プロデューサー

片山 俊大

Toshihiro Katayama

一般社団法人Space Port Japan共同創業者&理事。 2002年電通入社。総合飲料メーカーのプロモーション担当の後、メディアマーケ、CDCに所属。 その後、化粧品メーカー、総合電機メーカー、日本政府の担当営業を歴任。 得意分野は「宇宙産業」「M&A」「インフラ輸出」「エネルギー産業」「課題解決型コンテンツ開発」。 常に、道がないところを歩くようにしている。

ARTICLE

ウェディング業界のポストコロナの新戦略「ウェディング2.0」

写真右から 司会)村田 大氏 (株式会社カラーズ2代表取締役) 鰺岡 恭徳氏 (株式会社アルプラス取締役) 片山 俊大 (株式会社電通)   編集長コメント: 今回は京都BACでM&Aコンサルとしても活躍している片山さんに、ウエディング業界の現状とM&Aの関係性について対談にてお話しいただきます。      ウェディング業界の現状  村田さん (以下敬称略) それでは、まず共通認識として、ウェディング業界の現状について鰺岡さんにお話ししていただきたいと思います。コロナ禍で日本全体が閉塞感に陥る中、ウェディング業界はもっとも厳しいのではないでしょうか。 鰺岡さん (以下敬称略) コロナによる未曽有の事態がウェディング「業界を襲っています。緊急事態宣言以降、営業自   粛はもちろん、結婚式の延期やキャンセルが本当に相次いでおり、結婚式場の資金力が非常に厳しい状態になっています。その結果   、倒産・廃業に追い込まれているところが増え、まさに非常事態が起きています。さらに、後継者問題も顕在化してきています。ハウスウェディングの登場が2000年頃で、そこから、20年経っており、創業者が引退時期に入っています。このような状況のもと、売上げアップや、M&Aの相談が、非常に多くなっています。 村田  ウェディング業界が大きく変わっていかないと生き残りが非常に難しいというような話を、私もしばしばお聞きするのですが、今後の生き残りというのはどのようにお考えでしょうか。 鯵   岡       これは非常に難しいで   す。弊社で、ウェディング業界の生き残りに向けて提案している主な施策は、2つあります。 まず、フューチャーライフサポート(※後述)という弊社独自の施策、2つ目に、事業転換を目的とした事業再構築補助金を活用した施策です。新しいものを創出するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)も鑑みながら、様々な切り口からご提案をさせていただいています。 村田  それでは片山さん、今の鰺岡さんのお話を聞いて、世の中全体の企業と比較して何かお話があればと思いますが、いかがでしょう。 片山  まさにコロナで社会は一変したと思います。そして景気が良いところと悪いところの差が激しくなっており、2極分化している傾向があると思っています。特に、スピード感を持って、デジタル化に対応したり業態を大きく変化させた企業というのは強いと思います。先のリーマンショックの時も、柔軟に変革を行い投資を実行した会社は、その後ものすごく伸びています。現在コロナ禍で、音楽とかエンタメ業界は厳しい業界の一つとなっておりますが、このタイミングでオンライン配信   やテジタル化を推進した企業は、むしろステイホームで強くなっていく。ウェディング業界もそうですね、そういった今までの常識にとらわれずに柔軟に変化してい   くということが、ますます重要になってきているのではないかと思います。    ウェディング2.0を考えるヒント    村   田  変化に対してスピード感を持って対応していくことが、生き残りのための重要な要素だという事ですね。ただ、スピード感を持って対応したくても、人材がいないとか、資金が足りないとか、いろんな問題があり、やりたくてもできないとの話も聞きます。実際のところ、自社だけで解決されて困難を乗り切れる企業は少ないのではないでしょうか。 鯵岡  やは   り自社だけで対応し、困難な状況を打破するためには、難しいことが多々あります。今は協業して一緒に新しい方向に進む時代に突入しているのではないでしょうか。弊社が提案しております、フューチャーライフサポートは、その地域のメーカーと協業して、一緒に盛り上げていく施策です。生き残りにかけてはそのようなことが必要だと思います。 例えば、意中の大手ハウスメーカー、ディーラー、家電量販店、保険会社、宝石店など約50社くらいと協業している事例があります。結婚式場は、結婚式をあげられたお客様の、様々な生活シーンでのトータルサポートとして活躍できる機会があると考えております。そのため、お客様が、車や家のご購入を検討されている場合に、結婚式場から、営業的なアプローチができます。地域の様々な企業と一緒になって売り上げをアップするということが、今、まさに可能になっています。先月   、ある結婚式場では、30組のお客様が来られて、15組が家をご購入希望されました。大手ハウスメーカーさんにとっても、非常に有益であり、協業してやっていく必然性を感じておられます。お客様の未来の生活も一緒になってご提案することが、これからの結婚式場に求められているのではないかと思っております。 昔から、このような結婚式場と地域の企業との協力体制はポツポツとあったのですが、今は、コロナ禍で、企業も積極的に新しいビジネスチャンスを模索されているので、加速度的に増加しています。 村田 なるほど。結婚式場が企業に、結婚式場という場を使って企業に商談のチャンスを提供していくという動きですね。片山さんは、どういう印象を持ちでしょうか。 片山  非常に面白いですし、そういう事はどんどん進めていくべきなのかなと思います。異業種コラボレーションには、いくつかの方向性があると思っています。今のフューチャーライフサポートのように、結婚後のライフステージに応じた様々な業界と連携するということには大きな可能性があると思います。また、結婚のあり方自体が変わってゆく可能性があるかと思います。結婚式は、もともと多様化が進んできていますが、このコロナ禍でますます変革していくと思います。全部とは言いませんが、部分的には劇的的に変化していくと思います。結婚式は概ね土日及び休日に行われるため、平日の式場は遊休資産になっています。そういった平日遊休資産を、シェアオフィスやカフェなどさまざまなコラボの可能性があると思います。 村田  それでは、事業再構築補助金の活用というお話があったのですがこれはどういうことでしょうか。 鰺岡  事業再構   築補助金は、ポストコロナ、ウィズコロナ時代の経済変化に対応するために、思い切った事業再構築を支援することで、業界の構造転換を促すことを目的としています。この事業再構築補助金を活用して、古い施設や設備から脱却して、ネット環境などを整えて、オンラインウェディングを実施できる施設を構築したり、ECサイトをM&Aして、ブライダルとは全く違う商品を販売している会社もあります。立ち上げて、約1年で約5億の売上を達成し、業界チェンジに成功されたところもあります。 既存の仕事との両立ですが、おかげさまでスタッフ全員のベースアップになり更にモチベーションもアップされましたとのことです。    村田   「ブライダルとは全く違う商品」とはどのようなものでしょうか。   鯵岡  キャンプ用品、マウスピース、家電製品などです。   その他、あるYoutubeチャンネルを買収して、月収約300万円を達成されているところや、事業再構築として、エステサロンなど新規事業分野に参入する例もあります。業界の構造転換を目的として様々な事業展開が行われています。      「ウェ   ディング×〇〇」のケーススタディ    村田  それでは次に、異業種コラボレーションのお話をお伺いできればと思います。具体的なものというのはどんなものがあるのか、鰺岡さんがご存知なケースでご紹介していただければと思います。 鯵岡  「ウェディング×〇〇」という様々な発展的な形があります。「ウェディング×コロナワクチン接種会場」として、数カ月間、結婚式場からワクチン接種会場に業態転換したり、「ウェディング×ワーケーション」として、結婚式場を施設に持つホテルがワーケーション専用のホテルを建設していることもあります。 さらに、「ウェディング×アミューズメント」として、日本初宿泊型お化け屋敷「禁じられた結婚式」をコンセプトに、今までと全く違う形のウェディングの展開もあります。このように、 結婚式場が変化をしなければいけない状況化で、様々な異業種コラボレーションが実施され、新しい収益を得ています。 村田  「ウェディング×コロナワクチン接種会場」については、結婚式場から発案で、行政に自ら打診をしたのでしょうか。 鯵岡  その通りです。コロナワクチンの大規模接種会場が全国で不足しているという現状に着目し、弊社がいち早く結婚式場のオーナーさんに呼びかけて、行政に打診をしました。会場の利用期間は約3か月間必要ということでした。結婚式場では、コロナワクチン接種会場に必要とされる、スタッフも既にいますし、十分な広さの会場や、空調施設も全て整っております。さらに、病院関係、医療従事者の食事の面でも、すべて提供することが可能でした。今では、市町村から結婚式場にコロナワクチンの大規模接種会場に利用させて欲しいという依頼が非常に増えてきております。売上としても、通常の結婚式や宴会と同等レベルで実施されております。その他にもメリットがあります。コロナワクチンの大規模接種を3ヶ月間も実施しますと、会場には何万人もの方が足を運ぶことになります。今までにない人流が起きます。足を運ばれた方に、結婚式場を活用した忘年会や新年会などの提案ができます。これこそ、まさに新たな結婚式場の活用方法です。短期的な売上確保と中長期的な営業を実施できるので、全国で「ウェディング×コロナワクチン接種会場」の動きが、まさに加速しています。 片山  今お話しされた3つの事例、「ウェディング×コロナワクチン接種会場」、「ウェディング×ワーケーション」、「ウェディ   ング×アミューズメント」は、結婚式場の強みを上手に活用されているなと思いました。 まず、ワクチンの接種会場は広くて空調が効いている必要があるため、ウェディング施設は最適ですね。最近は特に、平日のみならず土日まで遊休資産になっているため、その状況を逆手に取ってうまく業態転換したのだと思います。きっと同じことを検討した会社さんもいたと思いますが、意思決定のスピードが早かったところに決まったのだと思います。ですから、経営の変革スピードや決断力の重要さを物語っているなと感じました。 次に、ワーケーション。これも同じく遊休資産の活用ですね。今はどこでもリモートでどこでも働ける時代で、オフィスに通わなくてもいい、となったら素敵な場所で働こうと考える人もいる。ウェディングはそもそも素敵な場所ですから、そういった場所を、オフィスとして使うというのは時代的に面白いと思います。 最後に、お化け屋敷やアートイベントとか、一見、ぶっ飛んでるように見えます。しかし、ウェディングは人生最大の驚きを皆さまに提供する場所で、つまりは、祝祭性の演出のプロ。そういった、ウェディングの強みを、全く違うアミューズメントとして活用するというのは、非常に有効だと思いました。 村田  経営的な意思決定のスピード感に加えて、施設の本質を見抜き、しっかりとした戦略をもって行動することで、うまくいっているということですね。今後も、様々な「ウェディング×〇〇」が生まれてくると思うのですが、いかがでしょうか。          片山  そうですね、ある意味私はウェディング業界の外の人間として、よそ者の視点でちょっと自由気ままにアイデアを出してみたいと思います。今のいくつかの事例をお聞きして、非常にいろんな活用法がまだまだあるんじゃないかなというふうに思いました。「ウェディング×ワーケーション」の事例がありましたが、基本的にはウェディングの平日の遊休資産がめちゃくちゃもったいないと思うんです。ウェディングの会場って基本的に素敵な場所じゃないですか、すべて。そこを平日寝かしている、コロナで場合によって土日も寝かしていたら、これほどもったいない事はないですね。 私は、「ウェディング×シェアオフィス」っていうのがあるんじゃないかなと思います。最近は、銭湯や駅のホーム、チケット売り場、カラオケボックス、本屋の一部などを、シェアオフィスに業態転換する例がどんどん増えてきています。そいった中、結婚式場は、映えスポット、つまりフォトジェニックなシェアオフィスとして活用できると思います。最近は、リモート会議や、映像SNS活用など、ビジネスにもフォトジェニック性が求められてきていますので。もしかしたら写真や映像のサービスと連携できるかもしれません。 また、ファッション業界とのコラボの可能性もあるかもしれません。最近、服のオンライン購入が増えるほどに、リアル店舗の価値が問い直されています。そのような中、ファッション業界は、空間全体も含めた体験価値を提供する場を求めています。ファッション業界と、ウェディングの空間やサービスを融合させると、新しい価値が生み出されるような気がします。 また、最近、カフェでお仕事や勉強する人が増えており、ウェディング会場は平日カフェスペース兼シェアオフィスとして活用できるかもしれません。最近のカフェは、SNSとの親和性が高いので、映像フォトスタジオやアパレルなどとコラボすることで、フォトジェニックな遊び場・仕事場を求める女性を集めることができるかもしれません。 鯵岡  目から鱗が落ちるようなアイデアで非常に面白いですね。結婚式場には、どうしてもガチっとした、やらなきゃいけないみたいな、先入観がありますが、やはり「カジュアル」という概念も、これからは取り入れていくべきかと思います。。また、結婚式場は、地方で1店舗2店舗などチェーン展開しているところが基本的には多いです。そうなると、情報もないですし、そこから様々な異業種コラボレーションを考えるのが難しい状況ではあります。片山さんのご提案は非常に貴重な提案だと思います。 片山  ぜひこういったお話をお聞きいただいた事業者の皆様で、こういうことをやってみたいっていうみたいなことを考えた方がいたら、ぜひご相談いただけると面白いかもしれませんね。 村田  片山さんから、少しファッションの話がありましたが、将来は、ラグジュアリーブランドとコラボした結婚式場ができるのではないかと想像しますが、いかがでしょうか。ワクワクしますね。 片山  私は現在、ファッション業界関係者と、この状況下でどう変革していくべきかの戦略に携わっていますが、実際、カフェとのコラボなど、多面的な事業展開を求めているブランドがありますので、「ウェディング×ファッション」を具体的に進めていくことは可能だと思います。 村田  では次ですが、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてお伺いしたいと思います。一例えば、結婚式場にオンラインウェディングのご提案をしますと、オーナーさんからは、「あまり儲からない」というお話をよく聞きます。理由は結婚式場のビジネス形態にあります。結婚式場の売り上げは、料理代金やや、引き出物代金場合によっては衣装代など結婚式場にお客様が足を運ぶことによって収益化される部分が多い仕組みとなっております。その意味で、結婚式場に足を運ばない=オンライン化になることは、ネックになるということです。何かDXをうまく活用する方法はないでしょうか。 片山  オンラインなのか、リアル会場なのかというのは、様々なイベントで同じような問題がたくさんあると思います。しかし例えば、国際会議はオンライン化が進んでおり、それによって参加する人が増えています。ただ、もともとそういうイベントは食事がないので、さすがに結婚式場とは一緒にはできないと思ういます。最近は再び、対面の良さ、直接集まって同じ空間を共有することが見直されてきており、その最たるものが、やはりウェディングだと思います。祝祭性には、必ず同じ空間を共有する必要があると思うんです。 なので、今後はリアルとオンラインのハイブリッドが拡がるのではないでしょうか。リアル空間を共有しながら、オンラインでも参加していただく。一つのところに集まるリアルの価値が上がった分だけ、そこをブランドと価格帯も上げていく。そういうグラデーションをつけていくっていうのはあるのかなと思います。また、音楽とか余興をライブがオンライン配信するなども考えられると思います。このように、リアルとオンラインを掛け合わせた、ハイブリットなウェディングが今後求められると思います。 鰺岡  最近、フォトウェディングが人気でして、そういったものが、DXと親和性があるように思うのですが、いかがでしょうか。 片山  まさにウェディングとフォトや映像っていうのは、言うまでもなく重要ですよね。そこにライティングとか撮り方だとかノウハウがいっぱいあると思います。ただ、やはり時代の変化にもっと合わせていく必要があるかなと思いますね。世の中ではInstagram、YouTube、Tiktokなどに写真や動画をシェアして活用していくことが爆発的に拡大していますよね。従来の結婚式もそういった流れに柔軟に対応すべきだと思いますが、おそらく自社だけで対応することは難しく、コラボなどによって解決することが有効かもしれません。 また、DXに限りませんが、例えば、「ウェディング×グランピング」みたいな発想もあるんじゃないかなと思いますね。コロナ禍で密を避けたレジャーを楽しむために、キャンプがまた流行ってますね。ストレスフルの社会の中に疲れ、自然に癒しを求めるところがあるんだと思います。さらに、   気軽に快適におしゃれに自然を感じるニーズに応え、グランピングが流行っていますね。そしてこれからは、自然の中でウェディングというニーズが世の中にあるような気がしていますが、いかがでしょうか 。 鯵岡  まさに片山さんの言われたことが現実に起こっています。全国のホテルの稼働率が軒並み下がったところで、そのグランピング事業に着手して、既存の古いホテルの稼働率が7割以上、365日稼働率が9割以上にアップするというところがあります。結婚式場をお持ちの、古いホテルや旅館には、空地や駐車場があります。そこにトレーラーハウスやテントなどを設置して、多くのお客様がグランピングを楽しんで頂けるような、ホテルのアクティビティー化が非常に増えてきております。1泊の料金体系は、1万5000円~40,000円に設定されていて、本当に人気です。 私は、鹿児島の吹上浜で実施されているホテルとは面識があるのですが、実はこの「ウェディング×グランピング」っていうのは、地方の広い場所でしか行われていないわけではありません。逆に、街中でグランピングができるっていう形を模索しているホテル、結婚式場が、今非常に多くなってきています。 村田  「ウェディング×グランピング」で成功しているケースがあるという事ですが、ただ実際にホテルや結婚式場にグランピングのノウハウがあるかというとなかなかないのではないかなと思います。実際にそのための資金を調達してという話は別にしても、なかなかそこまで思い切ってやれるかっていうと難しいですよね。そういった中で何か上手に組み立てる方法論というのは片山さん、何かアイデアではないでしょうか。 片山  そうですね、おそらくトラディショナルなウェディングをやってこられた方が、急にグランピングのウェディング事業をやろうと思っても、簡単ではないような気がします。グランピングのハード面をそろえたとしても、おそらくそのノウハウが無い。なので、グランピングの会社とウェディングの会社がコラボして、「ウェディング×グランピング」のサービスを提供すると良いと思います。結婚式場の庭でグランピングやってみるとか、隣の駐車場でさえも砂浜を作ってグランピング会場にしてみるとか、施設に合わせてカスタマイズして作っていく。駐車場や公園などの遊休資産みたいなところにそういう事業を作ってしまって、後からコラボや事業売却を行う、というようなやり方もあるかもしれません。 鯵岡  非常に面白いアイデアですね。ある新規事業を、その地域で、誰が先行して進めるか、ブランド化できるかが重要ですね先程の「ウェディング×コロナワクチン接種会場」も同じですが、誰かが先行して実施しないとダメで、先行したものが勝ちだと思います。 それだけでなく、逆に、今は異業種が、結婚式場ビジネスに参入してくるケースもあります。実は、「グランピングウェディング」というものがあります。もともと結婚式場があったのでグランピングでやろう、という発想ではなくグランピングがあったからその中に結婚式を入れようという発想です。グランピング会場で結婚式をあげたいというお客様のニーズがあったので、戦略的にパッケージ化してやるっているようです。素晴らしいアイデアだと思います。      「ウェディング×○○」の作り方  村田  では次にですね、実際に自分の会社で「ウェディング×〇〇」に取り組んでいくことをお考えのオーナーさんにとって、直面する様々な問題について考えてみたいと思います。資金、人材確保の問題もありますし、それ以外にも様々な問題があると思います。 その解決方法の1つとして、M&Aがありますが、ある意味、M&Aは、異業種コラボレーションの究極の形ではないかと思います。 ウェディング業界のM&Aの現状について、鰺岡さんからお話しいただけますか。 鯵岡  はい。事例として、写真館と高級旅館のM&Aがあります。今はフォトウェディングが非常に需要があり、売り上げが伸びています。です。そうすると旅館も、結婚式場の売上げがダウンしている中で、異業種コラボレーションの手法として、フォトウェディングで重要なポイントである、「写真」の知識を多く持ち、かつ人気も、資金力もある写真館に白羽の矢を立てます。その場合、旅館そのものや、結婚式場の事業だけを譲渡することで、M&Aを成立させるいうケースが増えています。 その他にも、IT企業、病院、その他銀座にあるレストランまで、資金のある企業に大きな素晴らしい結婚式場を譲渡し、M&Aを成立させるというケースが、各地で多く起こっています。M&Aによって、異業種コラボレーションを成立させることは、今時代の流れに乗っています。 村田  なるほど。異業種コラボレ   ーションとして、M&Aを実施するというのは、ちょっと大型といいますか取り組みのツッコミ度が深いというか、そういうことについて片山さんはどう思われますか。 片山  これまでウェディング業界はもっとスピードを持って変革・コラボレーションを推進すべきだというお話をしましたが、これは、ウェディング業界に限った話ではないと思います。世の中の変化のスピードはものすごいスピードで変化をしており、コロナによってさらに加速しました。この変化を自社の自助努力で変革する事は、もはや不可能に近くなってきていると言えます。多少の変革は出来ると思いますが、大きな変革は自社だけでは極めて難しい。では、大きな変革を実現している会社をみてみると、実はその多くがM&Aや資本業務提携による変革なんですね。実際M&Aの件数は、年々増えおり、コロナ禍によってさらに増えています。皆さん、新聞に載るような大型のM&Aを想像されるかもしれませんが、小さい老舗企業、未上場の会社のM&Aが非常に増えています。 一般にM&Aは、敵対的買収いわゆるハゲタカみたいなイメージが強いと思います。しかし、実際は、敵対的買収というのは全体の1%にも満たない。そもそも上場企業じゃないと敵対的買収はありえないですし。つまり何が言いたいかというと、世の中の99%以上は友好的で、お互いがハッピーになるM&Aなのです。 ビジネストランスフォーメーション、デジタルトランスフォーメーションなど、大きな事業変革を行う場合は、M&Aはもはや必須になりつつあると思います。そこで、電通グループは、M&A仲介を活用したソリューション提供をしており、既に実績もあります。2019年、電通は、日本M&Aセンターという業界最大規模の会社と業務協定を締結し、一緒にM&A仲介を進めているのです。こういったこともあり、M&Aを活用した「ウェディング2.0」を目指すことで、よりスピード感を持った業態転換のお手伝いができると考えております。 今では、企業のみならず個人レベルのM&Aすら増えており、看護師が脱サラして、ブライダルの貸衣装屋さんを買収するケースもあるくらいです。なので、先ほどからアイデアに出ているように、ウェディングと、シェアオフィス・映像制作・カフェ・グランピングなどとの連携を実現するためにM&Aを活用するというのは、全くもって現実的なオプションと言えるかと思います。 村田  ただ、M&Aを考えると資金的なこと、というのが心配されるオーナーさんとかも多いと思うんですね。譲渡する側であれば資金は必要ないということだと思いますが、その理解で良いでしょうか。 片山  はい。譲渡する側であれば資金は必要ありません。買収されるというと抵抗があるかもしれませんが、要は資金を投入してもらうということになります。M&Aは、買収されるより買収する側にまわりたいと考える経営者は多いと思いますが、実は、会社を売るというのは非常に高度な経営戦略とされています。特に欧米では、IPOと並ぶ経営戦略として。 一般的には、資金はあるけどノウハウや人材やサプライチェーンがない、それをゼロからやるのも大変だ、そういう企業は、その資金を用いていわゆる買収、譲り受けをします。その一方でノウハウ、人材、店舗はあるが資金は無いというところは、出資してもらいたいですね。社債を発行する、銀行から借りる、上場して株式市場から資本を調達する、そういったオプションの1つとして、大企業から資金を調達する、つまり事業売却・事業譲渡というものがあります。そういった視点で見ると、実は売却も買収も大きな差は無いのかもしれません。 村田  自分たちが新しく何かをやりたいなと思った時に、では資金が足りないと。そうしたら自分の事業の中の、例えばレストラン部門を譲渡して、その資金で代わりにグランピング部門を新しく作ろうとか、そういったことが考えられますね。 片山  まさにおっしゃる通りで、大きく2つあると思います。会社のすべての株式を譲渡して、大手の傘下に入るというのが1つ。もう一方はいくつか事業の一部を切り離して事業売却し、その売却益で新しい事業に投資していくというもの。 村田  なるほど。M&Aをうまく使えという事ですね。 片山  そうですね。どうしてもやはり買収される、事業譲渡する、M&Aされるというとなんか怖いとか、敵対的買収のイメージが強いので抵抗感を持つ方が多いんですが、嫌なら断ればいいだけの話です。上場したらおめでとう、買収されるとかわいそうにみたいな感覚は、完全に間違っていると思います。例えば、欧米の古い例で言いますと、InstagramがFacebookに買収され、YouTubeがGoogleに買収されました。これは、上場よりもM&Aで譲渡することを求める会社は多いためです。もちろんこれらは、全く後ろめたいことでは無いですし、買収に伴い、大企業のサプライチェーン、営業力、人材教育、そしてリクルート、人材確保能力等々を活用できます。それにより、ビジネスを大きく変革していくことができるのです。 事業を成長するためにそのエリアでさまざまな事業買収し、さらに成長するために、事業譲渡して大企業の傘下に入るケースも結構あります。M&A後のリストラを恐れる人もいますが、どちらかというと、買う側としては従業員は1人も辞めないでほしいと考えており、そういった条件をつけることがあるくらいです。経営者のオーナーシップはなくなりますが、経営者としては残るケースもあ   りますし、個人保証が外れて売却益が入ります。退社して悠々自適っていうのもありますし、その資金を元手に新しい事業をやるっていうこともありますし、会社に残って徐々に引き継ぐなど、さまざまなパターンがあるといえます。 鯵岡  実は、ウェディング業界の大きな課題として、経営の後継者問題があります。M&Aによって、その課題を解決することもできます。当然、社員、幹部の雇用を保証することもきます。M&Aで解決できることは、どんどん解決したほうがいいと思います。 村田  ありがとうございます。片山さんいかがですか。 片山  ウェディング業界の皆様だけではなく、現在、すべての業界が、急速で大きな変革に迫られています。この困難を乗り越えていくために、自社だけのリソースに固執せず、異業種・異分野の人たちとコラボレーションによって大きな変革が成し遂げられると思います。また、M&Aを活用することで、その変革のスピードを更に加速し、資金面の解決も図ることができるのです。この荒波に速やかに柔軟に対応していく、それがさらなる発展のできる会社さんと、そうでない会社さんの分かれ道がまさにここにあると思います。我々このチームは、こういった「ウェディング2.0」というプロジェクトで、この業界の変革に少しでも役立てられればなと考えております。ぜひ我々までご相談いただければなと思います。ありがとうございます。 村田   本日はいろいろなお話ありがとうございました。ぜひ皆さんからの相談が来るといいですね。 お問い合わせは、株式会社アルプラスまで URL  https://allplus.tokyo/contact/ 電話 03-4360-8657  

【新連載!】スタートアップに聞いてみた(株)Stroly 高橋真知Co-CEO

今回から始まりました。新連載、スタートアップに聞いてみた。実は京都BACはスタートアップ企業との取り組みも多く、面白い視点でのサービス・プロダクト展開をされている企業の紹介やいまだから聞きたいことなど、いろいろお話してみる連載にしていきます。 第一回目は在京都の地図のイノベーションを起こす(株)StrolyからCo-CEOの高橋真知さんのインタビューです。 インタビュアーは京都BACの片山俊大さんでお送りします。   コロナ禍で、インタビューはオンラインにて行いました。笑顔が素敵な高橋Co-CEO。   京都BAC片山(以下、片山):Stroly(ストローリー)は、どのようなサービスを提供しているのでしょうか?    Stroly高橋さん(以下、高橋さん):世界中には、数えきれないほどの“地図”が存在しますよね。京都の地図、パリの地図、カフェマップ、手書きマップ、江戸の古地図、イベントマップ、遊園地マップなどなど、挙げ始めたらキリがない。しかし、それらの地図の多くは、いまだにデジタル化の恩恵を受けておらず、もっともっと地図が持つ魅力を活用・拡大することができると思います。 そこでStrolyでは、どんな地図でも誰でも簡単にオンライン上に登録することができ、デジタル化&GPS連動を通じてさまざまなインタラクティブな体験を提供するというプラットフォームを提供しています。これにより、いろんな個性・切り口をもつ地図たちに、デジタル化によるさまざまなメリットをもたらすことができるようになりました。   Strolyウェブサイトより   片山:Strolyは、どのような成り立ちですか?   高橋さん:Strolyとは、Stroll(散歩する)+Story(物語)を掛け合わせた造語です。元々はATRという研究所の社内ベンチャーとして立ち上げ、2016年6月に会社として独立、2度の資金調達を経て、現在創業4年目に入りました。2017年には、日本人唯一のSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト、以下SXSW)のファイナリストに選ばれ、SXSWの公式マップも手掛けております。社員も約半分は女性で1割以上が外国人、Google出身者など、初期の段階からグローバル&ダイバーシティを意識した体制となっております。   編集長註: SXSWとは? 毎年3月にアメリカのテキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベントです。ここでファイナリストに選ばれることはとってもすごいことなんです!   片山:素敵な会社ですね。Strolyのサービス内容をもう少し詳しく教えてください。   高橋さん:Strolyのコンセプトは、“Share the way we see the world”(世界の見え方をシェアしよう)です。本来、同じ街や場所でも、100人いれば100通りの見え方がある。だからこそ、さまざまな視点で描かれた個性的な地図をもっと活用することで、社会をもっと楽しく豊かにすることができる。そのために、世界中に散らばっている地図をデジタル化してシェアする仕組みを提供しています。   Strolyのウェブサイトより。数多くの国から多数のクリエーターが地図を登録している。   地図をストローリーのプラットフォームに登録すると、簡単に位置情報を定義付けることができ、それにより、利用者はスマホ上でGPSと連動することで自分自身の位置情報がいて供されるのはもちろん、さまざまなお店や目的地の情報やクーポン等を提供することができます。つまり、登録したどんな地図であっても、デジタルならではの利便性を活用することができるようになるのです。ちなみに、イラストマップや古地図など、登録した地図の縮尺が大きく歪んでいたとしても、アルゴリズムで計算して位置情報を定義してくれます。   片山:多様性と利便性の両立ですね。   高橋さん:今では、世界50か国以上からさまざまな個性的な地図が投稿されています。たとえば、「ベトナムのサステナブルファッションに関する地図」とか「カリブ海の豊かさに関する地図」など、切り口がかなり独特・個性的な地図もあります。地図というものは、それぞれの国や人特有の文化を映し出す鏡と言えますし、それがシェアされることによるメリットや面白さは大いにあると思います。   片山:企業との連携などに関してはいかがでしょう?   高橋さん:既に多くの企業と連携をさせていていただいております。不動産デベロッパーと組んだエリアマップ、ゲーム会社とタイアップしたマップ、テレビ番組公式街歩きマップなど、さまざまな切り口の地図をプロデュースしてきました。ロックフェスティバルの公式マップでは、エリア内の屋台情報やトイレ情報などの必要情報をオンタイムで提供しました。 街を楽しみながらエンタテインメントや便利情報を提供することで、自然な流れで消費者の行動喚起、販売促進へとつなげることも可能です。   実際に登録されているタイアップ地図の一例。京都の世界観が表現されたオリジナル地図の上に、おすすめスポットがプロットされている。     電通との協業は? 片山:電通ともさまざまな連携を行っていますね?   高橋さん:ここ京都では、engawa Kyotoのイベントで登壇させていただいたり、Royal College of Art(以下、RCA)のアートシンキングのプログラムに参加させていただいたり、クロステックマネジメントとのコラボ企画を推進したりと、さまざまな連携をさせていただいています。また、電通本社を通じて、クライアント企業との連携等も進めております。   RCAを招いて行われたInnovation Masterclass in Kyotoの様子   編集長註: RCAを招いて実施したInnovation Masterclass in Kyotoの内容はこちらから! 世界が認めるフレームワークを使って未来の本質課題を開拓するワークショップレポート  前編   後編     気になる新型コロナの影響と新しい取り組みとは 片山:コロナ禍で世界は大きく変わりました。Strolyには影響ありますか?   高橋さん:もちろん影響はあります。そもそも人が家に閉じこもっていますからね(笑)。しかし、私たちは悲観していません。そもそもStrolyは、デジタルプラットフォームですから。これからは、Strolyにとって2つのチャンスがあると思います。1つ目が「ローカルの再発見」、2つ目が「バーチャル散歩・旅行」です。   片山:「ローカルの再発見」とは何でしょう?   高橋さん:今回のコロナ禍で、人々は、“自宅の半径〇〇m以内”といったような、ローカルの範囲内で生活することを強いられています。そして、地元のスーパーに行き、地元のレストランでテイクアウトし、地元の公園で息抜きをする。その際、地元に関するいろんな情報が必要になると思います。例えば、スーパーの混雑具合を知りたいだとか、テイクアウトを始めたレストランのメニューや時間を知りたいだとか、そういったさまざまな“ローカルの情報”に関するニーズなどです。そういったニーズに対応したマップを、これから多く手掛けていきたいと思います。これからますます“地元愛”が高まると思いますから。   片山:「バーチャル散歩・旅行」とは何でしょう?   高橋さん:これからは、“リアル”な散歩・旅行に加え、“バーチャル”な散歩・旅行も、普通に行われるようになると思います。バーチャル空間を訪れて散歩し、そこで買い物をし、人と出会う。さまざまなプラットフォームを通じて、そういった行動が急増しています。そういった、バーチャル散歩・旅行に対応した、オンライン上だけでも十分に楽しめ活用できる地図サービスを積極的に提供したいと思います。 残念ながら中止となってしまいましたが、先日、SXSW 2020のイベント周辺マップを企画プロデュースしました。元々は、Stroly上のマップがリアル空間と連動するよう設計されていましたが、そもそもリアルが中止になってしまったので、方針転換して、バーチャルのみで楽しめるマップを提供しました。今後は、オンライン上で音楽イベントを行ったり、物販を行ったりするなど、オンライン上ででも盛り上げていければと思います。また、そのマップ自体、アーティスト田中 紳次郎さんオリジナル制作の、アート作品なのです。“デジタル&インタラクティブな機能をもつ地図”のアート作品は、人類史上初だと思います。(笑)   アーティスト田中 紳次郎さんオリジナル制作によるバーチャルSXSW2020の地図。会場とイベントが地図上にプロットされている。   同じオースティンの地図でもNight Map(夜を楽しむ地図)、Music Map(音楽イベントの地図)などバリエーションから選べ、同じエリアでも違うクリエーター、違うスポットが紹介されている   片山:夢が広がりますね。最後に、Strolyの未来ビジョンについてお聞かせください。   高橋さん:私たちは、起業当初からずっとグローバルに照準を合わせてサービスを展開してきました。しかし、それでもなお、これまでは国内の比重が高かったと言わざるを得ません。今回のコロナ禍を受けて、リスク分散の観点も含め、完全なグローバルサービスへとシフトしていこうと考えております。 また、昨今ますます世界全体が分断され混沌としてきていますが、私たちは“Share the way we see the world”(世界の見え方をシェアしよう)というコンセプトを活かし、さまざまな文化シェアし、それを発見し楽しむことで、世界平和へ一歩でも繋がればと想っています。   片山:本日は素敵なお話しありがとうございました。   高橋さん:こちらこそありがとうございました!   編集長後記 地図という機能が求められる情報にアートを掛け合わせたデジタルイノベーションという素晴らしいアイデアを事業化されているStrolyさん。コロナ禍で人が外に出ないという“地図”には厳しい状況の中、それを逆手にとったあっぱれな新サービスに転換されました。そんなStrolyさんのさらなる快進撃に今後も大注目です!