世界が認めるフレームワークを使って未来の本質課題を開拓するワークショップレポート(後編)

#プログラム/セミナー

電通京都BACは山口周氏のベストセラーの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)にて紹介され一躍有名になった、経営層向けに美大教育を行っている世界最高峰の美術系大学院Royal College of Art(以下、RCA)。その教授・講師陣を京都に招聘し、2日間にわたる世界最高峰のビジネス×美大教育ワークショップ“Innovation Masterclass in Kyoto”を実施しました。Day1の前編に続き、本稿では後編としてDay2の内容をお届けします。

 

さて、2日目は2つ目のダイヤモンドである「展開(Develop)」「提供(Deliver)」フェーズにて解決策を探索していく流れになります。↓のモデルでの赤枠部分にあたります。

 


 

まずは準備運動~オリエンテーション

Day2の内容にフルスロットルで挑むために、まずは準備運動。ということで、隣に座っている人のイメージの色の紙を選んで、似顔絵を描いてみましょう。というワークから幕開けしました。絵を描いてください、というと大人はためらってしまいがちですが、Day1でクリエーティビティが開花したのか、オリジナリティあふれる絵がほんの数分でずらっと並びました。

 


ハードなDay1を経た次の日、朝一のワークですが一気に笑いが広がります

 


作品が大量に生み出されます

 


 ダブルダイヤモンドモデルでDay2の流れを説明

 

第三のフェーズ「展開(Develop)」

マイヤーソン教授のオリエンテーションの後、Day1のようにチームに分かれて展開(Develop)ワークを開始します。展開(Develop)フェーズで行うことは、Day1で得た課題に対してとにかくたくさんアイデアを出していくということ。ただ、このフェーズはまだ解決に向けた具体のアイデアではなく「抽象思考」で考えなければ、細かいアイデアが多くなってしまいます。

 

現実的であるかどうか、ビジネスインパクトがどうか、自社の利益になるか、などの諸条件はまず頭から追い払って、抽象的で革新的であることを意識しつつ、たくさんアイデアを出していきます。

 

脳みそを動かすためにたくさんのレゴを積み上げてみたり、粘土をこねてみたり。ここでもいつもアウトプットを前提にしている美大ならではのやりかたも試してみました。

 

 
手渡されるとなんとなくこねてしまう粘土の魔力。少し体を動かすと脳の違う部分が働いて発想が広がります

 

アイデアがある程度出たところで、今回のワークショップでは“望まれ度合い”ד実現性”の2軸を取ったフォーマットに張り付けていきます。これが次の絞り込みフェーズの重要なヒントになります。

 

 
アイデアが用紙に収まりきらずホワイトボードも大活躍です
 

二軸フォーマット。抽象的で革新的なアイデアを出すのに苦労したチームも多く、RCAのファシリテーターから“How Radical?(どのくらい革新的?)の文字が書かれました

 

たくさんアイデアが出せたら、最終フェーズの提供(Deliver)へ突入です。

 

解決法を絞り込む、第四のフェーズ「提供(Deliver)」

展開(Develop)フェーズで大量に出したアイデアを絞り込み、ビジネスとして形にしつつ、ビジュアルプレゼンテーションに落とし込むのが提供(Deliver)フェーズの作業です。どのフェーズよりも忙しいフェーズかもしません。

 

絞り込みは展開(Develop)フェーズで使った2軸のフォーマットを参考にしながら、具体化させていきます。絞り込む上での理想はもちろん実現性が高く、市場から望まれている度合いも高い、2軸のフォーマットでいうと右上のものですが、具体的にアイデアを展開する上での広がりなども考慮しながらプレゼンテーションの準備を進めます。

 

RCAから出されたビジュアルプレゼンのお題は「電車の中づり広告」です。日本のユニークな広告ビジュアルということで、お題になりました。ワンビジュアルで伝えるために強いコンセプトを抽出して絵にするという非常にハードルの高いワークです。
 


大量のアイデアの中から絞り込み、1ビジュアルと1ワードの広告として伝わるよう試行錯誤


 
クリエーティブなプレゼンに向けて、粘土やレゴを使って表現するチームも

 

ついに最終プレゼン!

2日間という時間を使って考えたインクルーシブデザインの最終発表です。クリエーティブな2日間を過ごした各チーム、プレゼンテーションのやりかたも非常に多岐にわたり、面白く、いくつかのアイデアは会場から「これはぜひ欲しい!」と声が漏れるほど。
 


紙で立体のロボットの“プロトタイプ”を作ったチーム

 


お昼ご飯に出たお弁当の空箱(!)と椅子を使って新しい乗り物を表現したチーム

 

各チームのクリエーティビティあふれる発表に講師陣も大興奮のご様子でした。
 


最後に参加者全員で良いと思ったアイデアに投票し、各講師陣からも賞が贈られました。

 


 

 

