【 engawa young academy 】 学生インタビュー 篇

#インタビュー


2020年10月〜2021年1月より、engawaKYOTOオンラインにて行われた多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2020(以下、eya)。終了後の2月、参加学生を代表して、Day4:イノベーションアイデアプレゼンテーションで優勝したチームのメンバーにインタビューさせてもらいました。
 



写真上段左から)菊地さん、倉森さん、齋藤さん 中段左から)鎌田さん、井元さん、前川さん
真下段)電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣
取材:2021年2月に実施



関西からの参加学生が多い中で、井元さんは福岡からの参加、また菊地さんは芸術系大学といった、強みや環境も多様なグループのメンバーと過ごした3ヶ月について、語ってくれました。

眞竹:みなさん、3ヶ月間、ありがとうございました!まずは率直に、eyaを終えての感想を聞かせてください。


コロナ禍の学生で、誰よりも刺激を受けた3ヶ月

鎌田さん:コロナ禍の学生で、誰よりも刺激を受けた3か月間だったと思います。プログラムは月に1度の開催でしたが、ほぼ毎日のようにオンライン上で集まり作業していた為、常に頭の片隅にエンガワがありました。チームとして最後のプレゼンで勝つ、という目標を立てたのですが、プレゼン日から逆算してスケジュール管理して、円滑に進められていたと思っています。プログラムの間の1ヶ月、プライベートで遊ぶ時も頭の片隅には「あと2週間で次のプログラムか」みたいな事とかを考えているのが、ある意味社会人になった感じで、印象深かったですね。でも、一緒に活動しているメンバーの質の高さもあって、他のレポートとかの課題とかに比べたら全然ストレスって感じないっていうのはありますね。自分1人じゃないので、チームとして活動しているっていうのは心強かったです。
 

ベクトルの違うチームメンバーとの長期間のワーク

齋藤さん:楽しかったです。3ヶ月という期間で、チームで何かに取り組むというのが初体験だったこと、今まで出会ったことない人と一緒にワークできる機会っていうのも新鮮だったこと、チームとめちゃくちゃ仲良くなれたことが、楽しさに直結していました。各プログラムにおいてCチームは努力もした上で結果にもつながって、チームで嬉しさを共有できた思いが強くて、それも仲良くなれたことの大きな要因だったかなと思います。実は僕自身、参加する時すごく不安があって。参加者はみんな何かの団体の代表だったり、活動してる人が多かったので、僕自身どういう風に立ち回ったらいいのかなって不安はあったんですけど、終わってみて思ったのは、結構ベクトルは違うけれどそれぞれいいところがあって、そのお互いが持っていないことを最終的に共有できたことも、今回楽しかった要因の1つになったかなと感じています。
 

周りに圧倒されたけど、めちゃくちゃ楽しかった!

菊地さん:率直に、めちゃくちゃ楽しかったです!正直、周りのみんなに圧倒されて打ちのめされることも多かったんですが、そのぶん毎回気づきと学びがあり、分厚いノート一冊が埋まるほど濃くタメになる内容ばかりでした。なかなか自分の軸や将来について熱く語れる友人がいなかった私にとって、今回のメンバーのような仲間と出会えたことは一生モノの財産だと思っています。


眞竹:みんな、大変だったと思いますが、「楽しかった」という声が聞けて事務局としても嬉しいです。では、Day1〜Day5の中で、一番印象に残っているプログラムと、その理由を教えてもらえますか?
 

共に過ごしたメンバーからのアドバイスで仲間を実感

倉森さん:Day5【アドバイススクランブル】です。チームのみんなから誉め言葉も、今後に役立つアドバイスももらって、本当に仲間だったなと実感する時間でした。互いに興味をもって接していないと、相手の直すべき点など、考えつかないと思います。例えば、私がもらったアドバイスで、もっと自分を出してほしかったっていう意見が出てきて。eyaと違ういつものコミュニティでは、自分の意見がそのまま通ってしまうところがあって、今回は自分が意見を出すとしても、もっとみんなで考えた後に答えを出したいっていう気持ちがすごくありました。なので、あまりチームの方向性を決めるような発言っていうのはしないまま終わりました。でも、それを抑えてるうちに私らしさみたいなものがみんなに伝わらないコミュニケーションになってしまっていたかなと思って。eyaでの自分らしさの発信の仕方と周りの受け取られ方が違うっていうところに気づきました。今後何かチームとか組織でするときは私らしさっていうものを捨てないままみんなの意見ももっと活発にできるような別のやり方っていうのを模索する必要があるなと学びました。
 

バックキャスト思考で、自分の研究も変わってきた

前川さん:Day3【未来創造スピーチ「10年後のあるべき姿」】が、特に印象が強いです。バックキャスト思考を体験できたこと、プレゼンの難しさとやりがいを学べたことが、大きな理由です。バックキャスト思考は初体験でしたが、突拍子もなさそうな未来を考える楽しさや、未来を考える上でのビジネス視点を知ることができ、以前とは違う考え方ができるようになった、有意義な経験でした。実はこの経験で、僕が進めている研究に対する切り口が、大きく変わりました。これまで目先の、今ある壁に向かって実験をどんどん重ねていくようなアプローチが多かったんですけども、大胆な発想を一回立ててみて、最終的にこの研究をこういうところに持っていきたいっていう、最終的な像を改めておいてみて、「そこに向かって必要な実験って何だろう」っていうところからと捉え直して、今までとはかなり分野の異なる実験手法にもチャレンジしたりしています。
 

