の方々との交流を通して日本の奥深さを体験する事は知らなかった世界への第一歩かもしれません。 自然が与えてくれるものを人が紡ぐ。 そして人から人へ…作品を通して作り手と使い手の思いが歴史を作っていくのであれば、 この京都の小さなギャラリーでその歴史の一片が作られたことはとても意義深く思います。 engawaギャラリーのスタッフも心を熱くし、力をもらった展示会となりました。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  電通篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら 第3回 積水ハウス様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第4回目は、電通の湊さん、工藤さんにお話を伺いました。   写真右)株式会社電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 湊 康明さん 写真左)株式会社電通 中部BC局 ビジネスデザイン部 工藤 永人さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。   ― 参加学生が、京都、大阪、広島、韓国に留学中の学生まで。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?湊さん、いかがでしょうか? 湊さん :私は、今年で電通のメンターとして、2年目を務めさせていただいておりますが、昨年と比較して変わった事は、コロナ禍による大きな社会変化が起こっている事が普通になってきているという事ですね。デジタルツールを使いこなすことは勿論、私のチームには、現在の居住地が、京都、大阪の人もいれば、広島の人も、韓国に留学中の人もいますよね。電通のメンターも、そもそも大阪と、名古屋ですし(笑)。それが普通で、その前提で特にこのアカデミーに参加している皆さ   んは、個人個人でいろんな活動をしている。ほんとに、誇らしいなと思いました。 眞竹 :このプログラムの1回目はengawaKYOTO(京都にある電通運営の事業共創スペース)でのリアル開催でしたので、京都を中心とした関西の学生が対象でしたが、昨年オンライン化してから、四国や九州、今年は海外まで広がりましたね。オンライン化ならではのメリットです。では、工藤さんいかがでしょうか? 工藤さん : 私はヤングアカデミーに参加するのが初めてですけど、初日からすぐに思ったのは全員、基礎能力が高く、地頭がいい。学生との懇親会などで話していて、コミュニケーション能力が高いっていうのはもちろんですけど、自分の考えを言語化、構造化して話すというのがとても上手だなと思いました。実際に課題などの評価をする中でも、課題を読み取ってそれを考える力っていうのが高いですね。 眞竹 :ありがとうございます。では、次の質問です。御社は今、学生の皆さんに、どういう企業イメージを持たれていると思いますか? 湊さん :そうですね。やっぱり、広告代理店、CMとか作っている会社、あと、オリンピックやっている会社、というイメージが強いと思います。それ自体は間違ってないですし、弊社のメインのビジネスである事は確かですが、最近はクライアント様の課題がいわゆる広告・プロモーションだけで解決できなくなっている事も増えてきている中で、弊社の社会的役割も変わってきています。 眞竹   :では、御社がどのように変わってきているのか、実際の姿を知らない学生へ、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか?   ― 社会的役割は変わっても、最高の解を提供することは変わらない。 工藤さん :社会的役割が変わってきているというお話ですが、社会ニーズが多様化したり、そもそも従来の尺度では測れなかったりと、ニーズを発見/創造することの重要度がさらに高まっています。そして、そのニーズに応える最高の解を電通は提供する立場にあることは変わらないので、常に最高の解を提供できるように私たちも解のフォーマットにとらわれないようになってきています。従来の広告やプロモーションというフォーマット以外の取り組みとしては、さまざまな事例あるのですが、例えば、 1:DENTSU DESIGN FIRM  https://dentsu-design-firm.com/   つたえることから逆算したプロダクト開発をご一緒したり、 2:THE KYOTO  https://the.kyoto/article 京都をヒントに文化・アートを学ぶプラットフォームを立ち上げたり、 3:ABC Glamp&Outdoors  https://abcgo.co.jp/ テレビ局と一緒に、グランピングで地方創生に取り組む会社をつくったりしています。 