【 engawa young academy 】 メンターインタビュー  NTT西日本篇

#インタビュー

2020年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2020(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第1回目は、NTT西日本の谷村さん、石田さんにお話を伺いました。

写真左)西日本電信電話株式会社 人事部 人事第一部門  谷村 祥太さん
写真右)同社 ビジネスデザイン部 スマートデザイン第3部門 石田 裕紀さん
所属は、取材:2020年11月当時のものです。

 

−eya、初日を終えての率直な感想はいかがでしょうか?

谷村さん:一言で楽しかったなと思っています。学生の皆さんが優秀で、皆さんへの興味・関心を刺激されたところがその源泉でした。石田とも喋ったんですけど、僕も学生時代に起業したり、石田も団体の主催をやったりしましたが、その昔のチャレンジ精神を学生から改めて教わったなと思いました。

石田さん:起業するとか団体立ち上げるとかって、僕の世代では比較的レアな経験だったように思います。けれどeyaに参加している学生は、起業や団体運営なんかは当然経験済みで、ICTやSNSを使いこなしながら個人としての影響力も高い。そういう経験を持った人の数が、僕らの時代とは比較にならないな、みたいな会話をしていました。 

 

−学生時代の活動におけるラインが上がっているように感じます。僕も学生の自己紹介の時間、一定層の学生を集めているとはいえ、こんな時代なんだ、と思ったところでした。

石田さん:学生の自己紹介の時間は驚きの連続でした。僕らの世代のプレゼンって、オーディエンスは静かに聴くじゃないですか。でも今の世代はどんどんチャットで盛り上げるし、プレゼンターもそれを取り上げる。静かに聞くことがマナーって感じる世代と、チャットとか使って盛り上げてあげるのがマナーって感じる世代と、人をリスペクトしようっていう方向性は同じなのに、アプローチは全く逆だな、と。  

谷村さん:たぶんインスタライブとか、webのライブ放送でも番組しながらコメントするのが当たり前じゃないですか。ビジネスの場にも、そういうのがこれからおそらく出てくるんだろうなって感じですね。

 

−では、そういった学生を前に、谷村さんにメンタードラフト※をしていただいたのですが、その感想を聞かせてください。
※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム

谷村さん:採用担当として、学生の立場に立ててよかったなって思います。あんな心持ち、緊張感、本気度を持って、学生の皆さんが面談に来ているんだろうなって思いました。採用の場面では学生側に求めていることなので、今後にもつながるいい機会だったなって思います。

 

−企業側のeyaへの本気度を伝える上で、あの緊張感が学生側にもよい刺激になっていると思います。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか?

谷村さん:固定電話や光インターネット回線といった通信ネットワークのみを扱う単一事業者のイメージが強いのではないかと思います。

 

−では、御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業なんです、という、知られてないけど伝えたいこと、紹介して頂けますか?

谷村さん:ネットワーク事業が根幹で中心なんですけど、通信関連で言うとデータセンターとかセキュリティ、コンタクトセンター(顧客からのお問い合わせ・お申込み対応窓口機能)のソリューションもやっていたりします。通信以外の、あまりイメージがないのかなというところでは、不動産ビジネスとかドローンビジネス、あとはインターネットラジオとか電子コミックといったコンテンツ系のビジネスもやっています。例えば、ドラマ「私の家政婦ナギサさん」(2020年9月:TV放送)は、NTTソルマーレというグループ会社の電子コミックのコンテンツです。単一事業でネットワーク、インフラっていうと守るイメージが強いと思うんですけど、ネットワーク部分でのチャレンジはもちろん、多角化展開へのチャレンジもぜひ知ってもらえたいです。

 

−確かに、ネットワーク以外でそこまで多角化にチャレンジされていることは、なかなか伝わっていないかと思います。ネットワーク以外の多角化へのチャレンジですが、そこに踏み出すタイミング、きっかけがあったのでしょうか?

谷村さん:固定電話はもう使われなくなってきている、という現状と、光インターネットも普及率を人口ベースで100%に近づいていて、NTT西日本の光サービスのシェアはエリアにもよりますが、その内の6割、7割というレベルでの争いになっているんです。そういったことを考えると、他の競争分野に人もお金も使わないと、固定電話の減収をカバーできない状況で、そこに対してどうチャレンジしていくかっていうのが今のうちの会社の命題ですね。

 

−多角化展開を図るにあたって、何かしら基準はあるのでしょうか?

谷村さん:1つあるのは、地域の社会課題にコミットできるかみたいなところで、「ビタ活」と言っている取り組みがあります。「ソーシャルICTパイオニア」(ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術))として、地域を元気にする“ビタミン”のような会社になろう、という意味です。

NTT西日本のソーシャルICTパイオニアの事例
https://www.ntt-west.co.jp/brand/regional/

 

石田さん:自社のアセット、ノウハウがしっかり活かしながら、今、谷村が申し上げた、特にその中でも社会課題とか地域創生、ワールドワイドというより地域密着型の課題解決ができる事業をつくっていこうっていう、軸がありますね。

谷村さん:日本の数ある企業の中でもめずらしい会社だと思います。市場として、世界や首都圏という選択肢を取りづらく、かつ47都道府県のうち30府県をエリアカバーする多くの地域をマーケットとして持っている会社。地域の発展が当社事業の発展であり、その地域が広いという非常に特異な会社なのではないかと思っています。

 