実際の企業アセットを使ったプレゼンでの議論の深まり

井元さん:Day4【イノベーションアイデア・プレゼン】です。実際に「企業アセット」を使う必要があり、初めて行う思考や議論が多かったからです。分かっていたつもりだったけれど、短期のインターンでやる事業立案ワークとは違い、自分が企業に入ってからビジネスアイデアを詰め切って実行していくのは本当に大変なんだろうなと感じました。自分が今までインターンとかで経験した事業立案だと、どういうドメイン設定だと自分たちは入りやすいのか、伸びやすいのかとか、市場規模、競合出しなど、そういうところまでしかしてなかったんですけど、eyaだとそこの解像度がすごい上がって、「この企業ってどんなアセットがあるんだろう」というのを、企業ごとにしっかり出して、そこに対して自分たちの「理想の10年後」と照らし合わせた時に、このアセットをこういう風に使えるかもねっていうような、現実に近い議論ができたところが違ったなと思います。


 
Day4【イノベーションアイデア・プレゼン】のスライドから抜粋。理想の社会を描き、日本の状況、また事業アイデアに対する技術の現状把握を踏まえて、企業のアセットを活用してのビジネスモデルと、ストーリーの中に説得力のあるプレゼンテーションでした。


眞竹:今、井元さんが、eyaと他のインターンシッププログラムの違いについて感じたところを話してくれましたが、他の皆さん、いかがでしたか? 
 

アイデアを冒険できる時間があった。

齋藤さん:プログラムの期間が長く、アイデアの「実現性」に肉付けする時間が十分にあるので、アイデアの「新規性」においても冒険できるという楽しさがあると思いました。他に参加したインターンシップで3日間のプログラムがあったんですけど、新規性と実現性の二軸があるなかでも、実現性がないと企業から評価されない、ということがありました。eyaのプログラムの中で、アイデアをジャンプさせてから着地させるのが大事だ、という話がありましたが、3日間だとこの距離がたぶん短いんです。engawaはそれが2カ月間あったんで、ジャンプの距離がおのずと高くなって、ぶっ飛んだことを思いついてもそれを実現として落とし込めるっていう時間があるっていう意味で、冒険できたなっていうことがありましたね。
 

参加しているメンバーの多様性

前川さん:社会人、学生共に、関わる人の多様性が、他のインターンシップと大きく異なると感じました。通常の単独企業開催のインターンシップでは、学生の雰囲気や専攻分野はある程度似通ってくるのかなと思いますが、eyaに集まった学生は皆異なる背景を持っていて、性格や興味の向きどころが全然違う。例えば、倉森さんは様々な活動をされていて、その中で適切なところで適切なタイミングで適切な言葉を置いていくみたいな、動き方ができていて、普段の僕の周りだと何か一つのことに取り組んでる人がすごく多いので、そういう風にいろんなところに首を突っ込みながらもそれぞれの所で活躍できているっていうのはなかなか出会わないタイプでしたし、これまでなかった視点の考え方を知ることができ、視野が広がりました。

眞竹:eyaではDay1「メンタードラフト」で、自分たちのチームのメンターを選ぶ、というプログラムも一つの特徴と考えていますが、その仕組みについてはどう思いましたか?


チームで決めたメンターだから

倉森さん:自分たちが不安な時も、「チームみんなで決めた方だから」と素直に頼ることができました。選ぶ時に考えたのは、「この3カ月だけじゃない繋がりを持っていただける」って思ったことと、「今まで違うものを経験した俺が教えます」じゃなくて、「みんなが考えているものが最大限に魅力的に見えるように調整役として支えるよ」という姿勢に惹かれました。また、日が経つにつれて、メンターさんの色が、各チームの特色に反映されていて、他のチームへの興味が深まるとともに、自チームへの愛着がわきました。
 

学生と社会人が、公平な立場に

齋藤さん:最初にメンターを自分で選ぶっていう段階で、学生と社会人が公平な立場にある、という概念を下支えしていると感じていて、実際にがメンターと話していくうちに、今まであった社会人の中で一番親身に接してくれたというか、例えたらサークルの先輩くらいの距離間で結構助言をしてくださっていて。距離間も他のインターンシップよりも圧倒的に近かったので、このシステムはすごい僕はいいなと思いました。
 

初日から問われた、観察力

鎌田さん:正直、監督選びをしているような感覚で楽しかったです。これからの3か月間を左右するとも言える決断を初日の初っ端から迫られた為、全員が引き締まり慎重な面持ちになったのを覚えています。誰が一番自分達のチームの特色に適応できるかを様々な視点を持って話し合うのと同時に、短時間で見極めなければいけないので観察力が問われていたのも高揚感を得ました。(笑)

眞竹:「複数の企業と長期間かかわれる」、という座組みはどうでしたか?
 

3ヶ月だからこそ感じられた、会社ごとの雰囲気

菊地さん:正直会社説明会や短期インターンだと色々と繕う事ができると思いますが、学生側もメンター側も3ヶ月の長丁場で、素の部分などが垣間見えてきて、最終的にはメンターの個性も色濃く出て、会社ごとの雰囲気の違いを感じる事が出来てよかったです。例えば、プレゼン資料を作るときにフォントを全部揃えて、だとか、使う文型とか配色とかそういうところまで1枚1枚見てくださって、そういうところまでこだわってもいい会社なんだとか、他のチームだとプレゼンに劇が入っていて、飽きない演出を加える面白さなど、そのチームならではかな、とか思いましたね。またフィードバックに関しても、企業によって評価基準が様々で、この業界の方はこういうところに着目するんだ〜、と各社の考えや大切にしていることの違いを知る事ができて面白かったです。