眞竹   :では、従来の広告、プロモーション領域に止まらない社会的役割の変化の中で、御社が今後目指していこうとしているところを、教えてください。 工藤さん :目指していこうとしているところは以前から変わっていない気がします。それは、社会やクライアントの課題を発見し、アイデアをもって解決することでちょっと先の未来を引き寄せること。です。ただ、世の中の変化に伴って、サービスをつくったり、事業共創を電通自体ができるように、実現力をさらに強化した電通を目指していく必要はあります。 電通のビジョン&バリュー:an invitation to the never before. https://www.dentsu.co.jp/vision/philosophy.html 眞竹   :では、お二人が現在携わっているもので、従来の広告、プロモーション領域に止まらない事例があれば、教えていただけますか? 湊さん :私と工藤が所属している電通若者研究部(ワカモン)の活動で、それぞれ学生に携わってインターンシップを運営していますので、そちらを紹介します。私の方からは47INTERNSHIP(ヨンナナインターンシップ)のお話をさせて頂きます。 ※「47 INTERNSHIP」 https://47internship.com/   ― 世界のクリエイティブアワードで受賞した47INTERNSHIP。 湊さん :2年目になる2021年も開催しました。昨年、コロナの影響もあり、インターンなどいわゆる就活系のイベントも大きな影響を受けて、就活生が困っているという状況がありました。そこで、逆にコロナだからこそ、新しい就活やその支援の形を作ることができないか、ということをNPO法人のエンカレッジと相談していたところ、これを機会に地方の就活格差に取り組めないか、というアイデアが生まれました。そこから47都道府県から集めた就活生の代表者が参加するインターンシップを開催しました。その取り組みが、様々なところから非常に評価いただきまして、例えば、世界最高峰のクリエイティブアワードのD&ADのブランディング部門にて、2021年最高賞のYellow Pencilを受賞する、ということにもつながりました。 眞竹   :その流れでの2年目。開催にあたって昨年との違いは何か意識されましたか? 湊さん :昨年の経験から、地方の就活格差にこのフレームが有効にワークすることがわかったので、より社会的影響度を高めていこうと考えて企画しました。例えば、これは結構驚かれるのですが、今年は学生から、2000以上のエントリーシートをいただきました。それを受けて、参加される47名以外の方にも希望者を募って、今回の47 INTERNSHIPのエントリーシートの評価基準であったり、これからの時代に求められている人材像はどのようなものか、などをDAY-0という形で協賛企業の皆様にもゲストで参加いただき、全国数百名の学生の皆さんに向けて開催しました。また、エントリーシートにおいて、47都道府県の学生の皆さんに「あなたが解決したい、あなたの身近な課題を教えてください」という質問をしたのですが、それ自体を「47都道府県課題MAP」でビジュアルにして、各地方の皆さんがどういう形で解決していきたいと思っているのかをセットでリリースしました。   「47都道府県課題MAP」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000085233.html 眞   竹 :ちなみに、どのようなことが地方で学生が感じている課題か、何か傾向は見えたりしたのですか。 湊さん :すごくクリティカルだと思ったのが、コロナになってどんどんネット社会が加速していく中で、地方高齢者のデジタルデバイドを挙げている学生が多かったことですね。そもそもネット化していくのはわかるけど、それについていけない人も結構いて、それが高齢者だったりします。特に高齢者の方がネットの恩恵を受けるべきなのに、それができていないことは、地方社会の大きな構造的な問題だなと改めて感じました。 眞竹   :ありがとうございます。では続いて、工藤さんの取り組みについてお伺いしたいと思います。   ― 「アイデア実現」のための全ての工程を、学生が実体験する。 工藤さん :今年で3年目になる「アイデア実現インターンシップ」についてご紹介します。それまでも電通若者研究部(ワカモン)で電通のインターンシップをプロデュースしていたのですが、私が初めて参加した3年前に新たなフォーマットとして始まったものです。学生とメンターの関係を、先生としてのメンターではなくて、伴走者としてのメンターという立ち位置にしました。