−なるほど、先進の技術とそのノウハウを、西日本という広いエリアにある様々な地域の特性、課題に合わせてどういかしていくか、というポジションは、確かに独自性がありますね。この取り組みが一つの形、ビジョンとなっているのが、スマート10x(エックス)、ということでしょうか。

谷村さん:そうですね。ICT(情報通信技術)をコアに、B to B to Xと表現している ますが、例えば顧客企業が持っている事業ノウハウと弊社が持っているICTを掛け合わせて、顧客企業の先にいるお客様に対して価値提供をする、その際のスマートの部分を僕たちが担う、ということです。例えばアグリだったり、エデュケーションでのギガスクール支援やローカル5Gを使ったスマートファクトリーとしての工場自動化、スマート防災としての水門陸閘の自動化など、スマート10xであげている領域を通じて地域を元気にするという価値観で展開していくイメージを持っていただけると近いと思います。
 


※スマート10xについて
https://www.ntt-west.co.jp/business/n-colle/smart10x/

 

石田さん:先ほどの、新規事業展開における基準の3つめを、今、スマート10xのことを話しながら思い出したんですけど、まだ取り組みの途中ですが、単なるICT、ITのシステムを作って終わりじゃなくて、それを使って既存の業界のビジネスプロジェクトを変えるとか、オペレーションを変革するとか、そこまで食い込まないと、本当の意味で顧客の課題解決になる時代じゃないよねっていう課題感がすごくあります。

 

−スマート10xの裏には、そういう課題感があるんですね。石田さんが所属しているビジネスデザイン部が、スマート10xの中心を担われていると聞いているのですが、具体的に石田さんはどのような事業をやられているのでしょうか? 

石田さん:具体的には、インフラ事業者 向けにICTを使ってDX化を推進していく、それによって新しい事業のオペレーションのやり方を構築する、ということに取り組んでいます。例えば、スマートメーターという商材があります。ガスや電力、水道の事業には検針業務が必要で、これを無線回線で遠隔化・自動化しましょうというものです。
1つのメーターが持つデータ量は少ない一方で、対象となるメーターの数が何百万台と存在します。さらにメーターは、家の奥の電気がない場所についていたりすることが多く、取り換えも数年に一度だけなので、スマートメーターは電池稼働で数年間稼働する必要があります。つまり小容量でもいいから、出来るだけ省電力で通信できるIoTデバイスとネットワークが必要なんです。 弊社のグループ会社であるNTTネオメイトからは既に、LoRaWAN®(ローラワン)というLPWAネットワーク(省電力を特徴としたネットワークの総称)を提供しています。これを使って、スマートメーターを遠隔化するだけでなく、さらに付加価値を作れないか検討をしていて、例えば、リアルタイムでデータが取れるため、そこから水の量が見えてくると、断水・漏水の発生箇所を推定できないかとか、高齢者の方の見守り、あと水の需要予測をより精緻化することで水道事業そのものをより最適経営に変えていく、そういうことを目指せたら、という考えでやってます。このように、LoRaWAN®を軸として、IoTデバイスからネットワーク、データ収集サーバまでを含めたトータルソリューションの提供を目指し、今まさに商品開発からプライマリーユーザの開拓まで、新規事業のすべてのイベントに関わりながら、プロジェクトを進めています。

谷村さん:ちなみに、福岡市では、このLoRaWAN®を産業振興という目的に活用するという試みを行っています。

Fukuoka City LoRaWAN®の取り組みについて
https://www.ntt-west.co.jp/ict/casestudy/lpwa_fukuoka.html

 

−単純に通信って、高速・大容量になればいいかっていうことでもないんですね。ついそっちの方に目が行きがちなので、とても面白い切り口です。もう少し聞きたいところなのですが、、、次の質問にうつらせて頂きます。御社の採用に関してですが、御社が重視している指針や取り組みを教えてください。

谷村さん:当社が最も大切にしていることは、「多様な採用」です。学歴や経験、スキルに囚われない、幅の広い採用活動をめざしています。インターンについては、学生に成長環境を提供すること、採用としては時間・場所・手法を幅広く構えて、多くの学生に会うことを一番に考えています。

 

−御社が行うインターンでは、学生にどのような成長環境を提供してらっしゃるのでしょうか。

谷村さん:インターンの主題は「10年後の未来の社会を考えましょう」というもので、eyaにも似ていて最大2ヶ月に4日間しか集まらないんですけど、定期的にピックアップした新聞記事やPEST分析、3C分析などといったビジネスフレームなどを弊社のビジネスチャットツールを使って送ったりして、学生の一般的な教養知識を深めてもらうことを考えています。

 

−お伺いするに、正直準備が大変なインターンだと思うんですけど、なぜそのような取り組みをされるのでしょうか?

谷村さん:根本的な思想として、限られたマーケットの中で各社が競い合って人を取り合うって不毛だなと思ってます。そうじゃなくて、マーケット自体の質を向上させれば、もちろんその数に限りはあるんですけど、勝った負けたじゃなくて全員ハッピーになれるんじゃないか、という思想の元で、今のインターンを提供しています。

 

−まさに、eyaも同じ思想です。そのようなインターンをされている中で、御社が求めている人材像はどのようなものでしょうか?