イメージががらりと変わった企業があった

前川さん:視野が広がるという点で、良かったと感じています。Day3【リーダー/イノベーター見本市】など、通常の会社説明会だけでは知ることができない、企業の最新の取り組みを知ることができる企画があり、イメージが参加前とがらりと変わった企業もありました。例えば、一度、ベンチャー行かれてから戻ってこられたっていうお話もあり、入ってからいろんな道があって、どの企業でも未来に向けて様々な取り組みをされているし、その人材育成に向けた取り組みがされているんだなっていうところで、印象が変わりました。

眞竹:ありがとうございます。では、ご自身のことについて聞きたいのですが、プログラムの前と後、自分が変わったなと感じる点があれば、教えてください。
 

自分という人間を客観視できた

齋藤さん:Day5【アドバイススクランブル】での、お互いを知った上でもらうアドバイスの内容によって、自分という人間の客観視をすることができるようになりました。例えば、発想力あるよ、とか、意外と論理性もあるとか。ほんまに知らなかったわっていう話でしたね、僕自身が。それはプログラムを通してみんなに感じてもらったことだから、それは僕の強みやなということを認識した時に、僕も負けてないんだな、社会人になることに対して前向きにいけるんだなっていうのが、僕が感じたことですね。
 

目指したいリーダー像を、日々の取り組みへ

井元さん:自分が目指したいと思えるリーダーシップが見つかったので、今いる環境でそれを実践した先に、1年後どんな風に周囲や組織にインパクトを与えられているか考えると、楽しみな気持ちが大きいです。自分が目指したいのは「やり切る力を持ったリーダー」なのですが、例えば、今いるインターン先で考えたときに、eyaの後の1ヶ月で取り組んだのは、誰よりも論の部分を詰めて、誰から相談されても的確にこうなっているよね、こういうデータがあるからこうだよね、というのをしっかり答えられるようにアクションが変わったかなって思います。Day2【教養ディベート】で、他のメンバーに比べて情報収集・整理が甘く、悔しい思いをしたところもきっかけでした。また、Day3、4でのプレゼンへ向けてのチームでのワークを通じて、意見や視点の違いを許容し、自分の思考をいったん置いて相手の話を聞くことができるようになり、意見やイメージを深く理解するようになったことも感じています。
 

日々の思考で「ひねくれさ」が増した

鎌田さん:良質な「ひねくれさ」が増したと思います。日常生活の小さなものから世間でトレンドになっているようなものまで、自分の中での軸をしっかりと持った上でひたすらWHYを追求するようになりました。例えば何で信号って赤青黄色の3色なのだろかという素朴な疑問を抱き納得いくまで調べたり、Clubhouseもやらずに批判するより、とりあえずやってみて自分なりにメリット・デメリットを整理して流行した仕組みについて考えてみたりと、確実にプログラム前では意識していなかったことを自然と思考している自分がいます。自分にとって大きな成果で、1日1日の充実感も上がったと思います。

眞竹:新しい自分への発見があったり、日々の行動や視点が変わったり、事務局としてもとてもうれしいですね。他の皆さん、はどうですか?eyaを通じて、得られたこと、学んだことを教えてください。
 

チームで共創することの難しさとやりがい

前川さん:アイデアの生み出し方やそれを実現する為のビジネス的視点など、イノベーションを起こすために必要な多くの知識と経験を、課題に取り組むことやたくさんの社会人の方々と関わる中で得ることが出来ました。個人的には何よりチームで共創することの難しさや、やりがいについて学べたことが貴重な体験でした。僕は大学でオーケストラのコンサートマスターをしていたのですが、オーケストラのように一つの目標に向かって動いているメンバーと違って、eyaではメンバーそれぞれの事情やモチベーションが様々であったために、思ったように進捗できないところもありました。それでもチームの理想像を共有し、相手のことを思いやりながら柔軟に仕事を分担し合うことで、よりよいアウトプットにつなげられた時には、かけがえのない喜びを感じました。この体験と絆は、これから社会人になってからの財産になると思います。
 

状況に応じて、自分の強みを使い分ける

菊地さん:視野が広くなり、処理能力が格段にUPしました。ひとつひとつの事を丁寧にするのが自分の個性だと思っていましたが、ビジネスの場においては無駄な工程も多いことに気づかされました。もちろん、無駄が活きることもあるのですが、実際のこういった場面ではどう効率化して、タスクをこなしていくのかも重要な場合もあると学びました。状況に応じて自分の強みを使いこなせるようになればどんな環境でも適応していける、とポジティブに次へ繋げています。ちょうどeyaが終わった後に、別のインターンに参加したのですが、eyaに挑む前の自分と、終わってからの自分のスタートラインが違っていて。「じゃあ、議事録とっていくんで」って、場を回せている自分がいて驚きました。
 

自分の発言が、誰かの学びや気づきになれる

倉森さん:eyaに参加する前、組織とかチームに対して、自分の発言の影響力みたいなものに少し怖さみたいなのを感じてて、そういうことに否定的になってたんですけど、eyaでもっと知りたいって思ってくれる仲間がいて、正しいか正しくないかじゃなくて、あなたはどうなの?っていう聞き方をしてくれる同世代がいるっていうのは、すごく自分の安心感になりました。これからは、自分が思ったことをこれがいいと思うっていう言い方じゃなくて、私はこうしたいな、私だったらこういう選択肢を選ぶかなっていう伝え方をするだけで、お互いにこんなにも当たり前が違って、そんな考えあったの?という、誰かの学びとか気付きとかになれるんだなっていうところは、すごく自分の自信に繋がったというか、頭でじゃなくてきちんと心と肌で感じられたなって思います。

眞竹:では最後に、次回参加される学生の皆さんに一言、メッセージをお願いします!
 

