プランナー

井上紀子

Noriko Inoue

2020年より「事業共創拠点engawa KYOTO」の事務局スタッフ。 長い電通生活では企画開発・プロモーション・営業・マーケティング・業務管理…と 多くの部門を経験。中でも地方博覧会ブーム、桁違いのバブル時代は口には出せないような 良き思い出がいっぱい。 現在は京都が発信する新しい魅力にハマリ中です。

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【Serendipity@engawa 第二回】遠野ハンドクラフトプロジェクト/越智氏インタビュー

【Serendipity @ engawa】と題し、engawaという場で出会う多彩な人々にお話を聞くインタビューシリーズ。第二回は「遠野ハンドクラフトプロジェクト」より越智和子さんにお話を伺いました。(現在は終了しております) イベント概要 →  https://engawakyoto.com/event/event_780/  (engawa KYOTOサイトに遷移します) *Serendipity @ engawaシリーズ第一弾  吉川染匠 / 吉川博也氏インタビューはこちらから 遠野ハンドクラフトプロジェクト 越智和子さんがいざなう手仕事の世界 残暑厳しい9月、engawa KYOTOギャラリーにおいて『布のある暮らし展』が開催されました。 今回はその主催者である「遠野ハンドクラフトプロジェクト」の越智和子さんにお話しを伺いました。 【京都・丹後】【沖縄・琉球】【岩手・遠野】の作家がここ京都に集い、昔ながらの手仕事を披露する展示会となりました。 この展示会のコーディネーターである越智さんは小柄ながらパワフルで、そしてどこか凛とした強さを秘めた魅力的な方です。お話を伺うにつれ、人を惹きつけるその力の源が見えてきました。 (左)インタビューに応えていただいた越智 和子さん (右)展示会イベント チラシ     越   智和子さんご紹介 産地に息づく伝統的織物を現代のスタイルに活   かすことをライフワークに「楽居布(らいふ)」を主宰。阪神淡路大震災、コロナ禍を経て「困難な時こそ、今を気持ちよくこれからをポジティブに生きようとする人々に寄り添うものづくりが必要」と展示会やワークショップをエネルギッシュにこなす。 布のチカラ・美しさに惹かれて始まった「布の旅」は運命の地、遠野に導かれ…そして旅はまだまだ続く。産地にこだわったウェアや小物は阪急百貨店うめだ本店にて「日本の手仕事サロン・楽居布」として展開中。 海外で運命的に出会った日本の布 日本の伝統と四季折々の自然を背景に生まれた手仕事の数々… 出会いは『丹後シルク』。 その出会いは越智さんがまだテキスタイルデザイナーだった頃、JETROからアドバイザーとして派遣されたイタリア・ミラノのテキスタイルデザインの展示会だったというから驚きです。 着物のイメージしかなかった丹後シルクの美しさに感動し、今までその素晴らしさを知らなかったことに唖然としたと言います。 ジャパンブランドとして世界で評価の高い日本の布、洋に軸を置いた丹後シルクの素晴らしさを日本に知らしめたいという思いで越智さんは動き出します。 それはテキスタイルデザインの世界で量産される顔が見えない商品に疑問を感じていた頃でもありました。 その後、日本の織物・工芸のルーツがある沖縄の作家たちに出会い、ますます作家支援とその活動の場を生み出すことの重要性を感じ、越智さんの活動が本格的にスタートしました。 作家紹介① 【京都・丹後】丹後シルク「染織工房嶋津」主宰:嶋津 澄子さん 世界的なシルク産地、京都丹後で染色家として活躍。京丹後の絹織物に発色のいい美しい染色を施す。 今回は遠野をイメージした色を染めたシルクを展示。 京都丹後の染(シルク) 染織工房嶋津(峰山町)     作家紹介②   【沖縄・琉球】琉球藍手織り 宮良千加さん 琉球大学卒業後、島袋常秀に陶芸を、成底トヨに織りを師事し、うるま市に「工房・花藍舎(からんしゃ)」をひらく。キツネノマゴ科の植物から抽出された泥藍で染める琉球藍の深いブルーが魅力。 琉球 藍染   琉球藍染を生み出す”工房・花藍舎(からんしゃ)”   遠野ハンドクラフトプロジェクトの立ち上げ 運命的な出会いは続きます。 京都大学の名誉教授   である池上惇先生が創設された文化政策・まちづくり大学校の文化交流会に参加することになった越智さんは開催地である遠野を初めて訪れることになります。 自然の中で地元の材料を生かしたものづくりをする姿に懐かしさを感じ、その自然と一体化した暮らしぶりに共感します。古くなった着物を裂いた紐状の糸で織った裂織りや山に自生する蔓で編んだ籠は野趣に富み生命力に溢れ、魅力が尽きません。 越智さんの言葉を借りると「それはもう、おとぎ話の世界のようで…そう、引き寄せられるように出会ってしまったのよ」と言うことになります。 行く先々で出会いが用意されているのは越智さんが必要とされているからだと思えてきます。 この尊い手仕事を未来に生かし、ともに学び、育ち合い、伝えたいという思いで「遠野ハンドクラフトプロジェクト」が立ち上がりました。 プロジェクトは池上先生のふるさと創生の活動とリンクした形で遠野がきっかけとなりましたが、そのネットワークは近江の麻・丹後のシルク・琉球の藍染へと日本各地に広がっています。 作家紹介③ 【岩手・遠野】遠野の美しい自然のなか、「花香房」のユニット名で活躍する佐藤秀夫・智江夫妻。   古くなった布を裂き紐状にして作る裂織り、また野山から山葡萄やくるみの木を自ら採ってきて作る籠など… 自然と共に   ある遠野の生活を伝えるために百貨店への出店やワークショップを開講している。 NHKの番組「猫のしっぽ カエルの手」にも出演。 遠野の手仕事    越智和子さんが目指すもの engawaギャラリーに所狭しと並んだ作品の数々からは 奥ゆかしさの中に作り手の秘めた情熱が感じられます。 そしてその技術は日本が誇る唯一無二の宝物です。 作家がものづくりに集中するためにもその価値を世に知らしめ、発表の場を作る人が必要。 そして現代の生活様式に合わせ、手にしやすい価格にすることも重要だと語る越智さん。 手仕事の魅力を伝えること、そして地方の作り手のまちづくり活動を応援しモチベーションを高めること、その思いこそが越智さんの力の源です。 「池上名誉教授の言われる『文化資本を文化経済に生かす』を実践しているのよ。」と にこやかに笑う越智さんはとても輝いてみえました。 越智さんは「ものづくりを通して自立し、歳を重ねても社会と関わり、世代を超えた交流を持ち、学びあい、 自分らしい人生を歩むために一歩を踏み出した」と言います。 人生100年時代…リモートワークやワーケーションが進む時代、 地方の方々との交流を通して日本の奥深さを体験する事は知らなかった世界への第一歩かもしれません。 自然が与えてくれるものを人が紡ぐ。 そして人から人へ…作品を通して作り手と使い手の思いが歴史を作っていくのであれば、 この京都の小さなギャラリーでその歴史の一片が作られたことはとても意義深く思います。 engawaギャラリーのスタッフも心を熱くし、力をもらった展示会となりました。