スタートアップのシード期にフォーカスしたイベント「スタートアップジャーニー」を振り返る

#プログラム/セミナー

今回は、engawa Kyotoで行われた電通グロースハックプロジェクトによる電通共催イベントのレポートを、電通グロースハックチームのシニアコミュニケーションプランナーの大橋誠也氏から寄稿いただきました。
※写真は登壇者の姜氏、有馬氏、米田氏、山田氏と電通グロースハックプロジェクト一同

 

関東圏外でスタートアップを始めるのは困難なのか??

電通・アドウェイズ・Amplitudeの3社主催によるスタートアップにフォーカスしたイベント「スタートアップジャーニー engawa」を開催しました。
東京にヒト・モノ・カネ・情報が集中するトレンドが続くなか、関東圏外でスタートアップを始めるのは困難なのであろうか?また、グロースができる人材はそこには育たないのか?というテーマに向き合った内容のサマリーをお届けいたします。

 

スタートアップジャーニーengawaは、「電通グロースハックプロジェクト」での活動を通じて様々なフェーズでスタートアップの成長を支援してきた経験のなか、スタートアップが関東発のものが多いのでは課題意識を持ったことがきっかけです。なかでもサービスをグロースさせるスキル、人材がそもそも関東圏外に少ないと感じています。
関東圏外でサービス立ち上げを行うに際し、どのような障壁が存在するのか、課題は解決できるものか?解決可能なのであれば何から着手すべきなのか?こういった疑問を明確にしていきたく今回のイベントを開催する運びとなりました。

 

 

 会場は京都にある電通のイノベーションオフィス「engawa Kyoto」です。
「engawa Kyoto」は個人、企業を対象とし、そこに集う人々の“縁”をつなぎ、これからの日本の活力となる事業創造支援を行う場となることを目的とし、開設されました。世界トップクラスのアクセラレーターであるPlug and Playも、日本での2つ目の拠点“Plug and Play Kyoto”として入居し、京都という地の持つ発信力を味方につけた今までにない事業共創拠点として期待されています。

起業支援に力を入れている福岡をはじめ、関西のスタートアップと言えばここ数年での投資マネーの調達が活発になりつつあり、大阪を中心に資金調達の段階に達するスタートアップが増えています。
京都ではLINEやマネーフォワードが京都府内にオフィスを開設しており、観光地として人気の高い地の利を活かしたグローバル人材の獲得を行っているなど、立ち上げに際しての環境は整ってきている点も多くあります。

 

なぜ、京都でスタートアップを始めたのか?

「実際、京都では海外人材も多く、採用に関しては確実に良い環境になっていると言えます。」と、アトモフ株式会社CEOの姜(かん)氏。
同社は開催地である京都のスタートアップであり、「窓型スマートディスプレイ」を開発・提供しています。クラウドファンディングMakuakeでも製品投資状況が直近で5,000万円以上となるなど、業界でも注目度が非常に高いと言えます。

 

姜氏:登壇席右


では、姜氏はなぜ京都でスタートアップを始めたのでしょう。海外人材の獲得や今後の展開を視野に入れて…というわけではなく理由は実にシンプルでした。前職(任天堂)が京都の企業であったこと、また、関東圏へ出るためのお金も、スタートアップ立ち上げ資金にした方が良いと考えた結果でした。

スタートアップの経営に際し、京都であることが理由で苦労したことなど無いかとお伺いしたのですが、大きく課題だと感じるシーンは少ないとのこと。


Q: スタートアップは京都が熱い?

京都でスタートアップとして活躍されている姜氏も言うように、そこまで大きな課題に直面するかと言うとそうではないのが実際のところなのだろうか?
関東圏外としてフォーカスして見てみると、福岡、大阪や京都は実際には企業活動が活発なであり、冒頭でもあったように京都へは各社が進出しています。
関東にいると「地方」と一括りに捉えてしまいがちですが、京都は伝統を重んじるだけでなく、新たな可能性を創出してくれる地なのだとセッションを通じても感じ取れました。

では、そうした新しい可能にドライブをかける投資側としては関東圏外という点において、何か意識する必要があるのでしょうか?
今回のイベントの共催者であり、全国へ投資を繰り返す株式会社アドウェイズの山田翔氏に質問をしてみました。

 

 

A: 投資を行うに際して関東か否かで判断はしたことがない


山田氏:登壇席中方

 

山田氏からはアトモフ社のほか、開催地京都のスタートアップ企業へ投資を行った経験等から、投資家目線での関東圏内と圏外、という概念に対して考えをお話頂きました。

 