学生が主体となって、それこそ、電通の社員が普段やっているような業務の工程を、自分の「ほうっておけないこと」の解決という学生自身のやりたいことを通して実体験をしてもらうことを目的に、アップデートしました。 眞竹   :3年目の今年は、どのような状況ですか? 工藤さん :今まさにクラウドファンディングのCAMPFIREで、11月末まで学生たちが支援を募っている段階です。今年は14人参加してくれたので、14プロジェクトが立ち上がっていますが、もうすでに期間を終えずに目標支援金額を達成しているプロジェクトもあります。  ※「電通ワカモン  アイデア実現インターンシップ」 https://camp-fire.jp/curations/dentsu-wakamon 眞竹   :ちなみに、学生の皆さんがどんなプロジェクトを考えたのか、いくつか紹介していただけますでしょうか? 工藤さん :私がメンターをやっていたプロジェクトだと、「Scaping OKAZAKI岡崎プロジェクト」です。キックボードをシェアするサービスで、キックボードで岡崎市の乙川エリアを移動して、「遊び場」化して、その良さに出会って教える、というプロジェクトです。もうCAMPFIREでの目標を達成しているプロジェクトですが、企画した学生が考えたのは、地元岡崎の乙川エリアが車で移動するには道が狭くて移動しにくいし、歩くにしてはちょっと遠い、ということでキックボードに目をつけて、移動そのものも観光にしていく、ということでした。この学生を始め、自分からいろんな人たちや行政などに働きかけを行ってもらうインターンになっています。他にも、「音のない料理教室」。これはイベント系ですけど、参加者同士が声を出さずに意思疎通を図りながら一つの料理を作り上げる、「耳の聴こえる方・聴こえない方が参加できる料理教室」です。すでにこの学生は、インターンに参加する前に一度イベントを開催していて、それをさらにアップデートしたいという思いを持って参加してくれました。 眞竹 :   3年目になり、すでに取り組んでいることがある学生も集まってきているんですね。 工藤さん :参加したメンターの中で、3年目でやっと完成形になってきたかな、という話をしています。学生を集める過程であったり、実際にプロジェクトを考え、立ち上げてもらう期間でであったり、改善できていていると感じています。 眞竹 :お二人はインターンを通じて、学生と企業の接点に携わっていらっしゃいますが、もっとこのようになればいいのに、と感じるところはありますか? 湊さん : 学生の皆さんにとって、企業で働くことにおいて何が大事にされているか、ということを肌で感じる機会があることが重要と思っています。なので、産官学が連携して、実際に働く場としての企業を考える、そういう教育機会を作れれば、就職活動の先行ステップとしてすごくいい機会になるのではないかと思っています。 工藤さん :学生に好きなことを見つけなさい、といってもなかなか難しく、一歩踏み出せない学生がまだまだ多いと思います。大学で学ぶ専門的分野以外でも、興味関心を持てる分野への学びや体験を企業側が提供できるような仕組みがあると面白いのでは、と考えています。 湊さん :就職活動の評価軸が企業側で緩やかに崩れてきている中で、学生側もそれに気づけていないと思っています。例えばeyaで美大の学生が、課題の落とし込みであったり、事業アイデアを作ったりするのがうまいと感じるシーンがあります。作品を作る過程で本質を見極める能力が鍛えられているからだと思うんです。そういう能力は今後企業側にも評価されていくと思うので、そういったことを知れば、きっと学生側の選択肢も広がります。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹広嗣 眞竹 :学生と企業の接点については、今後も改善していくべきポイントがありそうですね。では、そういった中で、電通がeyaに参加される意義やメリットを教えてください。 湊さん :企業紹介の際、広告代理店から、ビジネスをプロデュースする企業へ変化している、という事を、弊社はeyaで学生向けのメッセージとして発信しました。 それは、広告・プロモーションで培ってきた「アイデア」という弊社の強みを活かし、広告・プロモーション領域に留まらずに、クライアント様のビジネスのサポートを行っていきたいという事です。ですが、やはり、このような取り組みはそこまで認知度もなく、事業創造やリーダーシップなどに興味のある学生の皆さんに、弊社の未来の姿を是非知ってもらう機会として活かせればと考えています。 眞竹 :eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのようなことを期待されますか?  湊さん :これはメンターとして、学生の皆さんにお伝えしたい事ですが、こういった異業種合同の人材育成の取り組みって、ほんと、大人の社会見学だと思うんですよね。