等身大でぶつかっても受け止めてくれる仲間がいる

菊地さん:はじめましての人たちと関係を築きながら共に何かを創り上げるのは簡単なことではないと思います。普段自分が関わることのないような人たちと出会い、様々な経験やバックグラウンドのある人たちと自分を比べてしまって、「自分って何なんだろう?何ができるんだろう?もはや何者?」と自問自答することもありましたが、自分を見つめ直すには絶好の機会でした。等身大で言いたいことをぶつけて悩んでも、しっかり向き合って受け止めてくれる仲間がいる素敵なコミュニティです。とことん使い倒して活用して欲しいなって思います。
 

これからあの時間を過ごせるのが羨ましい!!

鎌田さん:各プログラムに対して約1か月間の準備期間を与えられますが、体感では本当にあっという間です。徹底的にスケジュール管理することを強く勧めます。(日程管理係を設けるなど)ちなみに私達のチームはDAY3からDAY4の最後の期間でやっと予定通り作業を遂行して余裕を持つことが出来ました。(笑)これからあの時間を過ごせるのが羨ましくてたまりません!応援しています!!!


 

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【engawa young academy】 メンターインタビュー  電通篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら 第3回 積水ハウス様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第4回目は、電通の湊さん、工藤さんにお話を伺いました。   写真右)株式会社電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 湊 康明さん 写真左)株式会社電通 中部BC局 ビジネスデザイン部 工藤 永人さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。   ― 参加学生が、京都、大阪、広島、韓国に留学中の学生まで。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?湊さん、いかがでしょうか? 湊さん :私は、今年で電通のメンターとして、2年目を務めさせていただいておりますが、昨年と比較して変わった事は、コロナ禍による大きな社会変化が起こっている事が普通になってきているという事ですね。デジタルツールを使いこなすことは勿論、私のチームには、現在の居住地が、京都、大阪の人もいれば、広島の人も、韓国に留学中の人もいますよね。電通のメンターも、そもそも大阪と、名古屋ですし(笑)。それが普通で、その前提で特にこのアカデミーに参加している皆さ   んは、個人個人でいろんな活動をしている。ほんとに、誇らしいなと思いました。 眞竹 :このプログラムの1回目はengawaKYOTO(京都にある電通運営の事業共創スペース)でのリアル開催でしたので、京都を中心とした関西の学生が対象でしたが、昨年オンライン化してから、四国や九州、今年は海外まで広がりましたね。オンライン化ならではのメリットです。では、工藤さんいかがでしょうか? 工藤さん : 私はヤングアカデミーに参加するのが初めてですけど、初日からすぐに思ったのは全員、基礎能力が高く、地頭がいい。学生との懇親会などで話していて、コミュニケーション能力が高いっていうのはもちろんですけど、自分の考えを言語化、構造化して話すというのがとても上手だなと思いました。実際に課題などの評価をする中でも、課題を読み取ってそれを考える力っていうのが高いですね。 眞竹 :ありがとうございます。では、次の質問です。御社は今、学生の皆さんに、どういう企業イメージを持たれていると思いますか? 湊さん :そうですね。やっぱり、広告代理店、CMとか作っている会社、あと、オリンピックやっている会社、というイメージが強いと思います。それ自体は間違ってないですし、弊社のメインのビジネスである事は確かですが、最近はクライアント様の課題がいわゆる広告・プロモーションだけで解決できなくなっている事も増えてきている中で、弊社の社会的役割も変わってきています。 眞竹   :では、御社がどのように変わってきているのか、実際の姿を知らない学生へ、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか?   ― 社会的役割は変わっても、最高の解を提供することは変わらない。 工藤さん :社会的役割が変わってきているというお話ですが、社会ニーズが多様化したり、そもそも従来の尺度では測れなかったりと、ニーズを発見/創造することの重要度がさらに高まっています。そして、そのニーズに応える最高の解を電通は提供する立場にあることは変わらないので、常に最高の解を提供できるように私たちも解のフォーマットにとらわれないようになってきています。従来の広告やプロモーションというフォーマット以外の取り組みとしては、さまざまな事例あるのですが、例えば、 1:DENTSU DESIGN FIRM  https://dentsu-design-firm.com/   つたえることから逆算したプロダクト開発をご一緒したり、 2:THE KYOTO  https://the.kyoto/article 京都をヒントに文化・アートを学ぶプラットフォームを立ち上げたり、 3:ABC Glamp&Outdoors  https://abcgo.co.jp/ テレビ局と一緒に、グランピングで地方創生に取り組む会社をつくったりしています。 眞竹   :では、従来の広告、プロモーション領域に止まらない社会的役割の変化の中で、御社が今後目指していこうとしているところを、教えてください。 工藤さん :目指していこうとしているところは以前から変わっていない気がします。それは、社会やクライアントの課題を発見し、アイデアをもって解決することでちょっと先の未来を引き寄せること。です。ただ、世の中の変化に伴って、サービスをつくったり、事業共創を電通自体ができるように、実現力をさらに強化した電通を目指していく必要はあります。 電通のビジョン&バリュー:an invitation to the never before. https://www.dentsu.co.jp/vision/philosophy.html 眞竹   :では、お二人が現在携わっているもので、従来の広告、プロモーション領域に止まらない事例があれば、教えていただけますか? 湊さん :私と工藤が所属している電通若者研究部(ワカモン)の活動で、それぞれ学生に携わってインターンシップを運営していますので、そちらを紹介します。私の方からは47INTERNSHIP(ヨンナナインターンシップ)のお話をさせて頂きます。 ※「47 INTERNSHIP」 https://47internship.com/   ― 世界のクリエイティブアワードで受賞した47INTERNSHIP。 湊さん :2年目になる2021年も開催しました。昨年、コロナの影響もあり、インターンなどいわゆる就活系のイベントも大きな影響を受けて、就活生が困っているという状況がありました。そこで、逆にコロナだからこそ、新しい就活やその支援の形を作ることができないか、ということをNPO法人のエンカレッジと相談していたところ、これを機会に地方の就活格差に取り組めないか、というアイデアが生まれました。そこから47都道府県から集めた就活生の代表者が参加するインターンシップを開催しました。その取り組みが、様々なところから非常に評価いただきまして、例えば、世界最高峰のクリエイティブアワードのD&ADのブランディング部門にて、2021年最高賞のYellow Pencilを受賞する、ということにもつながりました。 眞竹   :その流れでの2年目。開催にあたって昨年との違いは何か意識されましたか? 湊さん :昨年の経験から、地方の就活格差にこのフレームが有効にワークすることがわかったので、より社会的影響度を高めていこうと考えて企画しました。例えば、これは結構驚かれるのですが、今年は学生から、2000以上のエントリーシートをいただきました。それを受けて、参加される47名以外の方にも希望者を募って、今回の47 INTERNSHIPのエントリーシートの評価基準であったり、これからの時代に求められている人材像はどのようなものか、などをDAY-0という形で協賛企業の皆様にもゲストで参加いただき、全国数百名の学生の皆さんに向けて開催しました。また、エントリーシートにおいて、47都道府県の学生の皆さんに「あなたが解決したい、あなたの身近な課題を教えてください」という質問をしたのですが、それ自体を「47都道府県課題MAP」でビジュアルにして、各地方の皆さんがどういう形で解決していきたいと思っているのかをセットでリリースしました。   「47都道府県課題MAP」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000085233.html 眞   竹 :ちなみに、どのようなことが地方で学生が感じている課題か、何か傾向は見えたりしたのですか。 湊さん :すごくクリティカルだと思ったのが、コロナになってどんどんネット社会が加速していく中で、地方高齢者のデジタルデバイドを挙げている学生が多かったことですね。そもそもネット化していくのはわかるけど、それについていけない人も結構いて、それが高齢者だったりします。特に高齢者の方がネットの恩恵を受けるべきなのに、それができていないことは、地方社会の大きな構造的な問題だなと改めて感じました。 眞竹   :ありがとうございます。では続いて、工藤さんの取り組みについてお伺いしたいと思います。   ― 「アイデア実現」のための全ての工程を、学生が実体験する。 工藤さん :今年で3年目になる「アイデア実現インターンシップ」についてご紹介します。それまでも電通若者研究部(ワカモン)で電通のインターンシップをプロデュースしていたのですが、私が初めて参加した3年前に新たなフォーマットとして始まったものです。学生とメンターの関係を、先生としてのメンターではなくて、伴走者としてのメンターという立ち位置にしました。学生が主体となって、それこそ、電通の社員が普段やっているような業務の工程を、自分の「ほうっておけないこと」の解決という学生自身のやりたいことを通して実体験をしてもらうことを目的に、アップデートしました。 眞竹   :3年目の今年は、どのような状況ですか? 工藤さん :今まさにクラウドファンディングのCAMPFIREで、11月末まで学生たちが支援を募っている段階です。今年は14人参加してくれたので、14プロジェクトが立ち上がっていますが、もうすでに期間を終えずに目標支援金額を達成しているプロジェクトもあります。  ※「電通ワカモン  アイデア実現インターンシップ」 https://camp-fire.jp/curations/dentsu-wakamon 眞竹   :ちなみに、学生の皆さんがどんなプロジェクトを考えたのか、いくつか紹介していただけますでしょうか? 工藤さん :私がメンターをやっていたプロジェクトだと、「Scaping OKAZAKI岡崎プロジェクト」です。キックボードをシェアするサービスで、キックボードで岡崎市の乙川エリアを移動して、「遊び場」化して、その良さに出会って教える、というプロジェクトです。もうCAMPFIREでの目標を達成しているプロジェクトですが、企画した学生が考えたのは、地元岡崎の乙川エリアが車で移動するには道が狭くて移動しにくいし、歩くにしてはちょっと遠い、ということでキックボードに目をつけて、移動そのものも観光にしていく、ということでした。この学生を始め、自分からいろんな人たちや行政などに働きかけを行ってもらうインターンになっています。他にも、「音のない料理教室」。これはイベント系ですけど、参加者同士が声を出さずに意思疎通を図りながら一つの料理を作り上げる、「耳の聴こえる方・聴こえない方が参加できる料理教室」です。すでにこの学生は、インターンに参加する前に一度イベントを開催していて、それをさらにアップデートしたいという思いを持って参加してくれました。 眞竹 :   3年目になり、すでに取り組んでいることがある学生も集まってきているんですね。 工藤さん :参加したメンターの中で、3年目でやっと完成形になってきたかな、という話をしています。学生を集める過程であったり、実際にプロジェクトを考え、立ち上げてもらう期間でであったり、改善できていていると感じています。 眞竹 :お二人はインターンを通じて、学生と企業の接点に携わっていらっしゃいますが、もっとこのようになればいいのに、と感じるところはありますか? 湊さん : 学生の皆さんにとって、企業で働くことにおいて何が大事にされているか、ということを肌で感じる機会があることが重要と思っています。なので、産官学が連携して、実際に働く場としての企業を考える、そういう教育機会を作れれば、就職活動の先行ステップとしてすごくいい機会になるのではないかと思っています。 工藤さん :学生に好きなことを見つけなさい、といってもなかなか難しく、一歩踏み出せない学生がまだまだ多いと思います。大学で学ぶ専門的分野以外でも、興味関心を持てる分野への学びや体験を企業側が提供できるような仕組みがあると面白いのでは、と考えています。 湊さん :就職活動の評価軸が企業側で緩やかに崩れてきている中で、学生側もそれに気づけていないと思っています。例えばeyaで美大の学生が、課題の落とし込みであったり、事業アイデアを作ったりするのがうまいと感じるシーンがあります。