そもそもどういう視点で投資を判断しているのでしょうか?「投資を判断する際にはやはり、事業内容と見通しは基本的に見ているなかで、スタイルとして細かい点まで口出しをしないようにしている。
すべての投資家がそうとは言えないものの、投資する際には気を遣う点が多々ある。
しかし、その中でその企業がどこを拠点にしているかは今の時代そこまで気にして見ていない。地方であろうが関東であろうがスタートアップが立ち上がることに投資を行うことは問題ではない」

 

山田氏は投資を行う側として、言うべきことはちゃんと伝えるようにするものの、基本的にはなるべく口を出さないことがほとんどだと言います。前に出過ぎないように気を配りながら進行を見守っており、世間で考える「投資家と投資をされた側のイメージと現実」は結構違うと強調していました。

 

調達した資金は商品が開発や製造が必要なこともあり、ほとんどが開発費に消えてしまうとのこと。投資元である山田氏へは企業側から説明をすることになりますが、「しっかり事業や会社状況を理解して聞いてくれて応援してくれるので非常に連携を取りやすい」「シード期から経営方針など細かく指示を出されないので精神的にも良い」と姜氏は感じており、両者の関係性が非常に良いことが感じ取れました。

 

エリア問わず日本が既に陥っているグロースのステップについて
京都のスタートアップ経営者、投資家としての目線からスタートアップを始めるにあたって土地は大きな影響が無いことが分かりました。
とはいえ、京都は東京と比べて企業数も少ないです。サービスグロースに関する知見を有した企業数も同様に少ないと仮定した場合、グローススキルにおいては京都に多少のビハインドは生じてしまうのではないか?この点については米国Amplitude Inc.のジャパンカントリーマネージャー米田氏がコメントしました。同社はThe New York Timesの2019年ユニコーン50社に選出されたグロース支援ツールベンダーで、米国でスタートアップ支援も行っています。

 

米田氏:登壇席左

 

「先ずそもそもですが、日本の場合、資金調達後、サービスをグロースさせる際に、いきなり広告へ予算を使う企業様が多くいる印象を持っております。」都内・地方に関係なく、日本と言う市場全体で陥ってしまっている状況である、と米田氏。
関東圏・外での比較ではなく、世界と日本の比較で話を切り出しました。

 

スタートアップでしっかり検証を行わないとならないのはPMF(プロダクト・マーケット・フィット)。Amplitude社ではサービスに対するユーザーの反応を図る指標としてリテンションを重視しており、このリテンションを軸にPMFが成されているかを判断しています。「リテンションを基に、サービスに定着してくれているユーザーがどのような行動を取っているのか、逆に離脱してしまう行動とは何か?を計測して明確にし、サービスの開発を続けていくかピボットするか等の判断支援を行っている」

 

また米田氏は、「PMFを検証しきらないタイミングで調達した資金で広告出稿を行い、一時的な利用ユーザー数の増加を達成しても、ユーザーが定着せず一定以上に成長できないことがある」とPMFの重要性について事例を挙げて説明しました。

 

スタートアップにとっては、今のサービスの健康状態を把握するツールの導入はコスト面などより避けられがちではあるものの、サービスをユーザーがどう捉えているかを把握することは常に必要なことです。しかし当然資金にも限りがあるため、Amplitude社としてはスタートアップ限定で通常有償のプランを1年間無償で利用できるプログラムを用意し、ツール利用によるPMF検証の促進と、イベントや勉強会などでのノウハウの共有によりスタートアップを支援し始めています。

 

イベントや勉強会が実際に都内を中心に行われることが多いようですが、米田氏は常に米国Amplitudeでの実績や知見を日本からアクセスし取得しているとのこと。「今やZoomなどのオンライン会議で互いに顔を見ながら会話ができ、その場で即座に資料の共有や同じドキュメントを編集できる環境もある。国を跨いで出来る事が関東と関東圏外だから出来ないということは無い」、とテクノロジーの力で物理的な距離を乗り越えて、自由に働ける可能性を示しました。


地方だから成功しないはなく、誰と連携し何を見ていくかが重要

本イベントで至った結論としては、スタートアップ経営者、投資家、支援者、三者の視点で見ても関東圏外でスタートアップがグロースしていくことは今の時代大きく乗り越えられない障壁ではないということ
一方、シード期として非常に重要なタイミングでその資金を何に使うか、成功に向けて同じ志持った企業と連携していけるかは大切な時期だからこそ慎重に判断すべきであることが改めて明確になりました。特にPMFに向けたプロダクトのデータ分析は自社だけで完結できるケースもありますが、時に必要なツールでスピードや仮説検証精度を上げることも重要であると改めて考えさせられるものがありました。