谷村さん:一言でいうと、「変われるand変えられる人材」です。「(変わることを受け入れる)素直さ」、「(変わろうとする)ちょっとした勇気」、「(変わるための努力を)やり切る力」、「(周りを変える)影響力」が必要だと考えています。まず変わることを受け入れる素直さって必要だなっていうこと。変わるときにかかる精神的コストを乗り越えられる人。変わろうとする勇気を持っているか。で、変わろうとすると小さなことから1つずつ達成しないといけないんですが、それらを最後までやり切れるかっていうところ。最後は、基本的にビジネスってチームで動いたり、お客様がいたり、複数の人と働くので、周りの人たちを感化していける影響力を持っている人です。

 

−そういった人材にアプローチする上で、課題と感じているところを教えてください。

谷村さん:心底、当社のインターンは学生の成長に寄与すると思っていますので、良くも悪くも「NTT西日本」という看板が大きいことで、選択肢に入らない学生がいるのではないかと思っています。自己成長の場としてもっと多くの学生に参加してほしいと思っています。採用としても「NTT西日本」から想起されるイメージが固定化されてしまっている部分があると思うので、それをどう多様なものに変えていくかが課題です。

 

−NTTが強いブランドだけに、ハードルが高い課題ですね。eyaの中で、学生に対してそのイメージを崩すサポートができればうれしいです。では、社内で多様な人材を育成するために、社員への成長機会の提供などに関する取り組みがあれば、教えてください。

 

オンライン取材の様子
左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣

 

谷村さん:当社は人材開発ビジョンとして「個の自立」を掲げています。そのため、1,000を超える研修や通信教材を準備し、画一的な人材の育成ではなく、社員自らが選び取って成長していくことのできる環境を整えています。人事運用面でいうと、リーダーやマネージャーといったポジションに若いうちからつかせようとする傾向が強くなっているのがここ最近の当社の動きです。

 

−石田さんは、そういった社内制度を活用されてMBAを取得されたと思うのですが、現在のビジネスデザイン部に所属まで、どのようなキャリアなのでしょうか?

石田さん:元々僕は、島根県で営業をやった後に、経営企画部に配属になりました。その時に、東京と いう日本で一番おいしいマーケットがない西日本、競争も苛烈、だから付加価値の高いサービスや通信以外の新規事業っていうのも作っていかなくちゃいけない、っていう経営課題を持っている会社って特殊だな、と思ったんです。自分が経営企画という立場からどう取り組むかを考えたとき、この特殊な経営について議論をしたり、知恵を授けてくれる仲間を作るというのはいいかもと思って興味を持ったのがMBAだったんです。で、ありがたいことに社内の人事制度で送り出してくれて、帰ってきたら行くとき以上に新規事業を何とかして作ってくんだという課題が会社の中で大きくなっていて、その流れで今の部に着任しました。 

 

−ご自身の変化と企業の変化がシンクロしての現在のポジションに着かれたんですね。では、ここからeyaのことについてお伺いしたいと思います。御社は企業の変化がさらに加速している環境下だと思うのですが、その中でeyaに参加されたその理由、意義、メリットなどを教えてください。

谷村さん:世の中的に「優秀」と言われる人材がどういった人材なのか、を知り、当社の母集団との差分を知ることができれば、と思いました。

 

−では、ご自身として、メンターとして参加する意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか?

石田さん:一つはコーチングや育成という観点で自身の成長がある点。参加している社会人の方は、「今プロジェクトをガンガン引っ張っている人」が多いと思うけれど、eyaでは「学生が主体的にプロジェクトを動かしていくことを如何にフォローするか」だったりするので、ある意味では今のキャリアの先のことに取り組めているようにも思います。

 

−eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのような効果、刺激を期待されますか? 

谷村さん:学生の個の能力を上げることもできれば、と思っていますが、多くの企業が集まるからこそ伝えることのできる、社会を構造的に理解できる力や一つの物事を多様な角度からとらえる力を一緒に蓄えていけたらな、と感じています。

石田さん:参加されるすべての人にとっての変化や成長といった飛躍のきっかけになれば良いと思っています。自分にとっては、今の①若い世代、②同世代の異業種から、視点や視座の違い、モチベーションの違いなどを学べることを期待しています。

 

−eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することはどのようなことでしょうか?

谷村さん:自分から動いているな、と思っていますし、人事としては、このような学生に対して強みを伸ばしてもらえるようなパーソナライズな育成環境をどう提供するか、をすごく考えさせられます。

石田さん:今の良さを持ったまま、自由に社会に羽ばたいてほしい。みな素晴らしい能力や経歴を持っているのに、人間的にも素晴らしいので、ぜひeyaや今後色んな場で出会う人たちを大切にして、それぞれの人生を楽しんでほしい。

 

−メンターとしてeyaの学生たちに伝えたいことや意気込みをお願いします。

谷村さん:皆さんとともに学び、成長できればと思っています!その中で自分の今までの経験から伝えられることは全力で皆さんにお伝えしますし、皆さんからもたくさんの刺激を受けられればうれしいです!最後は戦友になれるように全力で取り組みましょう!

石田さん:学生のみなさんに負けないよう、一生懸命取り組みたいと思います。いっしょにeyaを楽しみましょう!