作品を作る過程で本質を見極める能力が鍛えられているからだと思うんです。そういう能力は今後企業側にも評価されていくと思うので、そういったことを知れば、きっと学生側の選択肢も広がります。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹広嗣 眞竹 :学生と企業の接点については、今後も改善していくべきポイントがありそうですね。では、そういった中で、電通がeyaに参加される意義やメリットを教えてください。 湊さん :企業紹介の際、広告代理店から、ビジネスをプロデュースする企業へ変化している、という事を、弊社はeyaで学生向けのメッセージとして発信しました。 それは、広告・プロモーションで培ってきた「アイデア」という弊社の強みを活かし、広告・プロモーション領域に留まらずに、クライアント様のビジネスのサポートを行っていきたいという事です。ですが、やはり、このような取り組みはそこまで認知度もなく、事業創造やリーダーシップなどに興味のある学生の皆さんに、弊社の未来の姿を是非知ってもらう機会として活かせればと考えています。 眞竹 :eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのようなことを期待されますか?  湊さん :これはメンターとして、学生の皆さんにお伝えしたい事ですが、こういった異業種合同の人材育成の取り組みって、ほんと、大人の社会見学だと思うんですよね。シンプルに、なかなか見えない企業の最先端の事例や、取り組むビジョンに触れる事は、知的好奇心が刺激されますし、楽しい事だと思います。そういった視点でみると、働く事自体がコンテンツになって、それを学生に見てもらうことで、学生の皆さんが働く事にポジティブになってもらう。これが、これからの日本を変えていく一つのカギになるんじゃないか、と思っています。     ― 「今を意味づける力」を身につけてほしい。 眞竹 :では最後に、 eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することは?工藤さんから、お願いします。 工藤さん :最初にお話ししたように、学生の皆さんの考える力がすごく高いなって思っていますが、あくまで提供された課題や自分が見つけた課題に対しての考える力が備わっている、ということだと思います。社会に出た時、その考える力の矛先をもっと広げないと、例えば、スケジューリングだったりとか、タスク管理だったり、人とのコミュニケーションそのものにも電通でいうところのアイデアが必要になります。課題を発見するとか、課題そのものを解決する為に考えるのはもちろんですけど、その矛先をもっといろんなところに向けられるようになって欲しいので、その手助けを、ちょっとの期間でもできればいいなと思っています。 湊さん : 期待することは、ぜひ、小さくまとまらないでほしいという事です。ビジネスをつくる力は勿論重要なのですが、自戒も込めて、それがスモールビジネスの方向にいっちゃう人も、たまにいるんですよね。もちろん、それ自体が悪いコトではないですし、生きていく上で大事な事でもあります。でもそれよりは、ぜひ、日本のこれからを自分が背負うんだ!!という気概を持って、世の中に対して課題感をもって、なるべく大きな理想的な世界観を描くクセをつけてほしい。また、ぜひそんな自分が掲げた世界観が実現できる場所を妥協せずに探して、キャリア設計していってほしいなと感じます。そのためにも、「今を意味付ける力」を身につけてほしいです。メンタープレゼンで1日目に話したことですが、忙しくて目の前の活動を何の為にやっているのか、を見失う時もあると思います。そんな時、立ち止まって、自分のキャリアを考えてみる。そのための材料を提供できる場になればうれしいです。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  積水ハウス篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第3回目は、積水ハウスの岡本さん、大野さんにお話を伺いました。   写真右)積水ハウス株式会社 開発事業部 岡本 勇治さん 写真左)積水ハウス株式会社 人事部 大野 隆正さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?岡本さん、いかがでしょう?  岡本さ   ん :今年の私のチームメンバーは、個性の強いメンバーが多かった昨年のチ―ムと異なり、メンターとして少しホッとしているところもあります。また違った個性のある各メンバーが主体的に動きつつ、まとまり感・一体感を持って、チームワークを意識して進めていると思います。 大野さん : 今年で3回目の参加ということもあり、穏やかに初日、2日目が過ぎたなぁという印象です。今年は特に良いメンバーが揃っていて、主体的に動いてくれるので、とても頼もしいですね。 眞竹 :今年の参加学生の皆さんも、起業や団体でのリーダーをやられている人が多いので、主体性は、きっとその現れですね。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか? 大野さん :おそらく、戸建住宅を国内で建築している会社というイメージを持っているのではないかと思います。 岡本さん :「あー、あのCMの会社ね」くらいの印象で、堅い、古い企業だと思われているのでは。実際、私が転職してくるまではそういうイメージで私自身も思っていましたので。戸建て事業以外の事業は恐らく知られていないと思います。   ―国内の戸建住宅だけじゃない、積水ハウス。 眞竹 :では、   御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業です、こんなことしているんです、という、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか? 大野さん :実は戸建住宅は、売り上げのうち13.2%しかないのです。現在では、請負型・ストック型・開発型の3つのビジネスモデルを国内だけでなく、海外でも幅広く展開をしており、年々、住宅以外のセグメント比率が大きくなっています。  積水ハウスグループにおける2020年度の売上構成比 眞竹 :2019年度が16.2%でしたので、2020年度は13.2%と下がっていますね。   大野さん :そうですね。このような国内・海外を含めたビジネスモデルの変化の中で、当社は「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョン※に掲げ、国内にとどまらず、ハード・ソフト・サービスを融合し、幸せをお客様に提案するグローバル企業を目指しています。 ※積水ハウスのグローバルビジョン及び成長戦略について https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/individual/growth/   眞   竹 :グローバルなビジョンを掲げられる中で、御社が新たに取り組んでいる、また取り組もうとしている新しい事業を教えてください。   ―住む人の「幸せ」のために、住まいの事業モデルを変えていく。 大野さん :いくつかあるのですが、例えば住まいの事業モデルを大きく変える「プラットフォームハウス構想」※というものがあります。最も人生に寄り添う存在である「家」を人生の変化に呼応させるもので、「健康・つながり・学び」のサービスから住まい手の「幸せ」をアシストする未来型の理想の家を創造するというものです。プラットフォームハウス構想の第一弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」の発売を既に開始しています。 ※「プラットフォームハウス」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/about/index.html 眞竹 :昨年お話を伺った時は構想段階でしたが、実際のサービスも始まったんですね。 大野さん :はい、「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」は業界初の間取り図と連動した視覚的に直感操作できるスマートフォンアプリで、温湿度センサーや窓センサーなどのIoTデータをパブリッククラウド上で蓄積し、外出先からエアコンなどの機器を確認・操作することができます。また、ドアなどの不正解放や家族の玄関ドア開閉操作を外出先からでも確認することができます。プラットフォームハウス構想のソフト・サービスを先行して一部商品化したものと言えます。 ※「プラットフォームハウスタッチ」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/ 眞竹 :まだサービスの一部、ですからね。この先どこまでスマートフォンと住まいがつながっていくのか、楽しみです。昨年お伺いした、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」※の取り組み状況はいかがでしょうか? 大野さん :こちらは、生活者参加型の実証実験が2020年12月より始まっています。「プラットフォームハウス構想」の「健康・つながり・学び」の中で、「健康」に取り組むものです。家の中で、実は約7万人の方が亡くなっているというデータがあります。脳卒中、心疾患、お風呂などでの事故、家の中での転倒や転落などによるものです。それらの社会コストは8兆円を超えると算出されているんです。そのうち最大1兆9000万円削減できると試算しています。「HED-Net」は、住宅内でバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症による異常を検知した場合に、遠隔で安否確認を行い、救急への出動要請、そして救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行う、世界初の仕組みになります。 ※在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Netの実証実験について https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/topics/2020/20201210.pdf 眞竹 :IoTによる住まいの進化がどんどん具体化して、住まいというハードに加え、ソフトをつくっていく企業へ変わっているんですね。住まいの概念がどこまで広がるのか、想像の範囲を超えていきそうです。   ―「地域×積水ハウス」の可能性。 眞竹 :では、今度は、住まい以外の取り組みについても聞いていきたいと思います。「Trip Base道の駅プロジェクト」※があるのですが、こちらには岡本さんが関わられているとお伺いしております。これはどのようなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか? 岡本さん :もともとは、とある企業と意見交換をしているときに出てきた、「道の駅の隣に道の駅で働く人の社宅があったら便利だよね」という着想がスタートです。そこで道の駅のことをいろいろ調べていくと、知っているようで知らなかったこといっぱいありました。例えば、道の駅が地域の情報発信拠点になっていたり、道の駅を中心に町おこししていこうとか、単なる休憩地点ではない役割を道の駅が持ち始めていた、ということを知ったんですね。加えて、道の駅で新鮮な肉とか魚、お酒とかを買ってその場で食べて、飲んで、寝られたらとても楽しいじゃないか、というところから、ホテルというアイデアを検討していきました。その中で、2018年当時、今後はインバウンドの増加も予想されるので、外資系ブランドのホテルとの協業を検討しようということで、それまで日本で一緒にホテル事業をしているマリオット・インターナショナル(以下、マリオット)に一緒にやらないか、と相談しました。マリオットとは以前から都市型ホテルはずっとやってきたんですけれど、地方部で外資系ホテルを展開する、という新たな側面からこのプロジェクトにもご賛同いただいて、やることになったんです。 ※「Trip Base道の駅プロジェクト」HP https://tripbasestyle.com/project/ 眞竹 :2020年10月より順次、ホテルをオープンされています。お客様や地域、またパートナー企業からの反応はいかがでしょうか? 岡本さん :地域の方々や道の駅の皆様からは、ホテルが開業したことで今まで以上にメディア等で地元の情報が発信されていることに大変喜んで頂いています。また、パートナー企業様については、個別に各地域で具体的な連携策をつくり始めており、実際にそれらを実行することで地域活性化に寄与出来ていると実感しています。 眞竹 :コロナ禍の中でのオープンでしたが、影響はいかがでしたか? 岡本さん :コロナ禍により、期待していたインバウンドがなくなったため、ホテル事業としては相当ダメージがありますが、当面のターゲットを国内旅行者に切り替えて「マイクロツーリズム」を推奨することで、そのダメージを緩和しようと頑張っています。また、近い将来必ずインバウンドは戻ってきますので、それまでは各地域でおもてなしの準備や魅力発掘の活動を精力的に行っています。例えば、本年10月に㈱クラダシ様と連携して、京都府京丹波町にて特産品である黒枝豆の収穫支援を行いました。これは人手不足で未収獲残となっていた黒枝豆を、学生を派遣して収穫支援することでフードロス削減を目指すという取り組みです。