 

イベントを通じてこれからも情報発信の機会や、直接皆様と意見を交換する場を設けていく予定ですので、是非次回はより多くの方に気軽に参加頂き、その中からスタートアップが立ち上がることを期待して引き続き活動を続けていきます。

 

動画:主催者たちからのメッセージ

 

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祈りのかたち“京料理がきた道、器がきた道“ レポート

engawa KYOTOではindigenous innovationと称した、日本着想を源泉とした“ひと・もの・こと”のイノベーションを世界に向けて発信していく試みとして多様なプログラムを不定期開催しています。   一夜限りのアカデミックディナー 令和元年秋、皇位継承の年に新天皇が五穀豊穣を感謝し祈る大嘗祭が執り行われた。時を同じくして事業共創スペースengawa KYOTOでは“京料理がきた道、器がきた道”と称したアカデミックディナーが開催されました。今日わたしたちが食べている料理そして、それをいただくための器、その歴史を通してこれからの私たちの食文化が進むべき道について想いを馳せた一夜限りの晩餐です。   この夜のアカデミックディナーでは、京料理の原型とされる精進料理の名店、嵯峨野にある「さが一久」による精進料理が提供され、参加者は輪島塗の塗師、赤木明登 氏による縄文土器にまで遡っての器のかたちの原点についての解説を聞きつつ、一皿一皿運ばれてくる精進料理を嗜み、盃を酌み交わしていきました。     今回お料理を担当してくださった「さが一久」は、室町時代に一休禅師から直に精進料理の奥義を教えられ、その型を一子相伝で500年に渡り守り続けている名店です。   京都の中心街、烏丸通りに面した全面ガラス張りのengawa KYOTO2階に準備された会場、開放的なモダンな空間にオープンなアイランドキッチン、テーブルの上には輪島塗の本膳が華やかに並べられ、京料理と器をめぐるセミナーが始まりました。   本来であれば座敷にお膳が並べられるところ、今回はテーブル席での会食となったため、ひとりひとりお膳から器を取り上げて料理を食す体験を擬似的に体験してもらおう、という赤木さんの発案で、銘々のお料理一皿づつを輪島塗の御膳にのせて運び、各人が御膳から器を下ろして食べるといったスタイルでの配膳となりました。     神とともに食す、ということ 説によると古来、「食べる」という行為は、自然のエネルギーを身体に取り込む行為として捉えられており、それは自然への畏怖でもあり、不老不死への願いであり、人間の力がおよばぬ大いなる神への祈りであったと言われています。   食事は神饌として神に捧げられ、神様がお召し上がりになられた後、人間はそのお下がりを「いただく」。我々が何気なく日々使っている「いただきます」の語源はそこに遡るとされています。その年の収穫に感謝するとともに、神の御霊を身に体して生命を養うとされる大嘗祭に新嘗祭といった宮中祭祀からも、日本人にとって「食べる」ことは自然の恵みである食べ物を通じ神とつながる行為であったことがうかがえます。   神にささげた神饌を司祭者・参加者がいただく「神人共食」。神人共食を通して、神と人との親密さが生まれ,人は神を敬い守護を受け報謝する。この習わしは人間同士の「共食」の習慣へと発展し、ともに飲食を行うことで人間同士の絆をつよめ,共同体としての心理的安全性を育み社会の発展を促してきました。   輪島塗・塗師 赤木明登さん   この共食は、器の発展にも繋がっていきました。今回使われた輪島塗のお膳、宗和本膳はまさに、ハレやケの宴、共食に使われるものです。ただ現代の生活ではこのようなお膳を用いた共食の機会も減り、本場輪島でも使われる機会が減少していると言われています。赤木さんの工房では、お弟子さんの年季明けを祝う慶事にこのようなお膳が登場しますが、今では輪島でも伝統的な本膳を使う年季明け式を行うのは赤木工房だけとか。神人共食を心身で感じとる機会が日本の隅々で消滅しつつあります。       祈りのかたち 会の中盤には赤木さん秘蔵の縄文土器や平安時代の漆器が次々と登場、その形状のもつ意味についてレクチャーが繰り広げられました。それらの器は各テーブルを回り、参加者はその器を直で触るという貴重な体験が与えられました。     今回赤木さんが解説をした器のうちの一つ、世界最古級の器である縄文土器の陶片は、縄文土器特有の縄模様が施されています。