 

 

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2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら 第3回 積水ハウス様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第4回目は、電通の湊さん、工藤さんにお話を伺いました。   写真右)株式会社電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 湊 康明さん 写真左)株式会社電通 中部BC局 ビジネスデザイン部 工藤 永人さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。   ― 参加学生が、京都、大阪、広島、韓国に留学中の学生まで。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?湊さん、いかがでしょうか? 湊さん :私は、今年で電通のメンターとして、2年目を務めさせていただいておりますが、昨年と比較して変わった事は、コロナ禍による大きな社会変化が起こっている事が普通になってきているという事ですね。デジタルツールを使いこなすことは勿論、私のチームには、現在の居住地が、京都、大阪の人もいれば、広島の人も、韓国に留学中の人もいますよね。電通のメンターも、そもそも大阪と、名古屋ですし(笑)。それが普通で、その前提で特にこのアカデミーに参加している皆さ   んは、個人個人でいろんな活動をしている。ほんとに、誇らしいなと思いました。 眞竹 :このプログラムの1回目はengawaKYOTO(京都にある電通運営の事業共創スペース)でのリアル開催でしたので、京都を中心とした関西の学生が対象でしたが、昨年オンライン化してから、四国や九州、今年は海外まで広がりましたね。オンライン化ならではのメリットです。では、工藤さんいかがでしょうか? 工藤さん : 私はヤングアカデミーに参加するのが初めてですけど、初日からすぐに思ったのは全員、基礎能力が高く、地頭がいい。学生との懇親会などで話していて、コミュニケーション能力が高いっていうのはもちろんですけど、自分の考えを言語化、構造化して話すというのがとても上手だなと思いました。実際に課題などの評価をする中でも、課題を読み取ってそれを考える力っていうのが高いですね。 眞竹 :ありがとうございます。では、次の質問です。御社は今、学生の皆さんに、どういう企業イメージを持たれていると思いますか? 湊さん :そうですね。やっぱり、広告代理店、CMとか作っている会社、あと、オリンピックやっている会社、というイメージが強いと思います。それ自体は間違ってないですし、弊社のメインのビジネスである事は確かですが、最近はクライアント様の課題がいわゆる広告・プロモーションだけで解決できなくなっている事も増えてきている中で、弊社の社会的役割も変わってきています。 眞竹   :では、御社がどのように変わってきているのか、実際の姿を知らない学生へ、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか?   ― 社会的役割は変わっても、最高の解を提供することは変わらない。 工藤さん :社会的役割が変わってきているというお話ですが、社会ニーズが多様化したり、そもそも従来の尺度では測れなかったりと、ニーズを発見/創造することの重要度がさらに高まっています。そして、そのニーズに応える最高の解を電通は提供する立場にあることは変わらないので、常に最高の解を提供できるように私たちも解のフォーマットにとらわれないようになってきています。従来の広告やプロモーションというフォーマット以外の取り組みとしては、さまざまな事例あるのですが、例えば、 1:DENTSU DESIGN FIRM  https://dentsu-design-firm.com/   つたえることから逆算したプロダクト開発をご一緒したり、 2:THE KYOTO  https://the.kyoto/article 京都をヒントに文化・アートを学ぶプラットフォームを立ち上げたり、 3:ABC Glamp&Outdoors  https://abcgo.co.jp/ テレビ局と一緒に、グランピングで地方創生に取り組む会社をつくったりしています。 眞竹   :では、従来の広告、プロモーション領域に止まらない社会的役割の変化の中で、御社が今後目指していこうとしているところを、教えてください。 工藤さん :目指していこうとしているところは以前から変わっていない気がします。それは、社会やクライアントの課題を発見し、アイデアをもって解決することでちょっと先の未来を引き寄せること。です。ただ、世の中の変化に伴って、サービスをつくったり、事業共創を電通自体ができるように、実現力をさらに強化した電通を目指していく必要はあります。 電通のビジョン&バリュー:an invitation to the never before. https://www.dentsu.co.jp/vision/philosophy.html 眞竹   :では、お二人が現在携わっているもので、従来の広告、プロモーション領域に止まらない事例があれば、教えていただけますか? 湊さん :私と工藤が所属している電通若者研究部(ワカモン)の活動で、それぞれ学生に携わってインターンシップを運営していますので、そちらを紹介します。私の方からは47INTERNSHIP(ヨンナナインターンシップ)のお話をさせて頂きます。 ※「47 INTERNSHIP」 https://47internship.com/   ― 世界のクリエイティブアワードで受賞した47INTERNSHIP。 湊さん :2年目になる2021年も開催しました。昨年、コロナの影響もあり、インターンなどいわゆる就活系のイベントも大きな影響を受けて、就活生が困っているという状況がありました。そこで、逆にコロナだからこそ、新しい就活やその支援の形を作ることができないか、ということをNPO法人のエンカレッジと相談していたところ、これを機会に地方の就活格差に取り組めないか、というアイデアが生まれました。そこから47都道府県から集めた就活生の代表者が参加するインターンシップを開催しました。その取り組みが、様々なところから非常に評価いただきまして、例えば、世界最高峰のクリエイティブアワードのD&ADのブランディング部門にて、2021年最高賞のYellow Pencilを受賞する、ということにもつながりました。 