さらに、それだけでなく、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」でその黒枝豆を販売することで京丹波町の特産品のPRや販路拡大、地域活性化を推進しました。   「Trip Base道の駅プロジェクト」パートナー企業(2021年11月現在) 眞竹 :パートナー企業様との連携した地域のおもてなし、魅力発掘によって、今後、マイクロツーリズムとインバウンド、どちらも取り込める可能性が広がりそうですね。他にも、地域活性につながる取り組みなどありますでしょうか? 大野さん :建築デザインや地方創生事業のノウハウを生かし、国が進めるPark-PFI事業による国営公園として初となる「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点を福岡県東区にて開発し、来年オープンすることになりました。地方の国営施設を当社がブランディングすることで、訪れる人を増やし、人と人が交流することで公園全体及び周辺地域の活性化を図ります。 「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点が2022年3月に誕生。 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/library/2021/20210517.pdf 眞竹 :積水ハウスの高いデザイン力で磨かれた公園、是非訪れてみたいです。こういったプロジェクトが動いていく中で、積水ハウスが、地域創生に取り組む意義、というのはどのように感じていますでしょうか? 岡本さん :当社が掲げている“ESG経営のリーディングカンパニー”を目指すうえでも地域活性化の取り組みは有意義だと考えていますし、やりがいを感じています。また、当社の規模や知名度を活かし、さらにパートナー企業様と連携して、各社のリソースを組み合わせて行う地域創生活動は当然ながら地元の方々にお喜び頂いていますし、新しいビジネスチャンスも生まれてくるのではと期待しています。 大野さん :地方創生が叫ばれて久しい中、徐々に法整備が進んできているとは言え、未だ多くの人やモノ、サービスが都市部に集中している現状があります。地方では少子高齢化だけでなく、労働人口の流出が止まらず、慢性的な過疎化がいまも進行中です。創業以来、「住まい」や「まちづくり」にこだわってビジネスを展開してきたものとして、地方創生への思いは以前からありましたが、なかなかきっかけを掴むことが出来ずにいました。そんな中、当社が創業60年を過ぎたタイミングでコロナ禍となり、日本中が停滞している現状を少しでも打破したい、まずは地方から日本を元気にしよう、という思いから地域創生のプロジェクを始動させました。得意な「住まいづくり」や「まちづくり」のノウハウを生かし、社会課題の解決ができれば、我々にとってこれほど幸せなことはないと思っています。 眞   竹 :地域創生、社会課題解決に強い興味を持つ学生も多いですよね。では、ここから御社の求めている人材についてお話を伺えればと思います。 大野さん :海外事業の拡大やプラットフォームハウス構想の実現、その他の新規事業の立ち上げに伴い、様々な経験をしている人材を求めはじめています。デジタルヘルスケア分野を意識して医学部の学生にアプローチしたり、企業家精神があり積極的に行動できる学生、人とは違う斬新な価値観をもった学生も求めています。実際に今年は、国立大医学部卒の学生が新卒採用で内定しています。 眞竹 :積水ハウスが医学部、というのも意外なアプローチですね。そういった多様な人材を求める中でもここは外せない、という軸はありますでしょうか? 大野さん   :当社の企業理念の根本哲学「人間愛」の中に「相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする」という一文がありま   す。我々の仕事は、例えば住まい提案を通じて、お客様に「幸せ」を提供する仕事です。「幸せづくりのパートナー」として、企業理念に基づきお客様に対して、社会に対して新たな価値を創造するため、失敗を恐れず自ら考え行動することのできる人と一緒に働きたいと考えています。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣 眞竹 :では、御社のインターンや採用に関する活動について、課題と感じているところを教えてください。 大野さん   :従来の採用活動に加え、複数のインターンシップを実施するなど色々試みていますが、まだまだ出会えていない学生の方が多くいると感じています。これからは様々な企業と協業していくことになりますので、新しいビジネスの種を作っていく人、いろいろなリソースを使いながらその芽を大きく育てていく人が必要になってきます。また、今すぐにはビジネスにならないけれども、新たな分野、新たな専門領域でじっくりと基礎研究をしてくれる人も必要です。これまで以上に、多様な人材を採用していくことが課題ですね。 眞竹 :そのような課題の中で、eyaに参加されている理由、意義など教えてください。 大野さん   :当社の業領域の拡大や環境変化を考えて、これまでの採用活動ではなかなか接点を持てなかった「新たなビジネスの芽を生み出すアントレプレナー志向をもった人」と出会えるのではないかと考えたからです。実際に、期待以上に良い学生が多数おられ、そういった学生と接点を持てることは大きなメリットと考えております。また、他社の人事部の方や先進的な取り組みをされている社員の方のお話を聞けることができ、とても良い刺激になっています。 眞竹 :メンターとして参加するご自身にとっての意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか? 岡本さん :年齢を重ねると段々と感度が鈍くなってきたり、思考に偏りが出てきたりと悪い習慣が身に付いてきますので、感度の高い学生から良い刺激を得ることで普段の仕事に良い影響を与えたいと思いますので、積極的にコミュニケーションをとっていきたいと思っています。また、他社のエネルギッシュなメンターの方の良いところを、最低1つは盗めればと考えています。 大野さん :確固たる自信をもち、自ら新しい時代を切り拓くんだという気概があるような学生が、何を思考し、どの様な活動を行い、社会に出て何をしたいと考えているのかを純粋に知りたいと思っています。 眞竹 : では最後に、eyaの学生たちと接して感じたこと、そして期待することをお願いします。 大野さん :強く目的意識を持っている方が多いなと感じています。あとは、摩擦を恐れず自分の意見や価値観を互いに共有し、理解し合い多くの気づきを得てほしいと思います。 岡本さん :皆さんはポテンシャルが相当高いので、それを今回のeyaでどう発揮して、また他の人から何を学んで帰るのかを毎回意識して取り組んで頂き、最後には10月より成長したと自覚出来るようになって欲しいですね。