縄文土器の出現により、煮炊きという人類にとって革命的な調理方法が飛躍的に発展しました。このことにより、栄養の吸収が高まり、食べられる食材が増え人類の生存圏が広がっただけでなく、食が文化として昇華していく大きな土台がつくられました。「実は縄文土器に施されている縄模様は、縄ではなく蛇を模したものではないかと言われているのです」と赤木さん。不思議な生き物、蛇は古来より山の神の遣いとして崇められ、その力に授かりたいという祈りが器の意匠にも現れていたのではないかと、赤木さんはつづけます。     世界最古級の器、縄文土器の陶片   次に説明されたのは時代をずっとすすめて、平安時代の漆のお椀。普段我々が使うお椀の底についている高台、この高台も祈りの形だ、と赤木さん。諸説あるなか、天の恵みに対する感謝、神への畏敬、そして神からの下がりもの、としての食物を粗末にしてはいけないという畏怖の念から、高台の形状は進化していったのではないだろうか、と赤木さんは推理されます。この高台付きのお椀も日本人の祈りの形として脈々と現代まで受け継がれてきたのです。         一皿に写しだされる自然の美 その夜のもう一つの主役が「さが一久」当代の津田達也さんによる精進料理。今回お料理をご用意くださった「さが一久」は室町時代一休禅師より教えられた精進料理の型を、500年来一子相伝で今日まで受け継いできた精進料理の老舗です。精進料理は中国に渡り禅宗を学んで帰国した僧侶たちによって日本に持ち込められ、広められました。その中でも曹洞宗の開祖道元は、幾分食いしん坊のご性分で、仏教修行よりも食文化に強く心を惹かれたので、日本に精進料理が広まったのではと、津田さん。精進料理は修行のひとつとして僧侶自らが調理し、その技術を磨き上げていき、の調理技術の世俗への伝播が、日本料理の独特の発展を支えてきました。     この夜の献立は   向    蓮根白和え・水前寺海苔・紅葉麩   汁椀    焼き豆腐・大根煮・三つ葉・粟麩   平椀    塔地湯葉・松茸・柚子・菠薐草   煮しめ    擬製豆腐・利休麩・湯葉・松茸           栗・松葉銀杏・酢蓮根・紅葉麩・筏牛蒡   茶椀    胡麻豆腐・山葵   酢物    松茸・黄湯葉・菠薐草   八寸    湯葉真丈・岩茸・ゆべし   飯    散飯   香物    柴漬・大根漬   酒    奥能登の白菊   精進料理は動物性の素材を一切使うことなく、植物性の素材から滲み出る旨味をベースに火加減と時間をかけてじっくりと味付けを行なっていく、「時には2,3日かけてじっくりと火加減と味付けを吟味していく」こう津田さんは話します。煮しめが盛られた器には、紅葉麩、松葉銀杏が彩られまるで秋の庭がそのまま一皿に写されたようです。日本人がもつ自然界への憧れ、そして畏敬の念が器のうえに再現された世界からも感じとれます。     500年続いてきた精進料理の原型を当代として守りつづけている津田さんは、一歩でも先代の味に近づけているか、日々自身に問いながら料理をつくり続けていると言います。禅宗では食事をいただく際に“五観の偈”という偈文を唱えます。それは自分の口を通していただく多くの命によって我々は生かされていることへの思いを改めるひと時です。   「さが一久」当代 津田達也さん   むすびに 食べる、それは神とつながり自然界の命をいただく感謝の行為、不老不死を祈る気持ち。人間が自然や神ともっと近かった太古から、祈りや願いが込められ脈々と人間の手を介して進化をつづけてきた「料理と器」。その形をめぐるレクチャーを聴きながら、形とは容(かたち)、祈りや願いを込める器であることに気付かせられた夜でした。料理と器の系譜からみるとほんの一瞬の現生において、それらを食し、使う私達は、太古からの祈りや願いを伝えていく媒介にすぎないのではないか、という思いがよぎりました。自然界からの多くの命によって生かされ、脈々と続いてきた太古からの祈りや願いを運ぶ媒介として、私たちはどう生き何を次の世代に残していくのか、この問いはこれからの時代の、そしてindigenous innovationをコンセプトに掲げる事業共創スペースengawa KYOTOの大きなテーマでもあります。    

#プログラム/セミナー

世界が認めるフレームワークを使って未来の本質課題を開拓するワークショップレポート(後編)