眞竹   :その流れでの2年目。開催にあたって昨年との違いは何か意識されましたか? 湊さん :昨年の経験から、地方の就活格差にこのフレームが有効にワークすることがわかったので、より社会的影響度を高めていこうと考えて企画しました。例えば、これは結構驚かれるのですが、今年は学生から、2000以上のエントリーシートをいただきました。それを受けて、参加される47名以外の方にも希望者を募って、今回の47 INTERNSHIPのエントリーシートの評価基準であったり、これからの時代に求められている人材像はどのようなものか、などをDAY-0という形で協賛企業の皆様にもゲストで参加いただき、全国数百名の学生の皆さんに向けて開催しました。また、エントリーシートにおいて、47都道府県の学生の皆さんに「あなたが解決したい、あなたの身近な課題を教えてください」という質問をしたのですが、それ自体を「47都道府県課題MAP」でビジュアルにして、各地方の皆さんがどういう形で解決していきたいと思っているのかをセットでリリースしました。   「47都道府県課題MAP」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000085233.html 眞   竹 :ちなみに、どのようなことが地方で学生が感じている課題か、何か傾向は見えたりしたのですか。 湊さん :すごくクリティカルだと思ったのが、コロナになってどんどんネット社会が加速していく中で、地方高齢者のデジタルデバイドを挙げている学生が多かったことですね。そもそもネット化していくのはわかるけど、それについていけない人も結構いて、それが高齢者だったりします。特に高齢者の方がネットの恩恵を受けるべきなのに、それができていないことは、地方社会の大きな構造的な問題だなと改めて感じました。 眞竹   :ありがとうございます。では続いて、工藤さんの取り組みについてお伺いしたいと思います。   ― 「アイデア実現」のための全ての工程を、学生が実体験する。 工藤さん :今年で3年目になる「アイデア実現インターンシップ」についてご紹介します。それまでも電通若者研究部(ワカモン)で電通のインターンシップをプロデュースしていたのですが、私が初めて参加した3年前に新たなフォーマットとして始まったものです。学生とメンターの関係を、先生としてのメンターではなくて、伴走者としてのメンターという立ち位置にしました。学生が主体となって、それこそ、電通の社員が普段やっているような業務の工程を、自分の「ほうっておけないこと」の解決という学生自身のやりたいことを通して実体験をしてもらうことを目的に、アップデートしました。 眞竹   :3年目の今年は、どのような状況ですか? 工藤さん :今まさにクラウドファンディングのCAMPFIREで、11月末まで学生たちが支援を募っている段階です。今年は14人参加してくれたので、14プロジェクトが立ち上がっていますが、もうすでに期間を終えずに目標支援金額を達成しているプロジェクトもあります。  ※「電通ワカモン  アイデア実現インターンシップ」 https://camp-fire.jp/curations/dentsu-wakamon 眞竹   :ちなみに、学生の皆さんがどんなプロジェクトを考えたのか、いくつか紹介していただけますでしょうか? 工藤さん :私がメンターをやっていたプロジェクトだと、「Scaping OKAZAKI岡崎プロジェクト」です。キックボードをシェアするサービスで、キックボードで岡崎市の乙川エリアを移動して、「遊び場」化して、その良さに出会って教える、というプロジェクトです。もうCAMPFIREでの目標を達成しているプロジェクトですが、企画した学生が考えたのは、地元岡崎の乙川エリアが車で移動するには道が狭くて移動しにくいし、歩くにしてはちょっと遠い、ということでキックボードに目をつけて、移動そのものも観光にしていく、ということでした。この学生を始め、自分からいろんな人たちや行政などに働きかけを行ってもらうインターンになっています。他にも、「音のない料理教室」。これはイベント系ですけど、参加者同士が声を出さずに意思疎通を図りながら一つの料理を作り上げる、「耳の聴こえる方・聴こえない方が参加できる料理教室」です。すでにこの学生は、インターンに参加する前に一度イベントを開催していて、それをさらにアップデートしたいという思いを持って参加してくれました。 眞竹 :   3年目になり、すでに取り組んでいることがある学生も集まってきているんですね。 工藤さん :参加したメンターの中で、3年目でやっと完成形になってきたかな、という話をしています。学生を集める過程であったり、実際にプロジェクトを考え、立ち上げてもらう期間でであったり、改善できていていると感じています。 眞竹 :お二人はインターンを通じて、学生と企業の接点に携わっていらっしゃいますが、もっとこのようになればいいのに、と感じるところはありますか? 湊さん : 学生の皆さんにとって、企業で働くことにおいて何が大事にされているか、ということを肌で感じる機会があることが重要と思っています。なので、産官学が連携して、実際に働く場としての企業を考える、そういう教育機会を作れれば、就職活動の先行ステップとしてすごくいい機会になるのではないかと思っています。 工藤さん :学生に好きなことを見つけなさい、といってもなかなか難しく、一歩踏み出せない学生がまだまだ多いと思います。大学で学ぶ専門的分野以外でも、興味関心を持てる分野への学びや体験を企業側が提供できるような仕組みがあると面白いのでは、と考えています。 湊さん :就職活動の評価軸が企業側で緩やかに崩れてきている中で、学生側もそれに気づけていないと思っています。例えばeyaで美大の学生が、課題の落とし込みであったり、事業アイデアを作ったりするのがうまいと感じるシーンがあります。作品を作る過程で本質を見極める能力が鍛えられているからだと思うんです。そういう能力は今後企業側にも評価されていくと思うので、そういったことを知れば、きっと学生側の選択肢も広がります。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹広嗣 眞竹 :学生と企業の接点については、今後も改善していくべきポイントがありそうですね。では、そういった中で、電通がeyaに参加される意義やメリットを教えてください。 湊さん :企業紹介の際、広告代理店から、ビジネスをプロデュースする企業へ変化している、という事を、弊社はeyaで学生向けのメッセージとして発信しました。 