【 engawa young academy 】 イノベーターインタビュー 後編

#インタビュー

engawa young academy(以下、eya)では、各企業の最前線で新しいフィールドを切り拓いている皆さんに、プログラム「イノベーター見本市」に参加いただきました。新規事業のことやeyaに参加しての感想などインタビューしましたので、ご紹介します。
後編は、みずほフィナンシャルグループ、日本たばこ産業、電通の皆さんです。
(前編は、こちら

 

− みずほフィナンシャルグループ 渋谷さん −

 

みずほ証券 投資銀行本部 テレコム・メディア・テクノロジーセンター ディレクター 渋谷 直毅さん

 

―渋谷さんが関わっている、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)での新たな事業領域や取り組みを教えてください。

今最も注力しているのは、日本全体の命題である“新しい産業・経済をどうやってつくるか”について考え、実行することです。例えば、ベンチャー企業が、特に高成長を志向する赤字のベンチャー企業が、どのように成長のための資金を調達するのか。銀行サイドからみれば、どのようにして融資するか、証券/投資銀行サイドからみれば、どのように投資家と結び付けるか、といったことです。銀行でいえば、融資は実行したら当然返ってこないといけないのですが、赤字のベンチャー企業でどのようにそれを確かなものにするのか、従来の銀行ロジックとは異なるどのようなブレイクスルーで可能にしていくのかということ。証券/投資銀行でいえば、赤字であっても、ビジネスモデル等から事業の継続性の上で問題なく、むしろ成長性をみれば投資対象としていかに魅力的であるかという点を投資家に対して訴求することや、これまで日本国内の投資家としか接触していなかったところを海外の投資家とも行う、などといったこと。そしてこれらベンチャー企業に対して多種多様な金融サービスを提供することこそが、みずほFGにおける新しい取り組みですね。特に私はインターネットテクノロジー/メディア系の企業を多く担当しているのでその文脈のど真ん中にいますが、グループ全体としても、これからの日本を担う、日本の産業や経済を作っていく企業と積極的にお取引させていただいています。従来の金融の考え方では出来なかったことを、逆転の発想なども用いて取り組んでいます。

 

―企業のスタンスがそこまで変化しているんですね。本日、eyaの学生にそういった取り組みをお話して頂きましたが、印象に残ったことを教えてください。

私は経済・ビジネスを中心にお話しさせていただいたのですが、「文化的側面はどう考えているのか」という質問があったのが印象的でした。世の中が経済的側面だけではなく、文化的側面からも色濃く成り立っていると理解している成熟した学生がいるのだなと強く印象に残りました。あと、皆さん視座が高く頼もしいなと思いましたね。受け身ではなく能動的に、この機会を使ってちゃんと吸収したいと思っている方が多いと思いました。せっかく各社から人を引っ張ってきている機会なので、これからの活動の参考にしたいという思いを強く感じられましたね。こういう意欲的な若者が多いのであれば、もっとこの国は良くなるように思います。

 

―では、学生に向けてのメッセージをお願いします。

こういう場で色々な人と会ってディスカッションして色々なインプットを受けて、かつアウトプットする場も提供されていますので、その経験そのものが価値になりますし、それが自分自身を高めていくことにつながると思います。社会人になっても、その連続です。これからも、受け身ではなく、能動的に社会に対してどのようにコミットメントしていくのか、是非考えていただきたいです。

みずほFGに関していえば、母体となっているのが、日本興業銀行・第一勧業銀行・富士銀行などなのですが、日本興業銀行は、日本でどう産業を起こすか・経済を強くしていくかということをミッションとして出来た銀行であり、第一勧業銀行(第一銀行)を作った渋沢栄一は、今でも日本の歴史上最も多くの企業を設立したと言われているまさにアントレプレナーの代表ですね。みずほFGは、そのアントレプレナーシップを強く持っている企業をサポートしたいと思っている金融機関であると思います。もちろん、今日の日本の産業・経済の根幹を担う企業とのお取引が主体でもあります。ポジション・役割は、働き方によって様々なものがあり、手を挙げたら、色々なことが出来る機会を得られます。もしご関心があれば検討いただければと思います。

 

 

− 日本たばこ産業 神谷さん −

 

日本たばこ産業 たばこ事業本部 事業企画室 採用研修チーム 次長 神谷 なつ美さん

 

―神谷さんが関わっている、日本たばこ産業(以下JT)での新たな事業領域や取り組みを教えてください。

今は、採用や若手の成長支援に関わっていますが、会社のキャリアの中で新規事業で、JTが出資しているベンチャー企業で子ども向けのムック本の編集長や子供が家で楽しむ工作キットの販売をしていました。

 

―子ども向けのムック本や工作キットは、どのような意図・文脈でやられたのですか?

私は今、採用業務が2回目なんですね。1回目の採用業務の時に、学生と会う中で「将来こうなってしまうよね」「その中で何ができるか」と言って、自分たちで世の中を作れる最初の一歩のはずなのに、閉塞感があるなとモヤモヤしていたんです。その後、産休中の長男と話の中で、赤やピンクが好きっだった長男が「友達がこう言うから青にしようかな」と言っているのを見て「世の中こうであるべきだ」というのは、いつの間にか決められていくのだなと思い、またモヤモヤしていたんです。

その後、産休から復帰した際に、ベンチャー企業へ出向の話が来ました。そこで「何でもいいから新規事業やってみないか」と言われたんです。「Amazonで本を売ろうかな」と思って内容を考えた時に、就活生や自分の子どもに対して女っぽい・男っぽいなどの訳の分からない区切りなど、大人が便宜上分けたものに縛られずにニュートラルに物を見ることを発信すれば変わると考えました。それはJTのコンセプト“人が人らしくあるため”の物の見方にも合致すると思いました。そこで“世の中はいかに面白いか”“いかに色々な物が繋がっているか”を発信する本を作ろうと思ったんです。