電通京都BACは山口周氏のベストセラーの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)にて紹介され一躍有名になった、経営層向けに美大教育を行っている世界最高峰の美術系大学院Royal College of Art(以下、RCA)。その教授・講師陣を京都に招聘し、2日間にわたる世界最高峰のビジネス×美大教育ワークショップ“Innovation Masterclass in Kyoto”を実施しました。Day1の 前編 に続き、本稿では後編としてDay2の内容をお届けします。   さて、2日目は2つ目のダイヤモンドである「展開(Develop)」「提供(Deliver)」フェーズにて解決策を探索していく流れになります。↓のモデルでの赤枠部分にあたります。     まずは準備運動~オリエンテーション Day2の内容にフルスロットルで挑むために、まずは準備運動。ということで、隣に座っている人のイメージの色の紙を選んで、似顔絵を描いてみましょう。というワークから幕開けしました。絵を描いてください、というと大人はためらってしまいがちですが、Day1でクリエーティビティが開花したのか、オリジナリティあふれる絵がほんの数分でずらっと並びました。   ハードなDay1を経た次の日、朝一のワークですが一気に笑いが広がります   作品が大量に生み出されます     ダブルダイヤモンドモデルでDay2の流れを説明   第三のフェーズ「展開(Develop)」 マイヤーソン教授のオリエンテーションの後、Day1のようにチームに分かれて展開(Develop)ワークを開始します。展開(Develop)フェーズで行うことは、Day1で得た課題に対してとにかくたくさんアイデアを出していくということ。ただ、このフェーズはまだ解決に向けた具体のアイデアではなく「抽象思考」で考えなければ、細かいアイデアが多くなってしまいます。   現実的であるかどうか、ビジネスインパクトがどうか、自社の利益になるか、などの諸条件はまず頭から追い払って、抽象的で革新的であることを意識しつつ、たくさんアイデアを出していきます。   脳みそを動かすためにたくさんのレゴを積み上げてみたり、粘土をこねてみたり。ここでもいつもアウトプットを前提にしている美大ならではのやりかたも試してみました。     手渡されるとなんとなくこねてしまう粘土の魔力。少し体を動かすと脳の違う部分が働いて発想が広がります   アイデアがある程度出たところで、今回のワークショップでは“望まれ度合い”ד実現性”の2軸を取ったフォーマットに張り付けていきます。これが次の絞り込みフェーズの重要なヒントになります。     アイデアが用紙に収まりきらずホワイトボードも大活躍です   二軸フォーマット。抽象的で革新的なアイデアを出すのに苦労したチームも多く、RCAのファシリテーターから“How Radical?(どのくらい革新的?)の文字が書かれました   たくさんアイデアが出せたら、最終フェーズの提供(Deliver)へ突入です。   解決法を絞り込む、第四のフェーズ「提供(Deliver)」 展開(Develop)フェーズで大量に出したアイデアを絞り込み、ビジネスとして形にしつつ、ビジュアルプレゼンテーションに落とし込むのが提供(Deliver)フェーズの作業です。どのフェーズよりも忙しいフェーズかもしません。   絞り込みは展開(Develop)フェーズで使った2軸のフォーマットを参考にしながら、具体化させていきます。絞り込む上での理想はもちろん実現性が高く、市場から望まれている度合いも高い、2軸のフォーマットでいうと右上のものですが、具体的にアイデアを展開する上での広がりなども考慮しながらプレゼンテーションの準備を進めます。   RCAから出されたビジュアルプレゼンのお題は「電車の中づり広告」です。日本のユニークな広告ビジュアルということで、お題になりました。ワンビジュアルで伝えるために強いコンセプトを抽出して絵にするという非常にハードルの高いワークです。   大量のアイデアの中から絞り込み、1ビジュアルと1ワードの広告として伝わるよう試行錯誤   クリエーティブなプレゼンに向けて、粘土やレゴを使って表現するチームも   ついに最終プレゼン! 2日間という時間を使って考えたインクルーシブデザインの最終発表です。クリエーティブな2日間を過ごした各チーム、プレゼンテーションのやりかたも非常に多岐にわたり、面白く、いくつかのアイデアは会場から「これはぜひ欲しい!」と声が漏れるほど。   紙で立体のロボットの“プロトタイプ”を作ったチーム   お昼ご飯に出たお弁当の空箱(!)と椅子を使って新しい乗り物を表現したチーム   各チームのクリエーティビティあふれる発表に講師陣も大興奮のご様子でした。   最後に参加者全員で良いと思ったアイデアに投票し、各講師陣からも賞が贈られました。       2日間のワークショップを終えて:参加者のアンケートより 充実のプログラムをこなした2日間のプログラム全体の満足度は非常に高く、ほとんどの方にまた受けたいと言っていただくことができました。今回は、一般企業(耐久消費財、通信、サービス、トイレタリー、エネルギー)、行政職員、僧侶、工芸家、スタートアップ、学生など幅広い方々に参加いただきました。ダイバーシティ溢れる皆様からの声をご紹介します。   『デザイン思考のプロセスを短期間で体現しながら学ぶことができ、非常に満足しています。普段、仕事をする上でも課題としているテーマであったことから、今後の仕事でも活かせるワークショップでもありました。』   『異業種のグループメンバー、講師、メンターの方と交流できたのは純粋に面白かったです。 ダブルダイヤモンドモデルなど通常の業務だけをしているとなかなか学べないメソッド、問題特定⇒課題設定⇒ソリューションまで一貫した課題解決の有用性に改めて気づかせて頂いた時間でした。』 『チームでアイデアが大きく跳ねる瞬間や、イラストで可視化することによる議論の深まりなど、色々な学びを得ることができました。先生方や事務局のみなさまには、丁寧にサポートしていただきありがとうございました。またこのような機会があれば、ぜひ参加させていただければと存じます。』   ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。   著者の感想 2日間本当にハードなワークショップでした。アイデアの発散と収束、思考を抽象と具体に交互に飛ばしていく、脳みそのスポーツのような2日間でした。普段の生活で特段意識しない“思考プロセス”を、世界最高峰の美大であるRCAから系統立てて学ぶという非常に貴重な2日間でもありました。   参加者からも、現業に戻っても、壁に当たったときに学んだ発想プロセスを使ってみた、チームにシェアしてより効率的で有意義な議論ができている、との声も多くもらっています。ワークショップは2日間ですが、思考プロセス自体を学び、日々のビジネスの現場に適応していけるものであるとの確信を得ています。   今後とも京都BACはこのような取り組みを多く運営していきます。古さと新しさのインターセクションにクリエーティブが生まれると信じております。   ご興味ある方はぜひ、ご連絡ください。    