2日間のワークショップを終えて:参加者のアンケートより

充実のプログラムをこなした2日間のプログラム全体の満足度は非常に高く、ほとんどの方にまた受けたいと言っていただくことができました。今回は、一般企業(耐久消費財、通信、サービス、トイレタリー、エネルギー)、行政職員、僧侶、工芸家、スタートアップ、学生など幅広い方々に参加いただきました。ダイバーシティ溢れる皆様からの声をご紹介します。

 

『デザイン思考のプロセスを短期間で体現しながら学ぶことができ、非常に満足しています。普段、仕事をする上でも課題としているテーマであったことから、今後の仕事でも活かせるワークショップでもありました。』

 

『異業種のグループメンバー、講師、メンターの方と交流できたのは純粋に面白かったです。
ダブルダイヤモンドモデルなど通常の業務だけをしているとなかなか学べないメソッド、問題特定⇒課題設定⇒ソリューションまで一貫した課題解決の有用性に改めて気づかせて頂いた時間でした。』


『チームでアイデアが大きく跳ねる瞬間や、イラストで可視化することによる議論の深まりなど、色々な学びを得ることができました。先生方や事務局のみなさまには、丁寧にサポートしていただきありがとうございました。またこのような機会があれば、ぜひ参加させていただければと存じます。』

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

著者の感想

2日間本当にハードなワークショップでした。アイデアの発散と収束、思考を抽象と具体に交互に飛ばしていく、脳みそのスポーツのような2日間でした。普段の生活で特段意識しない“思考プロセス”を、世界最高峰の美大であるRCAから系統立てて学ぶという非常に貴重な2日間でもありました。

 

参加者からも、現業に戻っても、壁に当たったときに学んだ発想プロセスを使ってみた、チームにシェアしてより効率的で有意義な議論ができている、との声も多くもらっています。ワークショップは2日間ですが、思考プロセス自体を学び、日々のビジネスの現場に適応していけるものであるとの確信を得ています。

 

今後とも京都BACはこのような取り組みを多く運営していきます。古さと新しさのインターセクションにクリエーティブが生まれると信じております。

 

ご興味ある方はぜひ、ご連絡ください。
 

 

RELATED

#プログラム/セミナー

【11月19-20日】Island Innovation Demo Day 2021 開催決定!

島という環境が抱える共通課題を見つめ相互発展目指すIsland Innovation Project。本プログラムの一環としてオンラインイベント「Island Innovation Demo Day 2021」を11月19日~20日の2Dayにて開催します!  Day1 概要  2021年11月19日 9:30 開始 ~ 12:00 終了(予定) ご視聴登録はこちら 同時通訳が入ります。 ご登録いただけたら、後日録画リンクを送ります。 リアルタイムでなくてもぜひご登録ください!!! DAY1では、日本とハワイの起業家、投資家、企業パートナーが一堂に会し、さらに、素晴らしい審査員をお迎えし、一般公募で募集し選抜されたサステイナブル社会の実現を目指すハワイのスタートアップ6社が、日本の聴衆に向け、各社が捉えた課題、そのソリューションについてプレゼンテーションを行います。 ■タイムスケジュール  09:30     オープニング  09:35     オープニング・セッション  09:50   スタートアップ企業によるプレゼンテーション  11:10     スピーカー・セッション  11:40   審査結果発表  12:00   終了 ■登壇スタートアップ  Hohonu                     https://www.hohonu.io/ 3Rwater                    https://www.3r-water.com/ PlantBaby                  https://www.plantbaby.co/   Greenshoot                https://www.greenshoot.org   KAS                           https://www.kuehnleagro.com/   Blue Planet Energy      https://www.blueplanetenergy.com/  ■審査員 Dai Yoshida    Managing Partner / Blackbelt Legal, Inc. Makiko Suzuki    Principal / Acario Innovation LLC /Tokyo Gas Co., Ltd. Nick Sugimoto    CEO / Honda Innovations, Inc. Risa Ishii    Director of Japanese Partnerships / Plug and Play Tech Center Nobu Morita    Director of Innovations / NEC X Keisuke Kamiich    Designer / Dentsu Inc.    Day2 概要  2021年11月20日 7:00 開始 ~ 10:00 終了(予定) ご視聴登録はこちら 同時通訳が入ります。 ご登録いただけたら、後日録画リンクを送ります。 リアルタイムでなくてもぜひご登録ください!!! DAY2は、ハワイと日本のイノベーター、投資家、創業者、ベンチャーキャピタリストをオンラインでつなぎ、日本とハワイ、双方の資産を活用し、いかにアイランド・イノベーションを実現するかを話し合うディスカッション、カンファレンスイベントとなります。 日本の技術をハワイのコミュニティ、特にESGのテーマで革新的に活用するには?日本のスタートアップや企業が、ハワイの文化や地理的優位性を活用し、どのようにイノベーションを加速させ、グローバルにビジネスを展開していくのか?日本の企業やスタートアップ、技術などの資産を活用した場合、ハワイが経済を多様化するメリットは何か?ディスカッションテーマ (30-45分)x 4テーマ程度を想定しています。 ■タイムスケジュール  07:00 オープニング  07:10 島嶼地域におけるEVの将来性  07:55 女性のエンパワーメントと気候変動  08:45 ハワイではどのようにしてテック・スタートアップをBIGにすることができるのか?  09:15 ハワイの観光業の革新と多様化   10:00 終了   ■テーマ×登壇者  Theme 1  島嶼地域におけるEVの将来性(原題:The future of EV in Island Communities) アイランド・イノベーションでは、電気自動車の分野で活躍する3人のリーダーを招き、ハワイでの開発機会をどのように見ているか、また、ハワイでの電気自動車の普及を支援するための政策提言活動を行ってきた過去の経験をお話いただきます。 〇登壇者  Scott Glenn (Chief Energy Officer for the State of Hawaii)  Nick Sugimoto (CEO of Honda Innovations)  モデレーター: Chenoa Farnsworth (Managing Partner of Blue Startups)​  Theme 2  女性   のエンパワーメントと気候変動(原題:Women Empowerment and Climate Change​) 国連によると、特に発展途上国   では、男性よりも女性の方が気候変動による悪影響を受けているケースが多いと言われています。このセッションでは、ハワイと日本の両方から4人の女性にお越しいただき、ビジネスのためのエネルギーやネット・ゼロ・ポーリング・ポリシーの作成に関する幅広い知識を共有し、女性が企業の方向性にプラスの影響を与える方法について議論します。 〇​登壇者  Makiko Suzuki (Principal at Acario Innovations )  Chenoa Farnsworth (Managing Partner of Blue Startups)  Tiffany Huynh (Director of External Affairs at Elemental Excelerator)  Yuko Masuda (Business Development Manager at Marubeni Power International )  モデレーター: Takaho Iwasaki (MajiConnection)  Theme 3  ハワイではどのようにしてテック・スタートアップをBIGにすることができるのか? (原題:How a tech startup can be BIG in Hawaii? ​) 一般的に考えられていることとは異な   り、ハワイを拠点としたビジネスは、国内および国際的に成功する可能性があります。今回は、ハイテク企業を立ち上げたプレゼンターに、ハワイでビジネスを立ち上げ、成長させた経験を語っていただきます。   〇​登壇者  TBA  Theme 4  ハワイの観光業の革新と多様化 (原題:Innovation & Diversification in Hawaii‘s tourism) COVID-19がハワイのビジネスに影響を与え、多くの人がハワイの経済の多様化を唱えています。しかし、観光自体はどうでしょうか?このセッションでは、ハワイと日本の観光関連分野の専門家3名に、日本人観光客のハワイ旅行に対する考え方がどのように変化したのか、また、ハワイの観光産業はどのように振る舞うべきなのかを議論していただきたいと思います。 〇​登壇者  TBA 不明な点等ございましたら、Island Innovation Project事務局までお問い合わせください。 *イベントの内容に関し、登壇社、審査員等変更になる可能性がある旨ご了承ください。 お問い合わせ先:Island Innovation Project事務局  iip@engawakyoto.com  