それは、広告・プロモーションで培ってきた「アイデア」という弊社の強みを活かし、広告・プロモーション領域に留まらずに、クライアント様のビジネスのサポートを行っていきたいという事です。ですが、やはり、このような取り組みはそこまで認知度もなく、事業創造やリーダーシップなどに興味のある学生の皆さんに、弊社の未来の姿を是非知ってもらう機会として活かせればと考えています。 眞竹 :eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのようなことを期待されますか?  湊さん :これはメンターとして、学生の皆さんにお伝えしたい事ですが、こういった異業種合同の人材育成の取り組みって、ほんと、大人の社会見学だと思うんですよね。シンプルに、なかなか見えない企業の最先端の事例や、取り組むビジョンに触れる事は、知的好奇心が刺激されますし、楽しい事だと思います。そういった視点でみると、働く事自体がコンテンツになって、それを学生に見てもらうことで、学生の皆さんが働く事にポジティブになってもらう。これが、これからの日本を変えていく一つのカギになるんじゃないか、と思っています。     ― 「今を意味づける力」を身につけてほしい。 眞竹 :では最後に、 eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することは?工藤さんから、お願いします。 工藤さん :最初にお話ししたように、学生の皆さんの考える力がすごく高いなって思っていますが、あくまで提供された課題や自分が見つけた課題に対しての考える力が備わっている、ということだと思います。社会に出た時、その考える力の矛先をもっと広げないと、例えば、スケジューリングだったりとか、タスク管理だったり、人とのコミュニケーションそのものにも電通でいうところのアイデアが必要になります。課題を発見するとか、課題そのものを解決する為に考えるのはもちろんですけど、その矛先をもっといろんなところに向けられるようになって欲しいので、その手助けを、ちょっとの期間でもできればいいなと思っています。 湊さん : 期待することは、ぜひ、小さくまとまらないでほしいという事です。ビジネスをつくる力は勿論重要なのですが、自戒も込めて、それがスモールビジネスの方向にいっちゃう人も、たまにいるんですよね。もちろん、それ自体が悪いコトではないですし、生きていく上で大事な事でもあります。でもそれよりは、ぜひ、日本のこれからを自分が背負うんだ!!という気概を持って、世の中に対して課題感をもって、なるべく大きな理想的な世界観を描くクセをつけてほしい。また、ぜひそんな自分が掲げた世界観が実現できる場所を妥協せずに探して、キャリア設計していってほしいなと感じます。そのためにも、「今を意味付ける力」を身につけてほしいです。メンタープレゼンで1日目に話したことですが、忙しくて目の前の活動を何の為にやっているのか、を見失う時もあると思います。そんな時、立ち止まって、自分のキャリアを考えてみる。そのための材料を提供できる場になればうれしいです。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  積水ハウス篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第3回目は、積水ハウスの岡本さん、大野さんにお話を伺いました。   写真右)積水ハウス株式会社 開発事業部 岡本 勇治さん 写真左)積水ハウス株式会社 人事部 大野 隆正さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?岡本さん、いかがでしょう?  岡本さ   ん :今年の私のチームメンバーは、個性の強いメンバーが多かった昨年のチ―ムと異なり、メンターとして少しホッとしているところもあります。また違った個性のある各メンバーが主体的に動きつつ、まとまり感・一体感を持って、チームワークを意識して進めていると思います。 大野さん : 今年で3回目の参加ということもあり、穏やかに初日、2日目が過ぎたなぁという印象です。今年は特に良いメンバーが揃っていて、主体的に動いてくれるので、とても頼もしいですね。 眞竹 :今年の参加学生の皆さんも、起業や団体でのリーダーをやられている人が多いので、主体性は、きっとその現れですね。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか? 大野さん :おそらく、戸建住宅を国内で建築している会社というイメージを持っているのではないかと思います。 岡本さん :「あー、あのCMの会社ね」くらいの印象で、堅い、古い企業だと思われているのでは。実際、私が転職してくるまではそういうイメージで私自身も思っていましたので。戸建て事業以外の事業は恐らく知られていないと思います。   ―国内の戸建住宅だけじゃない、積水ハウス。 眞竹 :では、   御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業です、こんなことしているんです、という、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか? 大野さん :実は戸建住宅は、売り上げのうち13.2%しかないのです。現在では、請負型・ストック型・開発型の3つのビジネスモデルを国内だけでなく、海外でも幅広く展開をしており、年々、住宅以外のセグメント比率が大きくなっています。  積水ハウスグループにおける2020年度の売上構成比 眞竹 :2019年度が16.2%でしたので、2020年度は13.2%と下がっていますね。   大野さん :そうですね。このような国内・海外を含めたビジネスモデルの変化の中で、当社は「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョン※に掲げ、国内にとどまらず、ハード・ソフト・サービスを融合し、幸せをお客様に提案するグローバル企業を目指しています。 ※積水ハウスのグローバルビジョン及び成長戦略について https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/individual/growth/   眞   竹 :グローバルなビジョンを掲げられる中で、御社が新たに取り組んでいる、また取り組もうとしている新しい事業を教えてください。   ―住む人の「幸せ」のために、住まいの事業モデルを変えていく。 大野さん :いくつかあるのですが、例えば住まいの事業モデルを大きく変える「プラットフォームハウス構想」※というものがあります。