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世界遺産を舞台にした国際アートフェアartKYOTO 2019初開催を裏側から語る全レポート

2019年9月に初めて開催された国際アートフェア「art KYOTO」の開催までの軌跡、そして、本番期間中の様子を、artKYOTOの裏側で動いていたプランナー伊藤の視点でご紹介します。   世界遺産二条城を舞台にした国際アートフェア artKYOTO 2019 artKYOTOは、京都の歴史や文化を背景に、日本のアートシーンの発展、アート産業振興の原動力となることを目的として、2019年9月6日~9日に世界遺産二条城を舞台に初開催された国際アートフェアです。   artKYOTO 公式ロゴ伝統と創造性を表す「折り紙」をモチーフにしたデザイン   アートフェアとは、アートを観るだけでなく、実際に購入ができるイベントです。 世界では、スイスのアート・バーゼルなどが有名ですが、今回のartKYOTOは、世界遺産、しかも、城を舞台にしたアートフェア、という世界初といえる試みでした。   artKYOTO 2019会場 二の丸御殿台所外観   初開催にも関わらず、国内外から名だたるギャラリー・美術商31軒が集い、4日間の期間中の総来場者は約1万人、メディアにも多数取り上げて頂きました。   artKYOTO開催中の様子 (Photo by office TKD)   後援には、内閣府をはじめ5省庁、73カ国大使館/領事館、メディア各社にご協力を頂きました。 電通は、このプロジェクトに対して、京都市他と同じ主催の1社として、通常とは違うレイヤーで、ゼロからの事業立ち上げに関わりました。   新しい時代に、京都ではじめる意義 artKYOTO会場に向かう来場者 (Photo by office TKD)   2019年は令和という新時代がはじまった年ですが、実は、過去の改元の多くは京都が舞台でした。しかし、今回の令和の改元を祝う祭事の多くが東京で行われることが発表されていました。京都を盛り上げる志を持つ京都BACメンバーを中心として、この時代の節目にここ京都で何かできないか、という思いが募り、企画がスタートしました。 時代のトレンド「アート」と「京都」のコラボレーションイベントを、場所は大政奉還という時代の転換点となった場所「二条城」で実施したいという構想がメンバーの中で持ち上がりました。 二条城での開催に向けては、門川大作京都市長をはじめ、多くの行政の方にご協力を頂きました。貴重なアート作品が、歴史遺産に並ぶ。その作品を手に取る世界中のVIPアートコレクター。そんなシーンを作り出すべく、前例のないプロジェクトが動き出しました。 2019年1月にはartKYOTO開催のプレスリリースを配信。多くの反響を頂きました。さらにその後、京都での初開催に向けて、artKYOTO実行委員会を発足し、体制を確立しました。   artKYOTO実行委員会設立 記者会見の様子。左から、來住尚彦(一般社団法人 アート東京代表 理事)、渡邊隆夫(京都府中小企業団体中央会会長・西陣織工業組合理事長)、門川大作(京都市長)、佐々木丞平(京都国立博物館館長)、近藤誠一(京都市芸術文化協会理事長、元文化庁長官)。(出典:artKYOTOプレスリリース)     歴史的空間とアート作品のコラボレーション 開催3か月前には、artKYOTO出展ギャラリーが決定。地元京都からの出展11軒を含み、国内外から集ったギャラリーは31軒。本物を知る「京都」でのアートフェアならではの、格式高いギャラリーが集いました。 実際に、artKYOTOの本番会場では、各ギャラリーのブースごとに、二条城の歴史的建造物を生かした展示がされ、古美術から近代、現代アートと歴史遺産の空間が融合して、来場者の驚きを生み出していました。   artKYOTO会場内の様子   artKYOTO会場内の様子(Photo by office TKD)   二の丸御殿台所と御清所(おきよどころ)では、24軒のギャラリーが出展・販売。