#プログラム/セミナー

6月29日16:00~ 開催決定!REMOTE engawa「選択的卵子凍結で考える女性の未来」

フェムテック(Femtech)とは、女性特有の課題を解決するテクノロジーの略語で、国内でも急速に市場が形成されようとしている注目領域です。日本は世界経済フォーラム「世界ジェンダー・ギャップ報告書2020」によると総合スコアが対象153カ国中123位と非常に低い評価であり、女性の社会進出に大きな課題を残しています。また、体外受精実施件数が年間約45万件であり、世界最大の不妊治療大国となっているのが現状です。本イベントでは、女性の未来を考えるうえでの選択肢の一つとして、「選択的卵子凍結」を取り上げます。電通のFemtech特化チームであるFemtech and Beyond、選択的卵子凍結の保管サービスを提供するGraceGroup、世界最大級のアクセラレーターであるPlug and Play Japanがご案内します。 ■PROGRAM 6/29(火)16:00~17:30@Zoom 参加無料! 16:00 – 16:10 Opening ~Femtech and Beyond~ ㈱電通 & Plug and Play Japan㈱ 16:10 – 16:30 米国の卵子凍結状況および今後の日本展開の予想:                          Scrum Ventures LLC Biz Dev Manager 大嶋 紗季氏 16:30 – 16:50 不妊治療の現状と選択的卵子凍結について:㈱グレイスグループ 代表取締役CEO 花田 秀則氏 16:50 – 17:05 多様な組織づくりを目指す社内福利厚生制度についての説明:                        ㈱メルカリ People Experience Team Manager 幸野 俊平氏        ㈱メルカリ様の社内福利厚生制度については  https://mercan.mercari.com/articles/28534/ 17:05 – 17:20 パネルディスカッション 17:20 – 17:30 Q&A 17:30 Closing ■参加登録はこちらから https://bit.ly/2U57o2X ■ウェビナーをさらに有効にご活用いただくために… 参加をご希望の方は事前に動画を視聴いただくことを推奨いたします。 【~宇賀なつみと学ぶ~「10分で分かる卵子凍結」】 皆さんのご登録お待ちしています!!