最も人生に寄り添う存在である「家」を人生の変化に呼応させるもので、「健康・つながり・学び」のサービスから住まい手の「幸せ」をアシストする未来型の理想の家を創造するというものです。プラットフォームハウス構想の第一弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」の発売を既に開始しています。 ※「プラットフォームハウス」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/about/index.html 眞竹 :昨年お話を伺った時は構想段階でしたが、実際のサービスも始まったんですね。 大野さん :はい、「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」は業界初の間取り図と連動した視覚的に直感操作できるスマートフォンアプリで、温湿度センサーや窓センサーなどのIoTデータをパブリッククラウド上で蓄積し、外出先からエアコンなどの機器を確認・操作することができます。また、ドアなどの不正解放や家族の玄関ドア開閉操作を外出先からでも確認することができます。プラットフォームハウス構想のソフト・サービスを先行して一部商品化したものと言えます。 ※「プラットフォームハウスタッチ」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/ 眞竹 :まだサービスの一部、ですからね。この先どこまでスマートフォンと住まいがつながっていくのか、楽しみです。昨年お伺いした、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」※の取り組み状況はいかがでしょうか? 大野さん :こちらは、生活者参加型の実証実験が2020年12月より始まっています。「プラットフォームハウス構想」の「健康・つながり・学び」の中で、「健康」に取り組むものです。家の中で、実は約7万人の方が亡くなっているというデータがあります。脳卒中、心疾患、お風呂などでの事故、家の中での転倒や転落などによるものです。それらの社会コストは8兆円を超えると算出されているんです。そのうち最大1兆9000万円削減できると試算しています。「HED-Net」は、住宅内でバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症による異常を検知した場合に、遠隔で安否確認を行い、救急への出動要請、そして救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行う、世界初の仕組みになります。 ※在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Netの実証実験について https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/topics/2020/20201210.pdf 眞竹 :IoTによる住まいの進化がどんどん具体化して、住まいというハードに加え、ソフトをつくっていく企業へ変わっているんですね。住まいの概念がどこまで広がるのか、想像の範囲を超えていきそうです。   ―「地域×積水ハウス」の可能性。 眞竹 :では、今度は、住まい以外の取り組みについても聞いていきたいと思います。「Trip Base道の駅プロジェクト」※があるのですが、こちらには岡本さんが関わられているとお伺いしております。これはどのようなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか? 岡本さん :もともとは、とある企業と意見交換をしているときに出てきた、「道の駅の隣に道の駅で働く人の社宅があったら便利だよね」という着想がスタートです。そこで道の駅のことをいろいろ調べていくと、知っているようで知らなかったこといっぱいありました。例えば、道の駅が地域の情報発信拠点になっていたり、道の駅を中心に町おこししていこうとか、単なる休憩地点ではない役割を道の駅が持ち始めていた、ということを知ったんですね。加えて、道の駅で新鮮な肉とか魚、お酒とかを買ってその場で食べて、飲んで、寝られたらとても楽しいじゃないか、というところから、ホテルというアイデアを検討していきました。その中で、2018年当時、今後はインバウンドの増加も予想されるので、外資系ブランドのホテルとの協業を検討しようということで、それまで日本で一緒にホテル事業をしているマリオット・インターナショナル(以下、マリオット)に一緒にやらないか、と相談しました。マリオットとは以前から都市型ホテルはずっとやってきたんですけれど、地方部で外資系ホテルを展開する、という新たな側面からこのプロジェクトにもご賛同いただいて、やることになったんです。 ※「Trip Base道の駅プロジェクト」HP https://tripbasestyle.com/project/ 眞竹 :2020年10月より順次、ホテルをオープンされています。お客様や地域、またパートナー企業からの反応はいかがでしょうか? 岡本さん :地域の方々や道の駅の皆様からは、ホテルが開業したことで今まで以上にメディア等で地元の情報が発信されていることに大変喜んで頂いています。また、パートナー企業様については、個別に各地域で具体的な連携策をつくり始めており、実際にそれらを実行することで地域活性化に寄与出来ていると実感しています。 眞竹 :コロナ禍の中でのオープンでしたが、影響はいかがでしたか? 岡本さん :コロナ禍により、期待していたインバウンドがなくなったため、ホテル事業としては相当ダメージがありますが、当面のターゲットを国内旅行者に切り替えて「マイクロツーリズム」を推奨することで、そのダメージを緩和しようと頑張っています。また、近い将来必ずインバウンドは戻ってきますので、それまでは各地域でおもてなしの準備や魅力発掘の活動を精力的に行っています。例えば、本年10月に㈱クラダシ様と連携して、京都府京丹波町にて特産品である黒枝豆の収穫支援を行いました。これは人手不足で未収獲残となっていた黒枝豆を、学生を派遣して収穫支援することでフードロス削減を目指すという取り組みです。さらに、それだけでなく、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」でその黒枝豆を販売することで京丹波町の特産品のPRや販路拡大、地域活性化を推進しました。   