【 engawa young academy 】 メンターインタビュー  NTT西日本篇

#インタビュー

2020年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2020(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第1回目は、NTT西日本の谷村さん、石田さんにお話を伺いました。

写真左)西日本電信電話株式会社 人事部 人事第一部門  谷村 祥太さん
写真右)同社 ビジネスデザイン部 スマートデザイン第3部門 石田 裕紀さん
所属は、取材:2020年11月当時のものです。

 

−eya、初日を終えての率直な感想はいかがでしょうか?

谷村さん:一言で楽しかったなと思っています。学生の皆さんが優秀で、皆さんへの興味・関心を刺激されたところがその源泉でした。石田とも喋ったんですけど、僕も学生時代に起業したり、石田も団体の主催をやったりしましたが、その昔のチャレンジ精神を学生から改めて教わったなと思いました。

石田さん:起業するとか団体立ち上げるとかって、僕の世代では比較的レアな経験だったように思います。けれどeyaに参加している学生は、起業や団体運営なんかは当然経験済みで、ICTやSNSを使いこなしながら個人としての影響力も高い。そういう経験を持った人の数が、僕らの時代とは比較にならないな、みたいな会話をしていました。 

 

−学生時代の活動におけるラインが上がっているように感じます。僕も学生の自己紹介の時間、一定層の学生を集めているとはいえ、こんな時代なんだ、と思ったところでした。

石田さん:学生の自己紹介の時間は驚きの連続でした。僕らの世代のプレゼンって、オーディエンスは静かに聴くじゃないですか。でも今の世代はどんどんチャットで盛り上げるし、プレゼンターもそれを取り上げる。静かに聞くことがマナーって感じる世代と、チャットとか使って盛り上げてあげるのがマナーって感じる世代と、人をリスペクトしようっていう方向性は同じなのに、アプローチは全く逆だな、と。  

谷村さん:たぶんインスタライブとか、webのライブ放送でも番組しながらコメントするのが当たり前じゃないですか。ビジネスの場にも、そういうのがこれからおそらく出てくるんだろうなって感じですね。

 

−では、そういった学生を前に、谷村さんにメンタードラフト※をしていただいたのですが、その感想を聞かせてください。
※メンターが企業名を隠して、学生に対して自己紹介プレゼン。学生が希望するメンターを指名するプログラム

谷村さん:採用担当として、学生の立場に立ててよかったなって思います。あんな心持ち、緊張感、本気度を持って、学生の皆さんが面談に来ているんだろうなって思いました。採用の場面では学生側に求めていることなので、今後にもつながるいい機会だったなって思います。

 

−企業側のeyaへの本気度を伝える上で、あの緊張感が学生側にもよい刺激になっていると思います。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか?

谷村さん:固定電話や光インターネット回線といった通信ネットワークのみを扱う単一事業者のイメージが強いのではないかと思います。

 

−では、御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業なんです、という、知られてないけど伝えたいこと、紹介して頂けますか?

谷村さん:ネットワーク事業が根幹で中心なんですけど、通信関連で言うとデータセンターとかセキュリティ、コンタクトセンター(顧客からのお問い合わせ・お申込み対応窓口機能)のソリューションもやっていたりします。通信以外の、あまりイメージがないのかなというところでは、不動産ビジネスとかドローンビジネス、あとはインターネットラジオとか電子コミックといったコンテンツ系のビジネスもやっています。例えば、ドラマ「私の家政婦ナギサさん」(2020年9月:TV放送)は、NTTソルマーレというグループ会社の電子コミックのコンテンツです。単一事業でネットワーク、インフラっていうと守るイメージが強いと思うんですけど、ネットワーク部分でのチャレンジはもちろん、多角化展開へのチャレンジもぜひ知ってもらえたいです。

 

−確かに、ネットワーク以外でそこまで多角化にチャレンジされていることは、なかなか伝わっていないかと思います。ネットワーク以外の多角化へのチャレンジですが、そこに踏み出すタイミング、きっかけがあったのでしょうか?

谷村さん:固定電話はもう使われなくなってきている、という現状と、光インターネットも普及率を人口ベースで100%に近づいていて、NTT西日本の光サービスのシェアはエリアにもよりますが、その内の6割、7割というレベルでの争いになっているんです。そういったことを考えると、他の競争分野に人もお金も使わないと、固定電話の減収をカバーできない状況で、そこに対してどうチャレンジしていくかっていうのが今のうちの会社の命題ですね。

 

−多角化展開を図るにあたって、何かしら基準はあるのでしょうか?

谷村さん:1つあるのは、地域の社会課題にコミットできるかみたいなところで、「ビタ活」と言っている取り組みがあります。「ソーシャルICTパイオニア」(ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術))として、地域を元気にする“ビタミン”のような会社になろう、という意味です。

NTT西日本のソーシャルICTパイオニアの事例
https://www.ntt-west.co.jp/brand/regional/

 

石田さん:自社のアセット、ノウハウがしっかり活かしながら、今、谷村が申し上げた、特にその中でも社会課題とか地域創生、ワールドワイドというより地域密着型の課題解決ができる事業をつくっていこうっていう、軸がありますね。

谷村さん:日本の数ある企業の中でもめずらしい会社だと思います。市場として、世界や首都圏という選択肢を取りづらく、かつ47都道府県のうち30府県をエリアカバーする多くの地域をマーケットとして持っている会社。地域の発展が当社事業の発展であり、その地域が広いという非常に特異な会社なのではないかと思っています。

 

−なるほど、先進の技術とそのノウハウを、西日本という広いエリアにある様々な地域の特性、課題に合わせてどういかしていくか、というポジションは、確かに独自性がありますね。この取り組みが一つの形、ビジョンとなっているのが、スマート10x(エックス)、ということでしょうか。

谷村さん:そうですね。ICT(情報通信技術)をコアに、B to B to Xと表現している ますが、例えば顧客企業が持っている事業ノウハウと弊社が持っているICTを掛け合わせて、顧客企業の先にいるお客様に対して価値提供をする、その際のスマートの部分を僕たちが担う、ということです。例えばアグリだったり、エデュケーションでのギガスクール支援やローカル5Gを使ったスマートファクトリーとしての工場自動化、スマート防災としての水門陸閘の自動化など、スマート10xであげている領域を通じて地域を元気にするという価値観で展開していくイメージを持っていただけると近いと思います。
 


※スマート10xについて
https://www.ntt-west.co.jp/business/n-colle/smart10x/

 

石田さん:先ほどの、新規事業展開における基準の3つめを、今、スマート10xのことを話しながら思い出したんですけど、まだ取り組みの途中ですが、単なるICT、ITのシステムを作って終わりじゃなくて、それを使って既存の業界のビジネスプロジェクトを変えるとか、オペレーションを変革するとか、そこまで食い込まないと、本当の意味で顧客の課題解決になる時代じゃないよねっていう課題感がすごくあります。

 

−スマート10xの裏には、そういう課題感があるんですね。石田さんが所属しているビジネスデザイン部が、スマート10xの中心を担われていると聞いているのですが、具体的に石田さんはどのような事業をやられているのでしょうか? 

石田さん:具体的には、インフラ事業者 向けにICTを使ってDX化を推進していく、それによって新しい事業のオペレーションのやり方を構築する、ということに取り組んでいます。例えば、スマートメーターという商材があります。ガスや電力、水道の事業には検針業務が必要で、これを無線回線で遠隔化・自動化しましょうというものです。
1つのメーターが持つデータ量は少ない一方で、対象となるメーターの数が何百万台と存在します。さらにメーターは、家の奥の電気がない場所についていたりすることが多く、取り換えも数年に一度だけなので、スマートメーターは電池稼働で数年間稼働する必要があります。つまり小容量でもいいから、出来るだけ省電力で通信できるIoTデバイスとネットワークが必要なんです。 弊社のグループ会社であるNTTネオメイトからは既に、LoRaWAN®(ローラワン)というLPWAネットワーク(省電力を特徴としたネットワークの総称)を提供しています。これを使って、スマートメーターを遠隔化するだけでなく、さらに付加価値を作れないか検討をしていて、例えば、リアルタイムでデータが取れるため、そこから水の量が見えてくると、断水・漏水の発生箇所を推定できないかとか、高齢者の方の見守り、あと水の需要予測をより精緻化することで水道事業そのものをより最適経営に変えていく、そういうことを目指せたら、という考えでやってます。このように、LoRaWAN®を軸として、IoTデバイスからネットワーク、データ収集サーバまでを含めたトータルソリューションの提供を目指し、今まさに商品開発からプライマリーユーザの開拓まで、新規事業のすべてのイベントに関わりながら、プロジェクトを進めています。

谷村さん:ちなみに、福岡市では、このLoRaWAN®を産業振興という目的に活用するという試みを行っています。

Fukuoka City LoRaWAN®の取り組みについて
https://www.ntt-west.co.jp/ict/casestudy/lpwa_fukuoka.html

 

−単純に通信って、高速・大容量になればいいかっていうことでもないんですね。ついそっちの方に目が行きがちなので、とても面白い切り口です。もう少し聞きたいところなのですが、、、次の質問にうつらせて頂きます。御社の採用に関してですが、御社が重視している指針や取り組みを教えてください。

谷村さん:当社が最も大切にしていることは、「多様な採用」です。学歴や経験、スキルに囚われない、幅の広い採用活動をめざしています。インターンについては、学生に成長環境を提供すること、採用としては時間・場所・手法を幅広く構えて、多くの学生に会うことを一番に考えています。

 

−御社が行うインターンでは、学生にどのような成長環境を提供してらっしゃるのでしょうか。

谷村さん:インターンの主題は「10年後の未来の社会を考えましょう」というもので、eyaにも似ていて最大2ヶ月に4日間しか集まらないんですけど、定期的にピックアップした新聞記事やPEST分析、3C分析などといったビジネスフレームなどを弊社のビジネスチャットツールを使って送ったりして、学生の一般的な教養知識を深めてもらうことを考えています。

 

−お伺いするに、正直準備が大変なインターンだと思うんですけど、なぜそのような取り組みをされるのでしょうか?

谷村さん:根本的な思想として、限られたマーケットの中で各社が競い合って人を取り合うって不毛だなと思ってます。そうじゃなくて、マーケット自体の質を向上させれば、もちろんその数に限りはあるんですけど、勝った負けたじゃなくて全員ハッピーになれるんじゃないか、という思想の元で、今のインターンを提供しています。

 

−まさに、eyaも同じ思想です。そのようなインターンをされている中で、御社が求めている人材像はどのようなものでしょうか?

谷村さん:一言でいうと、「変われるand変えられる人材」です。「(変わることを受け入れる)素直さ」、「(変わろうとする)ちょっとした勇気」、「(変わるための努力を)やり切る力」、「(周りを変える)影響力」が必要だと考えています。まず変わることを受け入れる素直さって必要だなっていうこと。変わるときにかかる精神的コストを乗り越えられる人。変わろうとする勇気を持っているか。で、変わろうとすると小さなことから1つずつ達成しないといけないんですが、それらを最後までやり切れるかっていうところ。最後は、基本的にビジネスってチームで動いたり、お客様がいたり、複数の人と働くので、周りの人たちを感化していける影響力を持っている人です。

 

−そういった人材にアプローチする上で、課題と感じているところを教えてください。

谷村さん:心底、当社のインターンは学生の成長に寄与すると思っていますので、良くも悪くも「NTT西日本」という看板が大きいことで、選択肢に入らない学生がいるのではないかと思っています。自己成長の場としてもっと多くの学生に参加してほしいと思っています。採用としても「NTT西日本」から想起されるイメージが固定化されてしまっている部分があると思うので、それをどう多様なものに変えていくかが課題です。

 

−NTTが強いブランドだけに、ハードルが高い課題ですね。eyaの中で、学生に対してそのイメージを崩すサポートができればうれしいです。では、社内で多様な人材を育成するために、社員への成長機会の提供などに関する取り組みがあれば、教えてください。

 

オンライン取材の様子
左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣

 

谷村さん:当社は人材開発ビジョンとして「個の自立」を掲げています。そのため、1,000を超える研修や通信教材を準備し、画一的な人材の育成ではなく、社員自らが選び取って成長していくことのできる環境を整えています。人事運用面でいうと、リーダーやマネージャーといったポジションに若いうちからつかせようとする傾向が強くなっているのがここ最近の当社の動きです。

 

−石田さんは、そういった社内制度を活用されてMBAを取得されたと思うのですが、現在のビジネスデザイン部に所属まで、どのようなキャリアなのでしょうか?

石田さん:元々僕は、島根県で営業をやった後に、経営企画部に配属になりました。その時に、東京と いう日本で一番おいしいマーケットがない西日本、競争も苛烈、だから付加価値の高いサービスや通信以外の新規事業っていうのも作っていかなくちゃいけない、っていう経営課題を持っている会社って特殊だな、と思ったんです。自分が経営企画という立場からどう取り組むかを考えたとき、この特殊な経営について議論をしたり、知恵を授けてくれる仲間を作るというのはいいかもと思って興味を持ったのがMBAだったんです。で、ありがたいことに社内の人事制度で送り出してくれて、帰ってきたら行くとき以上に新規事業を何とかして作ってくんだという課題が会社の中で大きくなっていて、その流れで今の部に着任しました。 

 

−ご自身の変化と企業の変化がシンクロしての現在のポジションに着かれたんですね。では、ここからeyaのことについてお伺いしたいと思います。御社は企業の変化がさらに加速している環境下だと思うのですが、その中でeyaに参加されたその理由、意義、メリットなどを教えてください。

谷村さん:世の中的に「優秀」と言われる人材がどういった人材なのか、を知り、当社の母集団との差分を知ることができれば、と思いました。

 

−では、ご自身として、メンターとして参加する意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか?

石田さん:一つはコーチングや育成という観点で自身の成長がある点。参加している社会人の方は、「今プロジェクトをガンガン引っ張っている人」が多いと思うけれど、eyaでは「学生が主体的にプロジェクトを動かしていくことを如何にフォローするか」だったりするので、ある意味では今のキャリアの先のことに取り組めているようにも思います。

 

−eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのような効果、刺激を期待されますか? 

谷村さん:学生の個の能力を上げることもできれば、と思っていますが、多くの企業が集まるからこそ伝えることのできる、社会を構造的に理解できる力や一つの物事を多様な角度からとらえる力を一緒に蓄えていけたらな、と感じています。

石田さん:参加されるすべての人にとっての変化や成長といった飛躍のきっかけになれば良いと思っています。自分にとっては、今の①若い世代、②同世代の異業種から、視点や視座の違い、モチベーションの違いなどを学べることを期待しています。

 

−eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することはどのようなことでしょうか?

谷村さん:自分から動いているな、と思っていますし、人事としては、このような学生に対して強みを伸ばしてもらえるようなパーソナライズな育成環境をどう提供するか、をすごく考えさせられます。

石田さん:今の良さを持ったまま、自由に社会に羽ばたいてほしい。みな素晴らしい能力や経歴を持っているのに、人間的にも素晴らしいので、ぜひeyaや今後色んな場で出会う人たちを大切にして、それぞれの人生を楽しんでほしい。

 

−メンターとしてeyaの学生たちに伝えたいことや意気込みをお願いします。

谷村さん:皆さんとともに学び、成長できればと思っています!その中で自分の今までの経験から伝えられることは全力で皆さんにお伝えしますし、皆さんからもたくさんの刺激を受けられればうれしいです!最後は戦友になれるように全力で取り組みましょう!

石田さん:学生のみなさんに負けないよう、一生懸命取り組みたいと思います。いっしょにeyaを楽しみましょう!

 

 

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2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら 第3回 積水ハウス様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第4回目は、電通の湊さん、工藤さんにお話を伺いました。   写真右)株式会社電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 湊 康明さん 写真左)株式会社電通 中部BC局 ビジネスデザイン部 工藤 永人さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。   ― 参加学生が、京都、大阪、広島、韓国に留学中の学生まで。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?湊さん、いかがでしょうか? 湊さん :私は、今年で電通のメンターとして、2年目を務めさせていただいておりますが、昨年と比較して変わった事は、コロナ禍による大きな社会変化が起こっている事が普通になってきているという事ですね。デジタルツールを使いこなすことは勿論、私のチームには、現在の居住地が、京都、大阪の人もいれば、広島の人も、韓国に留学中の人もいますよね。電通のメンターも、そもそも大阪と、名古屋ですし(笑)。それが普通で、その前提で特にこのアカデミーに参加している皆さ   んは、個人個人でいろんな活動をしている。ほんとに、誇らしいなと思いました。 眞竹 :このプログラムの1回目はengawaKYOTO(京都にある電通運営の事業共創スペース)でのリアル開催でしたので、京都を中心とした関西の学生が対象でしたが、昨年オンライン化してから、四国や九州、今年は海外まで広がりましたね。オンライン化ならではのメリットです。では、工藤さんいかがでしょうか? 工藤さん : 私はヤングアカデミーに参加するのが初めてですけど、初日からすぐに思ったのは全員、基礎能力が高く、地頭がいい。学生との懇親会などで話していて、コミュニケーション能力が高いっていうのはもちろんですけど、自分の考えを言語化、構造化して話すというのがとても上手だなと思いました。実際に課題などの評価をする中でも、課題を読み取ってそれを考える力っていうのが高いですね。 眞竹 :ありがとうございます。では、次の質問です。御社は今、学生の皆さんに、どういう企業イメージを持たれていると思いますか? 湊さん :そうですね。やっぱり、広告代理店、CMとか作っている会社、あと、オリンピックやっている会社、というイメージが強いと思います。それ自体は間違ってないですし、弊社のメインのビジネスである事は確かですが、最近はクライアント様の課題がいわゆる広告・プロモーションだけで解決できなくなっている事も増えてきている中で、弊社の社会的役割も変わってきています。 眞竹   :では、御社がどのように変わってきているのか、実際の姿を知らない学生へ、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか?   ― 社会的役割は変わっても、最高の解を提供することは変わらない。 工藤さん :社会的役割が変わってきているというお話ですが、社会ニーズが多様化したり、そもそも従来の尺度では測れなかったりと、ニーズを発見/創造することの重要度がさらに高まっています。そして、そのニーズに応える最高の解を電通は提供する立場にあることは変わらないので、常に最高の解を提供できるように私たちも解のフォーマットにとらわれないようになってきています。従来の広告やプロモーションというフォーマット以外の取り組みとしては、さまざまな事例あるのですが、例えば、 1:DENTSU DESIGN FIRM  https://dentsu-design-firm.com/   つたえることから逆算したプロダクト開発をご一緒したり、 2:THE KYOTO  https://the.kyoto/article 京都をヒントに文化・アートを学ぶプラットフォームを立ち上げたり、 3:ABC Glamp&Outdoors  https://abcgo.co.jp/ テレビ局と一緒に、グランピングで地方創生に取り組む会社をつくったりしています。 眞竹   :では、従来の広告、プロモーション領域に止まらない社会的役割の変化の中で、御社が今後目指していこうとしているところを、教えてください。 工藤さん :目指していこうとしているところは以前から変わっていない気がします。それは、社会やクライアントの課題を発見し、アイデアをもって解決することでちょっと先の未来を引き寄せること。です。ただ、世の中の変化に伴って、サービスをつくったり、事業共創を電通自体ができるように、実現力をさらに強化した電通を目指していく必要はあります。 電通のビジョン&バリュー:an invitation to the never before. https://www.dentsu.co.jp/vision/philosophy.html 眞竹   :では、お二人が現在携わっているもので、従来の広告、プロモーション領域に止まらない事例があれば、教えていただけますか? 湊さん :私と工藤が所属している電通若者研究部(ワカモン)の活動で、それぞれ学生に携わってインターンシップを運営していますので、そちらを紹介します。私の方からは47INTERNSHIP(ヨンナナインターンシップ)のお話をさせて頂きます。 ※「47 INTERNSHIP」 https://47internship.com/   ― 世界のクリエイティブアワードで受賞した47INTERNSHIP。 湊さん :2年目になる2021年も開催しました。昨年、コロナの影響もあり、インターンなどいわゆる就活系のイベントも大きな影響を受けて、就活生が困っているという状況がありました。そこで、逆にコロナだからこそ、新しい就活やその支援の形を作ることができないか、ということをNPO法人のエンカレッジと相談していたところ、これを機会に地方の就活格差に取り組めないか、というアイデアが生まれました。そこから47都道府県から集めた就活生の代表者が参加するインターンシップを開催しました。その取り組みが、様々なところから非常に評価いただきまして、例えば、世界最高峰のクリエイティブアワードのD&ADのブランディング部門にて、2021年最高賞のYellow Pencilを受賞する、ということにもつながりました。 眞竹   :その流れでの2年目。開催にあたって昨年との違いは何か意識されましたか? 湊さん :昨年の経験から、地方の就活格差にこのフレームが有効にワークすることがわかったので、より社会的影響度を高めていこうと考えて企画しました。例えば、これは結構驚かれるのですが、今年は学生から、2000以上のエントリーシートをいただきました。それを受けて、参加される47名以外の方にも希望者を募って、今回の47 INTERNSHIPのエントリーシートの評価基準であったり、これからの時代に求められている人材像はどのようなものか、などをDAY-0という形で協賛企業の皆様にもゲストで参加いただき、全国数百名の学生の皆さんに向けて開催しました。また、エントリーシートにおいて、47都道府県の学生の皆さんに「あなたが解決したい、あなたの身近な課題を教えてください」という質問をしたのですが、それ自体を「47都道府県課題MAP」でビジュアルにして、各地方の皆さんがどういう形で解決していきたいと思っているのかをセットでリリースしました。   「47都道府県課題MAP」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000085233.html 眞   竹 :ちなみに、どのようなことが地方で学生が感じている課題か、何か傾向は見えたりしたのですか。 湊さん :すごくクリティカルだと思ったのが、コロナになってどんどんネット社会が加速していく中で、地方高齢者のデジタルデバイドを挙げている学生が多かったことですね。そもそもネット化していくのはわかるけど、それについていけない人も結構いて、それが高齢者だったりします。特に高齢者の方がネットの恩恵を受けるべきなのに、それができていないことは、地方社会の大きな構造的な問題だなと改めて感じました。 眞竹   :ありがとうございます。では続いて、工藤さんの取り組みについてお伺いしたいと思います。   ― 「アイデア実現」のための全ての工程を、学生が実体験する。 工藤さん :今年で3年目になる「アイデア実現インターンシップ」についてご紹介します。それまでも電通若者研究部(ワカモン)で電通のインターンシップをプロデュースしていたのですが、私が初めて参加した3年前に新たなフォーマットとして始まったものです。学生とメンターの関係を、先生としてのメンターではなくて、伴走者としてのメンターという立ち位置にしました。学生が主体となって、それこそ、電通の社員が普段やっているような業務の工程を、自分の「ほうっておけないこと」の解決という学生自身のやりたいことを通して実体験をしてもらうことを目的に、アップデートしました。 眞竹   :3年目の今年は、どのような状況ですか? 工藤さん :今まさにクラウドファンディングのCAMPFIREで、11月末まで学生たちが支援を募っている段階です。今年は14人参加してくれたので、14プロジェクトが立ち上がっていますが、もうすでに期間を終えずに目標支援金額を達成しているプロジェクトもあります。  ※「電通ワカモン  アイデア実現インターンシップ」 https://camp-fire.jp/curations/dentsu-wakamon 眞竹   :ちなみに、学生の皆さんがどんなプロジェクトを考えたのか、いくつか紹介していただけますでしょうか? 工藤さん :私がメンターをやっていたプロジェクトだと、「Scaping OKAZAKI岡崎プロジェクト」です。キックボードをシェアするサービスで、キックボードで岡崎市の乙川エリアを移動して、「遊び場」化して、その良さに出会って教える、というプロジェクトです。もうCAMPFIREでの目標を達成しているプロジェクトですが、企画した学生が考えたのは、地元岡崎の乙川エリアが車で移動するには道が狭くて移動しにくいし、歩くにしてはちょっと遠い、ということでキックボードに目をつけて、移動そのものも観光にしていく、ということでした。この学生を始め、自分からいろんな人たちや行政などに働きかけを行ってもらうインターンになっています。他にも、「音のない料理教室」。これはイベント系ですけど、参加者同士が声を出さずに意思疎通を図りながら一つの料理を作り上げる、「耳の聴こえる方・聴こえない方が参加できる料理教室」です。すでにこの学生は、インターンに参加する前に一度イベントを開催していて、それをさらにアップデートしたいという思いを持って参加してくれました。 眞竹 :   3年目になり、すでに取り組んでいることがある学生も集まってきているんですね。 工藤さん :参加したメンターの中で、3年目でやっと完成形になってきたかな、という話をしています。学生を集める過程であったり、実際にプロジェクトを考え、立ち上げてもらう期間でであったり、改善できていていると感じています。 眞竹 :お二人はインターンを通じて、学生と企業の接点に携わっていらっしゃいますが、もっとこのようになればいいのに、と感じるところはありますか? 湊さん : 学生の皆さんにとって、企業で働くことにおいて何が大事にされているか、ということを肌で感じる機会があることが重要と思っています。なので、産官学が連携して、実際に働く場としての企業を考える、そういう教育機会を作れれば、就職活動の先行ステップとしてすごくいい機会になるのではないかと思っています。 工藤さん :学生に好きなことを見つけなさい、といってもなかなか難しく、一歩踏み出せない学生がまだまだ多いと思います。大学で学ぶ専門的分野以外でも、興味関心を持てる分野への学びや体験を企業側が提供できるような仕組みがあると面白いのでは、と考えています。 湊さん :就職活動の評価軸が企業側で緩やかに崩れてきている中で、学生側もそれに気づけていないと思っています。例えばeyaで美大の学生が、課題の落とし込みであったり、事業アイデアを作ったりするのがうまいと感じるシーンがあります。作品を作る過程で本質を見極める能力が鍛えられているからだと思うんです。そういう能力は今後企業側にも評価されていくと思うので、そういったことを知れば、きっと学生側の選択肢も広がります。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹広嗣 眞竹 :学生と企業の接点については、今後も改善していくべきポイントがありそうですね。では、そういった中で、電通がeyaに参加される意義やメリットを教えてください。 湊さん :企業紹介の際、広告代理店から、ビジネスをプロデュースする企業へ変化している、という事を、弊社はeyaで学生向けのメッセージとして発信しました。 それは、広告・プロモーションで培ってきた「アイデア」という弊社の強みを活かし、広告・プロモーション領域に留まらずに、クライアント様のビジネスのサポートを行っていきたいという事です。ですが、やはり、このような取り組みはそこまで認知度もなく、事業創造やリーダーシップなどに興味のある学生の皆さんに、弊社の未来の姿を是非知ってもらう機会として活かせればと考えています。 眞竹 :eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのようなことを期待されますか?  湊さん :これはメンターとして、学生の皆さんにお伝えしたい事ですが、こういった異業種合同の人材育成の取り組みって、ほんと、大人の社会見学だと思うんですよね。シンプルに、なかなか見えない企業の最先端の事例や、取り組むビジョンに触れる事は、知的好奇心が刺激されますし、楽しい事だと思います。そういった視点でみると、働く事自体がコンテンツになって、それを学生に見てもらうことで、学生の皆さんが働く事にポジティブになってもらう。これが、これからの日本を変えていく一つのカギになるんじゃないか、と思っています。     ― 「今を意味づける力」を身につけてほしい。 眞竹 :では最後に、 eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することは?工藤さんから、お願いします。 工藤さん :最初にお話ししたように、学生の皆さんの考える力がすごく高いなって思っていますが、あくまで提供された課題や自分が見つけた課題に対しての考える力が備わっている、ということだと思います。社会に出た時、その考える力の矛先をもっと広げないと、例えば、スケジューリングだったりとか、タスク管理だったり、人とのコミュニケーションそのものにも電通でいうところのアイデアが必要になります。課題を発見するとか、課題そのものを解決する為に考えるのはもちろんですけど、その矛先をもっといろんなところに向けられるようになって欲しいので、その手助けを、ちょっとの期間でもできればいいなと思っています。 湊さん : 期待することは、ぜひ、小さくまとまらないでほしいという事です。ビジネスをつくる力は勿論重要なのですが、自戒も込めて、それがスモールビジネスの方向にいっちゃう人も、たまにいるんですよね。もちろん、それ自体が悪いコトではないですし、生きていく上で大事な事でもあります。でもそれよりは、ぜひ、日本のこれからを自分が背負うんだ!!という気概を持って、世の中に対して課題感をもって、なるべく大きな理想的な世界観を描くクセをつけてほしい。また、ぜひそんな自分が掲げた世界観が実現できる場所を妥協せずに探して、キャリア設計していってほしいなと感じます。そのためにも、「今を意味付ける力」を身につけてほしいです。メンタープレゼンで1日目に話したことですが、忙しくて目の前の活動を何の為にやっているのか、を見失う時もあると思います。そんな時、立ち止まって、自分のキャリアを考えてみる。そのための材料を提供できる場になればうれしいです。  

#インタビュー

ウェディング業界のポストコロナの新戦略「ウェディング2.0」

写真右から 司会)村田 大氏 (株式会社カラーズ2代表取締役) 鰺岡 恭徳氏 (株式会社アルプラス取締役) 片山 俊大 (株式会社電通)   編集長コメント: 今回は京都BACでM&Aコンサルとしても活躍している片山さんに、ウエディング業界の現状とM&Aの関係性について対談にてお話しいただきます。      ウェディング業界の現状  村田さん (以下敬称略) それでは、まず共通認識として、ウェディング業界の現状について鰺岡さんにお話ししていただきたいと思います。コロナ禍で日本全体が閉塞感に陥る中、ウェディング業界はもっとも厳しいのではないでしょうか。 鰺岡さん (以下敬称略) コロナによる未曽有の事態がウェディング「業界を襲っています。緊急事態宣言以降、営業自   粛はもちろん、結婚式の延期やキャンセルが本当に相次いでおり、結婚式場の資金力が非常に厳しい状態になっています。その結果   、倒産・廃業に追い込まれているところが増え、まさに非常事態が起きています。さらに、後継者問題も顕在化してきています。ハウスウェディングの登場が2000年頃で、そこから、20年経っており、創業者が引退時期に入っています。このような状況のもと、売上げアップや、M&Aの相談が、非常に多くなっています。 村田  ウェディング業界が大きく変わっていかないと生き残りが非常に難しいというような話を、私もしばしばお聞きするのですが、今後の生き残りというのはどのようにお考えでしょうか。 鯵   岡       これは非常に難しいで   す。弊社で、ウェディング業界の生き残りに向けて提案している主な施策は、2つあります。 まず、フューチャーライフサポート(※後述)という弊社独自の施策、2つ目に、事業転換を目的とした事業再構築補助金を活用した施策です。新しいものを創出するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)も鑑みながら、様々な切り口からご提案をさせていただいています。 村田  それでは片山さん、今の鰺岡さんのお話を聞いて、世の中全体の企業と比較して何かお話があればと思いますが、いかがでしょう。 片山  まさにコロナで社会は一変したと思います。そして景気が良いところと悪いところの差が激しくなっており、2極分化している傾向があると思っています。特に、スピード感を持って、デジタル化に対応したり業態を大きく変化させた企業というのは強いと思います。先のリーマンショックの時も、柔軟に変革を行い投資を実行した会社は、その後ものすごく伸びています。現在コロナ禍で、音楽とかエンタメ業界は厳しい業界の一つとなっておりますが、このタイミングでオンライン配信   やテジタル化を推進した企業は、むしろステイホームで強くなっていく。ウェディング業界もそうですね、そういった今までの常識にとらわれずに柔軟に変化してい   くということが、ますます重要になってきているのではないかと思います。    ウェディング2.0を考えるヒント    村   田  変化に対してスピード感を持って対応していくことが、生き残りのための重要な要素だという事ですね。ただ、スピード感を持って対応したくても、人材がいないとか、資金が足りないとか、いろんな問題があり、やりたくてもできないとの話も聞きます。実際のところ、自社だけで解決されて困難を乗り切れる企業は少ないのではないでしょうか。 鯵岡  やは   り自社だけで対応し、困難な状況を打破するためには、難しいことが多々あります。今は協業して一緒に新しい方向に進む時代に突入しているのではないでしょうか。弊社が提案しております、フューチャーライフサポートは、その地域のメーカーと協業して、一緒に盛り上げていく施策です。生き残りにかけてはそのようなことが必要だと思います。 例えば、意中の大手ハウスメーカー、ディーラー、家電量販店、保険会社、宝石店など約50社くらいと協業している事例があります。結婚式場は、結婚式をあげられたお客様の、様々な生活シーンでのトータルサポートとして活躍できる機会があると考えております。そのため、お客様が、車や家のご購入を検討されている場合に、結婚式場から、営業的なアプローチができます。地域の様々な企業と一緒になって売り上げをアップするということが、今、まさに可能になっています。先月   、ある結婚式場では、30組のお客様が来られて、15組が家をご購入希望されました。大手ハウスメーカーさんにとっても、非常に有益であり、協業してやっていく必然性を感じておられます。お客様の未来の生活も一緒になってご提案することが、これからの結婚式場に求められているのではないかと思っております。 昔から、このような結婚式場と地域の企業との協力体制はポツポツとあったのですが、今は、コロナ禍で、企業も積極的に新しいビジネスチャンスを模索されているので、加速度的に増加しています。 村田 なるほど。結婚式場が企業に、結婚式場という場を使って企業に商談のチャンスを提供していくという動きですね。片山さんは、どういう印象を持ちでしょうか。 片山  非常に面白いですし、そういう事はどんどん進めていくべきなのかなと思います。異業種コラボレーションには、いくつかの方向性があると思っています。今のフューチャーライフサポートのように、結婚後のライフステージに応じた様々な業界と連携するということには大きな可能性があると思います。また、結婚のあり方自体が変わってゆく可能性があるかと思います。結婚式は、もともと多様化が進んできていますが、このコロナ禍でますます変革していくと思います。全部とは言いませんが、部分的には劇的的に変化していくと思います。結婚式は概ね土日及び休日に行われるため、平日の式場は遊休資産になっています。そういった平日遊休資産を、シェアオフィスやカフェなどさまざまなコラボの可能性があると思います。 村田  それでは、事業再構築補助金の活用というお話があったのですがこれはどういうことでしょうか。 鰺岡  事業再構   築補助金は、ポストコロナ、ウィズコロナ時代の経済変化に対応するために、思い切った事業再構築を支援することで、業界の構造転換を促すことを目的としています。この事業再構築補助金を活用して、古い施設や設備から脱却して、ネット環境などを整えて、オンラインウェディングを実施できる施設を構築したり、ECサイトをM&Aして、ブライダルとは全く違う商品を販売している会社もあります。立ち上げて、約1年で約5億の売上を達成し、業界チェンジに成功されたところもあります。 既存の仕事との両立ですが、おかげさまでスタッフ全員のベースアップになり更にモチベーションもアップされましたとのことです。    村田   「ブライダルとは全く違う商品」とはどのようなものでしょうか。   鯵岡  キャンプ用品、マウスピース、家電製品などです。   その他、あるYoutubeチャンネルを買収して、月収約300万円を達成されているところや、事業再構築として、エステサロンなど新規事業分野に参入する例もあります。業界の構造転換を目的として様々な事業展開が行われています。      「ウェ   ディング×〇〇」のケーススタディ    村田  それでは次に、異業種コラボレーションのお話をお伺いできればと思います。具体的なものというのはどんなものがあるのか、鰺岡さんがご存知なケースでご紹介していただければと思います。 鯵岡  「ウェディング×〇〇」という様々な発展的な形があります。「ウェディング×コロナワクチン接種会場」として、数カ月間、結婚式場からワクチン接種会場に業態転換したり、「ウェディング×ワーケーション」として、結婚式場を施設に持つホテルがワーケーション専用のホテルを建設していることもあります。 さらに、「ウェディング×アミューズメント」として、日本初宿泊型お化け屋敷「禁じられた結婚式」をコンセプトに、今までと全く違う形のウェディングの展開もあります。このように、 結婚式場が変化をしなければいけない状況化で、様々な異業種コラボレーションが実施され、新しい収益を得ています。 村田  「ウェディング×コロナワクチン接種会場」については、結婚式場から発案で、行政に自ら打診をしたのでしょうか。 鯵岡  その通りです。コロナワクチンの大規模接種会場が全国で不足しているという現状に着目し、弊社がいち早く結婚式場のオーナーさんに呼びかけて、行政に打診をしました。会場の利用期間は約3か月間必要ということでした。結婚式場では、コロナワクチン接種会場に必要とされる、スタッフも既にいますし、十分な広さの会場や、空調施設も全て整っております。さらに、病院関係、医療従事者の食事の面でも、すべて提供することが可能でした。今では、市町村から結婚式場にコロナワクチンの大規模接種会場に利用させて欲しいという依頼が非常に増えてきております。売上としても、通常の結婚式や宴会と同等レベルで実施されております。その他にもメリットがあります。コロナワクチンの大規模接種を3ヶ月間も実施しますと、会場には何万人もの方が足を運ぶことになります。今までにない人流が起きます。足を運ばれた方に、結婚式場を活用した忘年会や新年会などの提案ができます。これこそ、まさに新たな結婚式場の活用方法です。短期的な売上確保と中長期的な営業を実施できるので、全国で「ウェディング×コロナワクチン接種会場」の動きが、まさに加速しています。 片山  今お話しされた3つの事例、「ウェディング×コロナワクチン接種会場」、「ウェディング×ワーケーション」、「ウェディ   ング×アミューズメント」は、結婚式場の強みを上手に活用されているなと思いました。 まず、ワクチンの接種会場は広くて空調が効いている必要があるため、ウェディング施設は最適ですね。最近は特に、平日のみならず土日まで遊休資産になっているため、その状況を逆手に取ってうまく業態転換したのだと思います。きっと同じことを検討した会社さんもいたと思いますが、意思決定のスピードが早かったところに決まったのだと思います。ですから、経営の変革スピードや決断力の重要さを物語っているなと感じました。 次に、ワーケーション。これも同じく遊休資産の活用ですね。今はどこでもリモートでどこでも働ける時代で、オフィスに通わなくてもいい、となったら素敵な場所で働こうと考える人もいる。ウェディングはそもそも素敵な場所ですから、そういった場所を、オフィスとして使うというのは時代的に面白いと思います。 最後に、お化け屋敷やアートイベントとか、一見、ぶっ飛んでるように見えます。しかし、ウェディングは人生最大の驚きを皆さまに提供する場所で、つまりは、祝祭性の演出のプロ。そういった、ウェディングの強みを、全く違うアミューズメントとして活用するというのは、非常に有効だと思いました。 村田  経営的な意思決定のスピード感に加えて、施設の本質を見抜き、しっかりとした戦略をもって行動することで、うまくいっているということですね。今後も、様々な「ウェディング×〇〇」が生まれてくると思うのですが、いかがでしょうか。          片山  そうですね、ある意味私はウェディング業界の外の人間として、よそ者の視点でちょっと自由気ままにアイデアを出してみたいと思います。今のいくつかの事例をお聞きして、非常にいろんな活用法がまだまだあるんじゃないかなというふうに思いました。「ウェディング×ワーケーション」の事例がありましたが、基本的にはウェディングの平日の遊休資産がめちゃくちゃもったいないと思うんです。ウェディングの会場って基本的に素敵な場所じゃないですか、すべて。そこを平日寝かしている、コロナで場合によって土日も寝かしていたら、これほどもったいない事はないですね。 私は、「ウェディング×シェアオフィス」っていうのがあるんじゃないかなと思います。最近は、銭湯や駅のホーム、チケット売り場、カラオケボックス、本屋の一部などを、シェアオフィスに業態転換する例がどんどん増えてきています。そいった中、結婚式場は、映えスポット、つまりフォトジェニックなシェアオフィスとして活用できると思います。最近は、リモート会議や、映像SNS活用など、ビジネスにもフォトジェニック性が求められてきていますので。もしかしたら写真や映像のサービスと連携できるかもしれません。 また、ファッション業界とのコラボの可能性もあるかもしれません。最近、服のオンライン購入が増えるほどに、リアル店舗の価値が問い直されています。そのような中、ファッション業界は、空間全体も含めた体験価値を提供する場を求めています。ファッション業界と、ウェディングの空間やサービスを融合させると、新しい価値が生み出されるような気がします。 また、最近、カフェでお仕事や勉強する人が増えており、ウェディング会場は平日カフェスペース兼シェアオフィスとして活用できるかもしれません。最近のカフェは、SNSとの親和性が高いので、映像フォトスタジオやアパレルなどとコラボすることで、フォトジェニックな遊び場・仕事場を求める女性を集めることができるかもしれません。 鯵岡  目から鱗が落ちるようなアイデアで非常に面白いですね。結婚式場には、どうしてもガチっとした、やらなきゃいけないみたいな、先入観がありますが、やはり「カジュアル」という概念も、これからは取り入れていくべきかと思います。。また、結婚式場は、地方で1店舗2店舗などチェーン展開しているところが基本的には多いです。そうなると、情報もないですし、そこから様々な異業種コラボレーションを考えるのが難しい状況ではあります。片山さんのご提案は非常に貴重な提案だと思います。 片山  ぜひこういったお話をお聞きいただいた事業者の皆様で、こういうことをやってみたいっていうみたいなことを考えた方がいたら、ぜひご相談いただけると面白いかもしれませんね。 村田  片山さんから、少しファッションの話がありましたが、将来は、ラグジュアリーブランドとコラボした結婚式場ができるのではないかと想像しますが、いかがでしょうか。ワクワクしますね。 片山  私は現在、ファッション業界関係者と、この状況下でどう変革していくべきかの戦略に携わっていますが、実際、カフェとのコラボなど、多面的な事業展開を求めているブランドがありますので、「ウェディング×ファッション」を具体的に進めていくことは可能だと思います。 村田  では次ですが、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてお伺いしたいと思います。一例えば、結婚式場にオンラインウェディングのご提案をしますと、オーナーさんからは、「あまり儲からない」というお話をよく聞きます。理由は結婚式場のビジネス形態にあります。結婚式場の売り上げは、料理代金やや、引き出物代金場合によっては衣装代など結婚式場にお客様が足を運ぶことによって収益化される部分が多い仕組みとなっております。その意味で、結婚式場に足を運ばない=オンライン化になることは、ネックになるということです。何かDXをうまく活用する方法はないでしょうか。 片山  オンラインなのか、リアル会場なのかというのは、様々なイベントで同じような問題がたくさんあると思います。しかし例えば、国際会議はオンライン化が進んでおり、それによって参加する人が増えています。ただ、もともとそういうイベントは食事がないので、さすがに結婚式場とは一緒にはできないと思ういます。最近は再び、対面の良さ、直接集まって同じ空間を共有することが見直されてきており、その最たるものが、やはりウェディングだと思います。祝祭性には、必ず同じ空間を共有する必要があると思うんです。 なので、今後はリアルとオンラインのハイブリッドが拡がるのではないでしょうか。リアル空間を共有しながら、オンラインでも参加していただく。一つのところに集まるリアルの価値が上がった分だけ、そこをブランドと価格帯も上げていく。そういうグラデーションをつけていくっていうのはあるのかなと思います。また、音楽とか余興をライブがオンライン配信するなども考えられると思います。このように、リアルとオンラインを掛け合わせた、ハイブリットなウェディングが今後求められると思います。 鰺岡  最近、フォトウェディングが人気でして、そういったものが、DXと親和性があるように思うのですが、いかがでしょうか。 片山  まさにウェディングとフォトや映像っていうのは、言うまでもなく重要ですよね。そこにライティングとか撮り方だとかノウハウがいっぱいあると思います。ただ、やはり時代の変化にもっと合わせていく必要があるかなと思いますね。世の中ではInstagram、YouTube、Tiktokなどに写真や動画をシェアして活用していくことが爆発的に拡大していますよね。従来の結婚式もそういった流れに柔軟に対応すべきだと思いますが、おそらく自社だけで対応することは難しく、コラボなどによって解決することが有効かもしれません。 また、DXに限りませんが、例えば、「ウェディング×グランピング」みたいな発想もあるんじゃないかなと思いますね。コロナ禍で密を避けたレジャーを楽しむために、キャンプがまた流行ってますね。ストレスフルの社会の中に疲れ、自然に癒しを求めるところがあるんだと思います。さらに、   気軽に快適におしゃれに自然を感じるニーズに応え、グランピングが流行っていますね。そしてこれからは、自然の中でウェディングというニーズが世の中にあるような気がしていますが、いかがでしょうか 。 鯵岡  まさに片山さんの言われたことが現実に起こっています。全国のホテルの稼働率が軒並み下がったところで、そのグランピング事業に着手して、既存の古いホテルの稼働率が7割以上、365日稼働率が9割以上にアップするというところがあります。結婚式場をお持ちの、古いホテルや旅館には、空地や駐車場があります。そこにトレーラーハウスやテントなどを設置して、多くのお客様がグランピングを楽しんで頂けるような、ホテルのアクティビティー化が非常に増えてきております。1泊の料金体系は、1万5000円~40,000円に設定されていて、本当に人気です。 私は、鹿児島の吹上浜で実施されているホテルとは面識があるのですが、実はこの「ウェディング×グランピング」っていうのは、地方の広い場所でしか行われていないわけではありません。逆に、街中でグランピングができるっていう形を模索しているホテル、結婚式場が、今非常に多くなってきています。 村田  「ウェディング×グランピング」で成功しているケースがあるという事ですが、ただ実際にホテルや結婚式場にグランピングのノウハウがあるかというとなかなかないのではないかなと思います。実際にそのための資金を調達してという話は別にしても、なかなかそこまで思い切ってやれるかっていうと難しいですよね。そういった中で何か上手に組み立てる方法論というのは片山さん、何かアイデアではないでしょうか。 片山  そうですね、おそらくトラディショナルなウェディングをやってこられた方が、急にグランピングのウェディング事業をやろうと思っても、簡単ではないような気がします。グランピングのハード面をそろえたとしても、おそらくそのノウハウが無い。なので、グランピングの会社とウェディングの会社がコラボして、「ウェディング×グランピング」のサービスを提供すると良いと思います。結婚式場の庭でグランピングやってみるとか、隣の駐車場でさえも砂浜を作ってグランピング会場にしてみるとか、施設に合わせてカスタマイズして作っていく。駐車場や公園などの遊休資産みたいなところにそういう事業を作ってしまって、後からコラボや事業売却を行う、というようなやり方もあるかもしれません。 鯵岡  非常に面白いアイデアですね。ある新規事業を、その地域で、誰が先行して進めるか、ブランド化できるかが重要ですね先程の「ウェディング×コロナワクチン接種会場」も同じですが、誰かが先行して実施しないとダメで、先行したものが勝ちだと思います。 それだけでなく、逆に、今は異業種が、結婚式場ビジネスに参入してくるケースもあります。実は、「グランピングウェディング」というものがあります。もともと結婚式場があったのでグランピングでやろう、という発想ではなくグランピングがあったからその中に結婚式を入れようという発想です。グランピング会場で結婚式をあげたいというお客様のニーズがあったので、戦略的にパッケージ化してやるっているようです。素晴らしいアイデアだと思います。      「ウェディング×○○」の作り方  村田  では次にですね、実際に自分の会社で「ウェディング×〇〇」に取り組んでいくことをお考えのオーナーさんにとって、直面する様々な問題について考えてみたいと思います。資金、人材確保の問題もありますし、それ以外にも様々な問題があると思います。 その解決方法の1つとして、M&Aがありますが、ある意味、M&Aは、異業種コラボレーションの究極の形ではないかと思います。 ウェディング業界のM&Aの現状について、鰺岡さんからお話しいただけますか。 鯵岡  はい。事例として、写真館と高級旅館のM&Aがあります。今はフォトウェディングが非常に需要があり、売り上げが伸びています。です。そうすると旅館も、結婚式場の売上げがダウンしている中で、異業種コラボレーションの手法として、フォトウェディングで重要なポイントである、「写真」の知識を多く持ち、かつ人気も、資金力もある写真館に白羽の矢を立てます。その場合、旅館そのものや、結婚式場の事業だけを譲渡することで、M&Aを成立させるいうケースが増えています。 その他にも、IT企業、病院、その他銀座にあるレストランまで、資金のある企業に大きな素晴らしい結婚式場を譲渡し、M&Aを成立させるというケースが、各地で多く起こっています。M&Aによって、異業種コラボレーションを成立させることは、今時代の流れに乗っています。 村田  なるほど。異業種コラボレ   ーションとして、M&Aを実施するというのは、ちょっと大型といいますか取り組みのツッコミ度が深いというか、そういうことについて片山さんはどう思われますか。 片山  これまでウェディング業界はもっとスピードを持って変革・コラボレーションを推進すべきだというお話をしましたが、これは、ウェディング業界に限った話ではないと思います。世の中の変化のスピードはものすごいスピードで変化をしており、コロナによってさらに加速しました。この変化を自社の自助努力で変革する事は、もはや不可能に近くなってきていると言えます。多少の変革は出来ると思いますが、大きな変革は自社だけでは極めて難しい。では、大きな変革を実現している会社をみてみると、実はその多くがM&Aや資本業務提携による変革なんですね。実際M&Aの件数は、年々増えおり、コロナ禍によってさらに増えています。皆さん、新聞に載るような大型のM&Aを想像されるかもしれませんが、小さい老舗企業、未上場の会社のM&Aが非常に増えています。 一般にM&Aは、敵対的買収いわゆるハゲタカみたいなイメージが強いと思います。しかし、実際は、敵対的買収というのは全体の1%にも満たない。そもそも上場企業じゃないと敵対的買収はありえないですし。つまり何が言いたいかというと、世の中の99%以上は友好的で、お互いがハッピーになるM&Aなのです。 ビジネストランスフォーメーション、デジタルトランスフォーメーションなど、大きな事業変革を行う場合は、M&Aはもはや必須になりつつあると思います。そこで、電通グループは、M&A仲介を活用したソリューション提供をしており、既に実績もあります。2019年、電通は、日本M&Aセンターという業界最大規模の会社と業務協定を締結し、一緒にM&A仲介を進めているのです。こういったこともあり、M&Aを活用した「ウェディング2.0」を目指すことで、よりスピード感を持った業態転換のお手伝いができると考えております。 今では、企業のみならず個人レベルのM&Aすら増えており、看護師が脱サラして、ブライダルの貸衣装屋さんを買収するケースもあるくらいです。なので、先ほどからアイデアに出ているように、ウェディングと、シェアオフィス・映像制作・カフェ・グランピングなどとの連携を実現するためにM&Aを活用するというのは、全くもって現実的なオプションと言えるかと思います。 村田  ただ、M&Aを考えると資金的なこと、というのが心配されるオーナーさんとかも多いと思うんですね。譲渡する側であれば資金は必要ないということだと思いますが、その理解で良いでしょうか。 片山  はい。譲渡する側であれば資金は必要ありません。買収されるというと抵抗があるかもしれませんが、要は資金を投入してもらうということになります。M&Aは、買収されるより買収する側にまわりたいと考える経営者は多いと思いますが、実は、会社を売るというのは非常に高度な経営戦略とされています。特に欧米では、IPOと並ぶ経営戦略として。 一般的には、資金はあるけどノウハウや人材やサプライチェーンがない、それをゼロからやるのも大変だ、そういう企業は、その資金を用いていわゆる買収、譲り受けをします。その一方でノウハウ、人材、店舗はあるが資金は無いというところは、出資してもらいたいですね。社債を発行する、銀行から借りる、上場して株式市場から資本を調達する、そういったオプションの1つとして、大企業から資金を調達する、つまり事業売却・事業譲渡というものがあります。そういった視点で見ると、実は売却も買収も大きな差は無いのかもしれません。 村田  自分たちが新しく何かをやりたいなと思った時に、では資金が足りないと。そうしたら自分の事業の中の、例えばレストラン部門を譲渡して、その資金で代わりにグランピング部門を新しく作ろうとか、そういったことが考えられますね。 片山  まさにおっしゃる通りで、大きく2つあると思います。会社のすべての株式を譲渡して、大手の傘下に入るというのが1つ。もう一方はいくつか事業の一部を切り離して事業売却し、その売却益で新しい事業に投資していくというもの。 村田  なるほど。M&Aをうまく使えという事ですね。 片山  そうですね。どうしてもやはり買収される、事業譲渡する、M&Aされるというとなんか怖いとか、敵対的買収のイメージが強いので抵抗感を持つ方が多いんですが、嫌なら断ればいいだけの話です。上場したらおめでとう、買収されるとかわいそうにみたいな感覚は、完全に間違っていると思います。例えば、欧米の古い例で言いますと、InstagramがFacebookに買収され、YouTubeがGoogleに買収されました。これは、上場よりもM&Aで譲渡することを求める会社は多いためです。もちろんこれらは、全く後ろめたいことでは無いですし、買収に伴い、大企業のサプライチェーン、営業力、人材教育、そしてリクルート、人材確保能力等々を活用できます。それにより、ビジネスを大きく変革していくことができるのです。 事業を成長するためにそのエリアでさまざまな事業買収し、さらに成長するために、事業譲渡して大企業の傘下に入るケースも結構あります。M&A後のリストラを恐れる人もいますが、どちらかというと、買う側としては従業員は1人も辞めないでほしいと考えており、そういった条件をつけることがあるくらいです。経営者のオーナーシップはなくなりますが、経営者としては残るケースもあ   りますし、個人保証が外れて売却益が入ります。退社して悠々自適っていうのもありますし、その資金を元手に新しい事業をやるっていうこともありますし、会社に残って徐々に引き継ぐなど、さまざまなパターンがあるといえます。 鯵岡  実は、ウェディング業界の大きな課題として、経営の後継者問題があります。M&Aによって、その課題を解決することもできます。当然、社員、幹部の雇用を保証することもきます。M&Aで解決できることは、どんどん解決したほうがいいと思います。 村田  ありがとうございます。片山さんいかがですか。 片山  ウェディング業界の皆様だけではなく、現在、すべての業界が、急速で大きな変革に迫られています。この困難を乗り越えていくために、自社だけのリソースに固執せず、異業種・異分野の人たちとコラボレーションによって大きな変革が成し遂げられると思います。また、M&Aを活用することで、その変革のスピードを更に加速し、資金面の解決も図ることができるのです。この荒波に速やかに柔軟に対応していく、それがさらなる発展のできる会社さんと、そうでない会社さんの分かれ道がまさにここにあると思います。我々このチームは、こういった「ウェディング2.0」というプロジェクトで、この業界の変革に少しでも役立てられればなと考えております。ぜひ我々までご相談いただければなと思います。ありがとうございます。 村田   本日はいろいろなお話ありがとうございました。ぜひ皆さんからの相談が来るといいですね。 お問い合わせは、株式会社アルプラスまで URL  https://allplus.tokyo/contact/ 電話 03-4360-8657