シンプルに、なかなか見えない企業の最先端の事例や、取り組むビジョンに触れる事は、知的好奇心が刺激されますし、楽しい事だと思います。そういった視点でみると、働く事自体がコンテンツになって、それを学生に見てもらうことで、学生の皆さんが働く事にポジティブになってもらう。これが、これからの日本を変えていく一つのカギになるんじゃないか、と思っています。     ― 「今を意味づける力」を身につけてほしい。 眞竹 :では最後に、 eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することは?工藤さんから、お願いします。 工藤さん :最初にお話ししたように、学生の皆さんの考える力がすごく高いなって思っていますが、あくまで提供された課題や自分が見つけた課題に対しての考える力が備わっている、ということだと思います。社会に出た時、その考える力の矛先をもっと広げないと、例えば、スケジューリングだったりとか、タスク管理だったり、人とのコミュニケーションそのものにも電通でいうところのアイデアが必要になります。課題を発見するとか、課題そのものを解決する為に考えるのはもちろんですけど、その矛先をもっといろんなところに向けられるようになって欲しいので、その手助けを、ちょっとの期間でもできればいいなと思っています。 湊さん : 期待することは、ぜひ、小さくまとまらないでほしいという事です。ビジネスをつくる力は勿論重要なのですが、自戒も込めて、それがスモールビジネスの方向にいっちゃう人も、たまにいるんですよね。もちろん、それ自体が悪いコトではないですし、生きていく上で大事な事でもあります。でもそれよりは、ぜひ、日本のこれからを自分が背負うんだ!!という気概を持って、世の中に対して課題感をもって、なるべく大きな理想的な世界観を描くクセをつけてほしい。また、ぜひそんな自分が掲げた世界観が実現できる場所を妥協せずに探して、キャリア設計していってほしいなと感じます。そのためにも、「今を意味付ける力」を身につけてほしいです。メンタープレゼンで1日目に話したことですが、忙しくて目の前の活動を何の為にやっているのか、を見失う時もあると思います。そんな時、立ち止まって、自分のキャリアを考えてみる。そのための材料を提供できる場になればうれしいです。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  積水ハウス篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第3回目は、積水ハウスの岡本さん、大野さんにお話を伺いました。   写真右)積水ハウス株式会社 開発事業部 岡本 勇治さん 写真左)積水ハウス株式会社 人事部 大野 隆正さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?岡本さん、いかがでしょう?  岡本さ   ん :今年の私のチームメンバーは、個性の強いメンバーが多かった昨年のチ―ムと異なり、メンターとして少しホッとしているところもあります。また違った個性のある各メンバーが主体的に動きつつ、まとまり感・一体感を持って、チームワークを意識して進めていると思います。 大野さん : 今年で3回目の参加ということもあり、穏やかに初日、2日目が過ぎたなぁという印象です。今年は特に良いメンバーが揃っていて、主体的に動いてくれるので、とても頼もしいですね。 眞竹 :今年の参加学生の皆さんも、起業や団体でのリーダーをやられている人が多いので、主体性は、きっとその現れですね。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか? 大野さん :おそらく、戸建住宅を国内で建築している会社というイメージを持っているのではないかと思います。 岡本さん :「あー、あのCMの会社ね」くらいの印象で、堅い、古い企業だと思われているのでは。実際、私が転職してくるまではそういうイメージで私自身も思っていましたので。戸建て事業以外の事業は恐らく知られていないと思います。   ―国内の戸建住宅だけじゃない、積水ハウス。 眞竹 :では、   御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業です、こんなことしているんです、という、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか? 大野さん :実は戸建住宅は、売り上げのうち13.2%しかないのです。現在では、請負型・ストック型・開発型の3つのビジネスモデルを国内だけでなく、海外でも幅広く展開をしており、年々、住宅以外のセグメント比率が大きくなっています。  