「Trip Base道の駅プロジェクト」パートナー企業(2021年11月現在) 眞竹 :パートナー企業様との連携した地域のおもてなし、魅力発掘によって、今後、マイクロツーリズムとインバウンド、どちらも取り込める可能性が広がりそうですね。他にも、地域活性につながる取り組みなどありますでしょうか? 大野さん :建築デザインや地方創生事業のノウハウを生かし、国が進めるPark-PFI事業による国営公園として初となる「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点を福岡県東区にて開発し、来年オープンすることになりました。地方の国営施設を当社がブランディングすることで、訪れる人を増やし、人と人が交流することで公園全体及び周辺地域の活性化を図ります。 「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点が2022年3月に誕生。 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/library/2021/20210517.pdf 眞竹 :積水ハウスの高いデザイン力で磨かれた公園、是非訪れてみたいです。こういったプロジェクトが動いていく中で、積水ハウスが、地域創生に取り組む意義、というのはどのように感じていますでしょうか? 岡本さん :当社が掲げている“ESG経営のリーディングカンパニー”を目指すうえでも地域活性化の取り組みは有意義だと考えていますし、やりがいを感じています。また、当社の規模や知名度を活かし、さらにパートナー企業様と連携して、各社のリソースを組み合わせて行う地域創生活動は当然ながら地元の方々にお喜び頂いていますし、新しいビジネスチャンスも生まれてくるのではと期待しています。 大野さん :地方創生が叫ばれて久しい中、徐々に法整備が進んできているとは言え、未だ多くの人やモノ、サービスが都市部に集中している現状があります。地方では少子高齢化だけでなく、労働人口の流出が止まらず、慢性的な過疎化がいまも進行中です。創業以来、「住まい」や「まちづくり」にこだわってビジネスを展開してきたものとして、地方創生への思いは以前からありましたが、なかなかきっかけを掴むことが出来ずにいました。そんな中、当社が創業60年を過ぎたタイミングでコロナ禍となり、日本中が停滞している現状を少しでも打破したい、まずは地方から日本を元気にしよう、という思いから地域創生のプロジェクを始動させました。得意な「住まいづくり」や「まちづくり」のノウハウを生かし、社会課題の解決ができれば、我々にとってこれほど幸せなことはないと思っています。 眞   竹 :地域創生、社会課題解決に強い興味を持つ学生も多いですよね。では、ここから御社の求めている人材についてお話を伺えればと思います。 大野さん :海外事業の拡大やプラットフォームハウス構想の実現、その他の新規事業の立ち上げに伴い、様々な経験をしている人材を求めはじめています。デジタルヘルスケア分野を意識して医学部の学生にアプローチしたり、企業家精神があり積極的に行動できる学生、人とは違う斬新な価値観をもった学生も求めています。実際に今年は、国立大医学部卒の学生が新卒採用で内定しています。 眞竹 :積水ハウスが医学部、というのも意外なアプローチですね。そういった多様な人材を求める中でもここは外せない、という軸はありますでしょうか? 大野さん   :当社の企業理念の根本哲学「人間愛」の中に「相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする」という一文がありま   す。我々の仕事は、例えば住まい提案を通じて、お客様に「幸せ」を提供する仕事です。「幸せづくりのパートナー」として、企業理念に基づきお客様に対して、社会に対して新たな価値を創造するため、失敗を恐れず自ら考え行動することのできる人と一緒に働きたいと考えています。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣 眞竹 :では、御社のインターンや採用に関する活動について、課題と感じているところを教えてください。 大野さん   :従来の採用活動に加え、複数のインターンシップを実施するなど色々試みていますが、まだまだ出会えていない学生の方が多くいると感じています。これからは様々な企業と協業していくことになりますので、新しいビジネスの種を作っていく人、いろいろなリソースを使いながらその芽を大きく育てていく人が必要になってきます。また、今すぐにはビジネスにならないけれども、新たな分野、新たな専門領域でじっくりと基礎研究をしてくれる人も必要です。これまで以上に、多様な人材を採用していくことが課題ですね。 眞竹 :そのような課題の中で、eyaに参加されている理由、意義など教えてください。 大野さん   :当社の業領域の拡大や環境変化を考えて、これまでの採用活動ではなかなか接点を持てなかった「新たなビジネスの芽を生み出すアントレプレナー志向をもった人」と出会えるのではないかと考えたからです。実際に、期待以上に良い学生が多数おられ、そういった学生と接点を持てることは大きなメリットと考えております。また、他社の人事部の方や先進的な取り組みをされている社員の方のお話を聞けることができ、とても良い刺激になっています。 眞竹 :メンターとして参加するご自身にとっての意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか? 岡本さん :年齢を重ねると段々と感度が鈍くなってきたり、思考に偏りが出てきたりと悪い習慣が身に付いてきますので、感度の高い学生から良い刺激を得ることで普段の仕事に良い影響を与えたいと思いますので、積極的にコミュニケーションをとっていきたいと思っています。また、他社のエネルギッシュなメンターの方の良いところを、最低1つは盗めればと考えています。 大野さん :確固たる自信をもち、自ら新しい時代を切り拓くんだという気概があるような学生が、何を思考し、どの様な活動を行い、社会に出て何をしたいと考えているのかを純粋に知りたいと思っています。 眞竹 : では最後に、eyaの学生たちと接して感じたこと、そして期待することをお願いします。 大野さん :強く目的意識を持っている方が多いなと感じています。あとは、摩擦を恐れず自分の意見や価値観を互いに共有し、理解し合い多くの気づきを得てほしいと思います。 岡本さん :皆さんはポテンシャルが相当高いので、それを今回のeyaでどう発揮して、また他の人から何を学んで帰るのかを毎回意識して取り組んで頂き、最後には10月より成長したと自覚出来るようになって欲しいですね。