天井に重厚な梁が渡り、土間と板間が一体となった歴史を感じさせる広い空間の入り口には、壁・床・天井がすべてガラスで構成されたガラスの茶室 「雪花庵(せっかあん)」(板橋一広、浦一也、”清昌堂やました”)が配置され、歴史とアートのユニークな出会いを象徴するものとして、来場者を迎えました。   ガラスの茶室 「雪花庵(せっかあん)」(板橋一広、浦一也、”清昌堂やました”)  (出典:artKYOTOプレスリリース)   また、その奥には、“NUKAGA GALLERY“からゴッホの水彩画が展示され、歴史的な空間の中に、古美術や工芸、近代美術、現代アートのあらゆるジャンルで活躍する国内外で評価の高いアーティストの作品が揃いました。   ゴッホの絵画を見つめる着物姿の女性。西洋と和の美の競演。“NUKAGA GALLERY” (出典:artKYOTOプレスリリース)   地元京都のギャラリーとして、時代にとらわれず優れた日本美術を扱う“思文閣”、古美術と茶道具を扱う“宇野商店”、若手作家から物故作家まで国内外の現代美術を紹介する“ART OFFICE OZASA”らが出展しました。   “思文閣” (Photo by office TKD) 二条城のお堀に面し、見張り台として建造された「東南隅櫓」では5軒の美術商が出展。仏像を展示した“古美術 柳”では、荘厳な雰囲気が感じられました。   二条城・東南隅櫓に空間に合わせた古美術作品の展示「古美術 柳」   artKYOTO 東南隅櫓会場の様子 (Photo by office TKD)   さらに、東南隅櫓を出てすぐの外庭に設けた特設ブース「ライブアートガーデン」では、“アンザイ ギャラリー”が出展。Instagramで245万人超のフォロワーを持つグラフィティ・アーティスト、Mr Doodle(ミスター ドゥードゥル)のライブペインティングパフォーマンスが行われ、集まった人々は日本の伝統的な庭園内と鮮やかなミスター ドゥードゥルの世界観の融合を楽しんでいました。   二条城内でミスタードゥードゥルによるライブペインティングを開催 “アンザイ ギャラリー”(出典:artKYOTOプレスリリース)     artKYOTO初開催を記念するセレモニー artKYOTO開催初日には、二条城の東大手門に設けられた特設会場で、オープニングセレモニーが開催され、artKYOTO実行委員長を務める門川大作京都市長をはじめとする京都の団体、経済界、文化界を代表する実行委員と、安倍昭恵氏らゲストの計11名が、初開催のartKYOTO 2019の成功を祈念して鏡開きを行いました。   artKYOTO 2019 オープニングセレモニーでの鏡開きの様子。左から、大西 洋 株式会社羽田未来総合研究所 代表取締役社長、渡邉 隆夫 京都府中小企業団体中央会 会長、立石 義雄 京都商工会議所 会頭、田村 明比古 成田国際空港株式会社 代表取締役社長、コシノジュンコ デザイナー、來住 尚彦 artKYOTO総合プロデューサー、近藤 誠一 公益財団法人 京都市芸術文化協会 理事長、門川 大作 京都市長、安倍 昭恵 内閣総理大臣夫人、佐々木 丞平 京都国立博物館 館長、中野 善壽 東方文化支援財団 代表理事(出典:artKYOTOプレスリリース)     artKYOTOに来場者されたVIPへのおもてなし artKYOTOではVIP向けホスピタリティとして、京都らしい様々なおもてなしをご準備させて頂きました。   VIPラウンジとして使用された「香雲亭」   さらに「ザ・リッツ・カールトン京都 」に用意した「artKYOTO 2019 Reception / KYOTO art night 2019」には、京都地域、公共機関関係者をはじめ、ギャラリー・美術関係機関、ビジネス界そして文化界など様々な分野から625名が集い、 artKYOTOの初開催を祝いました。     artKYOTO 2019 レセプションの様子。