積水ハウスグループにおける2020年度の売上構成比 眞竹 :2019年度が16.2%でしたので、2020年度は13.2%と下がっていますね。   大野さん :そうですね。このような国内・海外を含めたビジネスモデルの変化の中で、当社は「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョン※に掲げ、国内にとどまらず、ハード・ソフト・サービスを融合し、幸せをお客様に提案するグローバル企業を目指しています。 ※積水ハウスのグローバルビジョン及び成長戦略について https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/individual/growth/   眞   竹 :グローバルなビジョンを掲げられる中で、御社が新たに取り組んでいる、また取り組もうとしている新しい事業を教えてください。   ―住む人の「幸せ」のために、住まいの事業モデルを変えていく。 大野さん :いくつかあるのですが、例えば住まいの事業モデルを大きく変える「プラットフォームハウス構想」※というものがあります。最も人生に寄り添う存在である「家」を人生の変化に呼応させるもので、「健康・つながり・学び」のサービスから住まい手の「幸せ」をアシストする未来型の理想の家を創造するというものです。プラットフォームハウス構想の第一弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」の発売を既に開始しています。 ※「プラットフォームハウス」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/about/index.html 眞竹 :昨年お話を伺った時は構想段階でしたが、実際のサービスも始まったんですね。 大野さん :はい、「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」は業界初の間取り図と連動した視覚的に直感操作できるスマートフォンアプリで、温湿度センサーや窓センサーなどのIoTデータをパブリッククラウド上で蓄積し、外出先からエアコンなどの機器を確認・操作することができます。また、ドアなどの不正解放や家族の玄関ドア開閉操作を外出先からでも確認することができます。プラットフォームハウス構想のソフト・サービスを先行して一部商品化したものと言えます。 ※「プラットフォームハウスタッチ」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/ 眞竹 :まだサービスの一部、ですからね。この先どこまでスマートフォンと住まいがつながっていくのか、楽しみです。昨年お伺いした、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」※の取り組み状況はいかがでしょうか? 大野さん :こちらは、生活者参加型の実証実験が2020年12月より始まっています。「プラットフォームハウス構想」の「健康・つながり・学び」の中で、「健康」に取り組むものです。家の中で、実は約7万人の方が亡くなっているというデータがあります。脳卒中、心疾患、お風呂などでの事故、家の中での転倒や転落などによるものです。それらの社会コストは8兆円を超えると算出されているんです。そのうち最大1兆9000万円削減できると試算しています。「HED-Net」は、住宅内でバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症による異常を検知した場合に、遠隔で安否確認を行い、救急への出動要請、そして救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行う、世界初の仕組みになります。 ※在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Netの実証実験について https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/topics/2020/20201210.pdf 眞竹 :IoTによる住まいの進化がどんどん具体化して、住まいというハードに加え、ソフトをつくっていく企業へ変わっているんですね。住まいの概念がどこまで広がるのか、想像の範囲を超えていきそうです。   ―「地域×積水ハウス」の可能性。 眞竹 :では、今度は、住まい以外の取り組みについても聞いていきたいと思います。「Trip Base道の駅プロジェクト」※があるのですが、こちらには岡本さんが関わられているとお伺いしております。これはどのようなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか? 岡本さん :もともとは、とある企業と意見交換をしているときに出てきた、「道の駅の隣に道の駅で働く人の社宅があったら便利だよね」という着想がスタートです。そこで道の駅のことをいろいろ調べていくと、知っているようで知らなかったこといっぱいありました。例えば、道の駅が地域の情報発信拠点になっていたり、道の駅を中心に町おこししていこうとか、単なる休憩地点ではない役割を道の駅が持ち始めていた、ということを知ったんですね。加えて、道の駅で新鮮な肉とか魚、お酒とかを買ってその場で食べて、飲んで、寝られたらとても楽しいじゃないか、というところから、ホテルというアイデアを検討していきました。その中で、2018年当時、今後はインバウンドの増加も予想されるので、外資系ブランドのホテルとの協業を検討しようということで、それまで日本で一緒にホテル事業をしているマリオット・インターナショナル(以下、マリオット)に一緒にやらないか、と相談しました。マリオットとは以前から都市型ホテルはずっとやってきたんですけれど、地方部で外資系ホテルを展開する、という新たな側面からこのプロジェクトにもご賛同いただいて、やることになったんです。 ※「Trip Base道の駅プロジェクト」HP https://tripbasestyle.com/project/ 眞竹 :2020年10月より順次、ホテルをオープンされています。お客様や地域、またパートナー企業からの反応はいかがでしょうか? 岡本さん :地域の方々や道の駅の皆様からは、ホテルが開業したことで今まで以上にメディア等で地元の情報が発信されていることに大変喜んで頂いています。また、パートナー企業様については、個別に各地域で具体的な連携策をつくり始めており、実際にそれらを実行することで地域活性化に寄与出来ていると実感しています。 眞竹 :コロナ禍の中でのオープンでしたが、影響はいかがでしたか? 岡本さん :コロナ禍により、期待していたインバウンドがなくなったため、ホテル事業としては相当ダメージがありますが、当面のターゲットを国内旅行者に切り替えて「マイクロツーリズム」を推奨することで、そのダメージを緩和しようと頑張っています。また、近い将来必ずインバウンドは戻ってきますので、それまでは各地域でおもてなしの準備や魅力発掘の活動を精力的に行っています。例えば、本年10月に㈱クラダシ様と連携して、京都府京丹波町にて特産品である黒枝豆の収穫支援を行いました。これは人手不足で未収獲残となっていた黒枝豆を、学生を派遣して収穫支援することでフードロス削減を目指すという取り組みです。さらに、それだけでなく、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」でその黒枝豆を販売することで京丹波町の特産品のPRや販路拡大、地域活性化を推進しました。   「Trip Base道の駅プロジェクト」パートナー企業(2021年11月現在) 眞竹 :パートナー企業様との連携した地域のおもてなし、魅力発掘によって、今後、マイクロツーリズムとインバウンド、どちらも取り込める可能性が広がりそうですね。他にも、地域活性につながる取り組みなどありますでしょうか? 大野さん :建築デザインや地方創生事業のノウハウを生かし、国が進めるPark-PFI事業による国営公園として初となる「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点を福岡県東区にて開発し、来年オープンすることになりました。地方の国営施設を当社がブランディングすることで、訪れる人を増やし、人と人が交流することで公園全体及び周辺地域の活性化を図ります。 「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点が2022年3月に誕生。 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/library/2021/20210517.pdf 眞竹 :積水ハウスの高いデザイン力で磨かれた公園、是非訪れてみたいです。こういったプロジェクトが動いていく中で、積水ハウスが、地域創生に取り組む意義、というのはどのように感じていますでしょうか? 岡本さん :当社が掲げている“ESG経営のリーディングカンパニー”を目指すうえでも地域活性化の取り組みは有意義だと考えていますし、やりがいを感じています。また、当社の規模や知名度を活かし、さらにパートナー企業様と連携して、各社のリソースを組み合わせて行う地域創生活動は当然ながら地元の方々にお喜び頂いていますし、新しいビジネスチャンスも生まれてくるのではと期待しています。 大野さん :地方創生が叫ばれて久しい中、徐々に法整備が進んできているとは言え、未だ多くの人やモノ、サービスが都市部に集中している現状があります。地方では少子高齢化だけでなく、労働人口の流出が止まらず、慢性的な過疎化がいまも進行中です。創業以来、「住まい」や「まちづくり」にこだわってビジネスを展開してきたものとして、地方創生への思いは以前からありましたが、なかなかきっかけを掴むことが出来ずにいました。そんな中、当社が創業60年を過ぎたタイミングでコロナ禍となり、日本中が停滞している現状を少しでも打破したい、まずは地方から日本を元気にしよう、という思いから地域創生のプロジェクを始動させました。得意な「住まいづくり」や「まちづくり」のノウハウを生かし、社会課題の解決ができれば、我々にとってこれほど幸せなことはないと思っています。 眞   竹 :地域創生、社会課題解決に強い興味を持つ学生も多いですよね。では、ここから御社の求めている人材についてお話を伺えればと思います。 大野さん :海外事業の拡大やプラットフォームハウス構想の実現、その他の新規事業の立ち上げに伴い、様々な経験をしている人材を求めはじめています。デジタルヘルスケア分野を意識して医学部の学生にアプローチしたり、企業家精神があり積極的に行動できる学生、人とは違う斬新な価値観をもった学生も求めています。実際に今年は、国立大医学部卒の学生が新卒採用で内定しています。 眞竹 :積水ハウスが医学部、というのも意外なアプローチですね。そういった多様な人材を求める中でもここは外せない、という軸はありますでしょうか? 大野さん   :当社の企業理念の根本哲学「人間愛」の中に「相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする」という一文がありま   す。我々の仕事は、例えば住まい提案を通じて、お客様に「幸せ」を提供する仕事です。「幸せづくりのパートナー」として、企業理念に基づきお客様に対して、社会に対して新たな価値を創造するため、失敗を恐れず自ら考え行動することのできる人と一緒に働きたいと考えています。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣 眞竹 :では、御社のインターンや採用に関する活動について、課題と感じているところを教えてください。 大野さん   :従来の採用活動に加え、複数のインターンシップを実施するなど色々試みていますが、まだまだ出会えていない学生の方が多くいると感じています。これからは様々な企業と協業していくことになりますので、新しいビジネスの種を作っていく人、いろいろなリソースを使いながらその芽を大きく育てていく人が必要になってきます。また、今すぐにはビジネスにならないけれども、新たな分野、新たな専門領域でじっくりと基礎研究をしてくれる人も必要です。これまで以上に、多様な人材を採用していくことが課題ですね。 眞竹 :そのような課題の中で、eyaに参加されている理由、意義など教えてください。 大野さん   :当社の業領域の拡大や環境変化を考えて、これまでの採用活動ではなかなか接点を持てなかった「新たなビジネスの芽を生み出すアントレプレナー志向をもった人」と出会えるのではないかと考えたからです。実際に、期待以上に良い学生が多数おられ、そういった学生と接点を持てることは大きなメリットと考えております。また、他社の人事部の方や先進的な取り組みをされている社員の方のお話を聞けることができ、とても良い刺激になっています。 眞竹 :メンターとして参加するご自身にとっての意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか? 岡本さん :年齢を重ねると段々と感度が鈍くなってきたり、思考に偏りが出てきたりと悪い習慣が身に付いてきますので、感度の高い学生から良い刺激を得ることで普段の仕事に良い影響を与えたいと思いますので、積極的にコミュニケーションをとっていきたいと思っています。また、他社のエネルギッシュなメンターの方の良いところを、最低1つは盗めればと考えています。 大野さん :確固たる自信をもち、自ら新しい時代を切り拓くんだという気概があるような学生が、何を思考し、どの様な活動を行い、社会に出て何をしたいと考えているのかを純粋に知りたいと思っています。 眞竹 : では最後に、eyaの学生たちと接して感じたこと、そして期待することをお願いします。 大野さん :強く目的意識を持っている方が多いなと感じています。あとは、摩擦を恐れず自分の意見や価値観を互いに共有し、理解し合い多くの気づきを得てほしいと思います。 岡本さん :皆さんはポテンシャルが相当高いので、それを今回のeyaでどう発揮して、また他の人から何を学んで帰るのかを毎回意識して取り組んで頂き、最後には10月より成長したと自覚出来るようになって欲しいですね。