 

―JTの思想から本へと、コンセプトが繋がってるんですね。本日も学生にそういった取り組みを通じてお話し頂いたと思うのですが、印象に残ったことを教えてください。

面白いと思ったのは「自分の人生を自分のためだけに使ってもいいのか。でもやっぱり他者貢献もしたい。」みたいな話です。実はそれって分けるべきではなくて、“自分の幸せ=隣の人の幸せ”であってほしいし、“人の幸せ=自分も嬉しい”だと思うんです。選択する必要がないことを、一つに絞らないといけないという概念で動かれている方が多いように感じました。自分を信じて自分本位でいても、それが周りを幸せにすることだと分かれば、肩の荷が降りると思います。アカデミア・企業どちらかではなく、これからの時代は両方でいいですよね。

 

―では、学生に向けてメッセージをお願いします。

本日の新規事業のところでも話したのですが、“何が新しいのか”も難しいですよね。良い・悪いではなく「自分がベストエフォートを出せるか」というシンプルなことだけを考えると、もっと様々な道が開けると思います。迷った時に「飛びついていいのでしょうか」という質問がよくありますが、それは今までよりもっと面白いことを見つけたということでいいのではないかと思います。自分の奥にある気持ち、なんとなくの違和感にはきちんと立ち止まって、いけると思ったら考えすぎないようにしてほしいです。あとは、大事なことは自分で選べていることを信じて、気楽にやってもらえるといいなと思います。

 

 

− 電通 志村さん − 

 

電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 事業共創部 ディレクター 志村 彰洋さん

 

―志村さんが関わっている、電通での新たな事業領域や取り組みを教えてください。 

一社単独では実現/解決できない強いテーマ、具体的には、ゲノムや宇宙、デジタルセントラルバンクなどの壮大な領域/テーマに対して、N対Nの関係性で共創を誘発し、新しいイニシアティブ(景色)を創ることを主にやっております。その文脈、またはオポチュニティとも言って良いものに、必要であれば、企業やスタートアップを様々な接続の仕方で繋いでいく、ということをしています。その他、国の事業/スマートシティーのプロデュース、先進技術/システム開発のコンサルティング、イノベーションマネジメント、知財を核とした新規事業開発や国際標準化活動などにも取り組んでいます。

どの取り組みも、中長期的な視点と短期的な収益が求められるタフなものばかりですが、その中でも一番重要な取り組みは、立場や状況を越えて、これらの取り組みを共に推進しようと思って集まって来てくれる仲間を、成功や失敗というつまらない尺度だけではなく、飽きさせないことですね。

 

―本日、eyaの学生にそういった取り組みをお話をして頂きましたが、印象に残ったことを教えてください。

率直な感想としては、聞き上手な方が多くて驚きました。コトの経緯を確認する方が多く、結果よりプロセスに拘っている方が多いと感じました。また、経緯の中でも最上流である活動の根源となる「原動力」を確認したいという質問も多く、所謂事業が生起する際のテクニカルタームの質問が少なくて感心しました。

一方で、今回、合同で複数企業が取り組んでいる特徴を活かして、例えば、イノベーター同士の発言を比較して矛盾を突いたり、聞き触りの良い発言を真っ向から否定してくる意見も期待していたので(それぐらいのパワーが学生さんの中に眠っているように直感では感じました)、そのあたりは自分としても何でも言ってもらいやすい雰囲気の醸成とengawaの部屋構成の物理的突破が出来ていなかったなと、反省しています。

 

―では、学生に向けてのメッセージをお願いします。

VUCAの時代に、答えがない/正解がないのは当たり前なのですが、それゆえ、イノベーターと呼ばれるような納得感の高い話を出来る人の意見に、耳を傾け過ぎる傾向があると思っています。(ただでさえ、成功体験を多く語りがちな)特定のイノベーターへの陶酔は厳禁だと思っていて、常に「自分という考え方」を持っている必要があると思います。新しいことを生み出す際に、一定の経験やコツは活かせると思うのですが、まさに新しい事業な訳ですから、与件も前提も違うその新しい考えと、その考えを検討している当事者の信念が何よりも重要です。ここにこうして私の意見として記載してあることの前提すら疑って欲しいです。

また、もう1つのメッセージとして、これから一人で社会で戦っていくことを考えている方もいるかもしれませんが、もし何かしらの企業やチームに属して社会で戦おうとするなら、目の前にいる企業の人員で使えそうな人がいるか、採用活動等で横にいる同年代の仲間で頼りになる人はいないかという、個ではなく「群のヒューマンリソースの発揮の仕方」は常に検討しておいた方が良いと思います。関係性によって物事が進んでいくのであれば、採用やビジネスでも、その関係性自体が採用されるのが一番理想であるはずです。中途採用やM&Aを考えればイメージしやすいですよね。複数企業合同の今回の取り組みが、その最初のきっかけになれば幸いです。

 

 

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#インタビュー

【Serendipity@engawa 第二回】遠野ハンドクラフトプロジェクト/越智氏インタビュー

【Serendipity @ engawa】と題し、engawaという場で出会う多彩な人々にお話を聞くインタビューシリーズ。第二回は「遠野ハンドクラフトプロジェクト」より越智和子さんにお話を伺いました。(現在は終了しております) イベント概要 →  https://engawakyoto.com/event/event_780/  (engawa KYOTOサイトに遷移します) *Serendipity @ engawaシリーズ第一弾  吉川染匠 / 吉川博也氏インタビューはこちらから 遠野ハンドクラフトプロジェクト 越智和子さんがいざなう手仕事の世界 残暑厳しい9月、engawa KYOTOギャラリーにおいて『布のある暮らし展』が開催されました。 今回はその主催者である「遠野ハンドクラフトプロジェクト」の越智和子さんにお話しを伺いました。 【京都・丹後】【沖縄・琉球】【岩手・遠野】の作家がここ京都に集い、昔ながらの手仕事を披露する展示会となりました。 この展示会のコーディネーターである越智さんは小柄ながらパワフルで、そしてどこか凛とした強さを秘めた魅力的な方です。お話を伺うにつれ、人を惹きつけるその力の源が見えてきました。 (左)インタビューに応えていただいた越智 和子さん (右)展示会イベント チラシ     越   智和子さんご紹介 産地に息づく伝統的織物を現代のスタイルに活   かすことをライフワークに「楽居布(らいふ)」を主宰。阪神淡路大震災、コロナ禍を経て「困難な時こそ、今を気持ちよくこれからをポジティブに生きようとする人々に寄り添うものづくりが必要」と展示会やワークショップをエネルギッシュにこなす。 布のチカラ・美しさに惹かれて始まった「布の旅」は運命の地、遠野に導かれ…そして旅はまだまだ続く。産地にこだわったウェアや小物は阪急百貨店うめだ本店にて「日本の手仕事サロン・楽居布」として展開中。 海外で運命的に出会った日本の布 日本の伝統と四季折々の自然を背景に生まれた手仕事の数々… 出会いは『丹後シルク』。 その出会いは越智さんがまだテキスタイルデザイナーだった頃、JETROからアドバイザーとして派遣されたイタリア・ミラノのテキスタイルデザインの展示会だったというから驚きです。 着物のイメージしかなかった丹後シルクの美しさに感動し、今までその素晴らしさを知らなかったことに唖然としたと言います。 ジャパンブランドとして世界で評価の高い日本の布、洋に軸を置いた丹後シルクの素晴らしさを日本に知らしめたいという思いで越智さんは動き出します。 それはテキスタイルデザインの世界で量産される顔が見えない商品に疑問を感じていた頃でもありました。 その後、日本の織物・工芸のルーツがある沖縄の作家たちに出会い、ますます作家支援とその活動の場を生み出すことの重要性を感じ、越智さんの活動が本格的にスタートしました。 作家紹介① 【京都・丹後】丹後シルク「染織工房嶋津」主宰:嶋津 澄子さん 世界的なシルク産地、京都丹後で染色家として活躍。京丹後の絹織物に発色のいい美しい染色を施す。 今回は遠野をイメージした色を染めたシルクを展示。 京都丹後の染(シルク) 染織工房嶋津(峰山町)     作家紹介②   【沖縄・琉球】琉球藍手織り 宮良千加さん 琉球大学卒業後、島袋常秀に陶芸を、成底トヨに織りを師事し、うるま市に「工房・花藍舎(からんしゃ)」をひらく。キツネノマゴ科の植物から抽出された泥藍で染める琉球藍の深いブルーが魅力。 琉球 藍染   琉球藍染を生み出す”工房・花藍舎(からんしゃ)”   遠野ハンドクラフトプロジェクトの立ち上げ 運命的な出会いは続きます。 京都大学の名誉教授   である池上惇先生が創設された文化政策・まちづくり大学校の文化交流会に参加することになった越智さんは開催地である遠野を初めて訪れることになります。 自然の中で地元の材料を生かしたものづくりをする姿に懐かしさを感じ、その自然と一体化した暮らしぶりに共感します。古くなった着物を裂いた紐状の糸で織った裂織りや山に自生する蔓で編んだ籠は野趣に富み生命力に溢れ、魅力が尽きません。 越智さんの言葉を借りると「それはもう、おとぎ話の世界のようで…そう、引き寄せられるように出会ってしまったのよ」と言うことになります。 行く先々で出会いが用意されているのは越智さんが必要とされているからだと思えてきます。 この尊い手仕事を未来に生かし、ともに学び、育ち合い、伝えたいという思いで「遠野ハンドクラフトプロジェクト」が立ち上がりました。 プロジェクトは池上先生のふるさと創生の活動とリンクした形で遠野がきっかけとなりましたが、そのネットワークは近江の麻・丹後のシルク・琉球の藍染へと日本各地に広がっています。 作家紹介③ 【岩手・遠野】遠野の美しい自然のなか、「花香房」のユニット名で活躍する佐藤秀夫・智江夫妻。   古くなった布を裂き紐状にして作る裂織り、また野山から山葡萄やくるみの木を自ら採ってきて作る籠など… 自然と共に   ある遠野の生活を伝えるために百貨店への出店やワークショップを開講している。 NHKの番組「猫のしっぽ カエルの手」にも出演。 遠野の手仕事    越智和子さんが目指すもの engawaギャラリーに所狭しと並んだ作品の数々からは 奥ゆかしさの中に作り手の秘めた情熱が感じられます。 そしてその技術は日本が誇る唯一無二の宝物です。 作家がものづくりに集中するためにもその価値を世に知らしめ、発表の場を作る人が必要。 そして現代の生活様式に合わせ、手にしやすい価格にすることも重要だと語る越智さん。 手仕事の魅力を伝えること、そして地方の作り手のまちづくり活動を応援しモチベーションを高めること、その思いこそが越智さんの力の源です。 「池上名誉教授の言われる『文化資本を文化経済に生かす』を実践しているのよ。」と にこやかに笑う越智さんはとても輝いてみえました。 越智さんは「ものづくりを通して自立し、歳を重ねても社会と関わり、世代を超えた交流を持ち、学びあい、 自分らしい人生を歩むために一歩を踏み出した」と言います。 人生100年時代…リモートワークやワーケーションが進む時代、 地方の方々との交流を通して日本の奥深さを体験する事は知らなかった世界への第一歩かもしれません。 自然が与えてくれるものを人が紡ぐ。 そして人から人へ…作品を通して作り手と使い手の思いが歴史を作っていくのであれば、 この京都の小さなギャラリーでその歴史の一片が作られたことはとても意義深く思います。 engawaギャラリーのスタッフも心を熱くし、力をもらった展示会となりました。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  電通篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら 第3回 積水ハウス様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第4回目は、電通の湊さん、工藤さんにお話を伺いました。   写真右)株式会社電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター 湊 康明さん 写真左)株式会社電通 中部BC局 ビジネスデザイン部 工藤 永人さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。   ― 参加学生が、京都、大阪、広島、韓国に留学中の学生まで。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?湊さん、いかがでしょうか? 湊さん :私は、今年で電通のメンターとして、2年目を務めさせていただいておりますが、昨年と比較して変わった事は、コロナ禍による大きな社会変化が起こっている事が普通になってきているという事ですね。デジタルツールを使いこなすことは勿論、私のチームには、現在の居住地が、京都、大阪の人もいれば、広島の人も、韓国に留学中の人もいますよね。電通のメンターも、そもそも大阪と、名古屋ですし(笑)。それが普通で、その前提で特にこのアカデミーに参加している皆さ   んは、個人個人でいろんな活動をしている。ほんとに、誇らしいなと思いました。 眞竹 :このプログラムの1回目はengawaKYOTO(京都にある電通運営の事業共創スペース)でのリアル開催でしたので、京都を中心とした関西の学生が対象でしたが、昨年オンライン化してから、四国や九州、今年は海外まで広がりましたね。オンライン化ならではのメリットです。では、工藤さんいかがでしょうか? 工藤さん : 私はヤングアカデミーに参加するのが初めてですけど、初日からすぐに思ったのは全員、基礎能力が高く、地頭がいい。学生との懇親会などで話していて、コミュニケーション能力が高いっていうのはもちろんですけど、自分の考えを言語化、構造化して話すというのがとても上手だなと思いました。実際に課題などの評価をする中でも、課題を読み取ってそれを考える力っていうのが高いですね。 眞竹 :ありがとうございます。では、次の質問です。御社は今、学生の皆さんに、どういう企業イメージを持たれていると思いますか? 湊さん :そうですね。やっぱり、広告代理店、CMとか作っている会社、あと、オリンピックやっている会社、というイメージが強いと思います。それ自体は間違ってないですし、弊社のメインのビジネスである事は確かですが、最近はクライアント様の課題がいわゆる広告・プロモーションだけで解決できなくなっている事も増えてきている中で、弊社の社会的役割も変わってきています。 眞竹   :では、御社がどのように変わってきているのか、実際の姿を知らない学生へ、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか?   ― 社会的役割は変わっても、最高の解を提供することは変わらない。 工藤さん :社会的役割が変わってきているというお話ですが、社会ニーズが多様化したり、そもそも従来の尺度では測れなかったりと、ニーズを発見/創造することの重要度がさらに高まっています。そして、そのニーズに応える最高の解を電通は提供する立場にあることは変わらないので、常に最高の解を提供できるように私たちも解のフォーマットにとらわれないようになってきています。従来の広告やプロモーションというフォーマット以外の取り組みとしては、さまざまな事例あるのですが、例えば、 1:DENTSU DESIGN FIRM  https://dentsu-design-firm.com/   つたえることから逆算したプロダクト開発をご一緒したり、 2:THE KYOTO  https://the.kyoto/article 京都をヒントに文化・アートを学ぶプラットフォームを立ち上げたり、 3:ABC Glamp&Outdoors  https://abcgo.co.jp/ テレビ局と一緒に、グランピングで地方創生に取り組む会社をつくったりしています。 眞竹   :では、従来の広告、プロモーション領域に止まらない社会的役割の変化の中で、御社が今後目指していこうとしているところを、教えてください。 工藤さん :目指していこうとしているところは以前から変わっていない気がします。それは、社会やクライアントの課題を発見し、アイデアをもって解決することでちょっと先の未来を引き寄せること。です。ただ、世の中の変化に伴って、サービスをつくったり、事業共創を電通自体ができるように、実現力をさらに強化した電通を目指していく必要はあります。 電通のビジョン&バリュー:an invitation to the never before. https://www.dentsu.co.jp/vision/philosophy.html 眞竹   :では、お二人が現在携わっているもので、従来の広告、プロモーション領域に止まらない事例があれば、教えていただけますか? 湊さん :私と工藤が所属している電通若者研究部(ワカモン)の活動で、それぞれ学生に携わってインターンシップを運営していますので、そちらを紹介します。私の方からは47INTERNSHIP(ヨンナナインターンシップ)のお話をさせて頂きます。 ※「47 INTERNSHIP」 https://47internship.com/   ― 世界のクリエイティブアワードで受賞した47INTERNSHIP。 湊さん :2年目になる2021年も開催しました。昨年、コロナの影響もあり、インターンなどいわゆる就活系のイベントも大きな影響を受けて、就活生が困っているという状況がありました。そこで、逆にコロナだからこそ、新しい就活やその支援の形を作ることができないか、ということをNPO法人のエンカレッジと相談していたところ、これを機会に地方の就活格差に取り組めないか、というアイデアが生まれました。そこから47都道府県から集めた就活生の代表者が参加するインターンシップを開催しました。その取り組みが、様々なところから非常に評価いただきまして、例えば、世界最高峰のクリエイティブアワードのD&ADのブランディング部門にて、2021年最高賞のYellow Pencilを受賞する、ということにもつながりました。 眞竹   :その流れでの2年目。開催にあたって昨年との違いは何か意識されましたか? 湊さん :昨年の経験から、地方の就活格差にこのフレームが有効にワークすることがわかったので、より社会的影響度を高めていこうと考えて企画しました。例えば、これは結構驚かれるのですが、今年は学生から、2000以上のエントリーシートをいただきました。それを受けて、参加される47名以外の方にも希望者を募って、今回の47 INTERNSHIPのエントリーシートの評価基準であったり、これからの時代に求められている人材像はどのようなものか、などをDAY-0という形で協賛企業の皆様にもゲストで参加いただき、全国数百名の学生の皆さんに向けて開催しました。また、エントリーシートにおいて、47都道府県の学生の皆さんに「あなたが解決したい、あなたの身近な課題を教えてください」という質問をしたのですが、それ自体を「47都道府県課題MAP」でビジュアルにして、各地方の皆さんがどういう形で解決していきたいと思っているのかをセットでリリースしました。   「47都道府県課題MAP」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000085233.html 眞   竹 :ちなみに、どのようなことが地方で学生が感じている課題か、何か傾向は見えたりしたのですか。 湊さん :すごくクリティカルだと思ったのが、コロナになってどんどんネット社会が加速していく中で、地方高齢者のデジタルデバイドを挙げている学生が多かったことですね。そもそもネット化していくのはわかるけど、それについていけない人も結構いて、それが高齢者だったりします。特に高齢者の方がネットの恩恵を受けるべきなのに、それができていないことは、地方社会の大きな構造的な問題だなと改めて感じました。 眞竹   :ありがとうございます。では続いて、工藤さんの取り組みについてお伺いしたいと思います。   ― 「アイデア実現」のための全ての工程を、学生が実体験する。 工藤さん :今年で3年目になる「アイデア実現インターンシップ」についてご紹介します。それまでも電通若者研究部(ワカモン)で電通のインターンシップをプロデュースしていたのですが、私が初めて参加した3年前に新たなフォーマットとして始まったものです。学生とメンターの関係を、先生としてのメンターではなくて、伴走者としてのメンターという立ち位置にしました。学生が主体となって、それこそ、電通の社員が普段やっているような業務の工程を、自分の「ほうっておけないこと」の解決という学生自身のやりたいことを通して実体験をしてもらうことを目的に、アップデートしました。 眞竹   :3年目の今年は、どのような状況ですか? 工藤さん :今まさにクラウドファンディングのCAMPFIREで、11月末まで学生たちが支援を募っている段階です。今年は14人参加してくれたので、14プロジェクトが立ち上がっていますが、もうすでに期間を終えずに目標支援金額を達成しているプロジェクトもあります。  ※「電通ワカモン  アイデア実現インターンシップ」 https://camp-fire.jp/curations/dentsu-wakamon 眞竹   :ちなみに、学生の皆さんがどんなプロジェクトを考えたのか、いくつか紹介していただけますでしょうか? 工藤さん :私がメンターをやっていたプロジェクトだと、「Scaping OKAZAKI岡崎プロジェクト」です。キックボードをシェアするサービスで、キックボードで岡崎市の乙川エリアを移動して、「遊び場」化して、その良さに出会って教える、というプロジェクトです。もうCAMPFIREでの目標を達成しているプロジェクトですが、企画した学生が考えたのは、地元岡崎の乙川エリアが車で移動するには道が狭くて移動しにくいし、歩くにしてはちょっと遠い、ということでキックボードに目をつけて、移動そのものも観光にしていく、ということでした。この学生を始め、自分からいろんな人たちや行政などに働きかけを行ってもらうインターンになっています。他にも、「音のない料理教室」。これはイベント系ですけど、参加者同士が声を出さずに意思疎通を図りながら一つの料理を作り上げる、「耳の聴こえる方・聴こえない方が参加できる料理教室」です。すでにこの学生は、インターンに参加する前に一度イベントを開催していて、それをさらにアップデートしたいという思いを持って参加してくれました。 眞竹 :   3年目になり、すでに取り組んでいることがある学生も集まってきているんですね。 工藤さん :参加したメンターの中で、3年目でやっと完成形になってきたかな、という話をしています。学生を集める過程であったり、実際にプロジェクトを考え、立ち上げてもらう期間でであったり、改善できていていると感じています。 眞竹 :お二人はインターンを通じて、学生と企業の接点に携わっていらっしゃいますが、もっとこのようになればいいのに、と感じるところはありますか? 湊さん : 学生の皆さんにとって、企業で働くことにおいて何が大事にされているか、ということを肌で感じる機会があることが重要と思っています。なので、産官学が連携して、実際に働く場としての企業を考える、そういう教育機会を作れれば、就職活動の先行ステップとしてすごくいい機会になるのではないかと思っています。 工藤さん :学生に好きなことを見つけなさい、といってもなかなか難しく、一歩踏み出せない学生がまだまだ多いと思います。大学で学ぶ専門的分野以外でも、興味関心を持てる分野への学びや体験を企業側が提供できるような仕組みがあると面白いのでは、と考えています。 湊さん :就職活動の評価軸が企業側で緩やかに崩れてきている中で、学生側もそれに気づけていないと思っています。例えばeyaで美大の学生が、課題の落とし込みであったり、事業アイデアを作ったりするのがうまいと感じるシーンがあります。作品を作る過程で本質を見極める能力が鍛えられているからだと思うんです。そういう能力は今後企業側にも評価されていくと思うので、そういったことを知れば、きっと学生側の選択肢も広がります。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹広嗣 眞竹 :学生と企業の接点については、今後も改善していくべきポイントがありそうですね。では、そういった中で、電通がeyaに参加される意義やメリットを教えてください。 湊さん :企業紹介の際、広告代理店から、ビジネスをプロデュースする企業へ変化している、という事を、弊社はeyaで学生向けのメッセージとして発信しました。 それは、広告・プロモーションで培ってきた「アイデア」という弊社の強みを活かし、広告・プロモーション領域に留まらずに、クライアント様のビジネスのサポートを行っていきたいという事です。ですが、やはり、このような取り組みはそこまで認知度もなく、事業創造やリーダーシップなどに興味のある学生の皆さんに、弊社の未来の姿を是非知ってもらう機会として活かせればと考えています。 眞竹 :eyaは、異業種による人材育成への取り組みになりますが、そのような取り組みに対してどのようなことを期待されますか?  湊さん :これはメンターとして、学生の皆さんにお伝えしたい事ですが、こういった異業種合同の人材育成の取り組みって、ほんと、大人の社会見学だと思うんですよね。シンプルに、なかなか見えない企業の最先端の事例や、取り組むビジョンに触れる事は、知的好奇心が刺激されますし、楽しい事だと思います。そういった視点でみると、働く事自体がコンテンツになって、それを学生に見てもらうことで、学生の皆さんが働く事にポジティブになってもらう。これが、これからの日本を変えていく一つのカギになるんじゃないか、と思っています。     ― 「今を意味づける力」を身につけてほしい。 眞竹 :では最後に、 eyaの学生たちと接して、感じたこと、期待することは?工藤さんから、お願いします。 工藤さん :最初にお話ししたように、学生の皆さんの考える力がすごく高いなって思っていますが、あくまで提供された課題や自分が見つけた課題に対しての考える力が備わっている、ということだと思います。社会に出た時、その考える力の矛先をもっと広げないと、例えば、スケジューリングだったりとか、タスク管理だったり、人とのコミュニケーションそのものにも電通でいうところのアイデアが必要になります。課題を発見するとか、課題そのものを解決する為に考えるのはもちろんですけど、その矛先をもっといろんなところに向けられるようになって欲しいので、その手助けを、ちょっとの期間でもできればいいなと思っています。 湊さん : 期待することは、ぜひ、小さくまとまらないでほしいという事です。ビジネスをつくる力は勿論重要なのですが、自戒も込めて、それがスモールビジネスの方向にいっちゃう人も、たまにいるんですよね。もちろん、それ自体が悪いコトではないですし、生きていく上で大事な事でもあります。でもそれよりは、ぜひ、日本のこれからを自分が背負うんだ!!という気概を持って、世の中に対して課題感をもって、なるべく大きな理想的な世界観を描くクセをつけてほしい。また、ぜひそんな自分が掲げた世界観が実現できる場所を妥協せずに探して、キャリア設計していってほしいなと感じます。そのためにも、「今を意味付ける力」を身につけてほしいです。メンタープレゼンで1日目に話したことですが、忙しくて目の前の活動を何の為にやっているのか、を見失う時もあると思います。そんな時、立ち止まって、自分のキャリアを考えてみる。そのための材料を提供できる場になればうれしいです。  

#インタビュー

【engawa young academy】 メンターインタビュー  積水ハウス篇

2021年10月より、engawa KYOTO REMOTEにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第2回目は、DAIKINの西川さん、伊藤さんにお話を伺いました。 第1回 ヤマト運輸様 メンターインタビューは こちら 第2回 DAIKIN様 メンターインタビューは こちら   2021年10月より、engawa KYOTOにて始まった多業種合同インターンプログラムengawa young academy 2021(以下、eya)。参加企業のメンターの皆様から、eyaに参加されての感想や参加された理由、また学生に知ってほしい企業の新たな一面などを伝えるために、各社インタビューを行います。第3回目は、積水ハウスの岡本さん、大野さんにお話を伺いました。   写真右)積水ハウス株式会社 開発事業部 岡本 勇治さん 写真左)積水ハウス株式会社 人事部 大野 隆正さん 所属は、取材:2021年11月当時のものです。 インタビュアー眞竹(以下、眞竹) :初日、2日目を終えての率直な感想を教えて頂けますか?岡本さん、いかがでしょう?  岡本さ   ん :今年の私のチームメンバーは、個性の強いメンバーが多かった昨年のチ―ムと異なり、メンターとして少しホッとしているところもあります。また違った個性のある各メンバーが主体的に動きつつ、まとまり感・一体感を持って、チームワークを意識して進めていると思います。 大野さん : 今年で3回目の参加ということもあり、穏やかに初日、2日目が過ぎたなぁという印象です。今年は特に良いメンバーが揃っていて、主体的に動いてくれるので、とても頼もしいですね。 眞竹 :今年の参加学生の皆さんも、起業や団体でのリーダーをやられている人が多いので、主体性は、きっとその現れですね。ではここから、御社のことについてお伺いしていきます。御社は今、学生からどういう企業イメージを持たれていると思いますか? 大野さん :おそらく、戸建住宅を国内で建築している会社というイメージを持っているのではないかと思います。 岡本さん :「あー、あのCMの会社ね」くらいの印象で、堅い、古い企業だと思われているのでは。実際、私が転職してくるまではそういうイメージで私自身も思っていましたので。戸建て事業以外の事業は恐らく知られていないと思います。   ―国内の戸建住宅だけじゃない、積水ハウス。 眞竹 :では、   御社の実際の姿を知らない学生へ、実はこんな企業です、こんなことしているんです、という、知られていないけれど伝えたいこと、紹介して頂けますか? 大野さん :実は戸建住宅は、売り上げのうち13.2%しかないのです。現在では、請負型・ストック型・開発型の3つのビジネスモデルを国内だけでなく、海外でも幅広く展開をしており、年々、住宅以外のセグメント比率が大きくなっています。  積水ハウスグループにおける2020年度の売上構成比 眞竹 :2019年度が16.2%でしたので、2020年度は13.2%と下がっていますね。   大野さん :そうですね。このような国内・海外を含めたビジネスモデルの変化の中で、当社は「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョン※に掲げ、国内にとどまらず、ハード・ソフト・サービスを融合し、幸せをお客様に提案するグローバル企業を目指しています。 ※積水ハウスのグローバルビジョン及び成長戦略について https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/individual/growth/   眞   竹 :グローバルなビジョンを掲げられる中で、御社が新たに取り組んでいる、また取り組もうとしている新しい事業を教えてください。   ―住む人の「幸せ」のために、住まいの事業モデルを変えていく。 大野さん :いくつかあるのですが、例えば住まいの事業モデルを大きく変える「プラットフォームハウス構想」※というものがあります。最も人生に寄り添う存在である「家」を人生の変化に呼応させるもので、「健康・つながり・学び」のサービスから住まい手の「幸せ」をアシストする未来型の理想の家を創造するというものです。プラットフォームハウス構想の第一弾として、外出先から住宅設備の遠隔操作を可能にする「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」の発売を既に開始しています。 ※「プラットフォームハウス」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/about/index.html 眞竹 :昨年お話を伺った時は構想段階でしたが、実際のサービスも始まったんですね。 大野さん :はい、「PLATFORM HOUSE touch (プラットフォームハウスタッチ)」は業界初の間取り図と連動した視覚的に直感操作できるスマートフォンアプリで、温湿度センサーや窓センサーなどのIoTデータをパブリッククラウド上で蓄積し、外出先からエアコンなどの機器を確認・操作することができます。また、ドアなどの不正解放や家族の玄関ドア開閉操作を外出先からでも確認することができます。プラットフォームハウス構想のソフト・サービスを先行して一部商品化したものと言えます。 ※「プラットフォームハウスタッチ」について https://www.sekisuihouse.co.jp/pfh/ 眞竹 :まだサービスの一部、ですからね。この先どこまでスマートフォンと住まいがつながっていくのか、楽しみです。昨年お伺いした、「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Net」※の取り組み状況はいかがでしょうか? 大野さん :こちらは、生活者参加型の実証実験が2020年12月より始まっています。「プラットフォームハウス構想」の「健康・つながり・学び」の中で、「健康」に取り組むものです。家の中で、実は約7万人の方が亡くなっているというデータがあります。脳卒中、心疾患、お風呂などでの事故、家の中での転倒や転落などによるものです。それらの社会コストは8兆円を超えると算出されているんです。そのうち最大1兆9000万円削減できると試算しています。「HED-Net」は、住宅内でバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症による異常を検知した場合に、遠隔で安否確認を行い、救急への出動要請、そして救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行う、世界初の仕組みになります。 ※在宅時急性疾患早期対応ネットワーク HED-Netの実証実験について https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/topics/2020/20201210.pdf 眞竹 :IoTによる住まいの進化がどんどん具体化して、住まいというハードに加え、ソフトをつくっていく企業へ変わっているんですね。住まいの概念がどこまで広がるのか、想像の範囲を超えていきそうです。   ―「地域×積水ハウス」の可能性。 眞竹 :では、今度は、住まい以外の取り組みについても聞いていきたいと思います。「Trip Base道の駅プロジェクト」※があるのですが、こちらには岡本さんが関わられているとお伺いしております。これはどのようなきっかけで生まれたプロジェクトなのでしょうか? 岡本さん :もともとは、とある企業と意見交換をしているときに出てきた、「道の駅の隣に道の駅で働く人の社宅があったら便利だよね」という着想がスタートです。そこで道の駅のことをいろいろ調べていくと、知っているようで知らなかったこといっぱいありました。例えば、道の駅が地域の情報発信拠点になっていたり、道の駅を中心に町おこししていこうとか、単なる休憩地点ではない役割を道の駅が持ち始めていた、ということを知ったんですね。加えて、道の駅で新鮮な肉とか魚、お酒とかを買ってその場で食べて、飲んで、寝られたらとても楽しいじゃないか、というところから、ホテルというアイデアを検討していきました。その中で、2018年当時、今後はインバウンドの増加も予想されるので、外資系ブランドのホテルとの協業を検討しようということで、それまで日本で一緒にホテル事業をしているマリオット・インターナショナル(以下、マリオット)に一緒にやらないか、と相談しました。マリオットとは以前から都市型ホテルはずっとやってきたんですけれど、地方部で外資系ホテルを展開する、という新たな側面からこのプロジェクトにもご賛同いただいて、やることになったんです。 ※「Trip Base道の駅プロジェクト」HP https://tripbasestyle.com/project/ 眞竹 :2020年10月より順次、ホテルをオープンされています。お客様や地域、またパートナー企業からの反応はいかがでしょうか? 岡本さん :地域の方々や道の駅の皆様からは、ホテルが開業したことで今まで以上にメディア等で地元の情報が発信されていることに大変喜んで頂いています。また、パートナー企業様については、個別に各地域で具体的な連携策をつくり始めており、実際にそれらを実行することで地域活性化に寄与出来ていると実感しています。 眞竹 :コロナ禍の中でのオープンでしたが、影響はいかがでしたか? 岡本さん :コロナ禍により、期待していたインバウンドがなくなったため、ホテル事業としては相当ダメージがありますが、当面のターゲットを国内旅行者に切り替えて「マイクロツーリズム」を推奨することで、そのダメージを緩和しようと頑張っています。また、近い将来必ずインバウンドは戻ってきますので、それまでは各地域でおもてなしの準備や魅力発掘の活動を精力的に行っています。例えば、本年10月に㈱クラダシ様と連携して、京都府京丹波町にて特産品である黒枝豆の収穫支援を行いました。これは人手不足で未収獲残となっていた黒枝豆を、学生を派遣して収穫支援することでフードロス削減を目指すという取り組みです。さらに、それだけでなく、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」でその黒枝豆を販売することで京丹波町の特産品のPRや販路拡大、地域活性化を推進しました。   「Trip Base道の駅プロジェクト」パートナー企業(2021年11月現在) 眞竹 :パートナー企業様との連携した地域のおもてなし、魅力発掘によって、今後、マイクロツーリズムとインバウンド、どちらも取り込める可能性が広がりそうですね。他にも、地域活性につながる取り組みなどありますでしょうか? 大野さん :建築デザインや地方創生事業のノウハウを生かし、国が進めるPark-PFI事業による国営公園として初となる「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点を福岡県東区にて開発し、来年オープンすることになりました。地方の国営施設を当社がブランディングすることで、訪れる人を増やし、人と人が交流することで公園全体及び周辺地域の活性化を図ります。 「パーク・ツーリズム」をテーマにした滞在型レクリエーション拠点が2022年3月に誕生。 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/library/2021/20210517.pdf 眞竹 :積水ハウスの高いデザイン力で磨かれた公園、是非訪れてみたいです。こういったプロジェクトが動いていく中で、積水ハウスが、地域創生に取り組む意義、というのはどのように感じていますでしょうか? 岡本さん :当社が掲げている“ESG経営のリーディングカンパニー”を目指すうえでも地域活性化の取り組みは有意義だと考えていますし、やりがいを感じています。また、当社の規模や知名度を活かし、さらにパートナー企業様と連携して、各社のリソースを組み合わせて行う地域創生活動は当然ながら地元の方々にお喜び頂いていますし、新しいビジネスチャンスも生まれてくるのではと期待しています。 大野さん :地方創生が叫ばれて久しい中、徐々に法整備が進んできているとは言え、未だ多くの人やモノ、サービスが都市部に集中している現状があります。地方では少子高齢化だけでなく、労働人口の流出が止まらず、慢性的な過疎化がいまも進行中です。創業以来、「住まい」や「まちづくり」にこだわってビジネスを展開してきたものとして、地方創生への思いは以前からありましたが、なかなかきっかけを掴むことが出来ずにいました。そんな中、当社が創業60年を過ぎたタイミングでコロナ禍となり、日本中が停滞している現状を少しでも打破したい、まずは地方から日本を元気にしよう、という思いから地域創生のプロジェクを始動させました。得意な「住まいづくり」や「まちづくり」のノウハウを生かし、社会課題の解決ができれば、我々にとってこれほど幸せなことはないと思っています。 眞   竹 :地域創生、社会課題解決に強い興味を持つ学生も多いですよね。では、ここから御社の求めている人材についてお話を伺えればと思います。 大野さん :海外事業の拡大やプラットフォームハウス構想の実現、その他の新規事業の立ち上げに伴い、様々な経験をしている人材を求めはじめています。デジタルヘルスケア分野を意識して医学部の学生にアプローチしたり、企業家精神があり積極的に行動できる学生、人とは違う斬新な価値観をもった学生も求めています。実際に今年は、国立大医学部卒の学生が新卒採用で内定しています。 眞竹 :積水ハウスが医学部、というのも意外なアプローチですね。そういった多様な人材を求める中でもここは外せない、という軸はありますでしょうか? 大野さん   :当社の企業理念の根本哲学「人間愛」の中に「相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする」という一文がありま   す。我々の仕事は、例えば住まい提案を通じて、お客様に「幸せ」を提供する仕事です。「幸せづくりのパートナー」として、企業理念に基づきお客様に対して、社会に対して新たな価値を創造するため、失敗を恐れず自ら考え行動することのできる人と一緒に働きたいと考えています。   オンライン取材の様子 左)インタビュアー: 電通 京都BAC engawa young academy 事務局 眞竹 広嗣 眞竹 :では、御社のインターンや採用に関する活動について、課題と感じているところを教えてください。 大野さん   :従来の採用活動に加え、複数のインターンシップを実施するなど色々試みていますが、まだまだ出会えていない学生の方が多くいると感じています。これからは様々な企業と協業していくことになりますので、新しいビジネスの種を作っていく人、いろいろなリソースを使いながらその芽を大きく育てていく人が必要になってきます。また、今すぐにはビジネスにならないけれども、新たな分野、新たな専門領域でじっくりと基礎研究をしてくれる人も必要です。これまで以上に、多様な人材を採用していくことが課題ですね。 眞竹 :そのような課題の中で、eyaに参加されている理由、意義など教えてください。 大野さん   :当社の業領域の拡大や環境変化を考えて、これまでの採用活動ではなかなか接点を持てなかった「新たなビジネスの芽を生み出すアントレプレナー志向をもった人」と出会えるのではないかと考えたからです。実際に、期待以上に良い学生が多数おられ、そういった学生と接点を持てることは大きなメリットと考えております。また、他社の人事部の方や先進的な取り組みをされている社員の方のお話を聞けることができ、とても良い刺激になっています。 眞竹 :メンターとして参加するご自身にとっての意義や期待、メリットなどはいかがでしょうか? 岡本さん :年齢を重ねると段々と感度が鈍くなってきたり、思考に偏りが出てきたりと悪い習慣が身に付いてきますので、感度の高い学生から良い刺激を得ることで普段の仕事に良い影響を与えたいと思いますので、積極的にコミュニケーションをとっていきたいと思っています。また、他社のエネルギッシュなメンターの方の良いところを、最低1つは盗めればと考えています。 大野さん :確固たる自信をもち、自ら新しい時代を切り拓くんだという気概があるような学生が、何を思考し、どの様な活動を行い、社会に出て何をしたいと考えているのかを純粋に知りたいと思っています。 眞竹 : では最後に、eyaの学生たちと接して感じたこと、そして期待することをお願いします。 大野さん :強く目的意識を持っている方が多いなと感じています。あとは、摩擦を恐れず自分の意見や価値観を互いに共有し、理解し合い多くの気づきを得てほしいと思います。 岡本さん :皆さんはポテンシャルが相当高いので、それを今回のeyaでどう発揮して、また他の人から何を学んで帰るのかを毎回意識して取り組んで頂き、最後には10月より成長したと自覚出来るようになって欲しいですね。