世界各国の大使館や京都を代表する方々、企業幹部にギャラリー、アーティストなど多彩な面々が集うレセプションパーティー(Photo by office TKD)   さらに、artKYOTO期間中は、京都内の様々なアートイベントとコラボレーションし、アートの街「京都」を盛り上げました。 特に、日本初開催となるICOM KYOTO(世界博物館会議)をartKYOTOのパートナーイベントとして、ICOM関係者をartKYOTOにご招待するなど連携を図りました。 加えて、京都市立芸術大学の若手アーティストの作品を展示するなど、次世代のアーティスト支援、京都のこれからのアートシーンに資する活動も行いました。   レセプション会場に展示された若手アーティスト作品に見入る来場者   さらに、artKYOTO来場者に配られるパンフレットは、二条城以外にもアートの街としての京都を楽しめるよう、京都のアートスポットを記載した「アートMAP」を掲載。artKYOTOを訪れた方へお配りさせて頂きました。   artKYOTO公式パンフレット (出典:artKYOTOプレスリリース)     5坪のギャラリーから世界を臨んだ。 engawa Kyotoでのサテライトギャラリー 2019年7月22日に京都にオープンした電通の事業共創拠点「engawa KYOTO」。 スタートアップや大手企業が集う事業共創拠点の施設入り口には5坪ほどのギャラリースペースが設けられています。   engawa KYOTO(右側手前がギャラリースペース) 写真提供:安田慎一   このギャラリースペースは、オープンから2ヶ月間、世界遺産・二条城で初開催された国際アートフェア「artKYOTO」のサテライトギャラリーとして、artKYOTO出展ギャラリーによる様々な作品が展示されていました。   engawa KYOTOギャラリースペース展示 (Photo by Oriental antiques Kanegae)   初開催を終えて 9月9日最終日、最後のギャラリー搬送車を見送り、無事に初開催を終えたartKYOTO。 artKYOTO全体を振り返れば、「舞台は世界遺産の前例なき挑戦」ということで課題も多数発生しました。そんな中でも、多くの方にご協力を頂き実現にまでこぎつけ、本番では来場者からも驚きや喜びの声を頂き、運営側にも多数の学びや喜びがありました。この場を借りて、ご協力を頂いた皆様に心から感謝申し上げます。   artKYOTOの取り組みをこれからどうやって広げていくか。やるべき課題はまだまだあります。まず、取り組みをより多くの方に届けるためにも、アートがもたらす価値を、言語化や定量化することが急務だと感じています。今は“分かる人だけに分かる”と敬遠されがちなアートの価値をより多くの人に伝えることができれば、アートの裾野は広がっていくと信じています。   さらに、アートを活用した企業ブランディング、アートを使ったコミュニケーションもまだまだやれることがありそうです。   京都の魅力を生かした事業開発を目指す 2020年オリンピック・パラリンピック、2021年には京都への文化庁本格移転、そして2025年には万博と、世界中の注目が日本に集まるタイミングがやってきます。それはつまり「日本らしさ」を語れるモノやコトに価値が見いだされていくチャンスとも言えるかもしれません。   京都BACでは、artKYOTOのように、京都を日本のオリジンとして、歴史や文化、そこに流れる美意識の価値を、京都の魅力、日本の魅力として事業開発に生かすことにこれからも挑戦をしていきます。   京都を舞台にした、Art×Craft×Scienceをテーマにした挑戦の場、そして、多様性に富んだ企業や個人が集う事業共創拠点としてengawa KYOTOを引き続きよろしくお願いします。   engawa KYOTOギャラリーにご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください!